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ジェネシア・ベンチャーズがESG Summit 2022を開催する思い

ESG

EVENT

来たる11月28日(月)、ジェネシア・ベンチャーズ初の大型イベント「ESG Summit 2022 ~イノベーションによるESGの新潮流〜」を開催します!この数か月、イベント開催に向けて奔走してきた事務局メンバー。シードVCである私たちがこのイベントを開催する思いやESGの未来について座談会形式で語りました。既にお申し込みいただいている方はもちろん、イベント参加を迷っている方、知らなかったという方、一緒にESGのこれからについて考えてみませんか?ジェネシアチームの思いをぜひ感じとっていただけると嬉しいです。

事務局メンバー

目次

自分にとってのESGとは?

宮原:

ESG Summitの事務局メンバーは、元政府系金融、元コンサル、キャピタリスト、学生インターンと様々なバックグラウンドを持っています。皆さんはESGをどのように捉えていますか?

河合:

私はもともと政府系金融機関で働いていたこともあり、公益性と収益性の両立は常に意識してきましたし、またその難しさも実感していました。社会課題解決の必要性は多くの人が共感するところですが、一方で経済的に自立し成長できなければ、そのような意義ある取り組みを持続的に行うことは難しく、また広く社会にインパクトを与えることもできません。気候変動問題にしても貧困撲滅にしても、長期的な時間軸を前提にする以上、なかなか個人も企業も自分事として捉えづらかったところ、長期的な投資価値の最大化を求める年金等のアセットオーナーを起点として、資本市場から働きかけていくというESGの枠組みは非常に有効です。かつては対立軸で語られがちでしたが、ESGの推進が経済的な価値に結びつく、公益性と収益性は相反するものではなく、むしろ相乗効果が期待されるという考え方は、大きなパラダイムシフトだと思います。

宮原:

ESGという公益的な概念がビジネスの世界においても主流になってきているということですね。

河合:

いまはESGの考え方が広く受け入れられ始め、ESG経営は何か特別なことではなく、この潮流に上手く対応できなければビジネス上も不利になる、あるいはESGへの積極的な取り組みを新たなビジネス機会と捉える企業も増えてきました。このような動きを加速する手段として、様々なテクノロジーや事業モデルも生まれてきています。公益性と収益性の両立が当たり前の時代になれば、多くの社会問題が解決されると期待されますので、これからもESGの発展に貢献していきたいですね。

宮原:

祝さんは民間セクターでの経験が長いですが、どのように感じていましたか?

祝:

私は直近金融機関で投資業務に関わっていましたが、2018年くらいから日本でも機関投資家、金融機関中心にESG投資という概念を掲げる潮流が出てきて、直近2年くらいで更に爆発的に広まったと感じてます。
最初は新しい概念のように聞こえましたが、中身を見ると要素要素は結構当たり前のことで、企業或いは社会が持続的に発展するために必要なことを、シンプルにパッケージングしたものが「ESG」なんだなと捉えています。コロナで未知の災害が起こりうるということを全世界が経験し、超長期の目線でEとSとGを経営の中で真剣に考える必要性について、グローバル全体でコンセンサスが取れ、ESGという言葉がより一般化したように見受けられます。

宮原:

一戸さん、圭吾さんは新卒キャピタリストですが、VC経験を通じて感じたことはありますか?とくに圭吾さんは今年から社会人ですよね。

一戸:

私は学生時代からジェネシア・ベンチャーズで働き始めましたが、元々VCに興味を持ったきっかけは、VCであれば社会のあらゆるステークホルダーと連携してビジネスを立ち上げることができ、結果的に特定の業界・業種に留まらない社会全体へのインパクトを最大化できるのではないかと考えたことでした。ESGは、企業の長期的な成長に向けてこれまで以上に多くのステークホルダーを視野に入れる必要がありますが、それはまさに自分自身がVCとして行いたかったこととアラインしていて、ESGについて理解を深めていく中で次第にそれに気付かされてきました。

水谷:

私は大学で経済学を学んでいたのですが、その中でも主に「経済思想」に強い関心がありました。最近になって「新しい資本主義」という言葉がよく使われたりしていますが、じゃあ「今の資本主義」って何なの?というのを突き詰めて考えるとなかなか難しいなと気づきました。そこを分析していくのが「資本主義論」や「資本主義研究」といった、経済学の中ではそこそこニッチな分野なのかと思います。今でもそこに強い興味がありますね。

宮原:

資本主義という経済思想を学ぶ中でESGについて考える機会があったんですね。

水谷:

今の資本主義やこれからあるべき社会を考える上で、ESGという概念にも自然と興味を持ち始めた、という経緯があります。ESGは資本主義に逆行するものではなく、行き過ぎた資本主義を滑らかに適切な資本主義へ移行させるカギだと理解しています。悠長に考えてはいられないほど環境問題などは差し迫った喫緊の課題だという前提のもとで、現行の資本主義とESGを上手く絡めていく必要があり、そのプロセスとして世界の動きを注視しながら自分としても考えを巡らせているような状況です。

河合:

宮原さんは海外歴が長いですが、グローバルな視点ではどうでしょうか。

宮原:

私はもともとイギリスの大学で発展途上国の開発問題を勉強をしていたのですが、サステナビリティやフェアトレードといった現在のESGにつながる概念は以前からあったように思います。あくまで「発展途上国の課題」という捉え方をされていましたが、ミレニアム開発目標(MDGs)の後継としてSDGsという目標がグローバルキャンペーンに乗って世界に広がり、そして資本市場と絡み合ったことで、先進国でも環境や社会配慮、そして健全な企業活動について着目されるようになったと思います。個人的には「ESG」という一種のラベリングにより、さまざまなステークホルダーの共通言語が生まれたように思います。

祝:

曽我部さんは大学院で勉強をしながらジェネシア・ベンチャーズのインターンをしていますが、なにか発見はありましたか?

曽我部:

私は現在大学院で環境工学の研究を行っているため、ESGの中でもEについてはとくに意識してきました。アカデミックな分野でも、Eに関連した分野は盛り上がりを見せていて、そこから生まれるテクノロジーにより持続可能な社会の実現は加速していくと思っています。また、S、Gについては学生インターンとしてジェネシア・ベンチャーズに参画したことで、より詳しく触れるようになりましたが、中身をよく見ると皆さんがおっしゃっているように以前より概念はあったものの、必ずしも実行されていなかったと思われるものが多く、今まではrecommendであった概念が社会の変化の中で、対応していないことがリスクと受け止められmustへ変化してきているのだと感じています。

ESGのこれからをどう考えるか?

宮原:

ESGという言葉が広く普及しているのは皆さん感じられていることだと思いますが、今後どのように発展させていく必要があると思いますか?

河合:

これまでは、どちらかというと概念が先行してきた側面があり、その発展過程では「ESGウォッシュ」といった実効性を伴わない見せかけの問題も生じてきました。また、インフレの加速や実態経済の悪化が懸念される現在のような状況では、経済環境が良かった時には表面化しなかった政治的な対立も生まれています。こういった逆境を乗り越えていくためには、ESGへの取り組みが確かに経済的な価値創造に貢献しているという事実をエビデンスとして積み重ね、それを可視化して理解を得るような仕組みが必要になってくると思います。その意味では、非財務情報の開示基準づくりや実務的な定着、社会インパクトの計測方法の高度化などが大切になるのではないでしょうか。また、資本市場や企業側の取り組みだけでなく、個人消費者の意識や行動も着実に変化していて、就職先の選択基準にESG要素を考慮するなど、労働市場を通じたESGの促進にも期待しています。

宮原:

まさにESGの取り組みの可視化や仕組みづくりが鍵になりますね。

祝:

ESGという言葉がパッケージ化して先行してますが、これからはESGを要素分解して各企業の体質に合った形で自社の強みにしていく必要があると考えてます。ESG経営を如何に財務リターンに変えていくか、逆にそれが出来ないと投資家は評価してくれないですし、持続的な成長に資するという元々の仮説が崩れてしまいます。ESGの中で自分たちは何をするか、個々の会社はそれをしっかり定義していくことが重要になってくると思います。

宮原:

私は以前、政策金融機関で日本企業の海外事業展開のサポートに関わっていて、欧州の国連機関で勤務する機会がありました。そこで感じたのは、とくに環境先進国といわれる欧州では、EUタクソノミーに基づいて法的拘束力を持った枠組みが早々に形作られ、ESGの取り組みが社会全体として後押しされていました。一方、日本では2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、政府によるガイドラインの制定やタスクフォースづくりなどキャパシティビルディングは行われていますが、もっと強制力を持たせるべきだという批判的な声も散見されます。しかしこうした日本のやり方は、「ESGの再定義」について考える余地が与えられているようにも思います。企業のみならずさまざまなステークホルダーが自らの企業価値や存在意義を見直し、その因数分解を行うプロセスこそが大事なことではないかなと思います。

水谷:

企業単位でももちろんですが、ひとりひとりの意識づくりも今後大切になってきますね。

一戸:

私はこれまで以上にさまざまなステークホルダーが連携することが重要だと感じています。各社が各々の持ち場での長期的な成果を最大化することを大前提として、自社や距離が近い企業に留まらず、さまざまなステークホルダーの取り組みを認識し、関わることで、社会的なインパクトをより一層拡大することができると考えています。その意味では、ESG Summitは行政や金融機関、大企業、スタートアップなど、幅広い属性の方々にご参加いただく予定なので、そういった交わりが生まれることも楽しみにしています。

水谷:

ESGという言葉が投資家や大手企業の経営者だけのものにとどまってはいけないと感じていて、どれだけ多くの人が環境問題や社会問題を「じぶんごと」として捉えて各自の行動指針を変えられるのか、が重要になってくるなと思っています。レポーティングのためのESGではなく、なるべく多くの人を巻き込めるような、「上から目線の押し付けがましさ」を排除した動きが行政・民間それぞれで起こると良いなと感じています。

曽我部:

ESGを投資基準に組み入れていくという評価構造は不可逆的に広まってきていて、今後それがスタンダードとなっていくのではと感じています。その上で企業が経営戦略の中にESGを取り入れることが一時的なブームではなくより一般的な物へと変化していくことがあるべき姿なのかなと思います。

なぜ「シードVC」であるジェネシアがESG Summitを開催するのか?

宮原:

では最後に、なぜシードVCであるジェネシアがESG Summitを開催するのか、そしてイベント開催を通じてESGの今後について期待することについて話し合ってみたいと思います。

河合:

私たちがESG Summitを開催する背景ですが、ジェネシア・ベンチャーズは「すべての人に豊かさと機会をもたらす社会を実現する」というビジョン、「アジアで持続的な産業がうまれるプラットフォームをつくる」というミッションを掲げており、これらを実現するための基礎的なアプローチとしてESGは私たちにとって欠かせないものと考えていることや、ESGの取り組みはエコシステム全体がアセットやナレッジを共有することで加速するため、産業創造に関わる様々なステークホルダーが一堂に会しディスカッションをすることで社会全体を大きく前進させるきっかけを創りたいと考えたのがESG Summitの開催に踏み切った背景です。
もう一つは、ジェネシアが投資先スタートアップのESG経営支援を行っている理由とも共通する話ですね。つまり、特にまだ創業間もないスタートアップの場合、基本的にあらゆるリソースが不足していますし、明日の生死を掛けて事業成長に邁進する中で、ESG経営に取り組む余裕など無いのが現実です。そこでジェネシアでは、不足するリソースを補完すべく、ESGソリューションという形でスタートアップがESG経営のために活用できるサービスを提供しています。ただし、このような取り組みは単に業務オペレーションの一部を肩代わりするためのものではなく、スタートアップの経営陣やメンバーの方々に、なるべく早い段階からESG経営の重要性や必要性を意識していただくためのきっかけと捉えています。やはりESG経営というのは、経営者のマインドや組織文化に深く根差したものであり、一朝一夕に構築できるものではないからです。

宮原:

スタートアップと二人三脚でESG経営について考えることは、シードVCであるジェネシアの宿命のようなものも感じますね。

河合:

そうですね。そのようなESG経営の促進に向けた啓蒙的な思いを、ジェネシアの投資先だけではなく、スタートアップ業界や新産業創造に取り組む多くのステークホルダーに働きかけることで、エコシステム全体の発展に貢献していきたいと思っています。
また、今回のイベントでは、各セッションのテーマに関する講演内容もとても楽しみですが、様々なステークホルダーの方々が業界の垣根を越えて繋がることで、参加者の皆さまが新たな気づきを得たり今後の協業機会に発展するきっかけになれば、主催者としてはこれ以上なく嬉しいですし、そのような想像をするだけでワクワクしますね。

宮原:

企業のESG経営について大企業を見てきた祝さんの視点ではいかがでしょう。

祝:

今までは上場企業中心にESGの注目が高まってました。今回のパネルディスカッションのひとつ「ベンチャー企業にESG経営は必要か」のテーマは非常に興味深いですし、楽しみにしているセッションのひとつです。大企業と今まで接してきて感じたのは、肥大化し歴史の長い組織カルチャー、経営のマインドセットはそんなに簡単に変わらないということです。その分ベンチャー企業は、CI(Corporate Identity)に元々ESG的な要素が入ってる会社も多く、ESG経営マインドの実装は比較的やり易いのかなとも感じてます。財務的なリターンとのバランスはどうしても課題として出てくると思いますので、この辺をどういう風に考えるか、またはどういったやり方があるのか、色々お話聞きながら自分でも考えてみたいです。

一戸:

ESGにおけるスタートアップの役割の明確化がポイントになりそうですね。

宮原:

ESGにアラインした非財務指標の開示は投資活動を行う企業にとってますます重要になっていますが、グローバルに目を向けると、途上国・新興国では高い経済成長や旺盛なエネルギー需要を背景に安価な石炭由来のエネルギー源が重宝される国などもあり、一口にESGといっても各国の事情によりさまざまな捉え方があります。そうした多様な国々が共存する社会でESGを社会実装していくには、イノベーションや発想力という武器でスピーディに課題解決に取り組むスタートアップの存在は欠かせません。今回のイベントをきっかけに、いま一度「ESG」のこれからについて、いろんな企業、ステークホルダーの方々とお話しさせていただければと思っています。

一戸:

私が期待しているのは2つで、1つは先ほどもお話したさまざまな属性のステークホルダー間の交わりで、もう1つは宮原さんのお話と近いですが、その中におけるスタートアップの役割の明確化です。ESGにおいてイノベーションは必要不可欠であり、イノベーションにおけるスタートアップの存在もまた同様です。イベントを通して、各社が何を強みとし、いかにシナジーを生み出せるのかということを理解し合う中で、スタートアップにより注目が集まるようになると嬉しいなと思います。

曽我部:

ESGの最前線を走られているパネリストのお話しが聞けるだけでなく、パネルディスカッションを通じて多面的な意見が聞けるということで、今まで知らなかった物の見方や知見を得られるのではないかと期待しています。

水谷:

様々な立場で様々な取り組みをされている登壇者の皆さまの思考にまとめて触れられる、という点で、どのセッションも非常に楽しみですね!

最後までお読みいただきありがとうございました!ジェネシア一同、当日皆さまと会場でお会いできるのを楽しみにしております。

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