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【FormX】ディスクロージャーに新たなギアを。 —“開示業務のためのデータ”を、”より良い経営のためのデータ”へ|Players by Genesia.

インタビュー

「あれから三年後—」
のような物語の場面転換の表現は、小説やドラマなどでよく見られます。

その表現を目にすると、私はその”三年間”に想いを馳せずにはいられなくなります。物語のクライマックスとも言える印象的な出来事の翌日や翌週のようすは、あまり描かれることがありません。それでも、その登場人物が過ごした(変化がない、前進していると感じられないこともあったかもしれない)一分一秒や一日があるはずで、それは一体どんなものだっただろうと。どんな時間と考えを積み重ねただろうと。


FormXは、「ディスクロージャーに新たなギアを。」をミッションに、上場企業の開示業務をサポートするSaaSを提供するスタートアップです。

代表の時田さんはインタビューの中で、「あの経験も結果的には良かった」と何度か口にされました。絶望を感じる挫折や、出口のない迷路をさまようような経験を、そう何でもない風に話せるようになる力をレジリエンス(回復力)と呼ぶのかもしれないと感じました。

そんな時田さんが重ねてきた時間と考えを、担当の黒崎が聴きました。

  • デザイン:割石 裕太さん、写真:尾上 恭大さん
  • 聞き手・まとめ:ジェネシア・ベンチャーズ Relationship Manager 吉田
  • 以下、敬称略

相次ぐ怪我で、「努力は報われないこともある」と実感した学生時代

黒崎:

今日は、時田さんが体験してきた人生のイベントや意思決定、価値観の変遷などについてお伺いしながら、FormXとして目指す世界観や時田さんが描くビジョンについてオープンにしていく場にできたらと思います。まずは、幼少期や学生時代のお話を伺ってみたいんですが、ご自身として特に印象的だったエピソードなどはありますか?どんな子どもだったんでしょうか?

時田:

放課後に友達を誘って遊びに行ったり友達を家に呼んでゲームをしたりと、活発な子どもだったと思います。あとは、中学校でバスケをしていた兄の影響で、僕も小5からはミニバスを始めて、遊びとスポーツに時間を費やしていました。

黒崎:

バスケにはかなり本気で取り組んでいたんですか?

時田:

小~中学校とかなり集中して取り組んでいて、高校もバスケの強い学校に進学しました。僕は長距離走が速くて、シャトルランとかもいつもトップだったので、一年生が初めて体育館を使えるという日の対抗戦にもスタメンで出してもらえたんですけど、でも、なんとその試合で右足の前十字靭帯を怪我しちゃったんです。

黒崎:

大怪我ですよね・・これからというときに、それはつらいですね。

時田:

初めて体育館で練習できた、その日にです。悔しかったです。結局、手術やリハビリを含めて一年くらいかけて治して、BチームからようやくAチームに上がれて、さぁ再スタートだ!というときに、今度はなんと逆の足の前十字靭帯を切ってしまって・・バスケするために高校に入ったんですけど、ほとんどバスケできずじまいの高校生活になってしまいました。

黒崎:

しんどいですね・・

時田:

特に二度目の、左足を怪我しちゃったときは、せっかくがんばって右足の怪我を乗り越えたのに・・ってものすごく落ち込みました。遠いところにある病院に通っていたので、母がいつも車で送迎してくれてたんですけど、その母も運転席で泣いていたり・・かなりつらかったです。
 でも、その後の会計士試験なんかもそうなんですけど、努力しても結果が出ないことはあるという感覚だったり、いつ何が起きるかわからないという感覚だったりは、その高校時代の怪我の経験を通じて認識していった部分はあったかもしれません。

株式会社FormX 代表取締役 時田 知典

早々に会計士の道を見出すに至ったきっかけは、「母の仕掛け」?

黒崎:

怪我をしていた期間は他のことにチャレンジもしていたんでしょうか?

時田:

リハビリのために病院に通ったり筋力を落とさないようにトレーニングしたりしながら、マネージャーみたいなかたちで関わっていました。試合に出られなくても、「ベンチで応援させてください」って言って。完全にバスケから離れることはしませんでした。

黒崎:

辞めようとは思わなかったんですか?他の道もあったでしょうし、自暴自棄になったりもしそうなものですが・・

時田:

思わなかったです。純粋にバスケが好きでしたし、女手一つで育ててくれた母を困らせちゃいけないっていう感覚もあったかもしれません。

黒崎:

なんとなく、小学生のときの遊びにしてもバスケにしても、時田さんは人の輪の中心にいるイメージがあるんですが、それって性格なんでしょうか?

時田:

人が好きだし、みんなで集まって何かするのが好きなんです。文化祭とかでも実行委員になって、あんまりやる気のない人たちにどう火ををつけるか考えたり。チームで一丸となって成果を出す、みたいな活動がすごく好きなんです。起業にも似たところがあるかもしれません。

黒崎:

自分が不遇な状況にあっても腐らずに乗り越えて、かつ、人を応援したりサポートしたりする姿勢って、改めて本当に素晴らしいです。誰にでもできることじゃないと思います。

時田:

母のおかげかもしれません。学生時代は、母と過ごす時間が多かったので。

黒崎:

お母さまからの影響が大きいんですね。

時田:

会計士資格を取ったのも母の影響なんです。僕が中学生のときに、母が『13歳のハローワーク』っていう本を買ってきてくれたんです。これも母の影響だったんですが、僕はずっと算盤をやっていて計算や算数が得意だったので、その軸で職業のラインナップを見ていたら「会計士」があった。この資格があると、企業の中でも価値を出せるし公認会計士として独立もできそうだし、証券市場を含めた社会の仕組みに大きく関与できそうだし、いろいろできそうでおもしろそうだなと思いました。そこから、会計士を目指すかバスケを続けるかっていう軸で将来を考え始めました。

黒崎:

中学生時点で、ですよね。将来のことを具体的に考える機会がすごく早い印象です。そして、それ以降のキャリアも一貫していますよね。多くの人は、大学に行ってモラトリアム期間を経験して社会人になって・・徐々に自分の使命みたいなものを考えていくと思うんですけど。

時田:

あまり深く幅広く考えすぎていないような気がします。自分の今見ている世界の中で一番おもしろそうなものを選んでいる、というか。

黒崎:

計算や算数はやっぱり好きなんですか?

時田:

好きです。一つしかない答えを導き出せたときの気持ち良さとか達成感みたいなものが。

黒崎:

算盤から仕事選びまで、たしかにお母さまの影響が大きいというか、仕掛けが効いている印象がありますね。その中で、時田さんが自分の得意なことやずっと続けられていることを早い段階で捉えられたというか。

時田:

本当にそうですね。逆に、父と過ごす時間が多かったり「大学は行っておけ」みたいなプレッシャーがあったりしたら、また違ったでしょうね。母がかなり自由に「自分が選んだ道を行きなさい」って背中を押してくれたところが大きかったかもしれません。

資格試験に集中し、公認会計士に。会計領域の全体像を俯瞰してきたキャリア

黒崎:

高校卒業後、大学へ行くか専門学校へ行くか、みたいな分岐はあったんですか?

時田:

高校生のときには選択授業で簿記3級を取って、会計の道に進むことは決めていました。大学の受験勉強もしてたんですが、独学であれこれ手を出した結果、あまりうまくいかなくて・・母とも話して、会計士を目指して専門学校に行くことにしました。

黒崎:

専門学校時代は試験勉強一色の日々ですか?

時田:

朝から晩までずっと勉強してました。基本的には6-7時に起きて、朝はマックで勉強して、学校に行って、22-23時くらいまで勉強して帰る、というサイクルをずっと。テキストをn回転するために一日に進めるノルマみたいなものを自分に課して。いわゆるKPI管理みたいなことをしながら勉強してました。

黒崎:

時田さんのその集中力みたいなものは、今の事業やその推進体制を見ていても印象的です。

時田:

大学受験で手を広げすぎた失敗があったので、資格の勉強では”的を絞る”ことを強く意識していました。学校が出している指導方針みたいなものにとにかく沿ってやっていく。
 福山さん(FormXの投資家でもあるRice Capitalの福山 太郎氏)もよく言ってますけど、「やることを絞る」のってめちゃくちゃ大事だと思っています。すごく難しいんですけどね。だからこそ、専門学校でも先生の方針通りに勉強してきましたし、今の経営においても、福山さんに言われたことはその通りに実践しようと思ってます。僕らが独学で考え出す解よりも成功確率が高いであろうアドバイスをもらえていると思うので。

黒崎:

それを合理性とも言えるのかもしれませんが、時田さんて基本的にはすごくピュアというか素直ですよね。「徹底」や「継続」って、実は簡単なことじゃないですから。

時田:

たしかに、継続が苦手じゃない感じはします。その意味では、起業してからも、次から次へと新しい課題が出てきて、その時々で絶対にフォーカスすべきことがあるので、日々けっこう楽しいです。プロダクトだったり採用だったり営業だったり。もちろんそれぞれのプロフェッショナルには勝てないんですけど、全体像を把握しながら、一つ一つに取り組んでいけるのは楽しいなと。

黒崎:

専門学校を卒業されて、会計士資格を取って、そこから起業に至るまでの社会人キャリアについても教えてください。

時田:

上場会社の経理職を経験したあとに監査法人に入って、それからスタートアップの世界に来ました。最初は、GREEに買収された3ミニッツ、次がワンメディア、そしてSmartHRです。ちなみに、全ての会社で担当業務が違うんです。経理、監査、経営企画、スタートアップの管理部門の立ち上げ、IPO準備と。一つ一つの深さはそこまでじゃないかもしれないんですけど、例えば事業領域間の繋がりだったり、大企業とスタートアップの違いだったり、管理会計と財務会計だったり、全体を俯瞰した視点や意識を持てるようになれて良かったと思ってます。

黒崎:

今に繋がる要素が散りばめられていますよね。とはいえ、意図的に設計したキャリアというわけではないんですよね?

時田:

意図的ではないです。ずっと同じことをし続けるというよりは、近接領域で楽しそうなことを選んできたようなイメージです。ちなみに、僕の転職は全てリファラルなんです。その時々の会社で自分のできることは最大限やれたかなって思い始めたときにちょうど運よく声をかけてもらえたというか。そういう意味では、やっぱり人との繋がりをすごく大事に思ってます。

社内の新規事業創出をきっかけに芽生えた、スタートアップ起業の選択肢

黒崎:

キャリアの過程で、起業ってどのあたりから考え始められたんですか?

時田:

会計士としての独立みたいなことは考えていたんですけど、スタートアップとしての起業は正直あまり考えていませんでした。でも、スタートアップが― 自分でチームを作って、ビジョンを掲げて目標を達成していく、みたいな過程がすごく好きではあったんです。起業を考え始めたきっかけは、Nstockの宮田さん(SmartHR株式会社 創業者の宮田 昇始氏。この当時SmartHR社の代表取締役)がグループ会社の立ち上げを担当していた時期に、自分も新規事業の立ち上げに興味がありますって手を挙げたことでした。SmartHRの事業って言わずもがなコーポレート領域と相性がいいので、僕自身も入社したときから、コーポレート業務そのものだけでなく、”コーポレート領域における事業”にもすごく興味を持っていたんです。そうしたら宮田さんから、『新事業軸のフレームワーク』みたいなものを渡されて、具体的に事業アイデアを考えていくことになりました。
  僕は当時からディスクロージャー[*1]領域のアイデアを考えていたんですけど、宮田さんから「会計士ドメインに引っ張られすぎないでフラットに考えてみた方がいいよ」って言われたこともあって、視野を広げて、海外のいろんなプロダクトとか自分の周りにあるペインとかにも目を向けていました。そのときに気になったのが、SOC2[*2]認証の領域で、海外にユニコーン企業が出てきていることでした。SOC2はSmartHRも取得しているんですが、あれって監査法人が認証するんです。そうなると、僕のキャリアとも関連があるし、実際にそのレポートを見せてもらうと監査に近いと感じる部分があったので、これは自分の領域かなと思いました。それを宮田さんに話したら、「今のSmartHRの事業領域とは少し距離があるから、本当にやりたいなら自分で起業してもいいんじゃない?」という話になったので、だったら独立するかと。

黒崎:

当初は、SOC2領域の事業アイデアで起業したんですね。

時田:

でも、日本と海外とを比べると、SOC2の対象になるSaaSの数がそもそも1-2桁少ないし、浸透もそんなに速くないなとは感じていました。投資家の方からも「この領域・市場だとSmartHRみたいな規模にはならないと思うけど、それでもやる?」って言われて。やっぱりもっと大きな目標を掲げてチャレンジしたいと思って、そこからまた方向性を変えることにしたんです。

*[1]ディスクロージャー:ディスクロージャー(Disclosure)とは、企業が投資家や株主などのステークホルダーに対して、経営状況や財務情報を適切に開示することを指します。日本では有価証券報告書や決算短信、適時開示といった書類が該当し、金融庁(EDINET)や東京証券取引所(TDnet)を通じて公開されます。ディスクロージャーは、単なる法的義務ではなく、企業の透明性を高め、資本市場における信頼を築く重要な仕組みです。

*[2] SOC2:米国公認会計士協会(AICPA)が策定した、情報セキュリティの管理体制を評価するためのフレームワーク

「自分の領域」×「やりたい」に回帰して、ディスクロージャー事業の立ち上げへ

黒崎:

SOC2事業での起業から今のFormXに辿り着くまでにはどんな経緯があったんですか?

時田:

2023年の2月末にSmartHRを退職して、そのタイミングでSOC2事業からディスクロージャー事業にピボット、2023年5月にFormXを設立しました。2024年の2月くらいから本格的にプロダクトの開発を始めました。

黒崎:

そこからディスクロージャー事業を本格化させるまでの流れは?

時田:

当初からアイデアはありましたし、自分が一番やりたい領域だっていう気持ちはたぶんずっとどこかにあったと思うんです。そこにChatGPT3.5が出てきて、有価証券報告書の作成はほぼ自動化されるなという確信がありました。ただ、福山さんには、ディスクロージャー事業への投資を一度断られてるんです。市場サイズの捉え方を指摘されて、SaaSでグロースしていくための単価の話やVC調達に見合うGTMのスピード感についての観点でアドバイスいただきました。そこで、別のセグメントの顧客へヒアリングを続けていったところ、周辺領域に新たな課題を発見することができました。そこから展開していくとおもしろいビジョンが描けるし、福山さんからのアドバイスも解消できると感じてもう一度相談に行ったら、そのアイデアなら投資するって言ってくださったんです。

黒崎:

いろいろなアイデアを検討した上で、やっぱり自分自身の経験と「やりたい」っていう気持ちに基づいて、今のFormXの事業に辿り着いたんですね。Founders Market Fitを感じます。

時田:

「自分がやる意義」みたいな軸では、これ以上のものはないなと感じています。

黒崎:

市場が小さいと言われたら諦めてしまいそうな気もするんですけど、もう一歩の踏み込みというか粘りというか、そこに時田さんと他の人との違いがあるかもしれませんね。

時田:

会計士の勉強でも、”あと一歩”頑張れるかが大きな差になっていた感覚があって、その点、僕は人よりもそこに踏み込んできた自負があります。それが成功体験になっています。だから、長時間働けちゃったりして、メンバーへの影響とかを考えるとそれはそれで良くないなとも思ってるんですけど、とりあえずは”僕にできること”として続けてきました。

“開示業務のためのデータ”を、”より良い経営のためのデータ”へ

黒崎:

そして今まさにFormXが挑んでいるディスクロージャー領域というのは、まず開示業務の煩雑さという明らかなペインに対して、AIやテクノロジーを使ったソリューションが徐々に立ち上がっている最中だと思うんですが、時田さんが描いているIRやディスクロージャー領域の今後のあるべき姿やビジョンはどんなものですか?また、FormXとしてどんなバリューを発揮していきたいと考えていますか?

時田:

ディスクロージャーという領域で切り取ると、やっぱり日本の制度は本当に複雑なんです。関わる法律も多くて、提出書類にもいろいろな規格がある。決算短信、有価証券報告書、招集通知といういわゆる決算書類の内容すらめちゃくちゃ重複しています。似たような情報を出すのに、少しずつ型や表現を変えなくちゃいけないみたいな状態は、はっきり言ってムダですよね。これは日本特有の明らかなペインなので、まずここはテクノロジーの力で絶対になんとかしたいと思っています。本当は、企業側の業務改善だけではなく制度自体を変えていくことが、あるべき姿だとは思うのですが。

黒崎:

管轄の省庁は金融庁でしょうか。

時田:

金融庁もそうですし、東証や会計士協会なども関わります。金融商品取引法や会社法など、法律も相当複雑に絡み合っているので、整理するのはものすごく大変だと思います。

黒崎:

複数のプレイヤーやイニシアティブ、これまでの積み重ね、そして新しいESGなどの流れと、本当に様々な要素が混じり合って、”堅牢な城”が出来上がっているイメージですね。

時田:

まさに、最近ならいわゆるサステナビリティ開示の義務化の話だったり、逆に四半期報告が半期報告に減ったものもあったり。そういった制度改正による変更点などはプロダクトだけでは解決できないので、ドメインのエキスパートたちと関わりながら解決していく必要があります。

黒崎:

AIやプロダクトで効率化できる部分と、プロフェッショナルな人の力が必要な部分とを合わせて最適化させていく必要があるんですね。

時田:

開示って、投資家や関係者に「会社の今」を伝えるものなので、重要なデータが集まるんですよね。でも、”開示のためのデータ”で終わってしまっているフシがある。本当はそのデータをもっと活用できるはずなんです。データがあるということはAIと相性がいいので、例えば、データベースを参照して自動的に書類作成や文章作成ができたりする。このあたりは、遠からず実現できる世界観だと思います。僕らのビジネスで言うと、その次に、データベースをどれだけ経営に活かせるものにするかが大きな転換点になるかなと思います。

黒崎:

開示する方も、業務が改善されたりデータを基により良い経営ができるようになるといいですし、開示された情報を受け取る方も、自分が関わっている会社のことがよくわかるようになるのはすごくいい世界観ですよね。

企業と経済の過渡期において、重要性を増すディスクロージャー業務

黒崎:

情報の透明化が加速し、また、それが信頼関係にも直結するような時代においては、ディスクロージャーの重要性はますます高まってきそうですね。

時田:

僕自身がそもそもユーザーだったこともあり、その煩雑さを知っているので、業務改善が第一フェーズ。作業する人たちをいかに楽にするかをまずは考えています。そして、僕たちが目指すその先の第二フェーズは、開示業務に関わる人たちが本当にやるべきこと― 例えば投資家とのコミュニケーションだとか今後の戦略策定だとかにしっかりと時間を使える状態です。経営に活用できるデータが集まってくると、経営者にとってはいいことしかないはずです。どこに集中して投資すべきかが見えてきて、稼ぐ力を高められます。日本企業って、利益総額は伸び続けてるのに時価総額が伸びていないんです。要は、市場からしっかりと評価されていないということ。ディスクロージャーというのは、その”評価”のためにものすごく重要な役割を果たす業務です。そこが整って、日本企業が正しく評価されるようになったら、日本全体の株式相場が上がるかもしれない。そうすると、改めて東証が注目されて、日本企業にも投資が集まって・・という未来も見えてきます。僕らのプロダクトが、日本企業の、そして日本の強さに繋がる。そこまでできたら、僕らの価値が最大限に発揮された状態と言えると思います。

黒崎:

たしかに、日本企業は情報開示やIRがあまり得意でない印象があります。もっとダイナミックな活動に落とし込んでいいのかもしれません。

時田:

日本では大企業同士の株式持合などがあったので、そうなると、投資家と対話する必要も市場に向き合う必要もなかったんですよね。銀行が日本の企業を育てて、証券市場もできたけれど、市場から大規模に資金調達する企業もまだまだ少ない。上場っていうのは本来、企業が市場と向き合って株価を上げる=社会へのグッドインパクトを最大化するという目的で行われるものだと思うんです。そこが最近、ようやく少しずつ動き始めた感覚はあります。

黒崎:

グロース市場の上場維持基準を時価総額100億円以上とするという話は直接的には関わらないかもしれませんが、東証も市場の正しいあり方を訴求する意図を持った施策を打ち始めていますよね。

時田:

グロース市場はやっぱり成長企業の市場なので、伸びていることが大前提だと思います。もし「今はハイリスクハイリターンの時期じゃない」と判断するなら、グロース市場ではなくプライム市場へ行くとか、そういう流動性はあっていいし、それが東証が本当にやりたいことなんじゃないかと思います。そういう意味でも、やっぱりディスクロージャーは大事で、今は非常に良い流れが生まれつつある過渡期なんじゃないかなと。

黒崎:

企業の取り組みを可視化して、それが正当に評価されるというサイクルは、必ず企業活動を、そして日本の経済を良くしますよね。その点、時田さんがおっしゃるとおり、ディスクロージャーへの認識もアップデートする必要があるかもしれません。

時田:

今、証券市場と向き合うときに出てくるのが、ガバナンスの話だと思っています。投資家から見たときに、企業にどういうガバナンスが敷かれているかっていう話にも大きな変化が出てくるんじゃないかと。社外取締役や社外監査役の顔触れや内部監査も非常に大事になってくると思います。海外では、内部監査ってかなり重要な登竜門的ポジションだったりするんです。会社全体が見えるので、これから重要なポジションに就かせようっていう人に内部監査を経験させるような。ガバナンスも要は会社を伸ばすために重要なポジションなので、変化が起こると思っています。このあたりはすでに議論も始まっているので、企業がしっかりと市場に向き合い始めているとみることができると思います。

粘り強く、長く続けるサービスづくりに、AIに代替されない価値がある

黒崎:

FormXが改めて重要なポジションを担おうとしていると感じます。そのポジションを全うし、時田さんのビジョンを実現する強いチームも作っていきたいですね。

時田:

AIもすごく相性がいいので、まさに今がやるべきときだと感じています。一方で、AIでは絶対に作れないようなプロダクトを作っているところも僕らの特徴かなと思います。

黒崎:

チームの特徴だとか、こういう人と一緒に働きたいといったポイントだとかはありますか?

時田:

僕らが大事にしている価値観の一つが、「オン/オフがはっきりしている」ということです。このドメインを理解するのってやっぱりすごく難しいので、粘り強さがすごく大事なんですけど、それだけだときついし、人って疲れちゃうじゃないですか。僕も会計士の試験勉強を2-3年集中してやりましたけど、やっぱりきつかった。だから、抜くところはちゃんと抜くことが大事だと思っています。下積みみたいな苦しい時期が長い分、メンバー同士の相性がよくて仲がいいこともめちゃくちゃ大事だと思います。新卒ですんなり理解できるドメインでもないので、自然と年齢層も高くなる。そうすると体力やご家庭の事情なんかもあって、もう徹夜で働けるような人ばかりじゃない。それに、今後は人がいくつもAIを持って仕事を回していく世界観になるはずなので、少数精鋭で、しっかりとオン/オフの自己管理をしながら、仲良く長く一緒にやれるのが嬉しいです。

黒崎:

価値のあるプロダクトと、その他のコモディティが明確に分岐するような時代になっていく中で、AIに代替できない価値のあるものを作り続けたいという人たちが絶対にいて、FormXはその受け皿になってくると思います。ライトじゃない世界観ですよね。

時田:

何事も軽く、すんなり済むようになってしまうと、粘り強さや根性ってなくなっていっちゃう可能性があると思っています。だからこそ、そこを絶対に失わないぞという気概のある人たちと一緒に作っていきたいです。現にうちの開発チームは「AIより俺のコードの方がイケてる」とか「AI甘いわ」とか言ったりしながら、AIに任せる箇所と自身で仕様調査して開発する箇所を見極めながら開発しています。この時代においてAIでできないことにもちゃんと取り組んでいきたい人が合う気がしてますし、一方で新しいものを柔軟に取り込んでいけるバランスも持ち合わせていることは、新しい市場を作っていく上でやっぱり大事ですよね。

黒崎:

時田さん自身の粘り強さで見出したこの市場を、これから一緒に大きくグロースさせましょう。

※こちらは、2025/10/1時点の情報です

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