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東南アジアNight Vol.1[後編] -人生を拓く、世界への挑戦-|Players by Genesia.

EVENT

先駆者や前例がまだほとんどなかった時期から、いち早く“東南アジア×スタートアップ”に挑んできた六人。彼らは一様に、その挑戦を楽しんでいました。

私たちは、人生を楽しむ舞台をどう見出すか?

ジェネシア・ベンチャーズのGeneral Partner 鈴木が発起人となり、東南アジアで奔走する“Players”が登壇したイベント「東南アジアNight Vol.1」のレポートをお届けします。

「小さな成功体験」がアドバンテージ

鈴木:

じゃあ、質疑応答に入りたいと思います。挙手いただいた方、順番に・・

質問者Aさん:

今、弊社ではAI事業を展開していますが、市場がどんどんレッドオーシャンになってきている中で、各社のパイが小さくなってきています。売上は出ていますが、シュリンクしている中で、海外事業を展開していかないといけないと思っています。が、なかなかそこに投資して損益分岐までいくのには時間がかかりそうだと思っています。そんな中で、みなさんならどのように経営陣を説得して投資判断させていくか、アドバイスがほしいと思います。

安倉:

無理して海外に出る必要はないと思います。経営者の意識が海外に向いていないケースなどもあり、そういう場合はまずやるべきじゃない、という前提で。「やらざるを得ない」から「やりたい」へ切り替えられるかもとても重要です。「やらざるを得ない」だと、どうしてもリスクヘッジしながらやってしまう。そうすると絶対にうまくいきません。日本で新規事業を立ち上げるのと同じことなので、ベストタレントの配置や開発リソースの適切な配分など、フルベットしないと立ち上げは難しいです。まずはトップにそのマインドがあるかどうか。海外展開をやりたいなら、そういう思考の経営者のもとで働くのが一番です。弊社Global CEOの本田はフリークアウトが二社目の創業で、一社目はブレイナーという企業をYahoo!Japanに売却しています。ブレイナ―の技術はYahoo!Japanの広告基盤に活かされ、日本最大級の広告メディア会社に彼の技術が貢献しているという、本田にはその自負があります。そのため、フリークアウトを創業する際に、「IPOを目指して長くやる」そして「グローバルで勝っていく」という二点が、一社目を超える成果を残すため、さらに高いチャレンジとして、創業期からのアイデンティティとして、セットされていました。本田は今シンガポールに住んでいますし、先日はアフリカでスタートアップイベントを開催したりと、グローバルに飛び回っています。そのくらいトップが本気にならないと難しいと思います。グローバル展開の“失敗あるある”が、トップが海外に来ないとか、安くて機動力いいからお前行ってこいみたいな配置をするとか。そういう会社が成功しているのは見たことがないですね。

鈴木:

楽天インドネシアは2010年からスタートしたんですよね。当時、楽天、Tokopedia、財閥系のBlibliとか、3-4社くらいしかなかったところに、2011-12年くらいにLazada/ロケットインターネットというドイツの企業が進出してきた。先進国で流行っている、大きくなったサービスのコピーを先回りして作りまくって、本家が入ってきたら売却するというスタイルの会社でした。日系企業は、日本でやりながら海外もやる、だとあまり投資ができない。楽天が五年でいくら使ったかは明かせないと思いますが、競合はおおよそその10倍以上の資金調達をしている。数億円でリーンで事業を作らないといけない中で、競合は10億,100億,200億とかを調達しているんです。Quipperも同じようなことがあったと思います。教育サービスのリーディングカンパニーとして事業を伸ばしている中で、競合であるRuanguruが最近US$150Mくらいの資金調達をして、インドネシアのテレビ地上波の全チャンネルでテレビショッピングみたいな、教育チャンネルみたいなものをやって、一気に認知をとってユーザ獲得するということをやってきた。そもそも資本投下量が違うんですよね。ここは本当に大きなディスアドバンテージ。日本をやった上で海外もやる、だと本当に勝ちづらいです。あとは、やっぱりボスが「やる」と決めていること。あとは、日本とグローバルを分けて考えるのも、そもそも間違っていると思います。グローバルという全体像の中で、日本なのか、東南アジアなのか、中国なのか、みたいな視点を持てるかで海外戦略は変わってくると思います。
十河さんは今11ヵ国で事業展開していると思いますが、どういう采配で、リソース配分などをどういう匙加減で決めていますか?

十河:

経営の透明性は何より意識して、各国の状況を見える化しています。プロダクトの開発順位も、各国の市場の伸びやポテンシャルに応じて決めています。各国から上がってくるいろいろな要望は、聴かないと不満になってしまうので聴くには聴きますが、グローバル統括チームというのがあって、プロダクト開発やビジネスモデルについてはそこが決めていくようにしています。一方で、セールスやマーケティングに関しては、ローカルに裁量権を渡していて、戦略やコストを決めてもらっています。

鈴木:

日本人の起業家が海外で戦う中で、活きているポイントはありますか?

十河:

特に東南アジアでは、あると思っています。東南アジアのスタートアップで利益を作っている会社は、まだほぼありません。資金調達はうまくいっていますけど。日本市場は、小さいかもしれないですが、マザーズもありますし、小さい成功体験みたいなものがめちゃくちゃ多い。広告、C向けなど、本当にいろいろ。そこの情報やケーススタディを僕らは持っている。何が当たるかはわからないですが、その情報はアドバンテージです。さっきの話にも出た、コミュニケーションや人集めのディスアドバンテージはありますが。

手島:

エンジニアに関して言えば、クオリティ感覚はやっぱり圧倒的に日本人が高いです。エンジニア以外のアドバンテージで言えば、日本人の存在は割と希少性が高いので、アクティブにいくと結構受け入れられます。東南アジアは日本以上にグローバルですから、受け入れられやすい気がしています。

キム:

日本人はベースが整っていて、オペレーションの原理原則をしっかりとやる、というところで最強だと思っています。一方で、それらがマイナスに働く部分もある。あるプロダクトを展開していこうとなったときに、プロダクトにもよりますが、例えば僕だったらBtoCのECの商売でマーケットでシェアをとっていこうとしたときに、競争環境や資本力が想像の100倍くらいやばいことになっている気がします。マーケットにポテンシャルがめちゃくちゃあるので、現状のマーケット規模にそぐわない資金がぼこん!と投下されている。その事実をしっかりと見つめることはすごく大事だと思っています。資本投下量を図り間違えると、もう、戦略やリソース配分含め、すべての計画が無駄になります。

鈴木:

ジェネシア・ベンチャーズには、インド人がインドネシアで事業をやっている支援先が二社ありますが、めちゃくちゃ伸びています。彼らは前職のキャリアが東南アジアだったというのもありますが、例えばインドではIIT(世界最高峰の理系大学)出身の優秀なファウンダーが国内で競い合っていて、同じビジネスモデルの会社が100社とかあって、そのうちVCが十数社とかに投資している状況。そんな熾烈な戦いを勝ち抜かないとならないわけです。東南アジアは、日本に比べるとそういった環境になっていますが、インドと比べると、まだそこまで競争環境が激しくはないマーケット。ということで、戦う場所をずらすことで勝てるのではないか?と、東南アジアに入ってくるグローバルなファウンダーもたくさんいるのが現状です。

日本企業に必要な、より長期目線での意思決定

質問者Bさん:

安倉さんに質問です。自分は今、海外のM&Aの仕事をしていますが、東南アジアでは売上と利益に対してのバリュエーションがすごく高くなっている状況で、先方が出してくる事業計画やバリュエーション提案に対して、こちらが買いたい金額が合わないケースが非常に多いです。そのときに減損のリスクを負ってまで買いに行くべきか、合わなければターゲットから外すべきか。これまでの戦略はどうでしたか?

安倉:

僕らがM&Aしてきたのは、ローカルの広告代理店が多いので、そもそもテック系の企業のように高いバリュエーションがつきにくい領域だったりするので事情が少し異なるかもしれませんが、自分たちのテーブルをしっかりと持って、無理をしないことが大前提だと思います。そのために、M&Aをやると決めたら数多くあたって、同時に比較検討できる候補を増やすことが重要だと考えています

鈴木:

たしかに、実態のバリュエーションにおいては高すぎる一方で、買う人がいるから強気でいけるという表れでもある。日本の感覚では高いですが、それでも買う人がいるという事実を知っておくべきです。あとは、中国企業などは、将来にベットするという意味での買収の意志決定をできますが、日本の特に上場企業などは、短期的な数字を追い求める買収だったりする。より長期目線で意思決定をできるようになっていかないと、M&Aで日本企業が東南アジアで勝っていくのはとても厳しいと思います。

質問者Cさん:

今、ミャンマーで会社経営をしています。日本人メンバーと現地のメンバーの給与バランスについてお伺いしたいです。当社では、日本人メンバーの方が優秀で給与が高くなりがちです。国籍で傾斜をつけたいという意味ではないのですが、長く働いた現地メンバーよりも、今日来た日本人新卒社員の方が給与が高いといったこともあります。現地では、メンバー同士で給与の開示もし合っちゃいます。そのあたりをどう定め、どう開示していますか?

十河:

そこは悩みの種です。ベトナムで新卒が4万円で採用できても、当然ながら日本人は採用できませんよね。特にジュニア層では、日本人とそれ以外の差は出てしまっています。マネジメントに近いシニア層になってくると、能力や結果やミッションの達成度、レスポンシビリティによって、国籍はほぼ関係なく同じ給与体系が当てはまってきます。ジュニアは難しく、うちでもなかなかできていないですね。

質問者Dさん:

立ち上げ初期に採用したローカルのキーパーソンはどんな人ですか?また、期待していた役割は何でしたか?

船瀬:

やっぱりキーパーソンは、マネジメントの経験者でした。人をマネジメントできるかどうかは、まったく別の能力だと思うので、その経験はあってほしかったです。その上でも、組織が圧倒的なスピードで成長すると、ついてこれる人これない人が出てくるのが正直なところです。それこそ、そこについてこれたマネージャーは、部下3人の状態から部下200人とかになっています。逆に、ついてこれなかった人が企業の成長のボトルネックになっていると思います。正解はないですけれどね。

NEXT 東南アジア

質問者Eさん:

本来の会の主旨とはずれちゃうかもですが、みなさんが東南アジアの次に行くとしたらどこの国ですか?そのきっかけや理由も教えてください。

鈴木:

僕は、基本的には東南アジアを主軸に今後の人生を張っていこうと決めています。結局、何者でもない自分が他の国や地域に行ったときに、強みが持てているかが大事だと思っているからです。今、インドの起業家や投資家なども東南アジアに興味を持っている。中でもインドネシアです。僕は2011年からインドネシアでVCをやり続けていて、そういう人はほとんどいません。実績はもとより、長期的な変遷や事例を見ているという強みを活かせると確信しています。ただ、東南アジアに主軸を置きつつ、この地域への興味関心を持ってくれているインドやアフリカには興味があります。特にアフリカは、まだ本格的には行きませんが、自分の持った強みを活かせる新興国、かつ、東南アジアから5-10年遅れている市場だと思うので、新興国でイノベーションが生まれる流れには近しいものがあると感じています。なので、もし5-10年後にファンド規模も大きくなって、よほど張った方がいいマーケットがあったときに、自分が移り住んでもいいかなと思うのはアフリカ。10-20年スパンで見て絶対にベットするとしたらアフリカだから、その時には家族で移住するかもしれません。

十河:

今はアジア中心に展開しているが、アジア以外にも興味を持っています。近いうちに進出計画を考えているのは、インドと中東です。インドは競合も多いので戦略的にやっていかないといけないと思う一方、テクノロジーベンダーとしてのチャンスはあると思っています。中東は、ポテンシャルがまだまだあると思います。政治的な問題があり、USの企業が進出しづらい領域だと思うからです。アジアでも同じ感覚はありますね。意外に親日ですし。ちょっと前の東南アジアに若干近いと思います。そのあとは、東ヨーロッパ。旧ソ連ですね。ロシア語圏は市場として大きく、ポテンシャルもあります。そしてやっぱり、USの企業が強くない。同じような感覚でできるのでは、と思っています。

「グレーを白に」、そこにイノベーションが生まれる

質問者Fさん:

私はコーポレートスタッフで、海外の立ち上げに興味がありますが、スタートアップの創業期はビジネスドリブンだと思います。コーポレートスタッフが海外の立ち上げ時にジョインする意味はありますか?また、本社から出す意味はあると思いますか?

十河:

めちゃくちゃあると思います。特に、日本人のコーポレートスタッフは丁寧で信頼感がありますよね。人事や会計管理など。クオリティが高いです。ローカルの決算とかを締めていくのはすごく大変です。上場なども見据えると、やっぱりコーポレートを強くしないと難しい。制度やCRMの導入などを含めても、グローバルでそれをやるときには、特にこだわりがあるわけじゃないですが、日本人にお願いしたい気持ちはあります。英語でウェットなコミュニケーションができることを前提に。

鈴木:

2-3か国と多国展開するようになったら、コーポレートスタッフは必要ですね。立ち上げ時は正直、必要ないと思います。やっぱりビジネスの立ち上げが先ですから。チャンスがないわけではないですが。一方で、ビジネスドリブンタイプのビジネスマンは、攻めが強いが管理に弱い人も多いので、両面できる人は貴重な人材だと思います。

質問者Gさん:

東南アジアは政治リスクが高いと言われている中で、旧態依然とした業態は政治家との折衝なども必要だと思いますが、スタートアップはどうでしょうか?

鈴木:

リスクはどの国にもありますよね。そんな中でも、限りなくグレーなゾーンが多いのが新興国だと思っています。日本は、規制から外れたものをやろうとする時点でNG。事業ができないですよね。その時点で投資家も投資できません。一方で、東南アジアは、真っ黒でない限り、グレーなところには間違いなく負があると考えられますから、レギュレーション的には微妙だけど、解釈の問題でこれホワイトって言えるよね、というものは最低限のリスクヘッジはした上でがんがんいく傾向です。グレーを白にしちゃえばいい、というマインドの人が多いです。Gojekだって、そもそもバイクタクシー自体が違法という中で、彼らはバイクタクシー版Uberというかたちでその違法集団をテクノロジーでマネジメントするという試みをしました。一度、国土交通省的なところの大臣が「Gojekは違法である」と発言して、アプリが数日使えなくなる事態が発生しましたが、そのあとすぐに大統領が「そもそも違法集団だったバイクタクシーをデジタルで勤怠管理できれば、その方がいいよね」という旨の声明を発表して、規制緩和を宣言しました。グレーを白にしていこうというのもアントレプレナーシップだし、そういうところにしかイノベーションは起こらないとも言えると思います。それでいうと、日本よりイノベーションを生み出しうる余地があるということですね。

船瀬:

規制を、むしろ民間サイドが定義していくというのはありますね。民間が挑戦することで新たな規制が生まれる流れがあり、規制の変化が非常に速いです。教育カリキュラムも三年ごととかで変わるので、コンテンツをつくるのが大変です。試験制度も、毎年変更が起こっている。しかもそれが試験の六ヶ月前にアナウンスされて先生も受験生もてんやわんや、みたいなこともある。と、そもそもそれほど政策の変化が速いんですが、つい半年くらい前にGojekのCEOのナディームさんがインドネシアの教育大臣になって、彼も矢継ぎ早に新しい施策を打ち出しています。例えば、卒業試験(小6、中3、高3で全員受ける)をなくすなど。今後はさらに変化が速くなりそうです。日本とは対照的な印象ですね。

鈴木:

では、そろそろ時間となります。みなさん、本日はありがとうございました!

イベントレポートは以上です。
ご参加・ご協力いただいたみなさん、本当にありがとうございました!また次回の開催をお楽しみに!

※こちらは、2020/2/7時点の情報です
※会場提供:フリークアウトホールディングス社
(デザイン:割石 裕太さん、写真:尾上 恭大さん、聞き手/まとめ:ジェネシア・ベンチャーズ 吉田 愛)

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