
「”危機”はチームの信念を問うもの」Sky Mavisが語る、レジリエンスのある組織|Orbit Workshop
ジェネシア・ベンチャーズのベトナムチームでは、投資先の皆さんやスタートアップを志す皆さん向けに、クロスオーバーで投資と経営支援を行うベンチャーキャピタルとして、スタートアップに関するナレッジの共有やリレーション構築を目的に、さまざまなイベントを開催しています。
『Orbit Workshop』は、私たちのネットワークに属するスタートアップの起業家・創業者から、重要な経験と知見をご紹介いただく機会として定期的に開催しているイベントです。
本レポートは、2025年9月26日、Sky Mavis(Axie Infinity)共同創業者兼CEOのNguyen Thanh Trungさん(以下:Trung)をお招きして開催したトークセッションのダイジェストです。一部は、モデレーターを務めたジェネシア・ベンチャーズ Country Director of VietnamのHoàng Thị Kim Dung(以下:Zun)とのディスカッション形式で、起業家がどのように不確実性に立ち向かい、ステークホルダーとの信頼関係を再構築し、危機を持続可能な成長の機会へと転換できるかについて探りました。
- モデレーター:ジェネシア・ベンチャーズ Country Director of Vietnam Hoàng Thị Kim Dzung(ホァンティキムズン)
- 編集:ジェネシア・ベンチャーズ Operation and Community Manager Vo Thanh Truc(ボー・タン・チュック)、Relationship Manager 吉田 愛
企業にとっての「危機」:信頼を再構築する試金石
Zun:ブロックチェーンゲーム『Axie Infinity』の世界的な成功から2022年に受けたサイバー攻撃の危機まで、あなたはスタートアップの激動期を乗り越えてきました。振り返ると、特に「危機」はあなたにとってどのような意味を持ちますか?
Trung: 私にとって「危機」とは、単なる財務や業務の問題を超えたものです。それはチームの試金石=チームの信念を問うものであり、自分たちのミッションを心から信じ、困難に立ち向かう覚悟があるのは誰か、を明らかにするものだと思っています。順風満帆な時は誰でも楽観的でいられますが、最も暗く、辛い時に見せる反応こそが、その人の本質を表します。プロダクトが価値を提供し続け、チームのミッションへの信頼が尽きなければ、何度だって立て直せる── 私はそう信じています。

危機下でのチーム運営:透明性と対話と集中
Zun:危機的な状況下では、チームの士気は大きく低下したのではないかと思いますが、どのようにしてチームの士気を維持したのでしょうか?
Trung:最も重要なのは「透明性」です。私は決して情報を隠しません。何が起きているのか、タイムリミット、そして次のステップをチーム全員が把握する必要があります。透明性があれば、メンバーは受動的に情報を待つのではなく、自分が解決の当事者だと実感できます。
次に「定期的なコミュニケーション」です。私は少人数のグループとミーティングを行い、彼らの懸念に耳を傾けるようにしています。自分の声が届いていると感じられれば、不安は自然と軽減します。そして最後に、「自分たちがコントロールできることに集中」することです。例えば、製品、ユーザー、コミュニティなど。そこに価値を生み出し続けることで、メンバーのモチベーションは自然と再構築されていきます。
危機下でのリーダーシップ:冷静さと誠実さ
Zun:リーダーとして、危機的な状況下でもリーダーシップを発揮するために意識していることはありますか?
Trung:リーダーも恐怖を感じますし、会社を救えるのかと不安で眠れない夜もあります。それでも翌朝にはオフィスに出勤し、自信を持ってチームに向き合わなければなりません。リーダーシップとは、常に強さを見せることではなく、メンバーが頼れるような毅然とした態度でいることだと思います。どんな戦略よりも冷静さと誠実さが伝わる態度が重要だと考えています。メンバーは、リーダーの不誠実な態度をすぐに感じ取ります。

組織カルチャー:レジリエンスの基盤
Zun: 「組織カルチャー」について語るスタートアップは多いですが、実際に危機的な状況に直面した際、それを維持できる企業は限られていると思います。組織カルチャーとレジリエンス(回復力)の関連をどうお考えですか?
Trung: 私にとって、カルチャーとは「すべてが崩壊しそうなときにチームを結びつけるもの」です。それは単なるスローガンではなく、そこに属するメンバーが日々どのように行動するか── 仲間を支え、情報を共有し、失敗を認める姿勢です。
「率直さ – 責任 – 忍耐」というカルチャーが、実際に私たちのチームを支えてくれました。チームが共通の価値観を共有していれば、恐怖に基づくマネジメントは必要ありません。強いカルチャーがレジリエンスの高いチームを築きます。
未来の方向性:トレンドよりも、持続可能な価値を
Zun: Sky Mavisの今後の経営に、どのような教訓を活かしていこうとお考えですか?
Trung: テクノロジーやトレンドは表面的なものに過ぎません。本当に重要なのは、ユーザーにとって持続可能な価値を生み出すことです。製品が”真のメリット”をもたらさなければ、どんなに宣伝してもユーザーは受け入れてくれません。Sky Mavisは『Axie Infinity』だけでなく、他の開発者がWeb3ゲームや製品を作れる基盤づくりへと軸足を移しました。私が学んだ最も重要な教訓は、「持続的成長は、スピードではなく、チーム、ユーザー、目的への深い理解から生まれる」ということです。

まとめ
Trungさんが経験した「危機」は試練であり、終着点ではありません。困難な時期においても、透明性、信頼関係、そして強固な組織カルチャーといった基本的な要素が、スタートアップのレジリエンスを維持し、成長を続ける力となります。
これこそ、起業家が課題を変革と成長の契機に変えるための場『Orbit Workshop』の使命そのものです。Genesia Orbit HCMCは、挑戦を分かち合い、知見を循環させるコミュニティとして、起業家が互いに学び合い、支え合う環境づくりを通じて、ベトナムのスタートアップエコシステムの進化に寄与していきます。
※これは、2025年10月22日時点の情報です


