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事業のネタ帳 #6 HorizontalからVerticalへ。そしてVerticalの未来

事業のネタ帳

ジェネシア・ベンチャーズ鈴木です。

現在、ジェネシア・ベンチャーズではキャピタリストで「事業のネタ帳」なる連載を行なっており、私の担当回が来たので、ぼんやりと考え続けていることをまとめてみたいと思います。

#1 AI-powered BPO(相良)
#2 コールセンターのDX(相良)
#3 産業領域特化型コラボレーション(水谷)
#4 データドリブンファイナンス(河野)
#5 ローカル店舗のOMO化(一戸)

他のキャピタリストが執筆しているような具体的な事業領域と言うよりは、より抽象度の高い内容で申し訳ないのですが、自社の事業戦略を考える際の思考の補助線となれば嬉しいです。

目次

  1. HorizontalからVerticalへの潮流
  2. Verticalスタートアップの進化の方向性
  3. ラクスルのIR資料から考えるVertical領域の未来
  4. 取引コスト V.S. 業務コスト の効率化。どちらから山を登るのか?
  5. おわりに
  6. おまけ

HorizontalからVerticalへの潮流

実はジェネシアの支援先の約7割がB2B関連領域で事業を展開しているスタートアップだったりします。

その上で、B2B関連領域の支援先を大きく分類すると2つに分類されます。

1. あらゆる産業(Horizontal)の共通課題を解決する機能を提供
2. 特定産業(Verical)の課題を解決する機能を提供

勿論、これからもあらゆる産業(Horizontal)の共通課題を解決するスタートアップは増えていくと考えていますが、個人的には特定産業(Verical)の課題を解決するスタートアップがより増えて行くように感じています。

偶然ではあるのですが大学時代からの友人である上野山さんが経営するPKSHA TechnologyのIR資料を眺めていたら、ちょうど「未来のソフトウェアが社会実装される方向性(PKSHA見立て)」というスライドを見つけて興奮してしまいました。

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機能別「横」への展開=Horizontal
業界別「縦」への展開=Vertical

と整理すると私がぼんやりと考えていることと一致しているように感じています。

Verticalスタートアップの進化の方向性

特定産業(Verical)の課題を解決するスタートアップの山の登り方としては、大きく分類すると2つの登り方があると考えています。

1.業務コストの効率化 = SaaS的なアプローチ
2.取引コストの効率化 = EC/マーケットプレイス的なアプローチ

例えばインドネシアのFMCG(日用消費財)領域のサプライチェーン関連のスタートアップを例に紹介します。

FMCG(日用消費財)領域のサプライチェーンにおいては多くの仲介事業者が存在しており、各レイヤーで多くの負を抱えていました。

4年前ほどにWarung Pintarと言うスタートアップを皮切りにジェネシアが発信しているDXの型3:「多重取引構造の解消」に取り組むスタートアップ(取引コストの効率化のアプローチ)が急増しておりました。

型3:多重取引構造の解消

DX3_多重取引構造

Warung Pintarも2017年創業で既にUSD 41.5M(日本円で約47億円)の調達に成功しています。

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一方で多重取引構造が長年存在し続けていた理由もありました。
実は仲介業者の川下に近いプレイヤーは、インドネシアの道端などに存在するパパママショップと言われるSMEsへの配送のラストワンマイルを担う、ディストリビューションセンター、ロジスティクスの機能を有しています。
なので、多重取引構造を解消するアプローチをした結果、スタートアップが自社で倉庫、ロジスティクス網を新たに組み直さなければならず、Capital-Intensiveなビジネスとなっています。

一方で後発ながらジェネシア支援先で物凄い勢いで成長している支援先であるSinbadはインドネシアのFMCG(日用消費財)領域のサプライチェーン領域に対して「業務コストの効率化」のアプローチでGo to Marketに成功しています。

彼らは多層化する業界構造を一足飛びに中抜きするのではなく、既存の業界構造をある意味で尊重しそれをデジタルで効率化するアプローチを取ることで大きく成長を遂げています。

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彼らは卸売業者の活動をデジタルツールでエンパワーすることにより、メーカーや対しては販売状況や在庫の動き、配送状況等のデータを可視化することでより効率的な生産、販促活動を促進できるメリットを提供しています。

また一方の小売店に対しても、卸売業者のネットワーク可視化を通じて最適な発注管理や低価格な商品仕入れ等の機能を提供することでより効率的な流通活動を促しています。

型12:仲介事業者のデジタルエンパワーメント

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このように同一領域においても山の登り方によって成長スピードやビジネスモデルも変わります。当たり前ですが事業の起点は違うのですがVertical領域に関しては最終的なゴールを考えると重なる部分も大きくなってくると考えています。

ラクスルのIR資料から考えるVertical領域の未来

同い年で昔からの友人でもあるラクスル松本さんともVertical領域の未来をディスカッションさせて頂く機会も多いのですがラクスルがIR資料内で発表している以下のスライドは非常に示唆に富んでおりVertical領域にチャレンジをするスタートアップの戦略を考える際の思考の補助線として役立つと感じています。

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ラクスルは明確に「取引コストの効率化 = EC/マーケットプレイス的なアプローチ」を軸に新たなVertical市場へ参入し、取引の前後にあるオペレーションの効率化、周辺の付加価値創りの為の決済やBPOなどのサービスへの沁み出しを志向しています。

また2021年8月にエクイティで約80億円の資金調達に成功したキャディも「取引コストの効率化」から市場へ参入し、今後「業務コストの効率化」への拡大を志向していることが伺えます。

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https://note.com/ryohaga/n/nbd276735dbe1

取引コスト V.S. 業務コスト の効率化。どちらから山を登るのか?

現状、明確な答えは私の中ではないのですが
少なくとも特定産業(Verical)の課題を解決するスタートアップの未来において

1.業務コストの効率化 = SaaS的なアプローチ
2.取引コストの効率化 = EC/マーケットプレイス的なアプローチ

の2軸の双方が融合していく世界になっていくと考えています。
(なので個人的には現在のSaaSのメトリクス偏重主義な考え方が当てはまらなくなっていくと考えてます)

顧客セグメントや産業によって異なる中で、融合していく未来を考えた際に大事な視点の一つが
・どのように参入することで面を広く(かつ素早く)取れるか?
であり、その上で山の登り口を検討していくのが良いと考えています。

おわりに

この記事に共感いただいたVertical領域にチャレンジされる起業家の方(起業を検討している方)、あるいは別のアプローチの方が筋として良さそうという仮説をお持ちの方(自身の仮説が正しいとか唯一解だとかいう考えは一切持っておりませんmm)、まずはぜひカジュアルに事業ディスカッションさせてください!

著者

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