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コロナ禍の今だからこそコーポレートベンチャーキャピタルが投資を続けるべき3つの理由

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コーポレートベンチャーキャピタル。オープンイノベーションを目的とした大企業のコーポレートベンチャーキャピタル(以下CVCと呼び、ここでは事業会社からの直接(BS)投資も含みます)が数多く立ち上がっている中で、CVCは、もはやその存在なしではスタートアップエコシステムを語ることが出来ないくらい大きな存在になっています。

ところが、投資の現場で感じている肌感覚や、日々メディアから入ってくる情報からも、コロナの影響でCVCの投資が停滞する、若しくはCVCから撤退する大企業が増加する気配(但し、IT大手が運営するCVCは除く)を感じており、大企業に在籍されているオープンイノベーションやCVCに関わる方々に向けて、このコンテンツを執筆しています。

■今年のスタートアップ投資、大企業9割「減らす」|日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO58560520X20C20A4TJ1000/

もちろん、コロナの影響で本業自体に大きな打撃を受けているのであれば、本業の立て直しに集中するというのは適切な経営判断だと思いますが、仮に「コロナで当面景気が悪化しそうだから、とりあえず投資は一律引き締めよう」という意思決定だとしたら、それは大いに見直す価値があると思います。

私自身が前職(サイバーエージェント)にて約10年間CVCの責任者を務めた経験があること、また約3年半前に創業したジェネシア・ベンチャーズにおいても、ファンド出資者の大半が機関投資家とオープンイノベーションを目的とした上場企業によって構成されており、CVCやオープンイノベーションについては一定の現場感覚を持っているつもりです。

実は以前にもあったCVCブーム(敢えてブームと書きます)ですが、前回は、2000年くらいから2008年にかけて、大手家電メーカーなどを中心に数多くのCVCが立ち上がりました。しかし、2008年9月に起こったリーマンショックによって冷や水を浴びせられることとなり、大半のCVCが撤退してしまったという過去があります。

今起きているCVCブームは、リーマンショックがようやく落ち着いた2010年くらいから、2011年に起こった東日本大震災を乗り越え、長い時間をかけて立ち上がってきたものですが、CVCに参入している業種も前回のそれとは比較にならないほど裾野が広がり、循環しているリスクマネーの金額も大幅に増加しています。

スタートアップから見て魅力的なCVC、具体的には、スタートアップファーストで考え、スタートアップと大企業が持つ互いの強みを活かしあいながら、フラットなパートナーとして事業を共に創っていけるCVCは既に数多く存在していますが、スタートアップがより大きな産業を創っていくためには、ここ数年で新たにCVCに参入した大企業や、CVCへの新規参入を検討している大企業が、コロナの影響を冷静に捉えて、スタートアップエコシステムにしっかりと根付いていくことがとても重要だと考えており、「コロナの今だからこそCVCが投資を続けるべき理由」について、私の意見を書きたいと思います。

1.リーマンショックとは異なり、コロナは数多くのスタートアップの事業にとって追い風である

まずはじめに、コロナがスタートアップの事業へ与える影響について、リーマンショックも振り返りつつ、個人的な意見を書きたいと思います。

2008年9月に起こったリーマンショックでは、アメリカの住宅ブームを背景に、信用力の低い借り手向けの住宅ローン(サブプライムローン)が急増し、それを証券化した金融商品のビジネスが過熱しましたが、住宅ブームの収束とともに延滞が急増することで証券化商品の価格が暴落し、多くの欧米金融機関が危機的な状況に陥いるとともに信用収縮を引き起こし、金融システムの機能自体が大幅に低下しました。その結果、短期金融市場における流動性が干上がり、世界的に株価が暴落して経済活動が停滞しました。つまり、リーマンショックによる不況は、金融機関自体の資金供給能力の低下に起因していました。

その一方で、ウイルスが引き金となった今回のコロナでは、(コロナによって大きな打撃を受けている数多くの企業に多額の資金支援が必要とされるものの)基本的には金融機関が大きな打撃を受けているものでないことに加えて、OSレベルでの人間の価値観の変化をもたらしているという大きな違いがあります。

・仕事のために電車に乗ってオフィスに通う
・遠く離れた人とミーティングするために出張をする
・フィジカルに集まるセミナーやイベントに参加する
・学校の教室で授業を受ける
・名刺を交換する

アフターコロナの世界では、例えばこれらの当たり前だったことがもはや当たり前ではなくなり、大半の人々がオフラインの中に留まることなく、オンラインまで拡張させた、オフラインとオンラインがシームレスに繋がった幅広い選択肢の中で、最も合理的、かつ幸福度の高い手段を選択するようになると考えています。

そして、まさにそのような世界の実現に向けて、人生を賭けて全力でチャレンジしているのがスタートアップです。コロナウイルスが地球に現れる前から、数多くのスタートアップがそのような未来を描き、その実現に向けて全力でチャレンジしています。

本来であればスタートアップが自ら切り開いていく必要があった “これまでの当たり前の再定義” が、コロナによって地球レベルで大きく進む。そして、このことが、数多くのスタートアップが描いている未来の実現に必要な時間軸を大幅に短縮し、スタートアップが掲げているビジョンの実現へのスピードを大きく加速させると考えています。

実際に、B2C(一般消費者向け)ビジネスであれば、自宅でのリモートワークや外出自粛、及びこれらの長期化による外出への心理的コストの上昇によって、OMO(Online Merges with Offline)など、オフラインとオンラインをシームレスにサービス設計しているスタートアップは、ビフォーコロナに較べて数字を伸ばしていますし、B2B(企業向け)ビジネスに関しても、DX(Digital Transformation)を推し進めるSaaSスタートアップなどを中心に、ビジネスプロセスのデジタル化・効率化を模索する企業からの問い合わせが増加していたり、(例えば教育や医療など)一般消費者の行動やユーザーニーズの変化が起こっている事業領域では、オンラインベースでのサービス提供を迫られている学校や病院からの問い合わせが増加していたりします。

上記のような事業への追い風に加えて、コロナの影響で採用マーケットに優秀な人材が多数流入しているこのタイミングは、数多くのスタートアップにとってはまさに積極的に攻めるべきチャンスであり、スタートアップが全力でチャレンジしているイノベーションのスピードをさらに加速化させるためにも、リスクマネーを積極的に増やすべきタイミングだと考えます。

また、これらの状況を大企業(CVC)の視点で捉えなおすと、極めて変化が大きいこのタイミングで投資を止めてしまうことによって、イノベーションの最前線から遠ざかるだけではなく、ややもするとキャッチアップ不可能な状態に陥りかねない、それくらい大きな変化が起こっていると感じているのが、コロナの今だからこそCVCが投資を続けるべきと考える一つ目の理由です。

2.CVCが優秀な起業家に選ばれるには、起業家や投資家コミュニティにおける信頼感の醸成が大切である

CVCが投資を続けるべきだと考える二つ目の理由は、CVCが本来パートナーシップを組むべき優秀な起業家に選ばれるには、起業家や投資家コミュニティにおける信頼感の醸成がとても大切であり、今回のコロナのようなタイミングで簡単に資金を引き上げてしまうCVCの場合、こういったコミュニティにおける信頼感が大きく揺らいでしまうと考えているからです。

景気が悪くなると投資を止め、景気が良くなると投資を開始するという日和見的なCVCの場合、全力でビジョンの実現に向けてチャレンジしている起業家や、日々真剣に起業家に伴走しているベンチャーキャピタルから見ると、どうしても本気ではない投資家だという印象を持たれてしまいがちです。

特に、大企業が本来パートナーシップを組むべき優秀な起業家であればあるほど、投資家からの人気も高く、株主としてふさわしい投資家かどうかをシビアに選ぶ傾向が強いので、起業家や投資家コミュニティにおける信頼感の醸成は常に意識しておくべきだと思います。

3.中長期目線で投資を継続することが、CVCを事業として継続させる上で大切な投資リターンを高める

CVCが投資を続けるべきだと考える三つ目の理由は、景気が悪くなると投資を止め、景気が良くなると投資を開始するといった短期的な目線ではなく、中長期的な目線で投資を継続することによって、CVCを事業として継続させる上で大切な投資リターンを高める一定の効果が見込めると考えるためです(もちろん、中長期で投資を継続することだけが投資リターンを高める要素ではありませんが、ここでは詳細の説明は割愛します)。

CVCを事業として継続させていく上では、オープンイノベーションが目的だからCVCは赤字を垂れ流してもよい、ということではなく、しっかり投資リターンを創っていくことも大切です。

中長期で見ると、景気が悪い時にリスクテイクして投資した案件は、高いパフォーマンスを生みやすいという投資家の中での通説があります。これは、景気が悪い時は投資条件が良くなる、ハングリー精神の強い起業家が増加する、中長期で投資を継続することで、幅広いトレンドをポートフォリオに組み込むことができるのでリスクの分散が可能になるなど、様々な要素があると思いますが、景気が悪い時にリスクテイクして投資した案件が高いパフォーマンスを生みやすいというのは、約15年間投資を継続してきた自分自身の肌感覚としても一定の腹落ち感があります。

4. 最後に

過去に例を見ない、OSレベルでの価値観の変化を私たちにもたらしたコロナですが、その変化の方向性は、資本主義のもとでscrap&buildを繰り返してきた私たちが忘れかけていた何かを取り戻す、そんな揺り戻しのような、原点回帰のような気がしてなりません。そのような中、数多くの起業家が本気でチャレンジしているのは、究極的には人間一人ひとりが自分らしく、豊かに生きられる、そんな世界の実現だと思います。

このようなタイミングだからこそ、そんな本質的なチャレンジをしているスタートアップを一緒に応援しませんか? また、起業家と投資家(VC、エンジェル)だけではなく、さまざまなアセットや知見を持った大企業(CVC)が、スタートアップエコシステムにしっかりと根付いていくことによって、ジェネシアが掲げているビジョンでもある「すべての人に豊かさと機会をもたらす社会の実現」に向かうスピードが大きく加速するのは間違いないと思います。

本稿を読んでくださった人の周りに、もし大企業に在籍されているオープンイノベーションやCVCに関わる方がいらっしゃれば、是非シェアいただければ嬉しく思います。

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