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新たな価値はエビデンス思考から脱却しないと生み出せない

NOTES

これまで世界は、まだこの世にない新たな価値を生み出す挑戦者の存在、今で言えばまさにスタートアップのような存在によって進化してきました。

具体的な例を挙げると、今でこそ魚や肉は食料として認識されていますが、初めてそれらを食べることに挑戦した先達がいたからこそ、私たちは魚や肉を食料としていただくことが出来ていますし、車や飛行機などの移動インフラも同様に、車でいえばジェームズ・ワットの蒸気機関を創る挑戦が、飛行機でいえばライト兄弟が製作したライトフライヤー号を創る挑戦があったからこそ、私たちはとても豊かな経済活動を営むことが出来ています。

エントロピー(原子的配列および運動状態の混沌(こんとん)性・不規則性の程度を表す量の概念)増大の法則は、「自然は、常にエントロピーが小さい(秩序ある)状態から大きい(無秩序な)状態に進む」ということを明示していますが、機械は時間が経つにつれて劣化するし、人間も年を重ねるにつれて老化し、死が訪れます。これらのことを拡大解釈すると、人類は現状を維持するだけでは存続できない、言い方を変えれば、人類は破壊と創造(挑戦)を繰り返すことで存続してきたとも言えると思います。

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しかし、まだこの世に存在していない、新たな価値を生み出す挑戦をする際には、「実績や事例が何も存在しない」「目に見えるものが何もない」といった大きな不安が常に挑戦者に付きまとうのは言うまでもありません。

おそらく、初めて魚や肉を食べた人や、ジェームズ・ワット、ライト兄弟なども、自らの挑戦が成功するかどうかの確度を高めてくれるエビデンスなど何もなく、挑戦するには相当の勇気と覚悟を必要としたことでしょう。

そのような結果、「実績や事例」「目に見えるもの」を見て判断しよう、実績や事例が出てくるまで待とう、といったエビデンス思考を選択しがちなのですが、このような「実績や事例」「目に見えるもの」の積み重ねの延長線上に未来の蓋然性を求めにいくという思考法は、現在のように非連続な変化が起きている時代において果たして有効なのでしょうか? 個人的にはNoだと考えています。

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歴史を振り返ると、フィーチャーフォンからスマホへのシフトのタイミングでは、Appleなどの海外勢に大きくシェアを奪われ、日本ブランドのほとんどが撤退になりましたし、世界で大きな存在感を示していた自動車産業に関しても、ガソリンから電気へのシフトという大きなGame Changeの中で、日本勢は海外勢に対して後塵を拝する状況にあります。更に言えば、これまで盤石な基幹産業を創り上げてきた日本が、イノベーションのジレンマに捉われ、デジタル化が遅れる中で、デジタル後進国になりつつあるという事実。これらからの学びは、大きな時代の方向性に沿った変化は、必要な時間をかけて必ず起こるし、自社がやらなくても、世界中の誰かが必ずその流れを推し進める。だからこそ、「実績や事例」「目に見えるもの」などのエビデンスがなくても、大きな時代の変化の方向性を信じ、覚悟をもってそれらを形にすることに挑戦するファーストペンギンにこそ大きなチャンスが宿るということが言えるのではないでしょうか?

スタートアップの起業家は、まさに一人一人がファーストペンギンそのものです。また、スタートアップのみならず大企業も含めて、エビデンス思考ではなく、大きな時代の変化の方向性を信じ、新たな価値を生み出していくという覚悟を持ったリーダーの存在が極めて重要になると感じています。

私たちが掲げているバリューの一つに、「新たな価値の創造」があります。このバリューは、「あるべき未来を見越して、果敢にリスクテイクしていくことで、世の中に対して新しい価値を生み続ける」という私たちの存在意義を言語化したものです。

改めてですが、大きな時代の変化の方向性を信じ、起業家とともに新たな価値を生み出すという強い覚悟を持って、引き続き挑戦を積み重ねていきたいと思います。

筆者

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