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「共創」時代のコミュニケーションについて、#コーチング思考 で考えてみる

NOTES

最近、「共創」という言葉をよく見聞きします。

「競争」の時代は終わり。社会が画一的な豊かさに向かっていた時代は終わり。

デジタルの力でさまざまなことがアップデートされ、物事を多面的に認識できるようになり、たくさんの選択肢が提示され続け、急速に変化する社会の中で、私たちはお互いに多様性を認め合い、それぞれに最適なモノやコトを選択しながら、みんなが豊かに生きられる方向に向かおうという試みが「共創」だと思います。

私自身の体感としても、「共創」という概念は、リアルに私たちの考え方や行動を変えつつあると思っています。

私はこの2年ほど(この8月でちょうど2年!)、創業初期のスタートアップに投資と成長支援をするベンチャーキャピタルで働いていますが、そこから見える世界にもまさにたくさんの「共創」があります。

スタートアップ、大企業、中小企業、地方自治体、NPO・NGO、投資家など、たくさんのステークホルダーが「より豊かな世界をつくろう」「次の大きな産業をつくろう」といった目標を掲げ、連携を進めています。

実際に、オンライン/オフライン問わずたくさんの連携の場が生まれていたり、パートナーの成功=自分たちの成功であるという概念がベーシックになりつつあったり、人材などのリソースをシェアして育て合う・活用し合うといった取り組みが広まりつつあったり、実際に「共創活動」を促すサービスが生み出されたりもしています。

アナログとデジタル、オフラインとオンライン、モノ(物質)とコト(体験)、持続可能性、ソリューションとストーリー、組織と個人、一方向と双方向、集中と分散、シェアリング、効率化、循環型、アライアンス―

これらもまた世の中の大きな流れとして挙げられるキーワードですが、それらも、白か黒か/善か悪かがあるものではなく、その土台にはいずれも「共創」 ―ここでは、二項対立ではなく、融合(グラデーション)の中に最適な豊かさを見出そうというイメージ― があると思います。

そんなグラデーションの中、たくさんの選択肢の中でこれから私たちが選ぶものは、自分の想いや行動により近くフレンドリーでクリアで心地いいもの、自分の人生にとって豊かだと感じるもの。そして、それがいくらでも選べるようになる。

これまでは、需要と供給、与える側と与えられる側、作る側と使う側という構造が当たり前のように思えていたけれど、デジタルの力が、その両者の重なりをどんどん大きくしてくれる。

誰もがいつでもどちら側にも回ることができて、同じ想いを持った人と同じビジョンを実現できたらお互いにハッピー!という構造になっていく。

もともとの関係の枠を超え、同じビジョン(同じ豊かさの定義)を選んだ者同士が同じものを目指す。その土台、その前提はまさに「共創」というマインドなっていくはずです。

それはつまり、私たち自身も「自分自身にとっての本当の豊かさとは?」「そのために何を選択する?」という問いに向き合い続ける必要があるということであり、また、個と個の関係やコミュニケーションのかたちにも、豊かさを実現するための「共創」を前提としたアップデートが求められてくると思います。

そのアップデートとは、具体的にどんなものなのか。

本稿では、私がその一つのヒントになりそうだと考えている「コーチング思考」について触れながら、「共創」を目指すコミュニケーションについて書いてみたいと思います。

コーチングとの出会い

昨夏、わたしは「コーチング」というものの存在を知り、翌日にはとあるコーチングスクールの体験講座に参加していました。それから約半年のクラスに通い、この春、無事にスクールの認定コーチ試験に合格しました。(お世話になったみなさん、本当にありがとうございました🙇)

ということで、コーチとしてはまだまだ卵の中の卵なのですが、実際にコーチングを通じてたくさんの方々と交流する中では、本当にたくさんのことを学びました。とりわけ、コーチングの大前提とされる、「自己基盤」と「コーチングマインド」というコーチ自身のあり方についての考えは、個人的にとてもインパクトが大きいものでした。

シンプルに言えば、それらは、「自分を信じる」「相手を信じる」ということで、そもそも私がコーチングに興味を持ったきっかけには、やはり「共創」というキーワードがとても大きく関わっているのですが、そこに「信じる」というキーワードがとてもタイミングよくしっくりとはまった感じでした。(言葉自体は本当にシンプルですが、そういうものほど、”刺さるタイミング”というのがある気がします)

「共創」については、前述の時代的な背景のほかにも、個人的に2つの想いがありました。

1つは、仕事への想い。前述のとおり、私は今ベンチャーキャピタルで働いていますが、その中で出会うのは、スタートアップの経営チームやメンバー、DXやスタートアップとの連携を推進する大企業の方々、スタートアップを支えるパートナーさんたち、スタートアップへ転職を考えている方々などなど、多岐に亘ります。私はそうした方々と、「強いチームをつくる」というミッションのもと、人事・組織・広報PR・アイデンティティ・ブランドなど、さまざまな領域で関わらせていただいているのですが、その対話の中ではいつも「相手のことをもっと知りたい、もっと好きになりたい、そして同じビジョンの実現に向かいたい」と考えています。けれど、なんだか委縮してしまって聴きたいことがうまく聴けなかったり、貴重な時間をもらっているのだから価値提供しなければと考えすぎてしまったり、どうしたら同じビジョンの実現に具体的に向かうことができるのか?と悩むことが多々ありました。そんな中で、よりよい関係の作り方や対話のしかたがきっとあるはずだ、とずっと考えていました。

もう1つは、個人的な想い。私は昔からコミュニケーションが決して得意な方ではなく、人間関係や場づくりについてこれまでたくさん悩んできたこともあり、人が苦手だと思っていました。でも、そんな私を生かしてくれたのもまた人であって、やっぱり人が好き。だから、「一人でも多くの人が心豊かに生きられること」を願っているし、そのために自分ができることをし続けたいと考えていて、それが私の意志決定の軸になっているのではないかなと思います。そして、そこにもやっぱり、よりよい関係の作り方や対話のしかたがきっとあるはずだ、とずっと考えていました。

その上で、コーチングは、自分自身とお互いを「信じる」ことを前提とした、まさに「共創」のコミュニケーションで、

・自分を信じることで、相手との対話にオープンかつ前向きに臨むことができる
・相手を信じることで、違いを認めた上で、同じ目標に向かって対話することができる

ということを学べたと思っています。

言ってしまえば、”気の持ち方ひとつ”という話なのですが、私にとっては、対話に対してどこか臆病だった気持ちが和らぎ、前向きに臨めるようになれたこと、その先にいつでも「共創」(同じ目標を一緒に目指すパートナーであろうという想い)をイメージして今を楽しもう、ということを意識できるようになった大きなきっかけでした。

そして、きっと実際にこれからも、たくさんの対話のすべてが学びになっていくだろうと感じています。

今回はその学びについて、私なりに書いてみました。

なお、コーチングやコーチング思考(コーチングマインド)の定義には、いろいろな解釈や表現などが存在すると認識しています。その上で、本稿はあくまで私個人の解釈になりますが、もし近いことを考えたり感じたりしている方がいたら、少しでもその参考になればと思います。

コーチングとは

最近、メディアなどで話題に上ることも多くなってきたコーチングですが、個人的には、その本質は特別なスキルやテクニックではなく、「マインド」にあると思っています。本稿ではその部分を強調したいと思います。

まず、国際コーチング連盟(International Coach Federation)では、コーチングを「思考を刺激し続ける創造的なプロセスを通して、クライアントが自身の可能性を公私において最大化させるように、コーチとクライアントのパートナー関係を築くこと」と定義しています。

私自身は、『対話によって、ありたい姿を描き、その実現に向かうコミュニケーション』と考えています。(こうした定義をコーチ自身の言葉で語れることもとても大切だと学んだので、図々しくも書いてみました🙇)

要素にしてみると、

1.クライアントとコーチは、「協働関係のパートナー」である
2.クライアントは「こうありたい」「こうなりたい」という姿を具体的に描き、
3.その姿を実現するための「目標」と「プロセス」を具体的に設定し、行動する
4.コーチは「質問」によって、クライアントの「気づき」を引き出し、
5.クライアントを100%信じ、目標の実現に伴走する

このように、コーチングにおいては、思考と行動の主体はあくまでクライアントで、基本的にコーチは意見を言ったりアドバイスをしたりしません。コーチはクライアントを100%信じた上で、よく話を聴き、質問したり、気づいたことを客観的にフィードバックしたりすることで「気づき」を引き出し、クライアントが導き出した「こうありたい」という「目標」とその「プロセス」に伴走するパートナーです。

・・・・と言っても、その実践がどんなに難しいことかを私はつくづく実感しています。

自分の伝えたいことを自分のペースで話す、相手が何か考えている様子でもそれを待たずに自分の意見を伝える、相手の状況や考えを「きっとこうだろう」と予測してわざわざ確認しない(察しとは別)、自分の考えが正解だと思い込んでいる、そうして自分主体で話しているからわざわざ質問することはしない、など。

こうしたことは、言ってしまえば、普通のコミュニケーションの中に普通にあり得るパターンではないでしょうか。けれど、コーチングにおいて、これらはどれもコーチらしくない行動です。

それに、コーチングかどうかを抜きにしても、実際に自分がそうしたコミュニケーションをされたら、どうでしょうか。議論の場ではしかたのないことと割り切れるケースもあるかもしれませんが、少なくとも、相手を「パートナー」や「伴走者」とは思えないと思います。

では、そうしたコミュニケーションをよりよくする、相手とパートナーとして「共創」を目指す(コーチらしい)行動を自然に実践させるものは何かというと、「マインド」に尽きると私は思っていて、その「マインド」こそが、コーチングの特徴でもあるのです。

以下は、他のコミュニケーション方法との比較です。参考にしてみてください。

信頼関係を築く、コーチングの4要素

コーチングを成立させるためには、必要な要素が大きく4つあるとされます。

中心から、

・自己基盤
・コーチングマインド
・信頼関係
・スキル(行動)

の4つです。

最初にこの図をイメージした私は、「コミュニケーションの基本が「信頼関係」、つまり「信頼関係」が中心に来るのでは・・?」と思っていたのですが、それはとても甘い考えだったなと思います。

シンプルに言えば、
・自己基盤=自分を信じること
・コーチングマインド=相手を信じること

と言い換えることもでき、前述のとおり、これはコーチングを成立させるためのものではあるのですが、同時に、
・「信頼関係」は、自分自身と相手を信じることでつくられる
・まず自分自身と相手を信じることが、「信頼関係」をつくる

ということを改めて分解して教えてくれています。「信頼関係」が最初からあるだなんて、甘い考えでした。

コーチ自身(自分自身)の「自己基盤」=自分を信じるということ、そして「コーチングマインド」=相手を信じるということ、それらがあってはじめて、「信頼関係」が生まれ、「スキル」が発揮される(行動に表れる)ということです。

また、「信頼関係」があってこそ、私たちは「共創」に向かうことができます。

自己基盤:信頼関係は、自分自身を信じることから始まる

さて、先ほどの図の中心(=始点)にあったのが、「自己基盤」でした。

「自己基盤」とは、

1.自己理解
2.自己承認
3.自己開示

の3つで構成されています。

端的に言えば、自分自身を「知る」「肯定的に認める」「オープンにする」ということです。

一見、簡単そうに見えるかもしれません。自分のことなのだからよくわかっている、別に隠すこともない、と思うかもしれません。

ただ、目的(前提)を「信頼関係」と「共創」に置いてみるとどうでしょうか。

例えば、一口に「オープンにする」と言っても、自分のネガティブな経験をそのまま話したり(愚痴っぽかったり)、相手の反応を置き去りにして長々と話し続けたりすることは、目的と比したらどうでしょうか。

ネガティブな経験も今はこんな風に前向きに受け止めているという伝え方にしたり、自分のことを話している最中でも相手の反応を見て調節したり、「あなただったらこんなときどう感じますか?」といった質問をして相手を巻き込んだり(あなたのことももっと知りたい、という意思表示にもなる)、というように言動が変わってくるのではないでしょうか。

繰り返しになりますが、「信頼関係」や「共創」を目的とした「自己基盤」 ―自分をどのように肯定的に認識し、どのように相手に見せるか/オープンにすることを前提に、どのように自分と折り合いをつけるか― という前提で考えてみましょう。

コーチングマインド:「共創」を前提に、相手を100%信じる

「自己基盤」が自分自身との対話(分かち合い)だったのに対して、「コーチングマインド」は相手との対話に向かうための心構えです。相手に求めることではなく、あくまでこれも自分自身の心構えです。

コーチングマインドも、大きく3つの要素から構成されます。

1.相手の中に答えがある
2.相手の言葉を受け止める
3.相手と自分はパートナーである

ここには、相手との「信頼関係」や「共創」が目的(前提)という点がかなり具体的に盛り込まれていて、これらを意識することで、よりリアルに行動が変わると思います。

具体的には、「待つ」ことや「質問する」ことができます。

これらは実際のコーチングの「スキル」でもあります。相手のことを知るために、相手の気づきを促すために「質問する」。相手のことをパートナーだと信じているし、どんなことでも受け止める心構えがあるから、それができます。そして、なかなか言葉が出てこなかったとしても、こちらから言葉を重ねるのではなく「ゆっくりと考えてください」と伝えて「待つ」。相手の中に答えがあると信じているから、それができます。

つまり、「自己基盤」の上にこの「コーチングマインド」をしっかりと持っていれば、図のとおり、まさに自然とその上に「スキル」が発揮される(行動が生まれる)ということなのです。

ちなみに、「相手の言葉を受け止める」が、「受け入れる」ではないことにも理由があります。

「受け入れる」とは、相手の言葉や行いを自分の中に「入れる」こと。そして、自分の中にあるものと比較したりジャッジしたりすることを指します。一方で「受け止める」とは、「入れない」ということ。胸の手前で「止める」ことで、比較したりジャッジしたりせず、あくまで相手をそのまま「認める」ということです。この「認める」も、コーチングの大切な「スキル」の一つです。

例えば、「受け入れる」と、相手の言葉への反応は「そうなんだ、でもそれは私の経験からすると××だよ」というようなイメージ。「受け止める」と、「そうなんだ、それを話しているあなたはとても楽しそうに見えるね」というようなイメージです。

信頼関係とスキル:関係とマインドが変わると、行動が変わる

ここまでの
・自己基盤=自分を信じること
・コーチングマインド=相手を信じること

の実践(意識すること)で、「信頼関係」が大きく近づいてきました。その結果として自然と発揮される「スキル(行動)」を続けることによって、その関係をきっと本物にしましょう!

すでに触れてきましたが、「聴く」「認める」「質問する」などが、コーチングの具体的な「スキル」に含まれます。

ただ、本稿で私が伝えたいのはあくまで、「自己基盤」と「コーチングマインド」をしっかりと持っていれば、「信頼関係」が生まれ、自然と「スキル」が発揮される(行動が生まれる)ということなので、スキルについての詳細は割愛します。

「マインド」というのは前提のようであって、実は「目的」と近いものと言えるかもしれません。「共創」を目的として、そのためにどうしたらいいのか?どういうコミュニケーションをすれば目的の実現に近づくのか?を考えて行動に落とし込んでいくことが、「マインドが変われば行動が変わる」の本当の意味なのかもしれません。

ここまで書いてきて、そんなことを思いました。

もちろん、コミュニケーションの目的によっては、この「共創」を目的としたコーチング的なコミュニケーションが必ずしも適切でないこともあります。

例えば、相手が心に何らかの不安や心配を抱えていて正常な判断ができない可能性がある場合は、その回復を目的としたカウンセリングが適切かもしれませんし、相手が新入生や新入社員だった場合などは、まずは基礎知識をインプットすることを目的としたティーチングが必要なケースもあると思います。

ただ、「自己基盤」も「コーチングマインド」も、自分を信じ、相手を信じ、「信頼関係」を作るための一つの方法なのだとしたら、必ずしもコーチングというコミュニケーションだけに適用されるものと考えるのではなく、いつでも意識しておいて損はないことではないかと思います。

例えば、一つのディスカッションの場においても、「自己基盤」や「コーチングマインド」を意識していなかったら、相手のことを論破しよう/誘導しよう/押し通そう、というコミュニケーションになる可能性があります。一方で、「コーチングマインド」を意識していたら、お互いの目的を共有しよう/一緒にその目的を果たすにはどうすればいいかを考えよう/自分のことをもっと開示しよう/相手のことをもっと知りたいから質問しよう、というコミュニケーションになるのではないでしょうか。

また、そうなると自然と、うなずきや相槌で理解を示そう/伝わりやすいシンプルな言葉で話そう/強調したいことは目を見てゆっくりと話そう、という行動にもなるのではないでしょうか。

最初から「スキル」ありきでコミュニケーションに臨むと、こうした一貫性は失われてしまうのではないかと思います。そうなれば、「信頼関係」や「共創」も実現できないのではないでしょうか。

強いチーム:信頼関係でつながる組織

さて、ここまで「個」の「マインド」について書いてきましたが、私は常々、私のミッションである「強いチームをつくる」ことについても考えています。

「強いチーム」とは何でしょうか?

以前に、「広義の「チーム」を意識できている状態/PR思考が機能している状態」と、機能面に触れて書いたことがありますが、やはり個人的には、

・チームとは、どこまでいっても「個」の集まりである
・すなわち、強い「個」の集まりが「強いチーム」である

この考えに辿り着きます。成長企業の組織論や組織モデル、カルチャーやインセンティブ、マネジメント手法や人事施策など、そういうものにわくわくしながらも、私はやっぱり「個」の存在を見過ごせないのです。

その「個」とは言うまでもなく、あなた自身であり、わたし自身。自分の人生の時間を費やすものに、私たちは本当に無関心でいられるでしょうか。

では、強い「個」とは何でしょうか?

それは、まさにここまで書いてきたとおり、

・「信頼関係」「共創」を目的としたマインドを持っていること

だと私は思っています。これは必ずしも、知識や経験、スキルなどだけでは定義できないこと。自分の意見が通りさえすればいい/周りはただ自分の指示に従っていればいいとチームを強制的にコントロールしようとしたり、自分はただ指示に従っていればいいとチームについて考えることを放棄してしまったりするのではなく、

自分を知っていて、肯定的に認めていて、オープンに開示する準備ができている、また、相手のことを信じていて、どんなことでも受け止める覚悟があり、対話する準備ができている。

そういうものがある人のことだと思っています。

この選択肢の多い時代において、組織やチームで何かをするというのも、いわばその選択肢の一つ。手段の一つに過ぎません。だから、一人で何かをするという選択も当然あるでしょう。

一方で、チームには、一人では実現できない大きなことを成し遂げる力があることも事実です。目的を同じくした「個」同士が集まることで、実現の確度もスピードも高まります。また、自分を大きく成長させてくれる、そんな出会いがある可能性も高いはずです。

そうしたことを踏まえて、チームであること/チームで何かに挑むことを選択したからには、その時間も当然、人生を心豊かにするものであるべき。誰もがその当事者(自分でその場や時間を作れる人)になれたら、きっと素敵です。

「組織は無数の二人の関わりの集積でできている」というのは、やはりとあるコーチングスクールの方の言葉でした。

「信頼関係」「共創」を目的としたマインドを持った強い「個」と、そうした「個」が集まる「強いチーム」。

そんな豊かな人を一人でも多く、そんな豊かなチームを一つでも多く実現させていくのが、私の目標です。

まとめ:どのように「マインド」を意識していくか

ここまで、

●デジタルの力でさまざまなことがアップデートされ、物事を多面的に認識できるようになり、たくさんの選択肢が提示され続け、急速に変化する社会の中で、私たちはお互いに多様性を認め合い、それぞれに最適なモノやコトを選択しながら、みんなが豊かに生きられる方向に向かおうという試み=「共創」に向かっている

●二項対立が融合するグラデーションの中では、もともとの関係の枠を超え、同じもの(同じ豊かさの定義)を選んだ者同士が同じものを目指す。その土台、その前提は、まさに「共創」というマインドになっていく

●その中では、私たち自身も「自分にとっての本当の豊かさとは?」「そのために何を選択する?」という問いに向き合い続ける必要があり、また、個と個の関係やコミュニケーションのかたちにも、豊かさを実現するための「共創」を前提としたアップデートが求められてくる

●「信頼関係」は、自分自身と相手を信じることでつくられる。まず自分自身と相手を信じることが、「信頼関係」をつくる。その「信頼関係」の上に「共創」が成り立つ

●コーチングは、「信頼関係」を目指す一つのコミュニケーションの手法として参照できる。「自己基盤」「コーチングマインド」というマインドを前提に、それらがあってはじめて「信頼関係」が生まれ、その上に自然と「スキル(行動)」が発揮されるというもの ※本稿では「スキル」以外を強調

●「自己基盤」とは、自分を知っていて、肯定的に認め、オープンに開示する準備ができていること。「コーチングマインド」とは、相手のことを信じていて、どんなことでも受け止める覚悟があり、対話する準備ができていること。それらがあれば、自然と「スキル」が発揮される(行動が変わる)

といったことを書いてきました。

今回テーマにした「共創」と、コーチングを参照した「マインド」。これらはきっと、私たちがそれぞれを認め合い、それぞれに豊かさを目指すためのヒントになると、私は思っています。

では、それを意識し続けるためには何ができそうか?

ここでは、いろいろな方の言葉や実際の行動を私なりに参照させていただいて、いくつかのアクションプランについて記載してみたいと思います。

1.理想像をイメージして、真似する

自分から見て、「信頼できる人」「自己基盤がある人」「コーチングマインドを感じる人」をイメージしてみます。そしてそのとき、その人はどんな言動をしていて、自分はどんな気持ち・どんな言動になっているかを考えて、それを真似してみます。しぐさだけでもOK。私も、「本音を引き出してくれる人」「自分を尊重してくれていると感じる人」などをイメージして、なぜ話しやすいのか?なぜ尊重されていると感じるのか?に注意を払って観察したり思い出したりし、その要素を分解して少しずつ真似することを心がけています。

2.自分の過去をストーリーにする

私たちは日々たくさんの意志決定をしています。ランチのメニューや休日の過ごし方から、就職や転職、お引越しなど、本当にいろいろです。それらを繋げて考えてみます。「××だから〇〇した」「〇〇だったから△△した」というふうに。

とある経営者の方が「人の意志決定はすべてその人の過去の意志決定の延長線上にある」というお話をされていて、とても強く印象に残っています。幼少期はどんな子どもだったか、どんな理由で進学先や就職/転職先を決めたか、なぜそのタイミングだったか、どんなときに前向きになって、どんなときに落ち込んだか、その結果どんな行動に出たかなど、その経営者の方は同じチームの仲間と何時間もそういった話をするそうです。

そこにはきっと自分自身、あなた自身の固有の理由があるはず。つまり、自分の過去を知ることで、今(なぜこうしているのか)や未来(こうありたい)を知ることができるのではないでしょうか。そしてそれを知ることが、自己開示のきっかけになるのではないでしょうか。

3.感情を仮説に替え、行動目標に替える
コミュニケーションは、常にうまくいくことばかりとは限りません。難しい議論もありますし、苦手な相手もいます。ムカムカしたり悲しくなったり、それを態度や言動に出してしまったり、ぐちぐちしたくなることもたくさんあります(ありますよね)。

そんなときは、お酒を飲んで忘れる・・もたまにはいいかもしれませんが、感情を感情のままに終わらせてしまうと、結局は心の中にトゲのように残り続けてしまうこともある気がします。それが続くと、コミュニケーションがうまくいかない相手のことを苦手だ、嫌いだと思ってしまったり。そこで、感情を仮説(××だから私はそう感じたのだろう/××が私にそう感じさせたのだろう)に替え、行動目標(次はこうしよう)に替えることで、少し頭の中を整理できますし、同時に自分と向き合うきっかけにもなります。

過程としては、こんなイメージ・・:
・あー腹が立つMTGだった!
・なぜあんなに腹が立った?
 ⇒私が事前共有していた情報が伝わっていなかったようだ(メールを見ていない?)
 ⇒それで、前提の確認や質問が割り込んできて、想定どおりに話し合いが進まなかった
・本当はどうしたかった?
 ⇒前提の共通認識がある上で、××と××について発展的に議論を深めたかった
 ⇒それでこのプロジェクトは大きく前進したはず。成功イメージを一緒に描きたかった
・そのために改善点はなかった?
 ⇒(ちゃんと読んでよ!と思いつつも)もしかして忙しかったのかな・・
 ⇒メールが長かったかもしれない・・送ってから時間が経ちすぎていたかもしれない・・
・次のMTGの対策って何かできる?
 ⇒次回は直前にもリマインドを送ろう、MTGの始めにも改めて前提の確認をしよう

ポイントは、自分自身に「なぜ」を問い続け、感情の根っこまで遡ることと、「次はどうする?」と次はそうならないための具体的な行動目標に着地させることです。

おまけ:セルフコーチング

上記の実践は、「セルフコーチング」にもなります。

コーチングには、厳密には、

●目標達成型
●課題解決型

という2つのアプローチのしかたがあります。前者は、初めに「こうありたい」を描いて、そこから「プロセス」「行動目標」に落としていくというもの。後者は、初めに「課題/問題」があって、それを「こうありたい」に描き直し、「プロセス」「行動目標」に落としていくというもの。

どちらかといえば、上記の「1.理想像をイメージする」は前者、「3.感情を仮説に替え~」で挙げた例は後者になると思います。

ただしいずれも「こうありたい」を描くという点では変わりません。「課題解決型」では、「課題」→「課題解決の行動目標」という順序になってしまいがちですが、「課題」を「こうありたい」に描き直すことが必要です。

コーチングとは、「目標の実現をイメージして、わくわくするもの」であるべきだからです。

最後に:「共創」と、豊かさ

たくさんの変化と、そのグラデーションの中、私たちは本当にたくさんの情報に触れます。そして、何をするか、何に触れるかなど、たくさんの意志決定をします。

「私は何が好き?」「どんなところを目指して、どんな道を歩く?」「何にわくわくする?」「私にとっての本当の豊かさとは?」「そのために何を選択する?」「何を望む?」

こんな問いを立てる機会が、私自身、格段に多くなったと感じています。

答えの出るもの/出ないもの、わかるもの/わからないもの、受け入れるもの/受け入れがたいもの・・いろいろありますが、自分自身との付き合いは一生続きます。長い目で向き合い続けていければいいかなと思っています。

その中で、今回ご紹介したコーチングというコミュニケーションは、私が選んだものの一つで、今はお気に入りの一つになりました。

人と「共創」するという一つの選択肢、その豊かさのヒントをくれたからです。その想いもまたこうして共有することで、私なりの「共創」を目指していけたらいいなと思っています。

もちろんうまくいかないこともたくさんあると思いますが、それでも、これからもずっとそれぞれの豊かさを目指して、問いと分かち合いの時代を一緒に楽しみましょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

筆者

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