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【シェルパ・アンド・カンパニー】ESGの価値を証明する -二度のピボットの後に辿り着いた、全てを懸けたいテーマ-|Players by Genesia.

PLAYERS

「人生をかけてやり遂げたい」

そう思えるテーマに出会えるタイミングはいつなのでしょう。

それは誰にでも訪れるものなのか、それとも、日々誰もが向き合っているテーマが実はそれなのか(つまり、意識的か無意識的か、もうすでに出会っている/もうすでに取り組んでいるものなのか)ー

答えは出すものなのか、すでに持っているものなのか、すでに取り組んでいたと気づくのかー

何かにまっしぐらにチャレンジしている人たちのお話を聴いて、そんなことを考えながら、いつもこの《Players》シリーズを書いています。

シェルパ・アンド・カンパニー(以下シェルパ)は、企業のESG経営[*1]を推進するサービス『SmartESG』を提供しているスタートアップです。2回の事業ピボット後の背水の陣という場面で、代表の杉本さんはようやく「人生をかけてやり遂げたい」と心底思う課題に出会ったそうです。今はまだ「本当に取り組む価値があるのだろうか?」という戸惑いの声もあるその領域に、世の中の大きな流れと自分とを信じて挑みます。

そのストーリーについて、担当キャピタリストの河合が聴きました。

[*1]ESG経営:ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字。この3つの観点への積極的な取り組みが企業の長期的な成長において重要であると考えられており、ESGを重視し、配慮する経営をESG経営という。

  • デザイン:割石 裕太さん、写真:尾上 恭大さん
  • 聞き手・まとめ:ジェネシア・ベンチャーズ Relationship Manager 吉田

自分にはできそうにないことをあえて

河合:

シェルパの事業内容については、杉本さんのnoteでも詳しく触れられていますので、今日は杉本さんの“人間的な側面”を探るというコンセプトです。よろしくお願いします。
私の杉本さんのイメージは、基本的に物腰柔らかで優しい印象なんですけど、何かこう、心の奥に秘めた強い芯みたいなものも感じています。たぶんそれは、起業してからこれまでに事業を大きく2回ピボットして、それでもなお諦めずにチャレンジを続けていることにも関係してるのかなと思っているんですけど、その背景にある杉本さんの性格形成みたいな部分も含めてお伺いしたいと思います。
まず、幼少期はどういったお子さんだったんでしょうか?

杉本:

昔から自分が好きなことに我を忘れて没頭する、やると決めたことはやり切る性格でした。学生時代は小・中・高とバスケットボールにのめり込んでいて、特に僕の通っていた高校は校則とか受験勉強にも縛られない自由な校風だったので、そういう環境の中で自分のやりたいことに集中できた気がします。ただ、そんなに多くのことに手を出すわけではなくて、「これだな」って思うとひたすらのめり込んで、逆にそれ以外のことにはあまり興味がなくなってしまうタイプです。

河合:

たしかに、ESGという事業テーマを決めてから、あらゆる書籍や資料を読み漁って、サステナビリティ関連のコミュニティ運営も開始して、更には欧州のESG資格まで取得して、と仰ってましたもんね。そういうストイックな一面が昔からあるんですね。

杉本:

ただ、大学生の頃は没頭するものが見つからなくて、モラトリアム期間というか、漫然と過ごしていました。常に好奇心を刺激する何かに没頭していたわけではなくて、波はあったように思います。

河合:

幼少期にご自分に影響を与えた先生や友達、ご両親、ご家族などはいますか?
というのも、今は「起業」や「スタートアップ」という選択肢も徐々に認知されてきていると思うんですけど、そうは言っても、やっぱり珍しい選択肢ではありますよね。だとすると、起業を志す人達の育ってきた環境は、一般の人達とは何が違うのか?みたいな疑問が純粋にありまして。幼少期や学生時代に何か影響を受けていたりするのかなと思った次第です。

杉本:

幼少期に影響を受けた記憶はあまりないですね。周りの起業家は、親が自営業だったりする人が多いのですが、僕は一般的なサラリーマン家庭で育ったので、なぜ影響を受けたことがないのか時々考えることはあります。ただ、僕が尊敬しているサイバーエージェントの藤田さんも同じように一般的な家庭で育って、でも自分で起業しようと決めて一つ一つ切り拓いたというエピソードが好きで、同じような道を歩みたいなと思っていますね。後は普通に過ごしていたら知らなかったであろう世界を追求していくのが楽しいという想いがなんとなくあって、それはシンプルに性格的なものかもしれません。
目の前のレールに沿って生きていたら穏やかな人生になったかもしれないけど、少し選択を変えたり、自分にはできそうにないことをあえてやってみることで人生がもっと違った意味で刺激的になるんじゃないかな、みたいな。そんな考えでやっていることが多いですね。

シェルパ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役 CEO 杉本 淳

楽しかった仕事の先の、新たなチャレンジ

河合:

いつも何かしら自分が没頭できるものを探し続けてきたということですが、それは誰か参考になる方の直接的な影響を受けたからというよりも、元々そういう思考が強いんですね。

杉本:

仕事を決めるにあたっては、身近にいる人たちー 少し上の先輩たちが、様々な(僕にとっての飛び地的な)選択肢を見せてくれたというのは結構大きかったと思っています。例えば、投資銀行に行くことを決めた時も、同じ会社で何十年も働くようなイメージが浮かばなかった僕に、サークルの先輩が実際に投資銀行に入って「こういう世界がある」と教えてくれたりとか、あるいは起業もそうで、投資銀行に入った人は基本的には5-10年くらいで辞めてファンドやCFOキャリアを歩む人が多いのですが、その中でも起業した人が数名いて、彼らの生き方をシンプルに格好いいと思ってじゃあ自分もやってみようと。

河合:

チャレンジすることに対するハードルが低いのかなと感じました。
杉本さんのnoteにも書かれていましたが)起業を決断した時も、投資銀行でプロモーションを受けたばかりのタイミングだったそうですね。昇進時にもらったサバティカル休暇でスタートアップのお手伝いをしているうちに、そこで大きな刺激を受けて・・みたいな。投資銀行は厳しい世界なので、チャンスを掴める人と掴めない人が淘汰されていく中、これから輝かしいキャリアを歩み出すタイミングで、あえてその機会を捨てて起業にチャレンジした。珍しい人だなとは思ってたんですけど、頑張って掴んだチャンスを自ら捨てることへの抵抗感はなかったんですね。

杉本:

なかったですね。普通に投資銀行の仕事は楽しかったんですけど、やっぱりどこかで新しいチャレンジをしたいという気持ちはありましたし、先に述べたように0から1を作る人の生き方に憧れがあって、自分も同じ道を歩んで、社会に対して何かしら大きなインパクトを残したいと思って起業しました。

2回ピボットを経て考え抜いた「何がしたいか?」

河合:

「インパクトを与えられるものを求めている」という点がキーワードのように感じたんですが、そのような価値観を持つに至った背景は何でしょうか?
まず最初に金融を通じて多くの企業に影響力を持つ投資銀行でキャリアを積み、今はESGを事業領域としてより直接的に社会変革を目指しているわけですが、すべて「社会へのインパクト」という価値観がベースになっていると感じました。これは「自己実現」の在り方とも関係するんでしょうか?
私自身も、VCという新産業の創造を支援する仕事に携わって、その中でESGへの関心が深くなってESG経営支援なども行っていますが、我ながら動機は何だろうと思うことがあるんですね。最近何かの本で「自己実現」に関する文章を読んだんですけど、それが「自己実現は自分の中にはない」みたいな話だったんですよね。最初はやっぱり自己=自分の中に求めるので、自分が成長できる環境とか自分が得意なものとかを探していくんですけど、結局は自分一人の中に自己実現を叶える種はなくて、社会や他人との関わりの中で初めて実現するもの、みたいな。もしかすると承認欲求にも近い感覚なのかもしれませんが、結局そこに行き着くんだなと妙に納得しました。
杉本さんもやっぱり周囲との関係性の中に自己実現を求めて、社会の役に立ちたいって気持ちがずっとあったんですかね?

杉本:

その点は、ピボットしたときにかなり考えましたね。起業そのものが目的になった状態でなんとなく始めた事業はやっぱり上手くいかなくて。立ち上げた事業が本当に自分の人生をかけてやりたいものなのかどうかを改めて考えて、社会に与えるインパクトの大きさや自分のバックグラウンドなどいくつかの軸に当てはめる中で、辿り着いたのがESG領域です。本当に河合さんの仰る「自己実現」に近いと思っていて、ライトに起業するのも最初は全く問題ないと思うのですが、起業すること自体が目的になってしまうと最終的には実を結ばないというか・・感覚的で難しい部分ではあるんですけど・・

河合:

2回ピボットすることになっても、そこで止めずに3回目のチャレンジに踏み出したのは、何か確信めいたものや、逆に不完全燃焼な気持ちがあったんでしょうか?もっと何かできるはずだ、もっとやりたいことがある、っていうことだったんですか?

杉本:

最初の2回(2事業)は表面的なニーズや課題を追ってばかりいて、本当にそれって自分が一生かけてやりたいことなのかを考え抜けていなかったんですよね。よく起業の心得みたいなもので「どれだけニーズがあったとしても、あなたがそれをやる意味を答えられないのであれば、やるべきではない」みたいなことが言われるじゃないですか。それまでは本当にそんなことあるの?って感じで、あまり意識してなかったんですけど・・今となってはよく分かります。
3回目の事業立ち上げ時は「何がしたいか?」を考え抜いて、ちゃんと軸を作って、テーマが見つかったらやり切ろうって思いましたし、一方で、それが見つからなかったらもうやめよう、きっとそれまでなんだろうと腹を括りました。4回目はなかったと思います。

今この瞬間を一つの時代の転換点として捉える

河合:

ESGというテーマに出会った時には、何か感じるものがあったんですか?

杉本:

はい。きっかけは実はあまり覚えてないんですけど、気がついたら夢中になって調べていて、これは自分が一生をかけてやりたいと思えるぐらいに知的好奇心が刺激されたというか、そういう気持ちになったんですよね。

河合:

では、そのお話から次のテーマとして、シェルパと杉本さんが目指す世界観や、今後の世の中の方向性といった話題に移っていければと思うんですけど。2回のピボットを経て、ある意味もう後がない状態で、ESGを事業領域に決めたのは、やっぱり「自分がのめり込めること」「社会的インパクトが大きい」ことへのこだわりがあったのでしょうか?

杉本:

またゼロから事業案を練る中で思い出したのが、投資銀行時代の最後の方に手掛けた案件で、それがまさしくESGを意識したような企業のポートフォリオ再編案件だったんです。その案件を通じて、これまでのビジネスが前提としてきた、「資源は無限にある」「外部不経済は誰かが負担してくれる」という考え方そのものを企業が見直す必要に迫られていることを知りました。また、僕がESGやサステナビリティに興味を持って調べる中で出会ったある企業の方に言われたのが、「個々人がやれることには限界があるけれど、企業がESGやサステナビリティに取り組むことで大きなインパクトが生み出せる」ということでした。その話を当時聞いて、とてつもなく壮大なチャレンジだと感じましたし、今この瞬間を一つの時代の転換点と捉え、今ならまだ間に合うと信じて、自身の長い時間をかけて取り組むべき領域だと直感しました。

河合:

その感覚、すごくわかります。今は多くの方が、「このまま現状を変えずにいったら本当に地球が危なくなる」「次の世代に残せなくなる」みたいな危機意識はありつつも、何をすればいいか分からない、あるいは個人で節電したり使い捨てプラスチック食器を控えたりする程度だと、海の中に水滴を垂らすような無力感もあったのではないでしょうか。でも今は、様々な政治経済的な規制や枠組みが動き始めていて、いよいよ社会全体としての機運が高まり、変化を起こすことへの現実味が出てきたと感じます。逆に言うと、それだけ切迫感のある状況でもあると思うんですけど。そういう中で、自分たちもビジネスを通して貢献できるんだ、というリアリティが出てきた感じですよね。

株式会社ジェネシア・ベンチャーズ Partner/Chief Sustainability Officer 河合 将文
杉本:

そうですね。そこからさらに深掘りしていって、自分でESG・サステナビリティ特化のメディアを立ち上げたりESG関連の資格を取得する中で、この領域に対する理解が深まると同時に、気持ちの昂りを感じるようになりました。後はやっぱり、自分がいた金融領域からESG・サステナビリティへのアプローチがあったことも大きかったと思います。投資家を中心とする外部からの圧力は自分が金融にいたからこそ肌感覚としてわかりやすくて、お金が流れ込んできた時のインパクトの大きさや加速度を感じましたね。

課題の中心にいる人の苦しみを理解するには?

河合:

そのようなESGという大きな潮流を捉えて、シェルパでは『SmartESG』というプロダクトをリリースされたわけですけど、本当におもしろい取り組みだなと思っています。そこに時代の要請やニーズの大きさはあるとして、杉本さんから見た、今そのESGを取り巻く課題やあるべき姿、そこに『SmartESG』がどう繋がってくるのかを伺ってもいいですか?

杉本:

ESGという幅広い領域は決めたものの、具体的にどこに課題があるかというのは、最初は僕もわかりませんでした。なので、投資家や事業会社など様々な方にヒアリングを重ねて、一番負担を感じているというか、辛い思いをしている人が多いのが企業側だと感じたんです。今、企業の現場はものすごくカオスな状態になっているんですよね。今まで取り組んでなかったことをいきなりやれと言われ、組織体制も整備されていない中で、大量の取り組みが発生している。この部分は、テクノロジーの力を使えばもっと改善の余地があるんじゃないかと思いました。企業は、本来はもっとESGやサステナビリティをどう経営戦略に織り込んでいくかを議論すべきであるにもかかわらず、ESG経営の推進に全力を割けていない、投資家側の要望にも応えきれてない。一スタートアップとして何か彼らに貢献できないかと考えた時に、このカオスな状況を少しでも好転させられるようなプロダクトを作るべきだと思って、『SmartESG』の開発に至りました。

河合:

すごく大きなテーマだし、推進した方が良いとは思いながらも、どうすれば良いのか分からない、みたいなモヤモヤが溜まっている状態ですよね。その部分を滑らかにするチャレンジには大きな価値があると思います。やっぱりそういう土台がしっかりと整っていないと、皆さんなかなか前に進んでいけないですよね。
実際にそうしたニーズを汲み取るにあたっては、どんなことに取り組まれてきたんですか?

杉本:

二つあって、一つはメディア運営です。自分たちで立ち上げたメディア『ESG Journal』を通じて知り合った企業の方々から様々なお話を聞けたのは大きかったです。もう一つは、コミュニティですね。コミュニティは僕が立ち上げてはいないのですが、コミュニティ創業者の方が企業のサステナビリティ担当の方で、そのコミュニティに参加して他の担当者の方々にも話を聞くことで、現場の負担感や苦しさが徐々にわかってきました。

河合:

プロダクト開発よりも前にメディアを立ち上げたことは、今となってはすごく効果があったと思うんですけど、事業展開の順番については、当時どのように考えられてたんですか?

杉本:

一般的なスタートアップのアプローチではないというか、教科書には書いてないようなアプローチだと思うんですけど、まずは自分がその領域を正確に学びたいと思って始めました。僕の場合、その道のプロではなかったので、まずはその課題を抱えている人たちと話をする上で、自分にある程度の知識や現状認識がないと、中の人の苦しみも分からないだろうなと。その部分に関しては、ニーズ・仮説検証のプロセスとは少しずれていたんですけど、自分自身も学んで、それを発信していくループはその領域を学ぶ上ですごく大事だと思いました。メディアもコミュニティも、まさにその表れです。
ピボット前の2つの事業ではそれができなかったんですよね。すごく表面的なアプローチに終始してしまって、ユーザーの本質的な話を全く引き出せなかったんです。例えば、飲食店向けのサービスを手掛けていた時も、こういうサービスを考えました!といってお店に持ち込んでヒアリングしようとしても、真に彼らの課題とか悩みとかを理解せずに作ったプロダクトは、やっぱり刺さらないと感じました。そうした過去の失敗経験も踏まえて、もう少し工夫して、多少回り道でもいいから、より深いニーズや課題を聞けるようなアプローチを取ろうと工夫していました。

河合:

2回のピボットから背水の陣で臨んでいるにも関わらず、あえて回り道を選んでユーザのニーズを深掘りしたというエピソードは、杉本さんの誠実なスタンスやストイックな性格を改めて感じますね。それまでの経験が糧になった部分があったってことですね。

杉本:

ピボット前の事業を通して、教科書的なアプローチだけじゃ駄目だなと思ったんです。まったく知りもしない人に単純に「課題は何ですか?」って訊いて、「こういう課題があります」「そうですか」って言って、それに即したソリューションを作るって、いやいや・・そんな簡単じゃないだろう・・と。多少回り道であっても、ユーザが本当に必要とするプロダクトを作るためのアプローチをしよう。そんなことを考えてました。

まず最初に「パーパス」を

河合:

少し角度を変えた質問になりますが、2回ピボットされた上で、今も同じチームで事業をされてますよね?杉本さんがESGにのめり込んでいった経緯は理解できたんですけど、そこについてきてくれている仲間の共感はあったんですか?

杉本:

実はあまりなかったですね。それ(共感や同レベルののめり込み)がなかったから僕が好きにやらせてもらえたと思っています。仮にメンバーそれぞれに強い想いがあって意見が衝突したら、たぶん事業化にまで至っていませんでした。ただ、僕もこの3つ目の事業が最後だって思っていましたし、彼らもそれを理解していて、きっと中途半端なものはやらないだろうと。じゃあ僕は最後に取り組む事業を中途半端なものにしないために、これまで以上に着実にアプローチしていく。そういう過程を見ていてくれて、僕がやることを基本的には受け入れて、メディア運営や課題の深堀りも一緒にやってくれたと感じています。

河合:

「もうついていけないよ」って言われてもおかしくないところですよね。でも、何がやりたいかじゃなくて、やっぱり杉本さんと一緒にやりたいという想いが強かったんですね。杉本さんの気迫も届いていたんでしょうね。

杉本:

相当プレッシャーはありましたし、僕としても本当に申し訳ないという気持ちでした。何回もピボットして不安にさせてしまったと思いますし、メンバーから様々言われたこともありますけど、ここまで一緒に来てくれたことに関してはすごく感謝しています。

河合:

ここまでの経験を共にしてきた分、結束力が強いチームなんだろうなって感じますね。
杉本さんが考える、シェルパがビジョンを実現していくための「強いチーム」ってどういうものですか?また、これからどんなチームを作っていきたいか、何かお考えはありますか?

杉本:

目的意識の高い、コミットメントの高いチームをつくりたいなと思っています。それは前職のときに感じたことでもあるんですけど、投資銀行やプロフェッショナルファームって条件や待遇はものすごくよくて、そこが魅力だったりモチベーションの源になる一方で、それでも人って辞めていくんですよね。そのときに僕が思ったのは、“外付けの動機”ー つまりお金とかそういうものだけでは満たされてない人が多いのかなということです。働くこと自体への興味とか喜びといった“内的な動機”は、やっぱり目的意識の高い組織が生み出し得るものなんじゃないかなと。しっかりと権限を委譲して、こういう事業を作りたい、こういう意思決定をしたいということを目的意識を持って自分たちで決める組織にすることで、比類なき会社を創ることができるのではと思っています。
その点では、シェルパではもうパーパス(目的)を決めていて、我々のパーパスに共感してくれたり、強く推進したいと思ってくれる人たちに入ってきてほしいです。

河合:

そういうところは、私たちジェネシア・ベンチャーズとも通ずるところがある気がします。VCの仕事はやや個人商店的なところもあると思うんですけど、私たちは結構“チームとして”にこだわってやっているんですよね。それも誰かの指示待ちってことではなくて、それぞれのWillを重視してみんなが自発的に動きつつも、その上で結束しているみたいな。そういう状態が理想かなとは思いつつ、私たちも試行錯誤中なんですけどね。

杉本:

田島さんの方針を聴いたり、ジェネシア・ベンチャーズの情報発信を見たりしていて、僕も参考にしたいなと思うところが沢山あります。僕らもまだまだこれからなので、またお話の機会をもらえると嬉しいです。

河合:

もちろんです。シェルパの場合は、ESGという事業領域がそもそも共感を得やすいテーマでもありますよね。杉本さんの覚悟や本気度が伝播して、いい仲間が増えてくれるといいですよね。

杉本:

事実として、「ESGとかサステナビリティって本当に価値を創造するんだっけ?」という点については、まだはっきりと証明されていないと思います。だからこそ、強い目的意識を持って証明したいです。シェルパとして、ESG・サステナビリティから企業の社会価値・経済価値を生み出そう、その手助けをしようというパーパス(目的)、そして、それを僕らの持っているテクノロジーの力で加速していこうというミッション、この2つに真に共感してくれる人たちと一緒に仕事がしたいですね。

河合:

今のお話、すごく刺さりました。ESGが大きなトレンドであることは周知だと思いつつも、でもやっぱり懐疑的な見方をしている人たちもまだまだいる。杉本さんご自身からも「ESGやサステナビリティが本当に価値に繋がるのか」っていうお言葉がありましたけど、そこをシェルパとして、自分たちのテクノロジーを使って価値にしていくんだっていう強い想いを感じました。私自身も身が引き締まる思いがしました。

取り組みを後押しするのは、「環境」?

杉本:

僕からも河合さんにも質問してみていいですか?
ジェネシア・ベンチャーズの中で、ESGとかサステナビリティとかをチームとして意識し始めたタイミングとかきっかけってあったんですか?今まであまり聞いたことがなかったので、この機会に・・

河合:

私は去年の9月入社なので、それより前にどういった議論があったかは詳細に把握してないのですが・・

吉田(聴き手/ジェネシア・ベンチャーズ Relationship Manager):

例えばPRIの署名やESG投資ポリシーの策定みたいに具体的なアクションに着手したのは、本当に河合さんがジョインされてからだと思うんですけど、ジェネシア・ベンチャーズのミッションが「アジアで持続可能な産業をうみだすプラットフォームをつくる」というものなので、「持続可能」っていう言葉は(創業者である)田島さんの中にずっとあったんだと思います。ただ、それについて深堀りしようとか、それを具体化するにはどうしたらいいかみたいな話は、初期(私がジョインした創業3年目時点で)はそこまで活発にあったわけではなかったかなと。
一つのきっかけは、私たちの投資支援先スタートアップの一社であるJob Rainbowが『D&I AWARD』を開催した時かなと思います。それで、D&Iに関する取り組みをしている/これから始めようとしている企業の一社として私たちもエントリーしようって話になったんですけど、「じゃあ具体的に何をしていくんだっけ?」「私たちにとってのD&Iとかサステナビリティのあり方ってどういうものなんだっけ?」っていうところがはっきりしないままに「何かやります」っていうのは順序的にちょっとおかしいかもしれない、みたいな問いがチームの中に生まれた感じでした。その時に社内で話し合う機会を設けてまとめたのが、『6つのチャレンジ』というアウトプットです。行動指針の一種になるかなと思うんですけど、今では投資判断の時にも活用していたりします。

河合:

思想としては近いものがあったんですよね。田島さんも始めから「300年続くVCをつくりたい」って言ってましたし、そういう持続性みたいなエッセンスはたしかにあるんだと思います。あとはやっぱり、「社会に役立つ投資活動をしていきたい」というような想いがあって、チーム内でもディスカッションしたり共有されたりはしてたはずなんですよね。ただ、はっきりとは体系化や仕組化がされてなかったり、実際のアクションに繋がってなかったり。でも、そういう組織文化を持っていることは、私も入社前から強く感じていたところでしたね。そこに共感したからこそ、私自身もジェネシアに親和性を感じました。あと、ステークホルダーと協働することを前提に『産業創造プラットフォーム』を作るという思想もいいなと思ってました。そんなチームに入社して、私自身はESGの領域に興味があったので、だったらその部分を具体的に形にしてアクションに繋げたいと考えて、まずは旗を立てようと思い、昨年末にPRIに署名してESG方針もつくりました。でも、ただのスローガンに終わっては意味がないので、日々の投資活動や支援活動の中に手続きとして落とし込み、継続的なアクションにしていこうとしているのが今ですね。
元々ベースがあったからこそ、いざ「やろう」ってなった時に「いいね」って同意してもらえたし、皆が協力してくれるっていうのはある気がしますね。

吉田:

「世の中から求められてるからやりましょう」じゃなくて、「私たち(ジェネシア・ベンチャーズ)ならやるでしょ!」っていう空気はあると思います。だから、河合さんがやろうって言ってくださったことを「私たちならやるよね!」っていう風に意思決定できてるんじゃないでしょうか。

河合:

組織としての方向性や価値観と違和感がないっていうのは大きい気はしますね。たぶんそういうマインドじゃないメンバーが集まってたら、もっと議論が紛糾して「どんな成果になるんですか」とか「リソース取られたくない」みたいな意見も出てた可能性があると思うんですけど、そういうことなくスムーズにできてるかなと思います。

「本気」とはどういうことかを考える

吉田:

すっごく路線違いな質問ですが、のめり込み型の杉本さんが学生時代のバスケットボールとESG以外にのめり込んだことやのめり込んでることってあるんですか?

杉本:

最近の話でもいいですか?最近、K-POPアイドルにのめり込んでいます。最近だと第4世代です。いくつか理由はあるんですけど、本当にすごいんですよね、あらゆるクオリティが。

吉田:

K-POPは、私たぶん第2世代くらいでハマりました。

河合:

私はペ・ヨンジュンとかの世代ですね。0世代?

杉本:

(笑)K-POPのオーディション番組とか最近多いじゃないですか。その一つ一つがしっかり作られてて、クオリティが本当に高いんです。センスのある人たちが本気を出すとこういうものが作れるんだ、みたいな。スタートアップにも似てるなとも思いながら見ていて、特に観客の心に刺さるような届け方や見せ方だったり、洗練されたカルチャーに惹かれます。もはや演者だけではなく、裏方が作る舞台やカメラワークなども気になってしまいますね。

河合:

随分目の肥えた視聴者ですね。
K-POPのクオリティの高さみたいなところで言うと、最初からグローバルを狙ってるからってこともあると思うんですけど、杉本さんも最初からグローバルプレーヤーをベンチマークしてるじゃないですか。国内にまだ先行プレーヤーがいないってこともありますけど。でもやっぱり最初からそういうところを見てると、ちょっと目線が変わったりするんですかね。

杉本:

そうですね、彼ら彼女らは本当に最初から世界を見据えて高いパフォーマンスを出そうとしてるので、そういうところは見習いたいですよね。

河合:

うまく繋がりましたね。

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