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事業のネタ帳 #5 ローカル店舗のOMO化

IDEA

皆さん、こんにちは!創業前後のシード期のスタートアップへ投資を行うジェネシア・ベンチャーズの一戸です。

ジェネシアのキャピタリストで連載中の事業のネタ帳ですが、#5となる本稿では「ローカル店舗のOMO化」を取り上げたいと思います。

#1 AI-powered BPO(相良)
#2 コールセンターのDX(相良)
#3 産業領域特化型コラボレーション(水谷)
#4 データドリブンファイナンス(河野)

目次

  1. 事業アイデアの着想
  2. 市場仮説
  3. 戦略方針
  4. DXの型
  5. おわりに

事業アイデアの着想

リモートワーク中にいくつかハマったことがあるのですが、その内の1つに自宅近くのローカル店舗、特に八百屋に足を運ぶようになったというのがあります。元々野菜はスーパーで購入していたのですが、美味しいランチを探求して家の周りをうろついていた際にたまたま八百屋を見つけ、何となく品物を見ていると、スーパーと比較して安く(少なくとも最寄りののスーパーよりは)、また実際に購入して食べてみるととても美味しかったのが驚きで、それ以降も定期的に八百屋で買い物をするようになりました。

一方、規模の経済などを考えるとスーパーの方が価格が安くなるのではないかと思い、なぜ八百屋は小規模ながらこういった価格を実現できているのか調べてみました。簡単にまとめると、野菜という生鮮食品は長期間在庫を保有することが難しいため定常的に仕入れを行う必要がありますが、スーパーは基本的なものは何でも揃うことが1つの魅力であるため、メジャーな商品は価格や品質において多少条件が悪かったとしても常に一定量を仕入れる必要があります。一方で八百屋はその都度市場に出向き、その時々の価格や品質を見ながら仕入れる商品を変えることができるため、結果的に高品質・低価格な商品が店頭に並びやすくなります。

もちろん商品数や在庫数において八百屋がスーパーに敵うことは難しいですし、上の例も全ての八百屋の商品に当てはまるわけではないと思いますが、個人的には八百屋がそういった強みを持っていると思わなかったので、この事実を認識した際には驚きと同時にキャピタリストとしてとても大きな市場の可能性を感じざるを得ませんでした。

市場仮説

規模の経済を効かせることによって低価格や安定供給を実現するというのはこれまでスーパーだけでなくAmazonなどのインターネットのプレイヤーも行ってきたことですが、上の八百屋の例でも見た通り、特に生鮮食品(精肉店なども同様?)においては小規模で営むことによるメリットが明確に存在していますし、この他にも、ローカルの飲食店やケーキ屋さんなど、小規模だからこそ提供できる価値をもったプレイヤーが数多く存在していると思います。もちろんその背景としては流通・仕入れ的な観点だけでなく、組織・マネジメントや顧客の感情的な観点など、理由は様々です。

また、現在DXに紐づく形でOMOという言葉をよく耳にしますが、OMO型のカレー屋を営んでいるTOKYO MIX CURRYや、日本を代表するD2C企業であるFABRIC TOKYOなど、スタートアップでは自社でプロダクト・コンテンツを開発しながら垂直統合的にOMOに取り組んでいくケースが多く出てきており、その一方で、既にプロダクト・コンテンツを有する大企業のOMO化にイネーブラーとして取り組んでいくスタートアップ(ROUTE06など)も出てくるなど、あらゆる企業において急速にOMO化が進んでいます。

そういった流れの中で、小規模だからこその強みをさらに活かすためにもローカル店舗のOMO化を推進していくニーズが今後より一層強まっていくのではないかと考えています。

戦略方針

海外の事例だとMercatoRosie(両社ともUSが拠点)というスタートアップがそういったニーズを満たすソリューションを提供しており、これらは食料品に特化していると思われますが、個人的には日本でも食料品店舗(上で取り上げた八百屋など)を中心にOMO化が進んでいくのではないかと考えています(ローカルのサービス領域はミツモアさんなどが取り組まれていますね)。

具体的な事業イメージとしては、求められる機能ベースで整理すると、①在庫管理、②POS、③オンライン注文受付、④CRM、⑤MA、⑥デリバリーアウトソーシングなどの機能が必要になってくるかと考えられます。

一方で、これらの機能を全て自社で開発するというよりは、例えば①在庫管理でいうと、OMO型の在庫管理にも強みを持つロジクラと連携し、その上で他の機能との繋ぎ込みに開発として注力する方が現実的にも感じられますし、どこまでを中で持ち、何を外部と連携するのかは、ユーザーについて深く理解した上で、戦略とのバランスも見ながら策定していけると良いかと考えています。

そして、実現する世界観(提供価値)としては、もちろんローカル店舗に対しては集客やLTVの向上による売上・利益の最大化であり、エンドユーザーに対しては、時間の制約なくローカル店舗での買い物ができ、かつそれを行う場所はオンラインでも店頭でも良く、さらには受取りもオンラインでも店頭でも可能になるような世界観、つまり、その時々の状況に応じてUXを自由に選択することができる世界観に近づいていくのではないかと想定しています。

DXの型

ジェネシア・ベンチャーズで事業立ち上げのモジュールとしてストックしているDXの型のうち、この事業アイデアに適用できるものを見ていくと、

#4 データアグリゲーション#9 ノウハウ提供型SaaSが当てはまりますし、ローカル店舗の商品が流通するマーケットプレイスを自社で持っていくのであれば#11 ボトムアップ型マーケットプレイスも当てはまるように思います。

#4 データアグリゲーション

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#9 ノウハウ提供型SaaS

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#11 ボトムアップ型マーケットプレイス

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この事業案、または市場/戦略仮説に共感いただいた起業家の方(起業を検討している方)、あるいは別のアプローチの方が筋として良さそうという仮説をお持ちの方、まずはぜひカジュアルにディスカッションさせてください!

著者

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