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私たちが目指す世界観こそが、チームのアイデンティティ -リデザインプロジェクトを振り返って-

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2019年、夏。設立から3年を迎えたジェネシア・ベンチャーズは、CI(コーポレートアイデンティティ)やWebサイトなどの全面的なリデザインを実施しました。代表の田島が創業時からメンバーとともに育ててきたブランドはそのままに、見た目だけでなくその伝え方や、情報を受け取る人たちとの関係づくりの仕方をどうデザインするかにこだわったのが、今回のリデザインプロジェクトでした。

本プロジェクトに全面的に参加、監修してくださったパートナーは、“わりえもん”ことOHの割石 裕太さん。

当初、単なるWebサイトのリニューアル目的だったプロジェクトがどのようにして、メンバー個々の内面にまで切り込む全体のリデザインプロジェクトになったのか、そうして作り上げたCIとは?、そしてこれからの「チーム・組織」について、3人の振り返りをまとめました。

リデザインプロジェクトのきっかけ

田島:

2016年8月にジェネシア・ベンチャーズを創業した時から、自分の頭の中にCI(コーポレートアイデンティティ:ビジョン/ミッション/バリュー)を言語化したものはありましたが、それらは、チームメンバーをはじめ、支援先やLPを中心としたステークホルダーに伝えることを意識した言葉・表現ではなかった気がします。2019年になり、これからのジェネシアを共に築いていくコアメンバーが揃ってきたこのタイミングで、それらをデザインし直すことができたのは、とても良い機会でしたし、大きな学びが多々ありました。自分としては、創業時に抱いていた価値観は大切にしながらも、メンバー一人一人の“Will(自己実現のビジョン)”がしっかりと込められた、チームとしてのCIを改めて言語化できたと思っています。

代表取締役・ジェネラルパートナー 田島
鈴木:

僕は2018年12月にジェネラルパートナーとしてジョインして、まず手をつけたかったのがWebサイトのリニューアルでした。というのも、今後、日本だけでなく海外でもチームを拡大していく中で、我々が「どういった社会を実現したいのか」「その手段としてベンチャーキャピタルを選択していて、どういったバリューを大事にしているのか」といったことを改めて言語化し、デザインにまで昇華したいと考えていたからです。

当時のサイトと掲げられていたビジョン
鈴木:

そこで、当初はWebサイトのリニューアルプロジェクトということでデザイナーさんを探し始めたのですが、最終的にプロジェクトに参加してもらうことになったのが、わりえもんさんでした。そこでわりえもんさんから、WebサイトだけでなくCIを含めた提案をいただいたことが、大きなきっかけでしたね。

田島:

見た目に加えて、情報を受け取る人への伝え方やコミュニケーションの仕方も含めて、それらのデザイン設計を考える「リデザインプロジェクト」としたのも、今回の特徴だね。

割石:

2018年末、ジェネシアの2号ファンド組成のタイミングで(鈴木)タカさんがジェネシアに参画するにあたり、「Webサイトのリニューアルをしたい」とのことでお声がけいただきました。
一年前に、 アプリコット・ベンチャーズ(代表の白川さんは、田島・鈴木の前職後輩)の立ち上げをお手伝いする際にVCをリサーチする中でジェネシアのこともチェックしていました。ただ、今だから素直に言いますが、その当時の印象では、ジェネシアが何を志して、どういう意図で投資をしているのか、理解しやすいものではなかったと思います。
なので、タカさんがジェネシアについて語ってくれる中で、Webだけではなく、そのビジョンやミッション、それを体現するビジュアルデザインに至る全体を正当に表現するお手伝いをしたいと感じ、こちらから提案させていただきました。

OH アイデンティティデザイナー わりえもん氏

リデザインプロジェクトで目指したこと

割石:

ジェネシアのみなさんの実際の姿や印象と対外的なイメージをイコールにすること、そしてメッセージを正しい距離感で表現するのがゴールだと考えていました。
まず、ジェネシアのみなさんとお会いした時に、とても誠実で明るくフレンドリーな印象を受けたのですが、当時のWebデザインは、暗く固く「遠い存在」といった印象が大きく、そこに大きな齟齬があると感じました。
ベンチャーキャピタルとして、起業家にとって「遠い存在」と「近い存在」の二つがあったときに、ジェネシアはどういう存在であるか、また、どういう存在を目指すか。シードアーリー期からの投資を実行する起業家の伴走者として「近い存在」の側にいたいとはいえ、近づき過ぎない。誰でもいいわけじゃなく、「本気」の人たちとだけビジョンの実現を目指したい。そうしたジェネシアのみなさんのスタンスから、「開かれたVC」というイメージを定め、適切な距離感を丁寧に取ろうと思いました。
この距離感の提案について、田島さんやタカさんをはじめ、みなさんと最初に合意を取れたことが、チームをひとつにし、最終的に全体に強い統一感をもたらしました。

起業家との「距離感」の定義が、チームをひとつにした
鈴木:

当初はWebサイトのリニューアルプロジェクトだと考えていましたが、田島やわりえもんさんとコミュニケーションをとっていく中で、Webサイトなどの見た目だけでなくCIを含めた“伝え方”全体のリデザインプロジェクトになりました。僕も田島もビジョン/ミッション/バリューなどの重要性を理解していたつもりなので、とても自然なかたちでプロジェクトがスタートしましたね。
そうして、まずはチームやわりえもんさんと、CIに関する議論を進めていったわけですが、結果的にそこから、そもそもの目的であったWebデザインについての「よりオープンネスな、開かれたVC」というコンセプトも定まりました。

ジェネラルパートナー 鈴木
田島:

今回のプロジェクトに際して、私の中には大きく2つの目的がありました。
1つ目は、私自身が創業時に抱いていた想いや価値観は大切にしながらも、メンバーの想いもリンクさせた、チームとしてのビジョン/ミッション/バリューを構築し、共通の想いとしていくこと。
2つ目は、私たちの想いを伝えていくことで、共感してくれる本気の仲間を増やし、私たちが今回新たに言語化したビジョンである「すべての人に豊かさと機会をもたらす社会の実現」に実際に繋げていくことです。

リデザインに込めた想い

割石:

まずはCIにおいて、最初に取り組んだビジョンの再定義にはとても大きな意味がありました。当時掲げられていた「WE BUILD THE PLATFORM FOR THE NEXT HUGE AND SUSTAINABLE INDUSTRIES IN ASIA」というビジョンは、Webデザイン同様、堅牢なイメージを受けるものでしたので、受け取る人たちに等しく伝わるものにする必要がありました。
そこで、既存のビジョンを通して達成したい、チームのみなさん一人一人の想いを一度整理していただき、そこに断片的に言語化されていた未来像を一つにまとめ、「すべての人に豊かさと機会をもたらす社会を実現する」というビジョンに新たに落とし込みました。

今回刷新したサイトとビジョン
鈴木:

当時掲げていたビジョンが、実はミッション(手段)だったというのは本当に大きな気づきでした。その先にある、僕たちが実現したい未来像に改めて一人一人が向き合い、ミッションの先のビジョン(世界観)に辿り着きました。

田島:

自分はもちろん、みんなで出し合ったWillの言葉がまとまった手触り感というか自分事感があって、それこそ一瞬で浸透した気がしました。

割石:

このビジョンから紐解き、”Be fair to all(すべての人に公正・公平であれ)” というデザインコンセプトを掲げ、ロゴタイプはフラットで真っ直ぐな印象を与えつつ、Genesiaという文字のシルエットを活かした偏りのない(公正・公平な)デザインに、シンボルは元々掲げられていた正二十面体をそのまま活かし、ブラッシュアップしました。正二十面体は、頂点同士の距離がすべて等しい図形であることから、今回のビジョン・コンセプトととても親和性が高く、これ以上に最適なシンボルはないと感じました。ブラッシュアップするにあたり、点と線だけで構成し直し、ステークホルダーという「点」を等しく繋ぐ「線」になることにより、「面(すべての人に豊かさと機会をもたらす社会)」を描く、という、ストーリーを体現しました。

新しいシンボルは、正二十面体を点と線で再構成
田島:

正二十面体は創業時から掲げているシンボルです。ジェネシアのメンバーや支援先、LPを中心としたステークホルダー同士が有機的に繋がり、密接に連携していくことを通じて、それぞれがビジョンを実現していく状態をイメージしています。また、頂点同士の距離がすべて等しい図形には、ジェネシアというチームの在り方として、旧来型のヒエラルキー型組織ではなく、お互いを尊重し合い高め合えるプロフェッショナルチームでありたい、そしてチームであることをメンバー個々の自己実現に繋げていきたいという想いも込めています。

割石:

結果的に、ビジョンからロゴデザインに至るまで芯の通ったものにできたことで、Webサイトやステーショナリーのデザインは、そこから導かれるものを描くだけ、という理想的な形を実現できました。
特に、シンボルを構成する点と線は、デザインパーツとして、UI・装飾に用いることで、全体に一体感のあるデザインをもたらしてくれました。

これからのジェネシア・ベンチャーズについて

鈴木:

僕たちは、変わることなく「すべての人に豊かさと機会をもたらす社会を実現する」ことを目指していきます。当面は現在のベンチャーキャピタルの仕事を通じて、社会への貢献、起業家への貢献、投資くださっている方々への貢献をしっかりとしたいと思っています。
一方で、今の仕事だけではビジョンの実現は難しいとも考えているので、将来的にはベンチャーキャピタルという手段だけに拘らず、ビジョン実現のために必要な挑戦をし続ける当事者であり続けたいと思います。

割石:

今回わたしがお手伝いさせていただいたのは、みなさんの元々持たれていた想いや意思をあるべき形に再定義し直しただけで、ジェネシアが志すもの・行うこと・目指すものは最初から変わっていません。
そういう意味で、「これまで」も「これから」も関係なく、最初からジェネシアのみなさんが目指す世界は実現されると一点の曇りもなく信じています。
なので、これまでのように、みなさんの目指す世界の実現に対して真剣に取り組む姿勢を示し続けてもらえればと思っています。わたし自身もジェネシアの志と姿に惹かれている一人なので、みなさんに寄り添える存在であり続けたいなと思っています。

田島:

引き続き、私たちのビジョンである「すべての人に豊かさと機会をもたらす社会の実現」に向け、ベンチャーキャピタルという役割を通じて、「アジアで持続可能な産業がうまれるプラットフォームをつくる」というミッションを着実に果たしていきます。そのために、起業家と投資家の繋がりだけではなく、大企業や財閥、行政、NGO・NPOなどの非営利組織といった、持続的な産業創造に関わるあらゆるステークホルダーとオープンかつ密接に連携していきたいと思っています。
鈴木の言うとおり、私たちのビジョン実現のためには、私たちが”今ベンチャーキャピタルとして果たしている役割”だけでは難しいと思っています。例えば、世の中には、事業規模の大きさを追わずとも、「すべての人に豊かさと機会をもたらす社会の実現」に欠かせない、素晴らしい想いや志を持つ人たちがたくさん存在しています。私たち自身がベンチャーキャピタルとしての枠組みを超え、その在り方そのものを進化させていくことを通じて、「すべての人に豊かさと機会をもたらす社会の実現」に向けた全ての人を応援できる、そんなプラットフォームを実現していきたいと考えています。

(写真:尾上恭大さん、聞き手/まとめ:ジェネシア・ベンチャーズ 吉田)

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