
強くしなやかな組織を作るためにはまず“人のエネルギー”を守ることから
ジェネシア・ベンチャーズ x With Midwifeが語る、スタートアップの“ケア戦略”
スタートアップにおける初期フェーズでは、「プロダクト」「採用」「資金調達」など、仕組みを整えることが最優先になり、そこに存在する「人」へのケア、すなわちメンタルケアや心理的安全性の整備は“余裕ができたら取り組むもの”として後回しになりがちです。
しかし、積み重なるハードシングスをくぐり抜け続ける組織に必要なのは、攻めのスピードを落とさず、折れないための“守りの仕組み”です。そこで重要になるのが、事業成長を加速させるための「戦略的なケア」。最近では、戦略的休養というワードもトレンドになっています。
とはいえ、経営者自身がメンバーのコンディション掌握・関与することは現実的には難しい。そこで、起業家が時間や意識を割かなくても、専門家がチームのコンディションを支え、事業が進む“土台”を整えてくれる。この〈負担ゼロの伴走〉を手にいれることこそ、多忙を極めるシード期の起業家やスタートアップが、強くしなやかな組織をつくるための――まだ知られていない、本当の「秘訣」であり価値ではないかとジェネシア・ベンチャーズは考えています。
ハードシングスが前提のスタートアップの世界で、「起業家とチームをどうケアするのか」「ケアをどう“戦略”として組み込むのか」。ベンチャーキャピタルと医療専門職がタッグを組んで実現させる新しい組織づくりの姿について、「THE CARE」を運営する With Midwife代表の岸畑さんとジェネシア・ベンチャーズの伊藤が対話しました。
- 編集:ジェネシア・ベンチャーズ Community Manager 柏崎 千佳

「THE CARE」 は、人事やキャリア支援の知識をもつ助産師・看護師・保健師資格併有者が専任チームを組成し、オンラインでの相談窓口やキャリア・メンタルのチェックを通じて、個人と組織の両方を支える仕組みを提供しています。ジェネシア・ベンチャーズではこの「THE CARE」のサービスを導入しており、投資先企業の起業家・従業員はもちろん、2親等以内の家族も”無料”で利用できる体制を整えています。LINEチャットを使って24時間365日、匿名で相談できる点も大きな特徴です。

岸畑:まず最初に自己紹介から始めましょうか。With Midwife代表の岸畑聖月と申します。私たちは2019年に創業した大阪を拠点とするスタートアップで、メインの事業はヘルスケアのサービス、ライフサポートのサービスの提供です。特に、法人向けの従業員支援提供に注力しています。私自身は看護師と保健師と助産師の資格を持つ専門家です。よろしくお願いします。ぜひ伊藤さんについても聞かせてください。
伊藤:一社目が証券会社で、1年半くらい勤めました。すごくハードと言われている投資銀行部門に入社しましたが、心身ともに疲れてしまって、もう少しゆっくり働けるアセットマネジメント系の会社に入りました。3社目がジェネシア・ベンチャーズです。今もジェネシアに在籍しているメンバーが大学の友人で、彼に紹介してもらったことがきっかけでした。
岸畑:なぜファーストキャリアを投資銀行から始めたんですか?
伊藤:一番最初に一番ハードに働く場所に飛び込んでみたい、という思いがありました(笑)。法学部にいたので周りは弁護士や官僚を目指す人も多かったのですが、私は民間企業の方が性に合うと思いました。当時、民間の中でも特に大変なのは外資系のコンサルティング会社や、証券会社の中でも投資銀行部門と言われていたので、まずその二つを受けて最初に内定をいただいた企業に就職しました。
岸畑:ストイックにキャリアを積みたかったんですね。
伊藤:最初に一番辛いことを経験したらそこで一気に学べるかなと期待したんです。
岸畑:まさにスタートアップ思考ですね。私が今も働いている大阪市内の総合病院は関西エリアで一番出産の件数が多く、スタッフもたくさん在籍していて戦場のような病院です。「お産来るよ」と声がかかったときに誰が一番早く手を挙げるかで経験値が変わってくると言われています。私もそこにメラメラしてます(笑)すごく似てるなぁと思いながら聞いていたんですが、これまでに心がポキッと折れた経験などはありますか?
伊藤:まさに投資銀行で働いていた時に経験しました。やはりハードだったので、明け方まで働いて毎日3時間睡眠みたいな生活を送っていました。そうすると、目が覚めてるけど頭の中は働いていないとか、言ってることと考えてることが一致しない、という状態に陥ってしまったんです。
岸畑:なるほど。もう完全に睡眠不足からの脳疲労のような形になっていたということですよね。かなり体をこき使っていたんですね。
伊藤:それで転職をしようと思いました。身体的にも辛かったし、求められる仕事の質がすごく高かったので、 それに一生懸命応えようとしている中でどんどん心の豊かさが失われていくような感覚があり、ここで1回、自分の限界を知りました。
走り続けて気づいたら限界を越えていた──
攻めだけでなく“守り”を組み込む必要性を知った。
ーコロナ禍の孤独と、「THE CARE」との出会いー
岸畑:なるほど。ハードワークも経験しながら、ハードすぎるとトラブルも起きること、そしてバランスをちゃんと取ることが、長距離を走るような仕事の中ではすごく大事なことと実際に感じられたからこそ、今回THE CAREに関心を持っていただいたんですね。
ジェネシア・ベンチャーズで「THE CARE」を導入いただいてから1年以上経ちましたね!!昨今は社会背景的にもスタートアップ界隈のハラスメントや、CEOのメンタルブレイクなども話題になり、サポートをしていきたいと考えられたのでご導入いただけたかなと思いますが、改めて「THE CARE」をどのようなサービスとして捉えていただいていますか?
伊藤:投資先の起業家はもちろん、従業員の方も含めて守ってくれるサービスですよね。ベンチャーキャピタルの手が届く範囲はどうしても限定があるので、投資先の皆さん全員に届くような優しさを提供できる点が非常に魅力的だと感じています。
「THE CARE」と出会う前にすでに別のサービスを利用して外部相談窓口を設けていました。コロナ禍で、ジェネシアのメンバーや投資先の起業家や従業員の方々のメンタルヘルスが気になったことがきっかけでした。
当時は、閉じこもって仕事をして、一人暮らしだと仕事以外で誰かと会話することもなく一日が終わっていく、というような生活リズムが続くとどうしても憂鬱になりがちかなと感じていました。
私の母が内科医で企業の産業医もしているので、相談したところ、「社内じゃなくても社外に相談窓口を設けられるサービスがあるよ」と教えてもらい、まずは一般的な外部相談窓口先と契約をしました。電話相談窓口を設けたものの、周知することが難しく、利用してくれた方もごくわずかでした。
岸畑:何事も広げるということは難しいですし、このようなサポートは、自分が必要としていないタイミングだと、 存在を認知してもらうのが更に難しいですよね。
伊藤:そうなんです。毎月の相談件数は一件あるかないか。たくさんあることがいいわけではないですが、おそらく悩んでいる方は実際はもう少しいるはずで、どうしたらもっと身近に感じてもらえるかなと悩んでいた時に、LINEでも相談できる「THE CARE」を知りました。LINEは電話と比べてとても身近な存在ですし、かつWith Midwifeさんもスタートアップだからこその相性の良さもあると思い、導入に至りました。
岸畑:きっかけはコロナ禍ということでしたが、一般的にスタートアップは、やはりハードシングスが多く、メンタルサポートを必要としていると感じますか?
伊藤:そう思います。どのポジションにいるかによっても辛さは異なると思いますが、例えば経営陣であれば、事業成長へのコミットメントというプレッシャーを常に感じているはずです。みんなが注目するポジションで、社内外からプレッシャーがかかる中で同じ目線感で本音で相談できる人がいないため孤独を感じるというシーンはたくさんあると思います。
また従業員レベルでも、今後この会社がどうなっていくのかが不透明だったり、周りがすごくモチベーション高くハードワークをこなしている中で、自分だけが取り残されているように感じる、という不安があったりするのではないでしょうか。

”本来、ウェルビーイングや健康の充足感は、個人、家族、そして社会という優先順位で考えるべきだと思うんです”
だからこそ「個」に立ち返る機会を
岸畑:私も身に覚えがありますが、 CEOやCXOレベル、スタートアップではそのように感じる人が多いと思います。対話する相手が顧客や社会で、さらにはそこを良くしたいという想いが強いんですよね。本来はそういったウェルビーングや、 健康の充足感の優先順位は個人がまず一番、次に家族、そして社会という順番になるべきですが、自分を犠牲にすることが続いてしまうことも多いですよね。そういう時に「個」に立ち返る機会はすごく重要だと思います。
導入時は、「THE CARE」のどんなところに期待を持たれていたのですか?
伊藤:導入時は、他の人には言えない心のつぶやきの受け皿になるといいなと思っていました。 スマホだと移動中でも使えるし、オフィスの中からでも相談できるので、身近な相談窓口として浸透することを期待していました。
岸畑:その後サービスインしてみて、これまで使われた EAP (従業員支援プロブラム)とどのような違いを感じましたか?一般的には、相談対応した人と相談以外で話をすることはあまりないですが、「THE CARE」は実際に対応している人から毎月フィードバックを会社が得られるのが特徴ですよね。松吉(チームジェネシア専属サポーター:相談対応を担う医療専門家)や福岡(CS担当者)とのコミュニケーションはいかがでしょうか?
伊藤:ジェネシアと投資先のことを深く理解したい、と思ってくださっている姿勢をいつも感じています。 毎月の定例ミーティングでは匿名でありながらも、今月はこういう悩みの傾向があって、背景はこんな理由かな、といったディスカッションをさせてもらっています。
ジェネシアの他メンバーも順番にその定例ディスカッションに参加してますが、そのメンバーも松吉さんや福岡さんと話すだけで癒されているんですよ(笑)。日頃の仕事でのロジカルな会話からちょっと離れて、自分の気持ちや感情に思いを馳せるディスカッションの時間になっているのかなと。自分の相談をしているわけでもないのに皆がホッとできるので、相談をした皆さんはきっとそれ以上に安らぎを得ているのではないでしょうか。
岸畑:私たちは、ありがたいお仕事をさせてもらっているんですよね。日々、相談くださる方のことを100%考えてケアをし尽くすことが、私たちにはできるんです。でも、投資家という立場で投資先とのコミュニケーションをとることを考えると、優しいだけでは成立しませんよね。本心とは異なる中で激励することもあると思います。だからこそ、ジェネシアのみなさまにも月に1回でも自分の中の感情に立ち返る時間を持っていただき、すこしホッとしていただいて、自分も投資先起業家みなさまにもさらにケアを届けていただけると嬉しいです。
伊藤さんは、これまで助産師など医療専門職と接することはありましたか?
伊藤:3人子供がいて、毎回病院で出産をしているので、助産師さんにはお世話になりました。1人目と2人目は順調に出産をしたんですが、3人目の時にすごく悩むことがあったんです。でも誰に相談すればいいか分からず、家族にも友人にも言いにくく、モヤモヤした気持ちを抱えている時期がありました。
そこで助産師さんに「辛いから吐露させてほしい」と言ったら、初対面でもたくさん話を聞いてくれたんです。 こうするべきだとか、こっちがいいよとか言わずに、ただただ話を聞いてくれて、自分の中でどうするべきか、気持ちの整理ができたんです。
そんなことがあり、助産師さんの傾聴スキルをとても信頼していました。「THE CARE」でも助産師さんに相談できるので、出産に関係なくあらゆる悩み事について、話を聞いてくれたり、その人自身と向き合って考えてくれるスタンスが「THE CARE」にもあるんじゃないかって思ったんです。
岸畑:ありがとうございます。私たちの組織には看護師や助産師、保健師の資格を併用しているメンバーが揃ってるんですが、医療専門家でもそれぞれ強みが違うんですよ。
例えば卒煙外来に勤めていたから、タバコや生活習慣、依存症に強い方もいたり、海外に住んでたのでインドネシア語を話せます、など。歯科に勤めていた方もいます。チームジェネシアを担当させていただいている松吉は、コーチングの専門スキルも持っているので、相談をして、対話していただく中で自分を掘り下げるきっかけにもなると思いますよ。

VCを起点とした“ケアのHUB”作り──
福利厚生が整わないスタートアップにも届く、新しいセーフティネットの形
伊藤:ベンチャーキャピタルと契約し、サービス提供対象者が投資先の従業員というスキームは初めてだったと思うのですが、初めてのスキームを進める上で、判断に迷った点や、実行にあたってのハードシングスはありましたか?
岸畑:私たちもスタートアップなので、チャンスがあれば”やらない”という選択肢は”ない”です(笑)。
実は、小規模な組織では「THE CARE」の強みを十分に活かしきれない側面もあります。特に、コスト面や匿名性への配慮がより重要になります。「THE CARE」は、企業の状況や組織の文脈を理解したうえでフィードバックを行う点が強みですが、例えば5人ほどの小規模チームでは、相談内容から個人が特定されてしまう可能性があります。そのため、100人規模以上の組織位から、サービスの価値が発揮されやすいと考えています。
一方で、中小企業やスタートアップでは、十分な福利厚生が整っていない環境で働いている方も少なくありません。そうした状況の中で「THE CARE」をどう接続するかを考えたとき、投資家を一つのハブとしてスタートアップを支援する仕組みは、非常に画期的でした。実は今回のご縁をきっかけに、今年度は自治体さんとも動いていく予定なんです。

伊藤:ちなみに他の企業で寄せられるお悩みとチームジェネシアから寄せられる悩み事の質は異なりますか?
岸畑:人間関係のお悩みは組織が密な分、多いと思います。また役員だけの組織や、業務委託もスタートアップには多く、労働時間をコントロールする制度もなければ、人もいないという状況なので、ハードワーク故のご相談は スタートアップの皆さんからは多いですね。
スタートアップや中小企業では、制度が未整備だったり、ガバナンスが効きづらい環境だったり、また評価制度もしっかり作られてないので、どこまで頑張れば良いのか分かりづらく、 走り続けて気づいたら力尽きてしまうこともあります。なのでメンテナンス目的で定期的に最近の働き方を相談していただいて、振り返る機会にしていただけると嬉しいです。
チームジェネシアでは現在100名ぐらいの方がご登録をしてくださっていますが、まだ使ったことがない方に対して、どのように使ってほしいですか?
伊藤:特に小さい組織だと、社内の誰にも相談しにくいことがあると思いますが、外部の相談窓口だからこそ本音をポロッと言えることってあると思うんです。
普段、誰かに相談してもその人に自分の悩みを理解してもらえなかった時のショックってありますよね。「大丈夫よ」とあしらわれちゃったり。そんな時は余計に悩んだり、孤独になったりしがちですよね。「THE CARE」のチームはきちんと自分の悩みに向き合ってくれるので、安心して心を預けてほしいです。信頼できるチームです。
初めての相談はハードルが高いかもしれませんが、「最近疲れ気味です。」とか、「悲しいことがあったけどどうすれば良いかわかりません。」といった一言でいいんです。その一言目を発信することによって、「THE CARE」の皆さんは、想いをちゃんと受け止めてくれるので 、ぜひ頼ってもらいたいです。
岸畑:ありがとうございます。ずっと走ってるからこそ、急に落ちちゃう人も多いですよね。例えば、決算月には「THE CARE」でメンタルチェックを1回受ける、といったルールにするとか、健康診断のように、定期的にチェックアップしていくと、気づかないエラーに気づけます。不調時の相談だけでなく、メンテナンスと予防のための仕組みとしても、ぜひ活用してもらいたいです。

伊藤:キャリア診断(「THE CARE」で提供しているチェックリスト)も上司との1on1の前に使うととても良いですよね。「最近どう?」とその場で聞かれて答えに困ることもあると思いますが、キャリア診断で事前にセルフチェックすると、今月はこれがちょっと気になっ てるのかなとか、これを話してみよう、というように頭の整理になります。
岸畑:何よりも起業家、トップの方がメンタルブレイクを起こしたり、体調を崩すと組織へのインパクトも大きいですし 、投資家にとってもリスクになってしまいますよね。まずは起業家自身に1回使ってみていただきたいです。
AIにはできない、“人の温度”で寄り添うケア
”私たちって、本当は完璧な答えが欲しいんじゃなくて、 寄り添ってくれる、横に座ってハグしてくれる存在が欲しいのだと思います。”
岸畑:1年間使ってみて、「THE CARE」の強みをどう感じていますか?
伊藤:相談ができることはもちろんですが、相談担当者の顔と雰囲気が伝わるのは、「THE CARE」ならではだと思っています。松吉さんから「最近私はこうですよ」とか「私が住んでいるシドニーは寒くなりましたよ」など、メッセージもいただけるんです。人間感があるのはすごく素敵です。
私たちって、本当は悩みに対して完璧な答えが欲しいのではなく、 寄り添ってくれる、横に座ってハグしてくれる存在が欲しいのだと思います。それはAIにはできませんよね。オンラインではあるけれども、松吉さんという、自分の悩みに時間を割いて返してくれる人がいるのは、温かさを感じます。さらにはWith Midwife内で悩み事に対してどのようにアプローチをするべきか話し合いをした上で返していただくこともあると聞いています。
岸畑:それぞれの悩みにしっかりと向き合う、ということは1番大事にしたい点なので、価値として受け取っていただいていて、非常に嬉しいです 。価値の話で言うと、他社さんからもジェネシアのこのような取り組みが評価される場面があったと聞きました。
伊藤:そうですね、「THE CARE」の取り組みについて社外の方に話をすると、そこまでベンチャーキャピタル負担でやるんですかって驚かれることもあります。ハラスメントポリシーの策定とハラスメント相談窓口を設置するところまでは浸透しましたが、このような日常的なケアを含めた相談窓口の提供はまだ他のファンドでは聞きません。キャピタリストが個別にサポートするケースが殆どで、包括的サポートは今のところまだまだ浸透していないようです。
岸畑:With Midwifeには現在13名の社員がいますが、たった13名でもそれぞれ悩んでることがあり、妊娠したスタッフ、流産したスタッフ、介護や育児が始まったり、お父様が亡くなったスタッフもいて、この1年間だけでも様々なことが起きました。
ありがたいことに、今は社員が一定的な心理的安全性を感じていて、身の回りの変化を伝えてくれるので、私たちはみんながそういった悩みや不安、変化を抱えながら働いてるのだと理解できますが、職場でそこまで話せるのは珍しいと思います。だからこそ、安心して話せる場所で吐き出してもらえるといいなと思っていて、こういったサポートがベンチャーキャピタルでも広がることを願っています。
伊藤:ベンチャーキャピタルとの取り組みを広げるにあたり、「THE CARE」だからこそ提供できるサービスのポイントは何ですか?
岸畑:個社へのフォーカスも非常に重要だと思いますが、特定の課題に対するソリューションをベンチャーキャピタルとともに設計し、投資先全体に展開できる点はならではだと思います。「THE CARE」は、個別の伴走支援から得られた相談データを組織へフィードバックし、次のアクションにつなげていくことで、大きなインパクトを生み出せるソリューションの一つだと思っています。
また、どのような相談が寄せられているかを組織にフィードバックできる点に加えて、私たち自身も同じスタートアップとして、皆さんと同じ立場にいることが大きいと思っています。
綺麗ごとだけでは済まない現実を理解しているからこそ、他の医療専門家による相談窓口とは異なる視点でのアドバイスや関わりができると感じています。
伊藤:様々なベンチャーキャピタルの投資先からの相談が吸い上げられると、 結果的にデータを持てるので、どういうところに注力した方がいいですよ、といったアドバイスを ベンチャーキャピタル側にもできますよね。100社、200社というスタートアップの利用のデータに基づく、スタートアップ従業員が必要としているケアについてアドバイスを受け取れたら、大変助かると思います。
岸畑:おっしゃる通りです。今後もスタートアップについての課題を吸い上げて、ベンチャーキャピタルの皆さんと共に課題を解決していくような取り組みをしていきたいです。
伊藤:スタートアップで働く皆さんが、毎朝起きて「今日も頑張ろう」と思うのか、あるいは「また朝になってしまった」と思うのか、その積み重ねで事業成長スピードも変わっていきます。皆さんのエネルギーがポジティブだとスタートアップとしても大きく成長するし、それがひいては社会の成長に繋がるので、他のベンチャーキャピタルにもぜひ活用していただきたいです。
岸畑:ぜひぜひ色々なベンチャーキャピタルと連携していきたいです!
今回のジェネシアさんとの取り組みは、異なる事業者を束ねていく初めての挑戦でもあり、サービスが届きにくいと感じる場面もありました。ですので、ジェネシアの皆さんと試行錯誤しながら一緒に進めていけたのは、凄くありがたかったです。

社会を良くしたいなら、まず自分とすぐそばのチームを“ケアする”ことから──その積み重ねが社会課題の解決につながる
岸畑:最後に、これから共に描いていきたい未来、そしてベンチャーキャピタルとして今後取り組んでいきたいケア領域の課題について教えてください。
伊藤:私がジェネシア・ベンチャーズに入社して最初に感じたのが、起業家の皆さんの目がすごくキラキラしてることでした。 事業について熱く語り、社会の負を解決しようと全力で走っている人たちに感動して、惚れ込んで、そこからずっと今までここにいます。
ベンチャーキャピタルとしては一番に起業家を応援したい、そして、スタートアップ全体を応援したいと思っています。その中で、事業の壁打ちだけでなく、スタートアップの皆さん自身や、家族の皆さんの「ケア」まではできていないという課題が残っています。社会と向き合う時に、自分と向き合う時間がなくなってしまったり、あるいはそのチーム内、つまり従業員の皆さんと向き合う時間が減ってしまうと元も子もないですよね。
マザーテレサがノーベル平和賞を受賞した時のスピーチで「世界平和をもたらしたいのであれば、まず家族を愛しなさい」という趣旨の言葉があるんですが、それとちょっと似てる部分あるかなと思います。
社会を良くしようとするために必死に頑張るのであれば、まずは自分のこと、そして自分のすぐ側にいるチームのことを愛すること。愛すると言うとちょっと大げさかもしれませんが、ケアをして、皆さんが元気よくハッピーに過ごせることに注力することによって、それが最終的には社会課題を解決することにつながると思っています。
起業家の皆さんは、自分は強いし優秀でパワーもあるしポジティブだから大丈夫と思っていたとしても、1回は試してみていただきたいです。人間誰しも、疲れる時や弱気になってしまう時はあると思います。そんな時、気軽に頼れる存在として、従業員の皆さんにも「THE CARE」を紹介し、「困ったら頼ってね」と広めてもらえたら嬉しいです。
岸畑:最初に「個」があって「家族」があって「社会」が あるというお話をさせていただきましたが、本当にその通りだなと思いました。
伊藤:岸畑さんは今後チームジェネシアに対して、どのようなサポートをしていきたいですか?
岸畑:チームジェネシアはすごくファミリー感がある組織だと感じています。すごくアットホームですし、それぞれの組織体もいい意味でまだまだ泥臭くて人間味あふれるところがとても魅力的です。でもまだ、その良さを私たちは生かしきれてないのかな、とも思っています。松吉も福岡も含めて、チームジェネシアのファミリーに入れていただいて、何か一緒にしたいです。 こうしたチームジェネシアならではの一体感や熱量は、どこから生まれていると感じていますか?
伊藤:例えば、ジェネシアのメンバーって投資先と話すときに「あなた」じゃなくて「我々」 と表現する、というポリシーを持っています。他にも、話している時に「どうすればいいと思いますか?」ではなく、「どうやっていこうか」と同じ船に乗っている人間として話すスタンスが根底にあります。
また、起業家同士の横のつながりも大切にして、お互いに相談できるようなコミュニティを作ったり、人間関係を構築できるように飲み会を開くほか、勉強会も開催しています。
ジェネシアのMVVの中に 「プラットフォーム」という言葉があるように、自社ではなくエコシステム全体やチーム全体という考え方が、 カルチャーとして根付いています。
岸畑:最後に、「THE CARE」をどんな想いで、どんな場面で使ってほしいのか、私からお話しさせてください。
私たちWithMidwifeも皆さんと同じスタートアップです。様々な挑戦を重ねる中で、「個」にとことん向き合い、心と状態を整えることの大切さを実感し、このサービスをつくってきました。
日々ハードシングスに向き合っていると、「相談している時間があるなら、自分を奮い立たせて頑張りたい」と思うこともあると思います。その気持ちはとてもよく分かります。一方で、戦略的に休んだり、自分自身と向き合う時間を持つことも、同じくらい大切です。
海外では、不調でなくてもカウンセリングを受けたり、メンターをつけたりすることが一般的で、「自分を整えることも仕事の一部」という考え方が根づいています。一方、日本では、意識的に自分と向き合う機会を持つ文化がまだ十分とは言えません。
もしこの記事を読んで、「少し相談してみようかな」と思っていただけたら、私たちは一人ひとりと丁寧に向き合い、質にこだわってサポートします。ぜひ、小さな一歩としてアクションを取っていただけたら嬉しいです。いつでもお待ちしています。
最後にジェネシアさんからもメッセージをお願いできますか?
伊藤:本屋に行くと、最近は「休む習慣」や「世界のエリートは週末何する」といった本を見かける機会が増えています。「休む」という言葉が、経営層やキャリア志向の方々にも浸透しはじめており、確かなニーズがあると感じています。
ケアをすることも同じく重要で、「戦略的に休む」「 戦略的に自分のことをケアする」ために、「THE CARE」は1番おすすめです。少し違和感があるぐらいのタイミングで、ぜひ相談してみてほしいです。
ジェネシアの取り組みとして、チームジェネシアの投資先の皆さんであれば、従業員の皆さま含めて無償で使えるので、もしこの記事を読んで初めて知った方がいらっしゃったら、ぜひお問い合わせください。投資先企業の代表の方には何回かご案内してるので、従業員の方々に、「THE CARE」についてぜひ周知してくださいね。
岸畑:もっと自分と向きあうことや、戦略的に自分を休めること、ケアすることが当たり前のチームジェネシアになるといいですね!本日はありがとうございました。


