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Cross-Region Seed Map #γ Trump Tariffの余波

アジア

📌 Trump Tariffとは?

2025年4月3日、米国・トランプ大統領は「Liberation Day」政策の一環として以下のような大規模な関税措置を発表しました。

  • 全輸入品に対する一律10%関税
  • 対米黒字が大きい国への追加の相互関税(一部品目は除外) →例えば、私たちジェネシア・ベンチャーズが投資拠点を置く日本・ベトナム・インドネシア・インド4カ国への相互関税率は以下の通りです。
    • 日本:24%
    • ベトナム:46%
    • インドネシア:32%
    • インド:27%

この措置は、「貿易赤字削減」と「国内製造業保護」を掲げたものですが、グローバルサプライチェーンを通じて各国に深刻な影響を及ぼします。以下、上記4カ国の経済に対する影響を推察していきたいと思います。


🇯🇵 日本への影響

🎯 主な打撃:

  • 対米輸出の約7割を自動車および関連部品が占める
  • 2024年の日本の対米輸出:約19兆円 → 関税で数兆円規模の収益影響
  • 円安効果を帳消しにする関税の破壊力

📉 想定される影響:

  • 輸出数量の減少 → 国内生産減 → 地方経済や雇用にも波及
  • トヨタ・ホンダ・日産など、米国依存比率が高いOEMは特に深刻
  • 円建て利益は「見かけ上」維持されても、実質購買力や株主還元に影響

🛠 対応策:

  • 米国内生産比率の引き上げ(現地工場拡大、部品調達の現地化)
  • FTA(例:米国・メキシコ・カナダ協定)域内生産へのシフト
  • 政府間交渉による関税除外の働きかけ(バイ国間外交)

🇻🇳 ベトナムへの影響

🎯 主な打撃:

  • 2024年の対米輸出:約11兆円(GDPの約18%に相当)
  • スマホ、家電、衣料品、家具などの完成品輸出が直撃
  • Samsungなど外資企業の生産拠点にも波及

📉 想定される影響:

  • GDPの4〜6%下押し圧力(UNCTAD推計)
  • 為替操作国指定リスクの再燃
  • ベトナムを迂回輸出拠点に使っていた中国企業が撤退する可能性

🛠 対応策:

  • EU・韓国・ASEAN域内市場への輸出多角化
  • FTA活用(CPTPP、EVFTA)による関税軽減
  • 「脱アセンブリ」型、技術移転型産業構造への転換促進

🇮🇩 インドネシアへの影響

🎯 主な打撃:

  • 米国向け輸出は約3.2兆円と少なめだが、繊維・電子機器・ゴム製品が集中
  • 高付加価値製造業への転換が進んでおらず、関税による利益圧縮が直撃

📉 想定される影響:

  • GDP押し下げインパクトは限定的(0.5〜1.2%)だが、雇用セクターでの波及大
  • 輸出企業にとって「国際競争力が脅かされる」懸念強まる

🛠 対応策:

  • バイヤーとの価格再交渉 or 原価削減圧力の高まり
  • インドネシア国内での産業高度化(下請けからOEMへ)
  • ローカル市場(東南アジア域内)への戦略転換

🇮🇳 インドへの影響

🎯 主な打撃:

  • 宝飾品(ダイヤモンド)、繊維、皮革などに27%の関税
  • 一方で、米国で使用されるジェネリック医薬品の40%以上がインド製であり、医薬品は関税対象から除外

📉 想定される影響:

  • ダイヤモンド産業で100万人規模の雇用喪失の可能性
  • 関税によるマージン圧縮・シェア喪失
  • 医薬品は無傷ながら、FDA規制強化など非関税障壁のリスクは継続

🛠 対応策:

  • 宝飾・繊維の高付加価値化と新市場開拓(中東・アフリカ)
  • 医薬品は米依存を維持しつつ、ラテンアメリカ・アフリカ市場への展開加速
  • 産業多様化による雇用緩和政策の併用が求められる

🧭 国別影響インデックス

国名輸出依存度関税率想定収益減影響の深刻度備考
🇯🇵 日本中〜高24%GDP ▲0.4~0.5%★★★☆☆🚘自動車に致命打、米国現地生産が鍵
🇻🇳 ベトナム46%GDP ▲6%★★★★☆FDI比率高、外資の撤退も懸念
🇮🇩 インドネシア低〜中32%GDP ▲0.5~1.2%★★☆☆☆産業未成熟、価格競争に弱い
🇮🇳 インド27%(一部除外)GDP ▲0.1%★★★☆☆💊医薬品除外が下支え、宝飾品に打撃

スタートアップとしてどう向き合うか?

マクロで大きな影響があることは以上の通り明らかですが、よりミクロのレベルで、スタートアップとしてどうこの大波に向き合うかというのは考え甲斐のあるテーマです。例えば、関税の引き上げにより、輸入原材料や部品のコストが上昇し、製品やサービスの価格競争力が低下することは不可避と見られていますが(既に同時多発的に世界中で起きていますが)、このことを”Why Now”のトリガーとして捉えると、以下のような事業・サービスに商機が見出せます。

  • サプライチェーンの最適化支援サービス
  • 代替調達先のマッチングプラットフォーム
  • 貿易・輸出入関連の規制対応支援サービス

既に上記テーマに関連する事業を展開している場合、関税の引き上げがもたらす顧客社内の業務負荷の高騰に着目した新機能をいち早く打ち出すことには大きな価値があるでしょう。

サプライチェーンの最適化や調達プラットフォームに比べて、三つ目の貿易・輸出入のコンプライアンス対応サービスはプレイヤーの数がそれほど多くない一方で各国の最新の関税率や貿易規制、原産地規則をリアルタイムで収集・分析する需要がかつてないほどに高まっている点を踏まえて、原産地証明の自動生成やHSコードの自動分類を主要機能としたAIソリューションを企画検討するには良いタイミングかもしれません。

筆者

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