
土台となる組織の価値観の上に、構造物のように「自分たちらしさ」を積み上げていく|クラウドワークス 吉田 浩一郎
ジェネシア・ベンチャーズがスタートアップ起業家に向けて立てた『10の問い』。
本稿では『CI/Mission/Vision』というテーマで、クラウドワークスの代表取締役社長 兼 CEOである吉田 浩一郎さんにお話を伺いました。※CI(Corporate Identity)

- 人の心を惹きつける大きなビジョンを描けているか?
- 実現への道筋/戦略を、言語化 / ビジュアル化し、仲間が自分の人生を投資したいと思える魅力的なプレゼンテーションができているか?
という問いへの、吉田さんの回答はー?
- 目次
- 最初の起業の失敗から三年半、あるとき腹落ちした「ミッション」の意味
- 自分自身の強みの先にある夢=ミッションには、周りをも変える力がある
- ミッションの言語化においては、広い意味を持ち、時代に合ったものを意識
- 「社内の問題解決ソリューション」の言語化で、社長自身の変容が促される場面も
- 組織の価値観という土台の上にルールを置く構造で、「自分たちらしさ」が機能する
- 自分たちの強み(Who are we?)不在のM&Aでは、カルチャーの統合も成功しない
- 働き方と社会環境の相関に注目して、“今”に寄り添った組織創りを
最初の起業の失敗から三年半、あるとき腹落ちした「ミッション」の意味
吉田さんは、クラウドワークスがご自身にとって二社目の起業です。ここまで様々な会社経営にまつわるイベントを経験されているかと思いますが、組織創りやミッション・ビジョン・バリュー(以下:MVV)へのお考えやその変遷についてお伺いしたいと思っています。
2008年に創業した一社目にはMVVはありませんでした。しかしながら、その失敗の中でMVVの必要性や大切さを学んだので、クラウドワークスではその学びを活かそうと決めていました。2011年に創業したクラウドワークスでは、創業期に特に機能したのはミッションとビジョンで、行動指針やバリューが定着・機能し始めたのは、2014年の上場を経て、働き方の価値観や指針を定義しようという動きが活発になってきた2017年頃からでした。
一社目の経営の中でMVVの必要性を感じられたというのはどういった理由からだったのでしょうか?
一社目の起業の経緯に触れておくと、私はその前職のドリコムで営業担当の執行役員として上場を経験しました。その経験をもって起業したわけですが、その名の通り、私には“営業担当”というViewしかなかったんです。当たり前ですが、企業には営業だけではなくプロダクト開発や管理といった役割も必要です。でも、起業した私には圧倒的にその認識が欠けていて、まず「売るものがない」という壁にぶつかりました。それで当初は上場に向けた経営のコンサルティングなどで日銭を稼いでいました。創業期の弁護士ドットコムの社外取締役をしていたのもこの頃です。
起業したものの、自社のプロダクトはないところからのスタートだったのですね。
事業やプロダクトのアイデアは、正直全くありませんでした。私は、新卒で入社したパイオニアでCD-ROMからDVDハードディスクへと大きく変遷したカーナビ業界を経験しました。次の半導体業界でも、液晶の普及とともに伸長する市場を目の当たりにしました。つまり、テクノロジーの進化とともに大きく成長する市場に身を置いてきたので、「成長市場でビジネスをすれば儲かるだろう」とは考えていましたが、裏を返せば、それくらいの解像度でしかありませんでした。それで、次の成長市場はどこかと、中国でのワイン事業だとかドバイでの建築事業だとか、本当にいろいろな国に足を運んで事業のタネを探していました。最終的には、ベトナムでのジャパニーズファッション関連事業が一応立ち上がったんですが、大量の在庫を抱えて事業は終了。仲間たちは全員会社を去るという結末を迎えました。
現在の吉田さんに結びつく要素が全く見えないと感じられるくらい、大冒険を経験されているのですね。
友人たちにも「よく(まともな場所に)戻ってきたな」と言われます。ただ、やっぱり失敗から学ぶことは大きかった。当時、去っていった仲間を恨みながら数ヶ月を過ごしていた中で、ふと「これは自分自身が招いた結果なのだ」「自分自身が変わらなければ」と気付くタイミングがありました。36歳の年末です。一人きりのオフィスに、過去の取引先からお歳暮が届いたんです。それがもう本当にめちゃくちゃ嬉しくて、自分が寂しかったんだということにも気付きました。好き放題して、お金を儲けることしか考えていなくて、ついに一人ぽっちになってしまった自分。それでも、覚えていてくれる人がいたこと。その、人との繋がりを本当に嬉しく思ったんです。それで私の中に「人と繋がり、人に貢献して、感謝されることが何よりも重要」「そうしたアクションに全身全霊を捧げたい」という気持ちが芽生えました。それがおそらく、ミッションやビジョンという概念がわかり始めたタイミングだと思います。日本には400万社の企業がありますが、自分たちがその事業をする意味=存在意義は何かといえば、それは「ミッション」なんだと。最初の起業から三年半くらいを経て、初めて自分の中で腹落ちしたんです。

自分自身の強みの先にある夢=ミッションには、周りをも変える力がある
「ミッション」の意義に気付かれてから、ご自身のミッションをどのように探索し、言語化していったのでしょうか?
「自分自身の強みの先にあるもの」や「自分自身がどうしても譲れないもの」でないとミッションにはなり得ないと考えました。例えば、システム開発会社を創るのであれば、システム開発に強みのある社長が経営した方がいいでしょう。つまり、私自身のミッションを起業という手段で実現するとしたら、私自身の強みの先に企業としての夢や存在意義を描く必要があるだろうと考えました。そして、そのミッションに基づいた具体的な事業目標がビジョンなんだと、自分の中で整理しました。その上で、自分自身の強みを改めて棚卸してみたところ、私が人に提供して喜ばれているのは、やっぱりIT領域の法人営業の経験・知見だというところに辿り着きました。じゃあそこに全力を投じようと。あとは、当時五つくらいの事業を並行していたので、自分自身の気持ちや資金が全て五分割されていることに気付きました。一点突破で大企業よりも早いスピードで事業を拡大するのがベンチャーたる所以と考えると、やっぱり一つの事業に集中しようと決めました。株式の意味についても考えました。株式というものには資金調達手段という以外にも、地層のように積み重なった過去の成功者の知見やネットワークの力を得たり、そういった人たちの仲間にしてもらったりといった意味もあるんだと。それで、BtoBの領域×一点突破×ベンチャーとしてエクイティでの資金調達をして、もう一度チャレンジしようという設計ができました。その時に出会ったのが、当時サイバーエージェント・ベンチャーズ(現:サイバーエージェント・キャピタル)の代表になったばかりの田島さん(ジェネシア・ベンチャーズGP)だったんです。
吉田さんとの出会いやその後のエピソードは、田島からもよく印象的に語られます。
一社目の失敗の経緯や、言語化され始めていた自分自身のミッションを話しながら、「そんな私に合うテーマはないか」と相談していたら、田島さんがクラウドソーシングを教えてくれたんです。「吉田さんは、法人営業はもちろんですが、システム開発やマーケティング・広告運用などまで、基本的にITの仕事全般を経験していますよね」「アメリカでは、そうした仕事やプロジェクトを個人が受注する仕組みがあるんですよ」「日本ではまだまだ個人がプロフェッショナルとしての扱いを受けていませんが、この流れは日本にも来るんじゃないでしょうか」と。それで個人的にもリサーチを進めていくと、すごく解像度高く、自分が役に立てるという手応えがありました。これは確実に、自分自身の強みの先に描ける夢なんだと。
Founders Market Fitを実感したんですね。
そして、「“働く”を通して人々に笑顔を」というミッションを掲げました。私もいろいろな企業で働きましたが、一日の大半を捧げる“働く”という営みの中で、人が笑顔でい続けられることは実は少なかったりもする。そこに笑顔を増やしたいと考えました。意思や気持ちの力というのは、本当に強いです。今でも経営者として壁にぶつかった時に考えるんですが、自分の心の持ち方や考え方を変えると、周りの世界や周りの人たちも変わるんです。一番象徴的だったのは、その当時パソナテックの社長だった森本さん(現:ビーウィズ株式会社 取締役会長 森本 宏一氏)が「前回と今回の起業とでは目の色が全く違う。それで応援したくなった」と言ってくださったこと。実際に他にも錚々たる顔ぶれが投資してくださって、私も本気で働きました。そこから一年間は一日も休まず、基本的には一日1,000円だけで過ごして、三年で上場しました。

ミッションの言語化においては、広い意味を持ち、時代に合ったものを意識
ご自身のミッションを実現するための手段として最適と考えられるクラウドソーシングという事業に出会われ、まずは投資家という仲間集めに大きく寄与した「企業としてのミッション」を打ち立てるにあたり、意識されたことはありましたか?
いくつかのチャレンジの中の一つだった、男性用巻きスカートの比較サイト運営と販売事業が当初ものすごくバズったんです。でも、その後はずっと頭打ちの状態。一部の熱狂的なお客様がいるので、事業の意義は感じる。でも、今以上には伸びない。そんな経験から、MVVと同じくらい、市場規模の大きさの重要性も学びました。それで、クラウドワークスのミッションを創るときに心掛けていたのは、とにかく「広い」テーマであること。クラウドソーシングといえば、フリーランスの個人を対象にしたビジネスですが、そこだけに閉じず、人材市場全体・働く人全員を意識した言葉を設定しようと考えていました。それで、「働く」という言葉にフォーカスしたミッションを設定しました。あとは、わかりやすさです。クラウドワークスというシンプルな社名もそれを表しています。また、これも過去の経験からですが、「人は良い夢についていく」ということも体感していたので、“終わりなき追求の旅ができる”ワーディングを意識しました。
大変なこだわりを感じます。効果を実感されましたか?
結果として、説明コストもマネジメントコストもめちゃくちゃ下がりました。誰もが自分ごととして共感できるからです。また、その時代に合っていた感覚もあって、採用へのインパクトも本当に大きかったです。時代の空気を捉える感覚は本当に重要で、当初の「“働く”を通して人々に笑顔を」というミッションを、2021年以降「個のためのインフラになる」に変更したのもそういった理由からです。
はじめに、当初は経営においてミッションが大きな役割を果たしたとおっしゃっていました。その効果は今のお話に多分に表れているかと思いますが、一方で、行動指針やバリューが定着したのは上場後だったというお話がありました。そのあたりの経緯も伺えますか?
バリューの設計については、一社目の失敗で仲間が全員離れていってしまった経験と、もう一つ、弁護士ドットコムの社外取締役をしていた頃の経験が大きく影響しました。私の目から代表の元榮さん(弁護士ドットコム株式会社 創業社長CEO 元榮 太一郎氏)の周囲にいる人たちや組織を見ていると、必ずしも価値観がぴったりと合っている人たちばかりではないという印象がありました。でも元榮さんは「こんな小さな会社に集まってくれてありがとう」と口癖のように言っていて、どんどん組織をまとめていったんです。その姿に、私との大きな違いを感じました。例えるなら、“北風”の私と“太陽”の元榮さんのような。それで、あまり細かいことにこだわらず、関わってくれるだけでありがたいというマインドで経営をしようと決めたんです。その結果、良いことと悪いことがありました。良いことというのは、自分とは全く違う能力を持った強い経営メンバーを集められたこと。悪いことというのは、私が感謝を伝え続けた結果、全く価値観がすり合っていない状態ができてしまったことです。いろいろなタイミングで、ハレーションの連続。なのに、全然対話ができない。まとまらない。そんな状態のまま2014年に29名で上場、2015年には100名の中途採用と2016年には30名の新卒採用をそれぞれ実施、と急拡大する中で社内はしっちゃかめっちゃかでした。とにかく派閥争いがひどくて、誰も私の言うことを聞かない。今考えると、よくあそこまで走ったなと思います。それで2017年頃、自分たちの働き方に関する共通言語を作っていかなければいけないと認識し、バリュー(以下、クラウドワークス社のそれを指す場合は「Value」と表記)を定めることになりました。

「社内の問題解決ソリューション」の言語化で、社長自身の変容が促される場面も
裁量や自由度、相手への感謝も非常に重要なことですが、それだけでもうまくいかない。やはり、組織としての一つの目標に向かう共通の価値観がすり合ってないとハレーションが起こるのですね。そこからどうバリューを策定して組織をリカバリーされたのでしょうか?
2016年10月から始まった2017年9月期の第一四半期で、DeNA社のWELQ事件が起こりました。医療情報のキュレーションメディアで、記事コンテンツの正確性が問われた問題です。その記事制作を、クラウドワークスがまとめて受注していたんです。年間の期待予算は3億円程度。うちの売上全体に対して約20%のインパクトがありました。社内での押し問答を経て、結局は予算を5%ほど下げることになったのですが、すると翌月以降、別のいくつかの部門からも「うちの部でも大手の契約が解約になったので予算を修正させてください」「エンジニアが辞めたので予算を下げてください」といった話がひっきりなしに来るようになったんです。そこに明確なルールや統一された価値観がなかったからです。それで、どういうときに予算を修正するのか?そもそも予算とは何か?目標とは何か?といったところから考えざるを得なくなりました。結果的には、予算に対して110%としていた売上目標を、社内の声によって92%にまで、加えてGoogleのアルゴリズム変更の影響もあり最終的に88%にまで下げることになりました。上場企業として下方修正を出すかどうかのところまで追い詰められたんです。が、そこでみんなの気持ちに火がついた。社内が一転、下方修正だけは避けようと盛り上がり出したんです。その結果、年間予算の達成率は95%という着地になりました。
組織の自浄作用が働いたというか、組織に対しても予算に対しても「やっぱり諦めたくない」という気持ちに火が点いたのですね。
「予算を下げてくれ」と言ったのも「下方修正だけは避けよう」と言ったのも同じマネージャーと同じチームメンバーたちです。そこになぜ全く相反するムーブが起こったのか。私の一つの結論は、目標は元々90%程度までしか合意されていなかったのではないかということでした。90%は何としても達成するという認識があったのだけれど、100%や110%にはみんな合意できていなかったのではないかと。つまり、目標の認識にずれがあったことが原因なのではないかと。それからマネージャー全員に「目標って何だと思う?」と話を聞いていったのですが、本当にいろいろな解釈があって驚きました。それで、クラウドワークスにおける目標というものを定めて、その目標に合意してもらうように働きかけていきました。そのときに設定したのが『Growth Target』というValueです。目標について、今の延長線上にはないゴールとして掲げてそれを必達することと、その必達によって社会からの正当な評価が得られるということの二点を定義しました。目標や事業計画が機能するようになったのはそれからです。以降も、何か問題が起こればそのたびに「どの言葉を定義すればその問題が再発しないか」という思考を繰り返してきています。
問題解決のソリューションとしてのバリューであって、策定や合意のプロセスを経ることによって全員が当事者となり、しっかりと機能するようになったということですね。
クラウドワークスのValueは三つ(参照:『CW Culture』※25年3月31日時点)ありますが、どれも策定の経緯は似ています。私が考えて落とし込んだものではなく、基本的には社内で起きた問題をどう解決するかという問いへの社員の考えを教えてもらい、ソリューションを定義してきました。社長として最終的な意思決定はしてますが、私自身にはなかった価値観というのも結構あって、私自身が変化を促されたということもあります。

組織の価値観という土台の上にルールを置く構造で、「自分たちらしさ」が機能する
クラウドワークスでは、Valueに留まらず、PolicyやMindなど、よりディープなところまで定義されていますが、全て社内の問題ドリブンで細分化して定義されたものなのでしょうか?
一番大きな転換期は、(下記「Management Policy」に含まれる)「生産性向上ポリシー」を策定したタイミングです。一回目の起業の経験から、「なぜこの会社で働くのか」という上段の意味づけをした上で、事業に関するより具体的なPolicyを作るという手順を踏むことが重要だと考えていました。2017年9月期からValueを作り始めて、2020年9月期からは生産性向上ポリシーに着手しました。


MVVをより身近な行動や思考に落とし込むものという位置づけでしょうか。
生産性向上というのはビジネスというゲームのルールみたいなもので、どこの会社でも取り組むものですよね。それを自分たちらしく運用するためには、やはりValueという土台がないといけなかった。MVVという組織の価値観=土台の上に、ルールを載せる。その順番も重要だと思います。
ただルールだけを敷いても形骸化してしまうから、「なぜそうするのか?」を先に定めておくということですね。
一方で、長く言語化に取り組んできた『CW Culture』にも、実は言語化されていない背景や前提があると感じるようにもなりました。例えば、『意志を持って取り組む』というMindを持って取り組まないと『Growth Target』というValueは実現しない。そこに気付いてから、Valueを起点に、その手前の話なのか、それを前提とした話なのか、といった考え方をするようになりました。メタの構造を意識するというか、土台となる価値観の上に建造物を作っていくような感覚です。
まさに上記の図①は、構造物をイメージさせる表現になっていますよね。

自分たちの強み(Who are we?)不在のM&Aでは、カルチャーの統合も成功しない
少し話題を変えます。シード・アーリーのスタートアップにおいても、M&Aによるグロース戦略やロールアップ戦略の実行が少しずつ増えてきている印象がありますが、企業同士の事業や組織文化の統合や統一といったポイントへのご意見を伺えますか?
私たちも過去の失敗から学んで、今があります。「自分たちの強み(Who are we?)を自覚的に取り扱えるか」という一点が、M&Aにおいては非常に重要です。「Who are we?」が定かでない無意味なM&Aがたくさんあると思います。それでは、組織の統合も当然うまくいきません。私たちもまだまだ、M&Aの件数は累計で17社、直近一年で7社という駆け出しの状態なので、本当に一社一社と対話しながら試行錯誤しています。そこに、先ほど出てきたCultureやPolicyをどう作るかといった話題が絡んできます。組織の統合に関して、今のところ一番大きなポイントは「創業者が抜けるか否か」。創業者が残る場合は、やっぱり元の会社のカルチャーを尊重しています。一方で創業者が抜ける場合は、従業員の人たちも「新しくチャレンジしたい」と考えているケースが多いので、その意志を引き出してフルスイングできる環境を一緒に考えましょうと働きかけています。問題解決ソリューションとしてのPolicyやMindなど、既にクラウドワークスで言語化しているものは、発生した課題や問題に応じて必要なものをご紹介するようなスタンスでPMIを行っています。

働き方と社会環境の相関に注目して、“今”に寄り添った組織創りを
最後に、今、AIの躍進が目覚ましいです。事業と組織創り、両方の観点でそのあり方が変化する可能性が高いと思いますが、これから意識すべき点などがあればお伺いできますか?
起業も本当にミニマムサイズでできるようになりましたよね。クラウドワークスを創業した2011年といえばまだ全員出社が当たり前でしたが、今だとオフィスもいらなかったりエンジニア不在でのシステム開発もある程度できるようになっていたりする。そして、働く側にとっても同様に、いろいろな機会が増えてきている。働き方の価値観というのは、その時代の社会環境が大きく影響すると思っています。新卒の営業競争だとか全員出社だとか、以前は当たり前だったことも今では難しかったりする。だから間違いなく、今の時代に寄り添って組織を創っていく必要がありますよね。私も、2011年創業の自分たちのカルチャーが今の時代の会社や人に必ずしも当てはまるわけではないという感覚を強く持っています。例えば、クラウドワークスにグループインしたAI techという企業を見ると、本当に多様としか言いようがありません。DtoCのサービスごとに一つの会社を立てていたり、みんなが複数プロジェクトを抱えていたりして、その中でうまくいったプロジェクトがあれば相乗りすればいいという軽やかさがあります。リスクを冒してスタートアップにジョインしているという感覚ですらない。そういった働き方を許容しながら、現代における“北風と太陽”でいう“太陽”戦略みたいなものを、働く人が笑顔で集まることのできるような職場環境を、試行錯誤しながら創っていく必要があるのかなと考えています。

※こちらは、2025年4月15日時点の情報です
- インタビュアー:ジェネシア・ベンチャーズ Investment Manager 黒崎 直樹、PR Specialist 李 彩玲
- 編集:ジェネシア・ベンチャーズ Relationship Manager 吉田 愛
- 写真、デザイン:尾上 恭大さん、割石 裕太さん