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【Jiffcy】人類の「コミュニケーションの変化点」をつくりたい —数千の仮説を潰し続ける“冒険”の果てに|Players by Genesia.

インタビュー

あなたは、“冒険”していますか?

それが好きな人も、苦手な人もいると思います。

まったく新しい発見をイメージする人も、ささやかな変化をイメージする人もいると思います。

どちらかというと前者の方が多いかもしれませんが、しいて共通項を挙げるとしたら、“冒険”とは「自分の理想を探し求める過程や状態」なのではないか。

仮にそうなのだとしたら、日々そのものが“冒険”とも言えるのか。

今回のインタビューを通じて、一度立ち止まって改めて考えてみたいと思いました。

私の、私たちの“理想”とは?


Jiffcyは、仲の良い友達、恋人、家族ともっと仲良くなれるSNS『Jiffcy(ジフシー)』を開発・提供するスタートアップです。

メールでも電話でもない、声を出さずにリアルタイムでやりとりできる、新しいコミュニケーション体験「テキスト通話」を提案しています。直近では2026年4月7日に、仲の良い友達と一つの最高の投稿を一緒につくる写真機能『Dots(ドッツ)』をリリースしました。

代表の西村さんからは今回、コミュニケーションが変わることによって、“私たち”のどんな新しい姿が浮き彫りになるのか、“私たち”の生活様式や思考がどう変わるのか? —今を生きる“私たち”だけでなく、数十年、数百年後の未来を生きる人という意味での“私たち”にどんなインパクトがあるのか?

そんな問いをいただいた気がします。

コミュニケーションSNSの先にある、「人類の可能性を解放する」ビジョンについて、西村さんの頭の中を、担当の祝が聴きました。

  • デザイン:割石 裕太さん、写真:尾上 恭大さん
  • 聞き手・まとめ:ジェネシア・ベンチャーズ Relationship Manager 吉田
  • 以下、敬称略

転校の多かった幼少期。早く新しい環境に行きたかった

祝:

今日はよろしくお願いします。起業してからの西村さんとは長く一緒にいるので、それなりに知ってることも多いと思うんですが、今日はもう少し歴史を遡って西村さんのルーツみたいなお話から伺っていきたいです。その意思決定の履歴を辿りつつ、これから目指していくところやビジョンについてもSyncできたらと。
まず、生まれはどこなんでしたっけ?小さい頃はどんな子どもだったんですか?

西村:

生まれは埼玉です。親の転勤にあわせて、小さい頃は引っ越しばっかりでした。埼玉、東京、大分、東京、シンガポール、タイ、で、また大分に行って、東京に行って・・だから、あんまりクラスや友達になじまなかったですね。どうせまた転校するしって感じで。

祝:

なじもうとはしてたんですか?

西村:

一応。ただ、やっぱり人間関係ができてるところに入っていくので、食い込むまでに時間がかかりますよね。そのうちにまたいなくなっちゃう、みたいな感じでした。

祝:

そういった環境をどう考えていたんですか?

西村:

早く引っ越したいなって思ってました。長くなると、状況が一変しないし退屈だなって。新しい環境ジャンキーでしたね。

祝:

熱中していたことやずっと続けていたことってあるんですか?

西村:

スマブラでしょうか。僕、三人兄弟の真ん中なんですが、兄弟でずっとスマブラしてました。

祝:

兄弟の中だと、西村さんってどういうキャラクターだったんですか?

西村:

空気を読む力はすごくあったと思います。兄と弟のケンカを仲裁したりとか。

経営=現代の“冒険”と考え、経営者になる道を考え始めた

祝:

大学一年の頃から自分でアプリを開発したりして、学生起業したんですよね。それはどういうきっかけだったんですか?

西村:

起業することは、中学生くらいから考えてました。

祝:

それはどうしてですか?

西村:

元々は冒険家になりたいと思ってたんです。もうちょっと遡ると、小学生のときに『13歳のハローワーク』って本を見たんですけど、なりたい職業がなかったんですよね。それをきっかけに“なりたいもの”を探し始めて、冒険家はその本には載ってなかったんですけど、おもしろそうだったので、冒険家になろうって決めてたんです。

祝:

当時、西村さんが解釈してた冒険家ってどういうものだったんですか?

西村:

遺跡を見つけたりジャングルに分け入っていったりする人。でも、考えれば考えるほど、地球上のほとんどがもう冒険され尽くしてるなーって気づいて、落胆してたんですけど。そんなときにひょんなことから、おじいちゃんが会社を経営してるってことを知って、話を聞いたら、まさにおじいちゃんがしてることが冒険的だなって思ったんです。

祝:

具体的には?

西村:

自分で考えて“第三の解”を出す、みたいなことですかね。とある課題に対して、セオリーに近い解決法と、弁護士の人に勧められた方法があったんだけど、でも自分で思いついた全く別の方法でうまく解決した、みたいな話とかを聞いて。おもしろいなって。現代でいう冒険は「経営」の中にあるのかなって思って、そっちに進もうと思ったんです。大学も、創業メンバーを集めるために行きました。サークルに20個くらい入って。

祝:

そこで出会ったのが、実際に今JiffcyのCOOを務める小嶋さんなんですよね。

西村:

そうです。小嶋さんとは茶道部で出会いました。

祝:

経営者を目指そうと決めた中学生の頃、おじいちゃんを通して西村さんが描いていた経営者像ってどういうものだったんですか?それにどんな感情が芽生えたんですか?

西村:

日々なんらかの課題にぶつかっては挑戦することを繰り返すっていうイメージで、わくわくしました。アドレナリンが出る感じ。挑戦というもの自体は、多くの人がしている挑戦— 例えば受験みたいなものもあると思うんですけど、経営者の体験する挑戦は、自分に特有に訪れるもの。前人未到感があるじゃないですか。冒険家ですよね。

事業のタネを模索し続けた学生時代。ようやく見つけた軸は―

祝:

起業していたとはいえ、在学中は学生らしい生活をしてたんですよね?

西村:

はい。何かを作るとして、必ずそれを使う人がいるわけですし、なんなら作られたものを使うっていう人が社会の大半なわけですよね。そういったメインルートみたいなものも体験しておく必要があるなと思って。サービスを作りながら、ゼミ合宿とかサークルのイベントとか飲み会とか、ちゃんと行ってました。意識的に、作る側と使う側の両方の感覚を掴もうとしてたって感じです。

祝:

ニーズ理解という意味でもそうですけど、一般的なルートも理解してこそ、何が冒険か?何が挑戦か?ってことが比較できそうですね。

西村:

(^ー^)b

祝:

大学生の頃から、基本的にはコンシューマー向けのアプリを中心に作ってたと思うんですけど、どんな軸でアイデアを見つけてサービスを作ってたんですか?

西村:

いろいろ試してみたかったので、思いついたら片っ端から作ってました。アイデアの探し方もいろいろ。生活の中でペインを見つけるとか、アメリカのサービスを日本でもやるとか、特定の業界のビジネスモデルを横展開するとか。そういったアプローチ自体も、お試しの対象でした。

祝:

僕がつくって失敗したサービスのまとめ』ってnoteも書かれてたと思うんですけど、あの裏では実はもっともっといろんなことを試行錯誤されたんだと思います。その上で、Jiffcyというアイデアに出会った経緯というか、Jiffcyに全力でbetしようと踏み込めたのはどういう理由だったんでしょう?

西村:

ある日突然に降ってきたというものではなくて、やっぱり段階的に辿り着いた感じです。アイデアを100個出して、20個くらい試作する。その中からこれは価値がありそうだって思えるのが3個くらい。で、実際にサービスとしてリリースするのは1個・・みたいな流れの結果として。

祝:

ただ、そこはまだスタートラインなわけですよね。

西村:

試作の段階でなんとなく手応えはありますけど、他のアイデアとはちょっと違うかも?って程度。じゃあ何が違うのか?の答えを探すために、テストユーザーを集めて使ってもらって、そのフィードバックがいい感じだったら、確信を深めていく。それでいうと、当初はずっと“収益化が見えるか”を基準にアイデアを選定してたんですけど、そのアプローチにちょっとうんざりしてたんです。サービスを作ってみても、僕の人生はこのサービスをやる人生じゃないなと思って、あっさり畳んでしまう・・ってことを繰り返してたんです。

祝:

アイデアとしては“稼げるもの”を選んでいたけど、西村さんがそれにコミットする気持ちにはなれなかったんですね。

西村:

もちろん他にもいろんな理由がありましたけど、根本はそこですね。やる気がなくなるっていう。元々の飽きやすい性格もあると思うんですけど。

祝:

その中でもJiffcyはやっぱり違う― これがやりたいって思った理由は何ですか?

西村:

↑のnoteって、実は内容のほとんどを二年くらい前に書いてたんです。あれを書いたことによって、自分が熱意を持てる軸って何なのかってことを見直すきっかけになりました。

祝:

どんな軸が見つかったんですか?

西村:

言い方を選ばずに言えば、「人類の可能性を解放する」かどうか。それが実現できるかできないかでやる気がめちゃくちゃ変わってくるってことがわかりました。

「人類の可能性を解放する」まったく新しい概念・サービスをうみだすために

祝:

「人類の可能性を解放する」かどうかという軸はすごく西村さんぽいと思います。Jiffcyはどんな“可能性”を生み出す存在だと考えたんですか?

西村:

Jiffcyの種になるアイデアが出たときにまずは自分で試して、何かしら価値がありそうだって感じたところから、このサービスの延長線上に何があるかをいろいろ考えました。一年後や十年後、さらにその先を考えたときに、「テキスト通話」っていう新しい概念に辿り着きました。

祝:

Jiffcyの機能だけを見ると、人類レベルにまで想像を膨らませるのってけっこう難しいと思うんです。その未来像は当初からあったのか、それともサービスをリリースしてから解像度が上がっていったのかでいうとどうですか?

西村:

僕も最初は、リアルタイムでテキストでやりとりする機能が何の役に立つのかわかりませんでした。でも、これは「声を出さずに会話する」っていう新しい体験なのかもしれないって考えは頭の片隅にあったんです。確信は持てなかったんですけど。

祝:

確信を持てなかったのは、ユーザーの声が足りなかったっていうとこですか?

西村:

そもそも新しい概念・新しい体験を信じることができなかったって感じです。

祝:

たしかに。新しいものが人に受け入れられるかは、そのタイミングも含めて未知ですよね。

西村:

でも、実際に自分が体験する中で、これはもうほんとに便利すぎると思って。世界中の人もそう思うだろうと、徐々に自信に変わっていきました。自分自身がヘビーユーザーだったので、信じられたんだと思います。

祝:

実際、ローンチ後の初速もすごく良かったですよね。ただ、やっぱりその後は伸び悩みの時期もあったと思います。投資家からの「ピボットしたら?」という圧もあったと思います。そういうとき、自信はどうなったんですか?自分を疑う期間もあったんですか?

西村:

疑いはなかったですね。

祝:

これまで何十個もサービスを立ち上げてきて、ダメだったらすぐ畳むっていう経験値も積まれてると思うんです。その上で、Jiffcyは絶対に止めないっていう意思決定をされてきたんですよね。自分自身がヘビーユーザーとはいっても、自分が使うのと世界中に広がるかは全く別の話。それをどうしてそこまで信じられたんでしょうか?

西村:

SNSやコミュニケーションツールって、周りの人が使っていれば使うけど、周りの人が使ってなかったらいくら便利でも使わないですよね。それって、サービスの価値の有無じゃなくて、サービスが普及するまでの“状況”に過ぎないと思うんです。使う人を増やすことさえできれば盤石になる。今はその過程。そういうビジネスモデルだって認識してたので、ユーザー数が伸び悩むなんて、当たり前というか些細な問題だと思ってました。Jiffcyに価値がないことの証明には到底ならないって。

2,000を超える仮説。それらに優先順位をつけるのが経営者の唯一の役割

祝:

今のお話を聴いていると、手放しに自分のサービスを信じてるというわけじゃなくて、西村さんのビジネスモデルへの認識がたしかなものだってことがわかります。加えて、西村さんってすごく手数が多いんですよね。経営者や新しいものを生み出す人にとって、勘や直感的なものも大事だと思うんですけど、西村さんはかなりデータドリブンに試行や改善を重ねてる印象です。それによって、自信と確信を深めている。足元の限られた予算の中で何を優先的にやるか、という戦術の意思決定の過程を知りたいです。

西村:

何か思いついたら、タイトル+一文で仮説リストを作ってます。「タイトル:××に広告を出す」+「△△という理由で、手頃にユーザーが集まりそう」という具合に。到達したいところがある、そこに到達するために今解消しなくちゃいけないボトルネックがある、ってなったとき、最初にそのボトルネックの要素を僕の責任で並び替えるんです。僕は、それが経営の仕事の全てだと思ってます。あとは、その対策として仮説リストに挙げた仮説がどの要素に対応するのかを分類して、それぞれに点数をつけて数値で比較できるようにします。

祝:

仮説ってたくさん出てくると思うんですけど、一つ一つを定量分析してるってことですか?

西村:

全部に共通する指標で点数をつけてるって感じです。最初は大きな仮説を書くんです。それをいくつかに切り分けて、大抵失敗するだろうなみたいなやつは1、例えば取り組みやすさとインパクトがあるものは3、って感じで点数をつけてソートして、さらに優先順位をつけて、上から消化してくっていう。

祝:

その点数や優先順位のつけ方は、でも、西村さんの主観的な考えなんですか?何らかのデータに基づいてるんですか?

西村:

もちろん調べられるものは調べますが、外部環境も含めて今まで誰も直面したことがないシチュエーションのはずなので、スピード重視で直感的に点数を付けています。それに、現時点で最善だと思うことリストを一つ一つ消化していくだけなので、経営戦略が明確でずれません。

祝:

かなり細かく、情報を整理していくプロセスだと思うんですけど、そのあたりは苦にならないんですか?

西村:

好きですし、自分の中の軸というか拠り所を用意しておきたいという気持ちがあります。今話した方法だと、どの施策がどの要素に対応しているかとか、僕の責任で点数をつけて順番を決めたとか、一つ一つの打ち手に対して感覚で議論するより説明コストが大幅に削減できますよね。大きな認識の乖離が起きないじゃないですか。

祝:

なるほど、説明の根拠でもあるというわけですね。どれくらいの数のリストなんですか?

西村:

2,000くらい。最初は一人で作ってたんですけど、徐々に他の人が出してくれたアイデアとかもマージするようになって、今は会社としての仮説リストができてきています。

祝:

これを見れば誰でも戦術や自分のタスクが一目でわかる、Jiffcyの経営指針の根幹ですね。やり切っても成果が出なかったら諦めがつく、という意味合いもありそうですね。

西村:

やり切ることはできないですね。一つの仮説を実行したことによる学びによって、また新しい仮説が出てきちゃうので。ただ、無限ではあるんですけど、最初に僕がつけた優先順位通りに消化していったのに思うように成果が出なかった場合は、そもそもの戦略がずれてる可能性が高いので、並び替えにめちゃくちゃ時間使ってます。

祝:

このリストのPDCAサイクルにどれくらい時間をかけてるんですか?

西村:

リソースの7割くらいですかね。ほんとは9割くらいにしたいんですけど、まだまだ。

地道なPDCAサイクルは、まさにジャングルで新しい遺跡を探す“冒険”

祝:

到達したいところに対してボトルネックになる要素と、それを解消する仮説のリストアップと優先順位づけ。これらはアクションとセットで実行していくものですよね。となったとき、アクションって華やかで“実行した感”がある一方、戦略を考えてチューニングしていくのは地味なことをコツコツ続けていくっていうイメージがあります。西村さんがこの方法について、つらいと思うタイミングとかってあるんですか?たぶん、もともと西村さん考えてた経営≒冒険というイメージとは違っているような気もするんですが。

西村:

僕の中では、冒険のイメージとの乖離はそんなに大きくありません。今やってる仮説潰しこそが冒険というか。実際の冒険も、ジャングルに分け入っても何も見つからないことがほとんどだと思うんです。その積み重ねの果てに人生で1,2回の大発見ができたら、冒険家として勝ち。そういうものだと思ってます。必要というか、まさに正当なプロセスじゃないかなと。

祝:

想像以上に、冒険家への解像度が高かった。何かこう、いきなりすごいものに出会うようなファンタジックなことが起こるっていうより、実際には、新しい気づきのない森の中をさまよう時間がほとんど。それが冒険、みたいなことですね。そういう意味だと、経営と冒険って、リアルに似ているかもしれませんね。最初に西村さんが言っていたように、いろんな冒険家がすでにあちこちを探索し尽くしてる中で新しいものを見つけるとなったら、やっぱり普通のやり方・歩き方をしてたらいけないって教訓もありそうですね。。

西村:

だし、愚直に歩き続けるしかないとも言えると思います。

祝:

普通に歩いていたら素通りしてしまうくらい細かいところまで探りに行ってみよう、そこに新しい発見があるかもしれない、という西村さんの経営スタイルに近いものに触れた気がします。ちなみに、Jiffcyを始めてどれくらいでしたっけ?

西村:

β版をリリースしたのが2023年だから、3年くらいですかね。

祝:

その3年の間にも数千という仮説を潰しながらPDCAサイクルを回してきてると思うんですけど、新しい遺跡≒Jiffcy(のPMF)を発見した瞬間ってどのへんにあったんですか?

西村:

JiffcyのPMFはしてると思いますが、まだ求める規模の遺跡は発見してないです。

祝:

え!

西村:

ここに宝物がありそうだっていう地図を発見したくらいです。「テキスト通話」というものが次のコミュニケーションのインフラになる可能性があるっていう地図です。×印のところに辿り着けば、ものすごい価値があるかもみたいな。だから、地図を発見した時点で心底うれしかったです。

祝:

まだ地図だったとは・・地図を見つけたのはどのタイミングでした?

西村:

「電話みたいに呼び出せるリアルタイムトーク」って表現が「テキスト通話」って表現にまとまったときですね。

祝:

Jiffcyが「テキスト通話」を標榜し始めたのはけっこう前ですよね。その背景をもう少し聞きたいです。

西村:

電話みたいに呼び出した後にテキストでリアルタイムにやりとりする体験が一体何なのかっていうことをヒアリングしていったときに、それこそ「電話みたいな感じ」ってコメントがあったんです。当時、僕の中にJiffcyと電話が結びつくイメージは全くなかったので、正直、え!?って思いました。だって、やりとりしてるのってテキストなんですよ?電話なわけないじゃないですか。でも、これって電話なの?みたいな。不安定な、ゆらゆらふわふわした感じがありました。ただ、それはたぶん新しい・未知の概念だから。例えば、音声通話って概念を思いついた人も最初は似たような感じだったと思うんです。昔は電報とか手紙とか、リアルタイムといえばモールス信号みたいなものだったわけですから、機械の中からリアルタイムに声が聞こえてくるって何なの?ってなったはずなんです。そう考えたら、「テキスト通話」って概念がすごくしっくり来たんです。

新しい可能性を秘めたJiffcy、そのミッションを後押しする新機能『Dots』

祝:

創業当初と今で、西村さんが見据えているJiffcyの未来像って変化してきてると思うんですけど、今見ているのはどんな景色ですか?Jiffcyがコミュニケーションのインフラになる状態って具体的にはどういうことなんでしょうか?

西村:

インフラってことは、同調圧力でアプリを入れざるを得ない状態だと思うんですけど。

祝:

めっちゃ正論。

西村:

テキスト通話を普及させる― つまり周りの人がみんな使ってるから自分も使おうという状態にするには、お金をかければいいんですよ。僕たちがお金を調達して、それを投下してユーザー数を伸ばせばいいんです。そういう仮説でシリーズAの資金調達をしたんですけど、それだと最終的には過当競争になってしまいます。なので、さらにプロダクトと機能の力でユーザーを伸ばそうって方向で、新しくリリースした機能が『Dots(ドッツ)』です。

祝:

ちょっとびっくりな打ち手でした。機能について教えてもらえますか?

西村:

『Dots』は、Jiffcyで使える、写真機能です。一日に1枚ずつ、グループのメンバーがそれぞれ自撮りをアップします。アップした時点ではモザイクがかかってて友達には見えないんですけど、自分もアップするとモザイクが外れて、それぞれがアップした自撮りが組み合わされてコラージュとして保存されます。日付も入ります。

祝:

“今日の私たち”みたいな記録が溜まっていくんですね。

西村:

また新しい概念が提案できることにわくわくしてます。

祝:

さっきの仮説リストを相当回してここに至ったと思うんですけど、どういう思考の流れで『Dots』を次の打ち手だと感じたんですか?

西村:

まず、ボトルネック要素の一番上位にあったのが、「今のJiffcyの弱点は、(テキストでのコミュニケーションなので)ぱっと見でサービスの良さが伝わりにくい」「アプリの絵面が地味」ってことだったんです。だから、画像を使った何かをしたいと考えてました。Jiffcyの特徴の一つは、親しい人とやりとりするってことです。だから、親しい人たち同士だからこそ送り合える画像を共有する場にすれば広がるんじゃないかと考えました。テキストとの相性もいいし。と、いろいろ議論する中で、COOの小嶋さんの「昔はSNSによく投稿をしていたけど、だんだんしなくなった」という体験も踏まえて閃いた機能なんです。ソーシャルキャピタルって概念にも繋がってます。

祝:

ソーシャルキャピタルって、以前から西村さんが熱く語ってる概念ですね。それをずっと持ち続けてきたんですね。

コミュニケーションの場と相性がいい、ソーシャルキャピタルを活用

西村:

僕の中で、うまくいってるサービスの特徴は、ソーシャルキャピタルに繋がってるか、既存のサービスの上位互換であること。それで、ソーシャルキャピタルのいろいろな要素に照らし合わせて考えてみると、自撮りってすごくマッチするんです。一般的に、SNSに自撮りってアップしないですよね。変なヤツとかナルシストって思われるじゃないですか。でも、自分に自信がある人は、実は自撮りをアップしたいと思ってると思うんです。その点、『Dots』は堂々と自撮りを送り合う機能です。関係値が深いグループ内でのことなので全然嫌味じゃないですし、あくまでアルバム機能として送り合ってる。その結果、『Dots』でできたコラージュをSNSにアップするなんてことも起こり得ると思うんです。例えばInstagramとかだったら、たくさん旅行に行ったりできるお金持ちの人とかが有利ですけど、『Dots』の場合は自分自身に自信がある人に有利。そういう人たちが『Dots』のコラージュをSNSにアップしていくと・・

祝:

いくと?

西村:

イケてる感が出るんです。Jiffcyの『Dots』を使ってる人=イケてる感が出て、ユーザーが入りやすくなる。イケてる人が率先してシェアしたくなる機能なので、SNS上にイケてる投稿が溢れることになります。

祝:

Jiffcyしかり、今回の『Dots』しかり、西村さんはやっぱり人の心理をすごく考えていますよね。どうやってそれを捉えてるんですか?

西村:

ソーシャルキャピタルに関して言うと、そもそもお金はキャピタルですけど、最近はSNSフォロワーなんかもキャピタルですよね。10万フォロワーいるアカウントって高く売れたりします。換金可能な、社会的な資本(ソーシャルキャピタル)です。人間って、みんな最も効率のいいかたちでキャピタルを増やそうとする性質があるんです。だからこそ、資本主義が発展した。と、そんなことを勉強していった結果、ソーシャルキャピタルのいろんな枠組みのすべてを個人的にランクづけしたんです。

祝:

そのソーシャルキャピタルの複数カテゴリーで高得点を挙げた― 人のキャピタルへの欲求に応え得ると判断できたのが『Dots』ってことですか?

西村:

重要なソーシャルキャピタルは網羅してます。

祝:

サービスを流行らせるための指標としては理に適ってると思うんですけど、西村さんの目的はサービスを流行らせることなんですか?

西村:

いや、違います。あくまで“今”Jiffcyの経営戦略上、最も重要で優先順位の高い仮説がそういった機能をつけることだったってことです。

祝:

さっきの、画面の地味さを解消するという点ですね。

西村:

それに、機能が成り立つためにはその存在理由が必要じゃないですか。実際にいろんな人に試してもらったんですけど、結果、めちゃくちゃみんな楽しんでくれてすごく評判が良かったんです。みんな自発的に投稿するんです。僕も両親と毎日『Dots』やってます。それまでは本当に、月に一回連絡するかしないかくらいだったのに。

論理の前提として、「やりたい」という意志は合理的な理由になる

祝:

やっぱり西村さんっていろんなことを考えてますよね。周りからすると、思いもよらないところからポッとアイデアを出してきたように見えるけど、西村さんの中では思考が一周してる。周りはそこの思考回路を一緒に巡ってないから、最初はピンとこないケースが多いんですよね。後から、こういうことだったんだって気づくことが多くて。今回もめちゃくちゃ楽しみです。
西村さんの経営方針や戦術って、誰かから学んだとか参照したとかってあるんですか?

西村:

いや、ないですね。強いて言うなら、ダニエル・カーネマンっていう、行動経済学とか消費者行動論っていう学問を見つけてノーベル経済学賞を受賞した人の本を大学生のときに読んで、衝撃を受けました。

祝:

へー!どんな衝撃ですか?

西村:

定量化することの真の重要性を知ったのと、あとは、人間って個々が自分の意思を持ってランダムに生きてるように見えて、実はパターンを持っているってことを知りました。パターンがあるってことは、つまり、分析すれば理解ができて行動変容も作れるということです。ただ同時に、コントロール不能でもある。人間がみんな合理的に動くならいいですけど、もちろんそうじゃない。当たり前のことではあるんですけど、当時はすごく衝撃を受けました。

祝:

具体的には『ファスト&スロー』を読んだんですか?

西村:

彼が書いた本はすべて読みました。特に『ファスト&スロー』は何回も読んで、重要な点を日記にバーッて書いてました。もともと僕は感情より論理を重視するタイプだったんですけど、それを読んでから、人間の感情=合理的でない部分は本当に重要だと考え直して、今は感情重視100%です。思想が強すぎて100%に“してる”のかもしれないんですけど、それくらい考えが変わりました。

祝:

仮説リストのスコアリングも、直感を加味してるってことでしたね。

西村:

そうです。スコアリングして、妥当性を踏まえて論理的に優先順位づけはするんですけど、でも結局は「やりたいかどうか」だと思ってます。直感もすごく重視してます。どうしてこれをやろうと思うんですか?って問われても、「やりたい」は理由として成り立つと思うんです。経営に関しても、最終的には自分がやりたいからじゃないですか。

人類史において、「コミュニケーションの流れが変わったな」を実現したい

祝:

改めて、西村さんがJiffcyを通じて「やりたい」ことを教えてください。どんな未来像を描いてるんですか?

西村:

「テキスト通話」という新しい概念は入り口で、僕が実現したいのは、一言で言えば「テレパシー」です。今のコミュニケーションって、人によって伝達効率が全然違うのがデフォルトじゃないですか。しゃべるのが苦手な人もいれば得意な人もいるし、誤解を与えちゃう人もいればそうじゃない人もいるし。僕はそこの差分をなくして、誰もがほぼ100%に近いかたちで伝えたいことを伝えられるようにしたいなと思ってるんです。それをテレパシーって呼んでます。「テキスト通話」にしても、Jiffcyがなかったら伝えられなかったようなことを伝えられるようになったり、LINEだとケンカしてた人がJiffcyではケンカしなくなったり。そういうのって少しはテレパシーに近づいてると思うんです。

祝:

それは、コミュニケーションもですし、人と人との関わり方も変えてますね。

西村:

その先の話もしちゃいます?

祝:

なんかドキドキする。

西村:

僕は、人類史において、「このタイミングで流れが変わったな」を実現したいんです。過去に流れが変わったタイミングって、文字が発明されたときとキリスト教が生まれたときだと思ってるんですけど。

祝:

二回だけですか?

西村:

いや、もっとあるんですけど。ベンチマークです。文字が生まれたとき、人類の知識の蓄積効率が爆上がりしたじゃないですか。インターネットとかもそうなんですけど、言ってたらちょっとキリがないので、特に象徴的な瞬間として文字を挙げてるんですけど。

祝:

ベンチマークですね。

西村:

自分が生まれた意味を考えてたときに。

祝:

夜な夜な考えてるんですよね。

西村:

はい、毎日考えてるんですけど、4年くらい前— ちょうどJiffcyをリリースする前に、Jiffcyをどういったサービスにしていきたいのかって自分の頭を整理してたときに、自分が存在する意味も考えてみたんです。子孫を残していくためって回答することもできたんですけど、でもそれって、遺伝子の組み合わせが変わるだけじゃない?って思ったんです。遺伝子を混ぜるための存在じゃない?みたいな。

祝:

遺伝子を混ぜるだけでは嫌だと。

西村:

そうです。自分ってただ混ぜる存在じゃないよねって思ったんです。混ぜて多様な種を作ることで、人類はどんな環境でも生き残れるようにしてると思うんですけど、生き残ること自体が目的なのかというと、それは違わない?と。

祝:

はい。

西村:

じゃあ何なんだろうってずっと考えた結果、僕は、「知識の蓄積」のためだって考えたんです。天災や事故で一時的に減ったりすることもあるんですけど、人類の知識はずっと右肩上がりで増え続けてるって思ったんですよ。これって、人類の無意識的な目標というか行動原理なんじゃないかなって。だから、人類の/僕の存在意義って、知識を蓄積することにあるんじゃないかなって。ってことは、それに向かって純粋に突き進むことを提唱するような集団があってもいいですよね。同時に、たまたまJiffcyに取り組んでるので、Jiffcyを通じてそれを実現できないかなと思ってるんです。コミュニケーションをきっかけに、人類の知識の蓄積効率をめちゃくちゃ上げていけるんじゃないかと。

コミュニケーションを通じて、知を蓄積する。その人類の目的に一役買う

祝:

たしかにコミュニケーションは僕たちの知識の伝達手段で、Jiffcyはその記録媒体とも言えますね。

西村:

僕は「生まれ変わり記憶喪失論」って言ってるんですけど、人が何かを思いついたり新しい発見をしたりする。その人が死ぬ。でも、その人の思いついたことやインスピレーションは確実にどこかに残ってる。で、その後その分野に興味がある人が生まれて、キャッチアップする。また新しい発見をする。つまり、いったん記憶喪失になって、また思い出して、また新しい発見を重ねるってことを人類は繰り返してるのかなと思ったんです。だから、その繰り返しの中の記憶喪失の期間を短くしたり、思いついたことやインスピレーションを100%に近い状態で引き継いだりすることができれば、人類の知識の蓄積スピードって格段に上がるじゃないですか。それに取り組もうと思ってるんです。

祝:

はい。

西村:

だから、まずはコミュニケーションツール=Jiffcyをインフラにする、そして、そこで得られた知識や発想(情報)の整理のためにAIを使う、それを守るためにブロックチェーンを使う。あとは、そのバックアップを地球外に置くために宇宙を開発する。コミュニケーション事業、AI事業、ブロックチェーン事業、宇宙事業と、全てを繋げることで人類の知識が守れるし、人類の存在意義に向かって突き進む集団がこの時代に生まれるわけじゃないですか。「人類の流れってあそこで変わったよね」ってなりますよね。

祝:

なるほど。そのビジョンは初めて聞きましたね。

西村:

ちょっと話それるんですけど、縄文時代や弥生時代前期に起こったことって厳密にはわかっていないそうなんです。なぜなら、文字がなかったから。今わかっていることは、当時すでに文字が使われていた中国に残ってる書物の中から知り得たことだそうです。戦略や戦術も言語化されていたし、『史記』っていう立派な歴史書も編纂されてた。文字がなかった日本の歴史は、そこから教えてもらったことなんです。文字がないと、人の頭の中にあることが蓄積されていかないんですよね。だからJiffcyも、人類の歴史に大きく影響するような、コミュニケーションの系譜を変えるような存在になりたいんです。

祝:

箱舟みたいなイメージですね。未来人がJiffcyを参照する、みたいなことですか?

西村:

Jiffcyだけとは言わないんですけど、コミュニケーション情報の蓄積をソートできて、未来を考える手がかりとして使えるようにすることはすごく重要だと思ってます。別にコミュニケーションそのものを誰かに見せるわけじゃなくて、エッセンスが蓄積されて伝えられるってことが、たぶん人類史に必要なことなんじゃないかと、その一端を担うのがJiffcyなんじゃないかと、そういう整理をしてます。ただ、こんな考えって誰にでもすぐに受け入れられるものじゃないと思うので、まずはJiffcyがあることによって、コミュニケーションしなかったようなタイミングでコミュニケーションが生まれるとか、いつもなら言わないことを伝え合うとか、そういうことでコミュニケーション機会が1.1-1.2倍くらいにはできるといいかなと思ってます。

祝:

それはありますね

西村:

ってことは、人類の目的(知識の蓄積)に近づくスピードが1.1倍上がるってことですよね。めっちゃすごいですよね。そこに僕とJiffcyの存在意義があると思ってて。もちろんすぐにはできないけど、理念・ビジョンとして存在してるっていう感じです。

祝:

西村さんのビジョンは何階層にも重なってるんですね。単純にJiffcyを広めてインフラにするって話だけじゃなくて、その先の人類へのインパクトまで考えてる。

自信のインスピレーションは、目標に最短で向かうための「焦点」の遠さ

祝:

西村さんは、自分ならできる、やり遂げられるっていう自信や勝ち筋みたいなものを持ってるんですか?

西村:

手放しの自信というよりは、確信を強めるきっかけみたいなことはありました。僕は基本的に、概念の発見によっていろいろな思考が整理されるんですけど。自信については、「焦点」って概念で考えてます。例えば、同じ目標に向かってるはずなのに、そこに最短で行く手段について意見が食い違うことがあるじゃないですか。それって何でなんだろうってずっと考えてたんですけど、たぶんどこに焦点を合わせているかの違いなんじゃないかと思うんです。焦点が違うので、把握しているゴールの位置も微妙に違うし、そうなるとそこに向かう最短ルートも違ってくる。それで進む方向の乖離が起きるんだと思ったんです。って考えたときに、「人類の可能性を解放する」っていう目標に向かってる僕の焦点はかなり遠くに合わせてあると思うんです。それこそ、自分ほど焦点が遠い起業家の人に会ったことないです。つまり、焦点の遠さが僕の勝ち筋ですかね。

祝:

西村さんを表現するキーワードはやっぱり「冒険」かなと思いました。敵と戦っていく系の冒険ではなくて、新しいフィールドを開拓していく冒険。その道程でどんどん地図ができていく。Jiffcyを始めたときには白地図さえ持ってなかったけど、今やっと最初の地図をゲットして、これからいろんな試行錯誤を経て、そこに細かい枝葉の道とか新しい町とかアイテムとかの描写が入っていく。今明確に見えてるものもあれば、しばらく歩き回ったら見えてくるまた別のものもあるかもしれない。そういう冒険に、西村さんはすごくワクワクしてると思うんです。ただ、西村さん一人だけよりは、仲間と一緒の方がもっと広範にたくさんの冒険ができるはず。そこに参加したいって人に、これから仲間になってほしいですね。

西村:

はい。僕は、自分の考えは融合物だと思ってるんです。うねうねもわもわしてて、話し相手の意見なんかもポンっと入ってきたりする。つまり、自分の確固たる考えなんてない、思考は融合物っていう方向性なんです。今日いろいろ話したこともどんどん変わっていくかもしれない。これからはそんな効果も期待しながら、仲間と一緒にする冒険についても楽しんでいけたらと思います。

※これは、2026年4月13日時点の情報です

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