
【勉強会】経営×人事:生成AIで採用や人事戦略はどう変わる? #AI時代の組織創り
AIの進化が私たちの働き方や組織のあり方に大きな変革をもたらそうとしている中で、AIを活用しながらいかに変化に強い組織を構築していくかは、多くの起業家・経営者や人事担当者にとって避けては通れないテーマです。
そこで、今回ジェネシア・ベンチャーズでは、投資先スタートアップの皆さん向けに『#AI時代の組織創り』をテーマにした勉強会を開催いたしました。
POSTSの梶谷さんをゲストスピーカーに迎えた、勉強会当日のトピックを一部ご紹介します。
AI活用のインパクトが出やすい業務と、そうではない業務
実際、AIは人事領域のどのような業務に活用でき、逆にどのような業務には不向きなのでしょうか。
梶谷さんからは、AI活用のインパクトが出やすい業務として、
- 職種グレード表の作成
- 採用要件の作成
- 採用候補者向けの資料やコンテンツの作成
- 採用面談におけるAI議事録ツールの活用
- 新入社員向けオンボーディング用チャットボットの作成
- 1on1の効率化
- 各種企画業務のサポート
などが挙げられました。
職種グレード表や採用要件の作成については、「LLM自体が各職種の必要要件に関する膨大な情報を持っているため、非常に質の高いアウトプットが期待できる」とのこと。例えばエンジニアやデザイナーといった専門職についてあまり知識がない経営者や担当者でも、その採用や配置に苦慮しないアウトプットが得られる可能性を示してくれました。また、1on1については、「ヒアリング項目の洗い出しやフィードバックの言語化をAIが支援・効率化してくれる」「私の支援先でも実際にうまく活用している企業がある」と、AIの有効性を語ってくれました。
一方、現時点ではAI活用に慎重な姿勢をとるべき領域として、
- 人事評価への直接的な利用
- 面接AIや採用ページのAIチャットボット
などが挙げられました。
人事評価については、「特に初期のスタートアップの場合、型にはまらない業務などもある中で、AIに判断させようとしても、要素が不十分」とのこと。面接AIなどについては、「企業側が大量の採用候補者を選別するというフェーズであればいいかもしれないが、候補者に自社のことをアピールしたりアトラクトしたりすることが必要なフェーズでは、自ら魅力を伝えることが重要」と強調されました。最近では求職者側もAIによる選考に気づき始めているため、それと悟られ敬遠されてしまわないような配慮も必要かもしれません。
人間が担う『入口』と『出口』
AIの進化は、人事業務の代替だけではなく、組織のあり方そのものにも変革を迫ります。
梶谷さんは、「究極的には人間が担うのは『入口』と『出口』である」という興味深い話題を提供してくれました。

コーディングなどの「『中間』的な作業をAIが代替していく流れはもう止められない」と断言。人間の役割は、AIに作業を指示する「インプット」と、AIが生み出したものをレビューし、周囲を動かす「アウトプット」に集約されていくと予測されました。
具体的には、「問いや課題を設定する力」や「自走する力」、さらには「好奇心」や、その想いに裏打ちされた「行動力」などが『入口』に求められ、「レビューする力」や「クオリティコントロール」「各領域のディレクション」そして、「プレゼン力」や「セールス力」といった「想いを伝えて人を動かす力」が『出口』として必要になると述べられました。
組織の構造についても「ピラミッド型・ヒエラルキー型の組織から、ホールディングス的な組織にシフトする」可能性を示されました。少人数での事業立ち上げ・運用が可能になるため、一つの大きな組織を創る必要はなく、企業は小さい組織を束ねる方向性になるだろうとのこと。
参加者からは、「『入口』も『出口』もAIに担えないことはない」「AIファーストな(AIの働きやすさを大上段に置いた)組織創りを始めている」というコメントもありましたが、皆さんはどう考えますか?
中間管理職の再定義とリスキリング
中間管理職の役割も大きく変わると、梶谷さんは指摘されました。
「大きな組織だからこそ中間管理職が必要だったところ、先述のように少人数の組織が多く立ち上がる中では、特に日本企業においては、中間にいた人たちのリスキリングが重要なテーマになる」とのこと。
参加者からは、中間管理職がいなくなることによるキャリアパスの断絶や若手育成への懸念も示されましたが、梶谷さんは「若手は採用しないという方針もあり得る」し、「若手を採用した上で、スライム退治のような仕事を任せて能力を鍛える従来型の育成をするか、スライム退治はAIに任せて1ランク上の敵を倒せるようになるための育成をするかという選択肢が出てくる」という方向性を示しました。
人事担当者のリスキリングという意味では、AIによって言語の壁がなくなりつつあるため、「グローバル人材の採用マネジメントが大事」としつつ、「言葉の壁は消えるが、文化の壁は消えないので、組織における文化受容度の違いが大きな差になる」という可能性も述べられました。
人事部や担当者に求められる能力とマインドセット
最後に、#AI時代の組織創り に取り組む起業家・経営者や人事担当者に求められる能力やマインドセットについて、梶谷さんは3つのポイントを挙げられました。
- AI活用への積極的な姿勢:
AIによる自動化を積極的に推進していくかどうかが、そもそも大きな差になってくる。その前提があることによって、人事担当者は本質的なカルチャーデザインなどに取り組むことができるようになる。 - 人とAIのコラボレーションをデザインする力:
AI活用を加速させるための組織デザインは本当に重要。カルチャーデザインも、具体的なワークフローの設計などもしかり。エンジニアともしっかりとコミュニケーションを取り、人事も主体的にAI活用の設計に関わること。 - 外部人材ネットワークの構築:
先述のように少人数の組織が多く立ち上がる中では、優秀なフリーランスなどの外部人材とのコラボレーションも不可欠になってくるため、自社独自のネットワークを構築し、良い関係を継続させるような姿勢や仕組みも重要。
おわりに
梶谷さんからは本当にたくさんの示唆をいただき、参加者とのディスカッションも大いに盛り上がりを見せる会となりました。
AIの存在を前提としながら、AIと人の役割分担をどうデザインするかで、組織創りや採用計画、そして、成功確率が大きく変わることがもう間違いない世界が来ています。
ただし、 #AI時代の組織創り については、まだまだ事例が少ない状況ですし、“唯一解”というのも存在しないかと思います。だからこそ、今後も私たちは、こうして相互に最新の取り組みをキャッチアップできる機会を設けていきたいと思います。



