INSIGHTS
INSIGHTS

事業のネタ帳 #13 Verticalサービスの進化と深化 Vol.1

IDEA

前回のブログが思いの外、多くの方に読んで頂けたのが嬉しく、今後は前回テーマに引き続き「Verticalの未来」に関して、僕が主戦場としている新興国スタートアップの具体的な事例を交えて「Verticalサービスの進化と深化」に関して考えを深めて行きます。

目次

  1. 何故、新興国スタートアップを取り上げるのか?
  2. 小規模事業者向け帳簿管理アプリによる市場参入
  3. 帳簿アプリから参入したその先の展開
  4. SaaSソリューションによる課金ではないマネタイズ
  5. Verticalサービスの進化と深化への学び

何故、新興国スタートアップを取り上げるのか?

画像1を拡大表示

何故、新興国スタートアップの事例か、と言うと日本では既存産業のデジタルトランスフォームが進行しているが、既存産業とのカニバリゼーションが発生してしまうこともあり、歩みが遅くなってしまっている一方で、新興国では既存産業がオペレーション含めて未成熟な分、デジタルを基盤として基幹産業がスピーディーに立ち上がっており、結果として、LeapFrogな成長が実現している為、日本のスタートアップにおいても何かしらの思考の補助線となるようなヒントが多いようにも考えているからです。

今回はインドネシアのパパママショップと言われる小規模事業者である「マイクロマーチャント」市場へ参入しているスタートアップを紹介します。

小規模事業者向け帳簿管理アプリによる市場参入

画像2を拡大表示

インドネシアには、約6000万人の小規模事業者である「マイクロマーチャント」が存在していると言われています。彼らは食品やその他の生活必需品を販売する零細ショップの店主であり、顧客とも親しい関係にあることが多い。その為、彼らはよく顧客にツケ払いを認めるが、財務追跡の多くは依然として紙の台帳で行われていました。

画像3を拡大表示

2019年に創業した「BukuWarung」は、この業務プロセスの効率化に目を付け帳簿アプリから参入し、急成長している。資金調達額は既に80百万米ドルに達していると言われており、創業から2年でインドネシアの750の都市で350万以上の商店がBukuWarungに登録したと公表されています。
同社プラットフォーム上で150億ドル相当を超える取引が記録され、取引量では5億ドル以上を処理していると言われています。

帳簿アプリから参入したその先の展開

当社は、紙の帳簿に頼っていたワルンと呼ばれる町の商店のような小規模事業者向けにデジタルで管理できる帳簿アプリからスタートし、現在はオンライン決済にも対応出来るよう支援しています。

また最近、「Tokoko」というサービスの提供も開始しており、これは商店がアプリでオンラインストアを簡単に開設できるShopifyのようなツールで、すでに50万の商店がTokokoを利用していると言われています。

また多くの商店主は従量課金制のデータプランとローエンドのスマートフォンを使用している為、こう言ったユーザーがいつでもそれぞれの取引を記録やアクセスできるよう、アプリは可能な限り軽量、かつオフラインでも機能する工夫がされているのも新興国ならではの特徴と言えます。

SaaSソリューションによる課金ではないマネタイズ

一見、小規模事業者向けの帳簿アプリと言うマネタイズの難易度が高いソリューションから市場に参入しているが、その先に拡がるビジネス機会は広大と言えるだろう。
と言うのもインドネシアのGDPの約60%は中小規模事業者が占め、国内労働力の97%を中小規模事業者が雇用している一方で、このような中小規模事業者の多くは、成長につながる金融サービスへのアクセスがないのが現状です。

BukuWarungのようなサービスで財務記録をデジタル化することで、中小規模事業者が信用枠や運転資金の融資などを利用しやすくなることを目指しています。中小規模事業者の一部は銀行口座を保有しているが、銀行口座を保有していない事業者も多く、BukuWarungのような事業者はUnbanked層に対して金融サービスを提供することでネオバンクへと進化すると考えられています。
なお東南アジア最大の経済大国であるインドネシアで中小規模事業者向けに同様のサービスを提供している企業には、BukuKasCrediBookなどが存在しています。

このように新興経済圏向けの金融のデジタルインフラストラクチャ開発は、特にCOVID後の世界においては大きなビジネスチャンスとなると考えています。

Verticalサービスの進化と深化への学び

前回のブログの中では少なくとも特定産業(Verical)の課題を解決するスタートアップの未来において山の登り方として以下の2点を挙げていました。

1.業務コストの効率化 = SaaS的なアプローチ
2.取引コストの効率化 = EC/マーケットプレイス的なアプローチ

また以下のように考えています。

顧客セグメントや産業によって異なる中で、融合していく未来を考えた際に大事な視点の一つが
・どのように参入することで面を広く(かつ素早く)取れるか?
であり、その上で山の登り口を検討していくのが良いと考えています。

今回、取り上げたBukuWarungに関しては、

1. 業務コストの効率化 = SaaS的なアプローチ

小規模事業者の日常的な商習慣の中で最も重要かつ、頻度高く利用される帳簿管理アプリから参入し、ユーザーのスティッキネスを高めながら、その他のサービスを提供して行きながらビジネスを構築しようとしています。

私自身は2017年より少し前から以下のことをずっと言い続けているのですが

個人的には、広義の意味で【“あるデータ”が一定閾値を超えると、 加速度的に価値が高まる。そんなデータを収集&活用出来るプラットフォーム】をあらゆる産業分野で注目しています。

BukuWarungは帳簿データが蓄積されることで、今まで金融アクセスがなかった小規模事業者の取引実績などがデータ化されることで融資などを受けることも可能とする。
まさに【“あるデータ”が一定閾値を超えると、 加速度的に価値が高まる。そんなデータを収集&活用出来るプラットフォーム】と感じています。

今後も面白いアプローチをしている新興国スタートアップを不定期に紹介出来ればと思うので是非、感想など教えて頂けますと執筆のモチベーションが上がるので宜しくお願い致します!

筆者

BACK TO LIST