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5/15・16開催『Global Founders Gathering 2025 in ホーチミン』イベントレポート

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2025年5月15日・16日の2日間にわたり、ベトナム・ホーチミンにて『Global Founders Gathering by Genesia.』を開催しました。今回はイベントの様子を皆さんにご紹介します。

Global Founders Gathering by Genesia.とは?

『Global Founders Gathering by Genesia.』は、私たちジェネシア・ベンチャーズの投資先である東南アジアやインド、そして日本のスタートアップ同士を繋げることで新しい熱源を創りたいという想いから生まれた起業家同士の交流プログラムです。

私たちは、ミッションとして「アジアで持続可能な産業がうまれるプラットフォームをつくる」を掲げ、日本だけではなく、インドネシア、ベトナム、インドに投資拠点を構え、グローバルなチャレンジをしているファンドです。

これまで各国で、投資先起業家・創業者同士が深く知り合い、創業者にしか分からない悩みなどを共有し、お互いに切磋琢磨し合えるコミュニティを作りたいと思い、様々な取り組みを行ってきました。また、私たちの東南アジアやインドの投資先の中には、他国展開を開始している、もしくは今後、他国展開の検討をしているスタートアップが増えてきており、各国での取り組みだけではなく、国を跨いだ起業家たちの交流が起業家自身の視座を上げる機会になるのではないかと考え、昨年より開催しています。

▶︎ 昨年のイベントレポートはこちら

本イベントでは、アジア5ヶ国(ベトナム🇻🇳、インドネシア🇮🇩、インド🇮🇳、シンガポール🇸🇬、日本🇯🇵)の起業家、総勢24名が参加し、開催地であるホーチミンで、投資先スタートアップ企業への訪問、パネルディスカッション、参加者同士のナレッジやマインドセット共有を行うディスカッションなどを実施しました。(日本からは、匠技研工業パートナープロップ、そしてMOSHの3社が参加)

現地での体験から得られるリアルなナレッジ

本イベントは以下の流れで、2日間かけて開催されました。

【Day1:現地スタートアップの勢いを体感】

  • M Villageへの企業訪問
  • BuyMedへの企業訪問
  • Welcome Dinner

【Day2:知の共有と交流】

  • Panel Discussion 1:スタートアップの成長ための戦略的パートナーシップ
  • Panel Discussion 2:プロダクト・マーケット・フィットと市場拡大
  • Fireside Chat:ベトナム初のユニコーン企業 VNG創業者によるパネルディスカッション
  • Roundtables:参加者同士のナレッジ共有:ファイナンス/成長/人材
  • Wrap up Dinner

【Day1】

#M Villageへの企業訪問:コミュニティと生活空間の未来を再定義する

 まず初めに訪れたのは、ジェネシア・ベンチャーズの投資先であり、ベトナム・ホーチミンで急成長中のホスピタリティスタートアップ、M Village。彼らの本社オフィスを訪問し、そこからほど近い1号店となるホテル施設を見学させてもらいました。

M Villageは、都市の中で“孤独”を感じやすくなっているミレニアル世代に向けて、コミュニティを中心とした新しい住まいの形を提案するソリューションを提供しています。コワーキングスペースの連続起業家であるNinhさんの原体験から生まれたこのモデルは、2021年のパンデミック期にスタートし、住まい・働く場・旅の体験を融合させた独自のビジョンによって、急速に拡大を続けています。

M Villageのホテルや住居には、必ずカフェが併設されており、コミュニティとプライベートの共存をテーマに設計された空間が印象的です。デザイン性の高い内装、若くてエネルギー溢れるスタッフたちのホスピタリティが、訪れたメンバー全員の記憶に残る訪問となりました。

訪問の最後には、CEOであり創業者のNguyen Hai NinhさんによるプレゼンテーションとQ&Aセッションも開催されました。

また、同社が昨年ローンチした新ブランド『Signature』は、都市型ホテル業界において“高品質で手頃な価格”を実現し、より多くの中間層に旅の喜びを届けるという強い意志が込められたプロジェクトです。参加者の多くは、実際にこの『Signature』ブランドのホテルに宿泊していたこともあり、ユーザー視点での具体的なフィードバックや、テック連携・パートナーシップの可能性についても率直なやりとりが生まれました。

最後には、WhatsAppによるきめ細やかな顧客対応や、独自開発のPMS(ホテル運営システム)を活用したスタッフの個別対応力、また業務効率を最大化する省人化モデル、OTAやB2Bチャネル戦略など、ベトナム発スタートアップらしい垂直統合型のビジネスオペレーションにも深く触れる機会となり、参加者の間では「日本・アジアの他地域でも参考にすべき仕組み」として高く評価されました。

BuyMedへの企業訪問:東南アジアの医薬品流通を変革する

 次に訪れたのは、同じく投資先である医療流通の構造変革に挑むスタートアップ、BuyMed。ホーチミンの中心地にある眺望の良いオフィスにて、COO & co-founderのVu Vuongさん、Chariman & co-founderのPeter Nguyenさん、そしてCEO & co-founderのHoang nguyenさんに参加いただき、BuyMedのこれまでの歩みと今後の展望についてお話を伺いました。

BuyMedは、ベトナムを中心にカンボジア・タイへと展開するヘルステック企業で、医薬品の分断されたサプライチェーンに構造改革をもたらすべく事業展開をしています。B2Bの医療eコマースプラットフォームを軸に、医薬品、消耗品、OTC、FMCGなど多様な商品を薬局へ直接届ける流通インフラを構築しています。

プレゼンテーションでは、BuyMedがどのように物流品質・価格透明性・プロダクト設計を通じて“業界の常識”を刷新しているかについて詳細に説明いただきました。特に印象的だったのは、同社が掲げる「95%のユーザーが自力で使いこなせるプロダクト」設計哲学。薬局の高齢ユーザーも含め、誰でも直感的に利用できるUIを目指し、電話注文文化の変革に真正面から取り組んでいます。これにより、薬局ユーザーの継続率・ロイヤルティを高め、すでにベトナム全国6万店舗のうち半数以上の薬局をカバーするに至っています。

終盤では、BuyMedの“フルスタック”型組織体制にも触れられました。注文から配送、決済、倉庫管理、CRMまで、すべてを内製していることがBuyMedの強みであり、シリーズCを経てさらなる領域拡大を図っているとのことでした。

参加者による質疑応答では、初期の信頼構築エピソードや、価格の透明性をどう担保するか、AIの活用方針、詐欺対策に関する取り組みなど、多岐にわたる議論が交わされました。

「何かを少しでも毎日良くする」「説明不要で価値を伝えられるプロダクトを目指す」と語る起業家の言葉からは、社会の非効率に真正面から挑む覚悟と、真摯で持続可能な経営スタンスが伝わってきました。今後の東南アジア医療流通のインフラとして、BuyMedがどのように市場を再定義していくのか、期待が高まる訪問となりました。

Welcome Dinner

1日目の最後に訪れたのは、ジェネシア・ベンチャーズの投資先であり、ベトナムを代表するメディア企業Vietceteraが手がけるベトナミーズ・フュージョンレストラン「Mam Mam Eatery & Lounge」。

ここで、2日間にわたるプログラムのキックオフとしてWelcome Dinnerを開催しました。ディナーでは、ジェネシア・ベンチャーズ Country Director of VietnamのDungのモデレートのもと、参加者それぞれがこれまで直面してきた“Hard Things(起業家としての困難)”を一人ずつシェアする時間を設けられました。

互いのストーリーを共有することで、単なるビジネス上の交流ではなく、起業家同士としての本質的なつながりが生まれ、2日目以降のディスカッションやラウンドテーブルに向けた土壌が自然と築かれていきました。

【Day2】

#Panel Discussion 1:スタートアップの成長ための戦略的パートナーシップ

 2日目は同じくMam Mam Eatery & Loungeにてパネルディスカッションからスタートしました。最初のパネルディスカッションのテーマは、「スタートアップの成長のための戦略的パートナーシップ」。登壇者は、PlutosOneのNguyen Viet Ducさん(インド)、FundiinのNguyen Anh Cuongさん(ベトナム)、KAMEREOの田中 卓さん(ベトナム)、VietceteraのHao Tranさん。モデレーターはジェネシア・ベンチャーズの相良(インド)が務めました。

ディスカッションでは、

  • ファイナンス/決済/メディア/リテールなど多様な業界におけるパートナー戦略の違い
  • 初期におけるアライアンス構築と、スケール後のリレーション再定義
  • 他国展開時における文化・商習慣のズレとその対応法

など、戦略的パートナーシップに関するリアルかつ実践的な議論が展開され、国際展開を視野に入れる起業家たちにとって大きな示唆となるセッションとなりました。

#Panel Discussion 2:プロダクトマーケットフィットと市場拡大

 続くパネルディスカッションのテーマは、「PMF(プロダクト・マーケット・フィット)と市場拡大」。登壇者は、QoalaのHarshet Lunaniさん(インドネシア)、MOSHの籔 和弥さん(日本)、M VillageのNguyen Hai Ninhさん(ベトナム)、BuyMedのHoang nguyenさん(ベトナム)。モデレーターはジェネシア・ベンチャーズのAero(インドネシア)が務めました。

セッションでは、

  • 各国・各業界におけるPMFの定義とその再設定のプロセス
  • 顧客理解をベースとしたプロダクト改善の実例
  • 新市場参入におけるマーケットエデュケーションの重要性
  • PMFを支えるチーム構築・資金調達のあり方

といったテーマに対し、各起業家の苦悩と突破の経験が率直に語られ、会場には共感と学びが満ちる時間となりました。

#Fireside Chat:ベトナム初のユニコーン企業創業者が語る

 ジェネシア・ベンチャーズの投資先企業によるパネルディスカッションの後は、特別ゲストとして、ベトナム初のユニコーン企業であるVNG Corporationから、FounderのLe Hong Minh氏をお迎えし、Fireside Chatを実施。モデレーターにはVietceteraのHao Tranさんに務めていただきました。

東南アジアを代表するテックカンパニーを築いた背景として、

  • 初期のオンラインゲーム事業からメッセンジャー、決済、クラウド、音楽、AIへと拡張してきた軌跡
  • VNGの社内カルチャーと意思決定のスタイル
  • 若手人材との向き合い方と「組織の未来づくり」
  • ベトナムにおけるテックリーダーとしての責任と展望

などが語られ、レガシーと未来を繋ぐLe氏のビジョンに、参加者からは多くの質問が飛び交いました。リーダーシップや危機対応、持続可能なスケールのヒントが随所に散りばめられた貴重なセッションとなりました。

#Roundtables:ファイナンス/成長/人材

 Fireside Chat終了後、ジェネシア・ベンチャーズのホーチミン拠点であるOrbit HCMCへ移動。ここからは、参加者自らが主役となるラウンドテーブル形式のディスカッションを実施しました。今回は「Finance」「Growth」「People」の3つのテーマに沿って、各グループで起業家達のリアルな経験やナレッジを深堀りしました。

Roundtable #Finance

 資金調達や事業資金のコントロール、バリュエーション戦略、投資家との関係構築といった起業家にとって避けては通れないテーマについて、多国籍な視点から議論が交わされました。

  • 資金調達が長期化する中でのチームマネジメント
  • シードからシリーズAにかけての評価額設計と交渉のコツ
  • バーンレートの最適化と「戦略的赤字」の考え方

など、各国・各ステージの事例とともに、具体的な意思決定の葛藤が共有されました。

・Roundtable #Growth

 ここでは、いかに事業をスケールさせるかという問いに対し、仮説検証型の施策、PMF再定義、ユニットエコノミクスの管理などがテーマに。

  • 無料トライアル施策の失敗からの学び
  • ローカルニーズへの対応と汎用的プロダクト設計の両立
  • 顧客セグメンテーションと収益モデルの進化

など、成長フェーズにおける試行錯誤と発見の数々が交錯し、まさに「現場からのナレッジ共有」の場となりました。

Roundtable #People

 最後のセッションは、「人」に関するディスカッション。採用、評価制度、カルチャー構築、離職対策といったテーマを中心に、起業家たちの悩みと取り組みがオープンに語られました。

  • スタートアップ初期におけるカルチャーフィット採用の難しさ
  • 評価と昇進制度をいかに“進化させ続ける”か
  • 遠隔地や多文化チームでのエンゲージメント維持方法

現場のリアルと人に対する想いが交差し、多くの共感が生まれたセッションとなりました。

#Wrap up Dinner

 タイトなスケジュールと濃密なディスカッションを経て、プログラムの最後を飾るFarewell Dinnerが開催されました。

ハードな2日間のプログラムを共に駆け抜けた起業家同士が、肩の力を抜きながらも引き続き深い会話を交わすこの場では、すでに次なる協業の話が生まれていたチームも。互いの健闘を称え合いながら、リラックスした雰囲気の中で2日間を締めくくりました。

最後に

 『Global Founders Gathering by Genesia.』は、単なるイベントではなく、”国や文化を超えて、スタートアップ創業者たちが本音で語り合い、学び合い、そして新たな挑戦の原動力を得る”場”であると私たちは考えています。これからも積極的に国を跨いだ起業家同士、スタートアップと大企業のコラボレーションを促進していくべく色々な取り組みを行っていきます。

また私たちは、日本発グローバルに挑戦するスタートアップや日本人起業家をもっと増やしていきたいと考えており、当たり前にグローバルにチャレンジする環境や、視座が上がる瞬間を『Global Founders Gathering by Genesia.』以外の場も積極的に作っていきたいと考えています。

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