
#17 停滞するサプライチェーンマネジメント領域への挑戦【ゲスト:株式会社リチェルカ 代表取締役CEO-梅田祥太朗さん】|Ayo! by Genesia.
ジェネシア・ベンチャーズが配信する『Ayo! by Genesia.』は、スタートアップの“挑戦の裏側”に光をあてるPodcastです。プレスリリースなどのオフィシャルな情報だけでは伝えきれない、挑戦のプロセスで生まれる想いや葛藤、そしてリアルな学びを、起業家と投資家、それぞれの視点からお届けします。
Ayo(アヨ)!」はインドネシア語で「Come on!」「Let’s Go!」という意味。スタートアップのチャレンジをリアルにお届けしていきます。
※これは、2026年4月14日に公開したPodcastを編集した記事です
今回のゲストは、サプライチェーンマネジメント領域でAgentic ERP『RECERQA』を提供する、株式会社リチェルカ 代表取締役CEOの梅田 祥太朗さん(以下:梅田)と、ジェネシア・ベンチャーズの担当キャピタリストである黒崎 直樹さん(以下:黒崎)です。 モデレーターは、同じくジェネシア・ベンチャーズの水谷が務めます。
目次
- 「営業だけじゃダメだ」キャリアの転換点
- 「梅田さんは赤い炎をたぎらせていた」担当キャピタリストとの出会い
- 「リアルなものを売るのって本当に大変」SCM領域に挑むきっかけ
- 「じゃあ俺がやろう」10年イノベーションがなかった領域への挑戦
- 「今日から生まれ変わろう」友情が支えたエンジェルラウンド
- 「覚悟が決まっていた」ジェネシアが投資を決めた理由

「営業だけじゃダメだ」キャリアの転換点
水谷:まずは梅田さんの、リチェルカ創業前のキャリアについて教えてください。
梅田:新卒でみずほ銀行に入行して、そのあとワークスアプリケーションズ(以下:ワークス)という、大手企業向けにERPと言われる基幹システムを提供している会社に転職しました。そこで、今僕らがリチェルカでも展開しているサプライチェーンマネジメント(以下:SCM)や会計のシステムを大手企業に提供する仕事をしていました。 その後、いろんな思いがあって「スタートアップに行くぞ」と決意して、当時20人前後の規模でプロダクトリリース直前だったAI insideに入社しました。入ったときは売上が4,500万円ぐらいだったのですが、営業として入ってとにかく売りまくり、CROというポジションでIPOを経験しました。 次のキャリアを考えていた時、株主だった東京大学エッジキャピタル(UTEC)から「ベンチャーパートナーとして投資先の支援をしないか」と声をかけてもらい、その仕事をしていたら、投資先の一社だったHashPortというブロックチェーンのスタートアップから「COOをやってほしい」という話があったので、そこでCOOを経験して、独立したというキャリアです。
水谷:「いろんな思いがあってスタートアップに行くぞと決意した」という点について、詳しくお伺いできますか?
梅田:ワークスではずっと上位5%の評価をもらっていて、最年少でマネージャーにもなりました。順風満帆なキャリアでしたが、会社が急成長していく中でいろんな問題があり、経営が傾く瞬間に立ち会ったんです。 僕は、会社がやってきたことは正しかったと思っています。ただ、人が急激に増えすぎました。僕が入ったときは3,000人くらいだったのが、4年後に辞めるときは7,000人くらいになっていたんです。年に1,000人採用するような状況だったので、なかなか立ち上げが難しかった。 僕はワークスが大好きだったので、経営を立て直すチームに行きたいと営業の本部長に希望を伝えたのですが、それは通らなかったんです。売れる営業だから手放したくないというのもあったでしょうし、一方で、営業しか知らない僕が行って何になるんだという話でもあったと思います。 その時に「営業をやってるだけじゃだめだな」と思いました。営業は得意でしたが、目標を達成した次の日にはまたリセットされて、ゼロから目標を追わなければいけない。いつまでこれを続けるんだろうという思いもありました。ずっと営業でいいのかという思いと、営業しかやってこなかったことによる自分の無力さが掛け合わさって、転職を考えたのが一番大きな理由です。
水谷:元々、いつか起業したいという思いはあったのですか?
梅田:まったくなかったです。そもそも人前で喋ることがすごく苦手で。
水谷:今となっては信じられないですね。
梅田:絶対嘘だって言われるんですけど、本当なんです。忘年会の幹事とか、みんながどうやったら楽しんでくれるか企画するのは大好きなんですけど、人前で司会ができない。うまく喋れないんです。だから人を束ねるのは苦手だと思っていて、どちらかというとCOOになりたいという思いがワークスの頃からありました。自分で起業することになるとは正直まったく思っていませんでした。
水谷:営業に専念していたところから、よりビジネスパーソンとして幅を広げたい、経営に携わりたいという思いが生まれ、スタートアップが選択肢として出てきたのですね。
梅田:外資系の大手企業から、もっと高いオファーをもいただきました。でも、それでいいのかな?と。ワークスに転職するときも、実は別の会社から倍ほどの給料を提示してもらっていたんです。24歳だった僕にとってはすごくありがたかったし、悩んだんですが、ワークスに飛び込んだ方が生涯年収は増えると確信していました。昔は「30歳で年収1,000万円」みたいな目標があったので、そこに向けてスタートアップに飛び込んだ、という感じです。
「梅田さんは赤い炎をたぎらせていた」担当キャピタリストとの出会い
水谷:リチェルカの投資担当の黒崎さんからも自己紹介をお願いします。
黒崎:私は新卒で富士通に入り3年間勤めたのち、梅田さんと同じようにスタートアップに行く意思決定をして、Sansan株式会社にアーリーフェーズでジョインしました。7年半在籍してIPOも経験し、海外留学を経て、3年前にジェネシア・ベンチャーズに入りました。
水谷:富士通ではどんな仕事をしてたのでしょうか?
黒崎:それこそ、大手の通信キャリアさんが使うような、かなり大規模な基幹系システムの営業や保守管理をやっていました。受注規模が3,000億円以上みたいな規模の。なので、エンタープライズITや、それに関連するERPやSaaSには元々関心が高く、それがリチェルカに興味を持った背景の一つです。
水谷:梅田さんとの出会いや第一印象について教えてください。
黒崎:最初は、リチェルカがエンジェルラウンドで資金調達したというプレスリリースを見たのがきっかけです。2023年の8月ぐらいだったと思います。まず領域がすごく魅力的でした。SCMかつERPという企業の根幹に挑戦するスタートアップはそう多くないので、「こんなテーマに挑む人たちがいるんだ」とすごく興味を持ちました。それで、お繋がりのあった起業家にご紹介をお願いして、東麻布のマンションにあった旧オフィスに伺いました。
水谷:そのときの第一印象は?
黒崎:僕がお会いしたときの梅田さんは、本当に「赤い炎をたぎらせていた」というか・・
梅田:エンジェルラウンドで調達した後だったので、人からお金を入れてもらったからにはもうやるしかないと、本当にギアを変えようというタイミングだったと思います。
黒崎:マンションの扉を開けたら、すごく狭いワンルームみたいな部屋に8人ぐらいが密集していて、THE スタートアップを感じました。そのときはまだ何もなかったのですが、BtoBの重厚なテーマに挑む上で、梅田さんのキャラクターと経歴、ビジョンの大きさとそれを実現できる根拠、そして営業力は絶対に必要だと思いました。それが初回面談の一時間ですべて確認できたので、私としては最初から前向きに検討を進めました。
「リアルなものを売るのって本当に大変」SCM領域に挑むきっかけ
水谷:エンジェルラウンドでの資金調達を経てスイッチが入ったとのことですが、そもそもこの領域で起業に至った経緯を教えていただけますか?
梅田:前職のHashPortに入ったとき、組織は7人しかおらず、さらに組織を大きくすることが僕のミッションでした。7人の会社を9ヶ月で70人くらいにして、CFOのような仕事もやっていました。 COOとしてのメインミッションはBtoB事業の立ち上げだったのですが、当時『STEPN』という歩くとトークンがもらえるGameFiがすごく流行っていたこともあって、会社として「その潮流に乗るぞ」と、経営リソースをすべてtoCのゲームに振り向けることになったんです。 僕が採用してきていたのはBtoBの人たちだったのでので、だったら僕が辞めて、まだ転職先が決まっていないメンバーの雇用を作りたいなと思ったのが起業のきっかけなんです。なので、当初はブロックチェーンの仕事をしていました。
水谷:そうだったんですね。
梅田:2022年に3人で創業したんですが、当時は何も考えていないサークルのような感じでした。でも今思えば、それはここに至るまでの助走期間であり、修行とチームビルディングの時間だったので、すごく良かったなと思っています。 転機は、4月に会社を立ち上げた後、6月に僕がバイクの輸入商社を事業承継で買ったことです。リチェルカとは別の「うえさか貿易」という会社です。僕はバイクが大好きで、22年はバイクレースを始めた年でした。僕が乗っているTMというイタリアのバイクの輸入元がその会社で、たまたま事業承継先を探していると聞いたので、「買わせてください」と。 でも、そちらの仕事がめちゃくちゃ大変で・・輸入実務とか国内の業者への卸とか、リアルなものを売るのって本当に大変なんだなと思いました。先立つお金も必要だし、在庫を入れすぎたら潰れてしまうし、書類まみれだし。それらのペインのせいで、当時はずっとバイクの仕事をしていました。
「じゃあ俺がやろう」10年イノベーションがなかった領域への挑戦
水谷:バイク商社を回すことに手一杯だったんですね。
梅田:もちろんそのままでは良くないと思い、DXのためのプロダクトを探しました。ワークスにいたのでいくつか目星はついていたのですが、驚いたことに、僕がワークスに入った2014年から10年経っても、プレイヤーが何も変わっていなかったんです。誰もイノベーションを起こしていない。会計はfreeeさんやマネーフォワードさん、人事はSmartHRさんなどが出てきていたので、SCMも誰かがやってくれるだろうと思っていたら、誰もやっていなかったんです。 「じゃあ俺がやるか」と。しかも、どうせ作るなら売れるものを作りたい。そう思って、SCM事業へのピボットを決断したのが、2023年の1月です。
水谷:元々、うえさか貿易で使えるSCMが世の中になく、自分たちが使いたいシステムを開発しよう、というのがきっかけだったんですね。
梅田:ERPは選択肢が限られていて、消去法で決められています。しかも、お金が無限にかかる。バイクレース仲間に導入コンサルをやっている人がいるのですが、大企業のプロジェクトで、7年で500億円をかけてもまだ稼働しきっていないとのことでした。そういうプロジェクトが当たり前に残っていることにも衝撃を受けました。
水谷:であれば、自分たちで作ってしまおうと。
梅田:難易度はめちゃくちゃ高いと思いました。当時この話を元ワークスの人たちにしたら、「お前はバカだ」「あんなにつらい思いをしたのに、なぜまたやるんだ」と言われ、賛成してくれた人は誰もいませんでした。VCにも「領域がでかすぎる」「絞れ」とめちゃくちゃ言われましたね。
「今日から生まれ変わろう」友情が支えたエンジェルラウンド
水谷:そこから資金調達に至るわけですが、どんな経緯だったのですか?
梅田:最初にやっていたブロックチェーン事業は、創業メンバー3人が給料ゼロで回していました。でも、SCM事業となるとプロダクトを作らなければいけないし、正社員も欲しい。とにかくリソースが必要でした。 でも、トラクションは何もない。アイデアしかない。僕はCROやCOOはやってきましたが、資金調達は一度もやったことがなかったので、どう動けばいいのかがよくわかりませんでした。だから、とりあえずAI inside時代の盟友であり親友である元CTOと元CFOに相談しに行ったら、「いいよ」と1,500万円ずつ出してくれました。 「梅ちゃんならどうにかなるんじゃない」と、完全に人(僕)に賭けてくれたわけです。この友情を絶対に裏切れない。絶対に損はさせられない。だから会社に戻って、「今日から俺たちは生まれ変わろう。もう後戻りはできない。あとは成功するしかないから」と話したのを、すごく覚えています。
水谷:そこから完全に別の会社になった、と。
梅田:はい。それまでは仲の良いメンバー同士で、「こんなんでいいのかな」なんて言いながらやっていましたが、それ以降は意図的に引き締めていった感覚があります。
水谷:ちなみに、そのときの共同創業メンバーは今も?
梅田:もちろんいます。一人は今回の資金調達に合わせて、取締役から取締役COOという形で、きちんとCxOになってもらいました。
「覚悟が決まっていた」ジェネシアが投資を決めた理由
水谷:スイッチが押されてモードチェンジした梅田さんに、黒崎さんは会ったわけですね。当時、ジェネシアが投資を決めた理由について、改めて教えていただけますか?
黒崎:エンジェルのお二人はもちろんですが、やはり梅田さんという人にすごく魅力を感じて、「賭けてみたい」と思ったのが一番の理由です。 梅田さんはいろいろなキャリアを経験して成功を収めた結果、もう引退することもできたかもしれないのに、あえて茨の道を選んでいる。そうしなければいけない理由というか、覚悟が決まっていたんです。エンジェルラウンドの後だったから、というのもあると思いますが、それがすごくいいなと。 市場・領域の面で言うと、梅田さんがおっしゃっていた通り、ERPやSCMは市場がめちゃくちゃ大きいのにイノベーションが起きていない。もちろん昔からのプレイヤーがしっかりしたプロダクトを出していますが、もう少し使いやすくて、AI時代を踏まえたものがあってもいいんじゃないかと。新しいプレイヤーが生まれなければいけないし、そこに資本市場のお金を投下することに、社会的な意義は十分あるんじゃないかと思いました。
水谷:シード期のスタートアップが持つ、人の魅力と覚悟がお二人を繋いだのだと、お話を聞いて改めて感じました。 さて、今回はここまでです。次回も引き続き、リチェルカの梅田さんと、ジェネシア・ベンチャーズの黒崎さんにお話を伺っていきます。ありがとうございました!
梅田・黒崎:ありがとうございました!Ayo!
全編はPodcastでお楽しみください:


