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事業のネタ帳 #20 「商取引デジタル化」のフロンティア

IDEA

目次

  1. 商取引のデジタル化
  2. 商品軸
  3. 機能軸
  4. チャネル軸
  5. おわりに

商取引のデジタル化

インターネット空間上における消費や購入といった商取引が増えていくことを商機として、世界中で多くのスタートアップが成長してきました。

世界的に見ると成長スピードが遅く、商取引全体に占める比率も低いと言われてきた日本においてもEC化は不可逆なトレンドとして着実に進んでおり、toCとtoBに限らず、日本のさまざまな商取引のデジタル化が進んでいます。

商取引のデジタル化というテーマにおいては、大きな社会的インパクトをもたらすスタートアップが、かわるがわる世界で登場しています。

たとえば直近の数年では、インターネット空間上における購買にあたっての後払い機能を提供するBNPLを手掛けるスタートアップが、先進国と新興国のいずれにおいても、大きく躍進したことは記憶に新しいです。

これにより、インターネット上でのクレジットカード等による決済手段を持たない、もしくは敬遠して離脱していた消費者層の取り込みに成功し、商取引のデジタル化は、また一歩、推進されることとなりました。

それでは、今このタイミングにおいて、日本の商取引のデジタル化のフロンティアはどこにあるのでしょうか

商品軸、機能軸、チャネル軸といういくつかの視点に立って考えてみます。スタートアップとしての次なる商機を見出すことができる事業領域のネタとして、参考になれば幸いです。

(また、追加でこういった視点もあるよ!という点があれば、是非、忌憚なくご意見、ご指摘ください。商取引のデジタル化に向けた同志として、思索を深めていくことができればと考えております)

商品軸

「商取引のデジタル化のフロンティア」というテーマで語ろうとするとき、EC化率の低い商品領域に着目する、というのは、一番わかりやすい発想かと思います。

単に商品領域を挙げるだけでなく、その背景にある要因を捉えながら整理すると、たとえば、以下のような商品群を挙げることができるかと思います。

  • 冷蔵・冷凍配送が求められる生鮮食品などのラストワンマイルの物流コストが高い商品群(オフラインの方が安価)
  • アパレルなどの高度なパーソナライズが求められる商品群(実際に自分が行かないと最適な商品選択が不可能)
  • 自動車や住宅などの専門知識も求められる超高単価商品群(ウェブ上での情報だけでは購買に踏み切れない)
  • サービスやアクティビティなどの型化して横比較が難しい体験型商品群(購買に必要となる情報が不十分)
  • 医薬品や不動産等の専門知識や専門資格が必要となる商品群(規制緩和)


これらについては、複数のスタートアップが事業開発を進めてチャレンジをしているところです。デジタル上での商取引オプションを増やし、消費者にとっての利便性を向上させていくとても意義のある取り組みです。

現在、手付かずに残されているフロンティアとして、

  •  (副資材等の間接費を除く)直接費としてカウントされるBtoB取引

は、企業間取引の本丸の商流がターゲットになり、大きなポテンシャルがある領域として挙げることができると考えています。

ただし、日本国内の成熟産業の場合、既存商流をリプレイスする難易度は高いことから、マーケットプレイス的なアプローチよりも、事業者間取引の業務効率化を支援していくVertical SaaS的なアプローチの方が好ましいと考えられます。

機能軸

機能的なバリューチェーンでいうと、Webマーケティングやリテール、決済といった上流のソリューションはかなり成熟しつつあり、BNPLを含めたEmbedded Financeや与信、Quick CommerceやSocial Commerce、越境ECなどの物流といった、中流においても多くのプレイヤーが世界各国で登場してきています。

こういった上中流におけるデジタルインフラが整備されてきていることで、フロンティアは徐々に下流(二次流通を除く)に移ってきていると考えています。

具体的には、

  • 返品・返金、保証、キャンセル、保険といったアクシデンタルな事象に対するソリューション
  • カスタマーサポートやクレーム、レビューといった購入後の顧客体験を最大化するソリューション

といった領域には、大きなポテンシャルがあるように見受けられます。

上記のような役割は、事業者にとって対応が不可欠ではあるものの、自社がコアケイパビリティとして備えるべき機能としては優先度が落ちる場合も多いです。従って、社内の内部オペレーションからは外出しされやすいことから、スタートアップとしての初期的な事業仮説を描くことが十分に可能な領域と考えています。

特に保険については、商取引に係る損害保険が中心となりますが、データとの親和性が高く、かつ、事業者と消費者の双方にとって定量的にメリットを示すことが可能です。

スタートアップとしての事業ポテンシャルがあると考えられる領域として、B向けの損害保険は、BtoBの商取引のデジタル化比率が高まっていくことで、保険商品を選択する際のさらなる透明化や、安価なPay per Useの仕組み構築が求められてくると予想されることから、商取引のデジタル化を大きく後押しするものとして期待されます。

チャネル軸

商取引デジタル化ということで、販売チャネルの視点に立つと、オフライン店舗のOMO化は大きなテーマとなります。オフラインとオンラインの良さを活かした形で、両者の要素がうまく統合された購買体験を提供していくことが求められるものです。

スマホで購入する体験に慣れている消費者に対して、オフラインでの購入体験を馴染みやすいものとして、向上させていくためには、オフライン店舗における従来の思想とオペレーションにとっては大きなパラダイムシフトとなる変化が必要です。

具体的には、商品在庫データや顧客データもオフラインとオンラインで統合管理していくことが求められることに加えて、店舗スタッフの追うべきKPIも変わってきます。

そうしたパラダイムシフトが求められるなかで、モバイルオーダーサービスをはじめとするようなOMO Enablerの役割は今後ますます高まっていくと考えています。

おわりに

ということで、商取引デジタル化のフロンティアをテーマに、今後ホットになりそうな領域について、商品軸、機能軸、チャネル軸の3つの視点から、取り上げてみました。この領域で起業している方や起業を検討している方は、資金調達ニーズの有無に関係なく、ディスカッションをさせていただけますと嬉しいです。

筆者

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