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#19 SNS最前線!ソーシャルキャピタルと人間心理が創る「独自の生態系」【ゲスト:株式会社Jiffcy 代表取締役CEO 西村成城さん】|Ayo! by Genesia.

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ジェネシア・ベンチャーズが配信する『Ayo! by Genesia.』は、スタートアップの“挑戦の裏側”に光をあてるPodcastです。プレスリリースなどのオフィシャルな情報だけでは伝えきれない、挑戦のプロセスで生まれる想いや葛藤、そしてリアルな学びを、起業家と投資家、それぞれの視点からお届けします。「Ayo!」はインドネシア語で「Come on!」「Let’s Go!」という意味。スタートアップのチャレンジをリアルにお届けしていきます💁‍♂️💁


今回のゲストは、仲の良い人ともっと仲良くなれるSNSを提供している、株式会社Jiffcy 代表取締役CEOの西村 成城さん(以下:西村)と、ジェネシア・ベンチャーズの担当キャピタリストである祝 煜洲さん(以下:祝)です。 モデレーターは、同じくジェネシア・ベンチャーズの水谷が務めます。

目次

  • 「ロックな経営スタイルが好き」日本屈指のSNSオタクが語るSnapchatの魅力
  • 位置情報SNS『Zenly』はなぜ終了した?利便性とソーシャルキャピタルの両立
  • 「みんなが知らないお店の方がかっこいい」クローズドSNSの価値とマネタイズ
  • Instagramが『Threads』を別アプリにした理由。SNSにとって最も重要な「世界観」
  • 「機能は真似できても、人間関係はコピーできない」模倣戦略にどう立ち向かうか
左から:ジェネシア・ベンチャーズ 水谷、ジェネシア・ベンチャーズ 柏崎(PR)、Jiffcy 西村さん

「ロックな経営スタイルが好き」日本屈指のSNSオタクが語る『Snapchat』の魅力

水谷: まずは、Jiffcy(ジフシー)の西村さん、自己紹介をお願いします。

西村: 『Jiffcy』というSNSを運営している株式会社ジフシー代表の西村と申します。小中学校のときにはシンガポールとタイに住んでいて、日本に戻ってきてから大学一年生くらいのときに起業しました。そこからいろんなSNSやB向けなど様々なサービスを手がけた後、今は『Jiffcy』をやっています。

水谷:西村さんは 「日本屈指のSNSオタク」ということで、今日はSNSについていろいろとお話しできるのを楽しみにしています。投資担当の祝さんも、改めて簡単に自己紹介をお願いします。

祝: 改めまして、ジェネシア・ベンチャーズの祝と申します。私は2022年からジェネシアにジョインしました。出身は中国です。中国といえばやはりコンシューマー向けのサービスやアプリがたくさん生まれてきているので、そういった先行事例も見ながら、日本でも主にコンシューマー向けのサービスに投資しています。よろしくお願いします。

水谷: それではまず西村さんにお伺いしますが、「SNSオタク」の西村さんがお好きなSNSがあれば教えていただけますか?

西村: もちろん一番大好きなのは『Jiffcy』です。そこから大きく離れて2位が『Snapchat』ですかね。

水谷: Snapchatも普段から結構使われているのですか?

西村: いや、そこまで使ってないです。

水谷: 使ってないけど好きなんですね。

西村: そうなんです。サービスそのものというよりも、その経営スタイルが好きなんです。Facebook(現:Meta)からの目もくらむような金額での買収提案を断ったりとか。めちゃくちゃロックじゃないですか。 それと、カメラ機能に勝ち筋を見出して、「自分たちは(SNS企業ではなく)カメラカンパニー」だと言い、独自のマーケットを定義して差別化している。当初はすぐに消滅すると思われていたのに今もずっと残っていて、独自の関係性を持つ人たちの中で使われているっていうのはすごいと思います。

位置情報SNS『Zenly』はなぜ終了した?利便性とソーシャルキャピタルの両立

水谷: 西村さんがベンチマークしたSNSのサービスは、他にどういうものがありますか?

西村: 位置情報SNSの『Zenly』については勉強しましたね。「位置情報を常に共有しておくなんてあり得ない」と社会人は思うじゃないですか。じゃあ学生ならいいのかというと、実は学生の大半も「あり得ない」と言うんですよ。でも、めちゃくちゃユーザーがいた。結局はマネタイズがうまくいかなくてサービスを終了しましたけど、その経緯も含めて研究しました。

水谷: 西村さんご自身も使われていたんですか?

西村: 家族とは使っていましたね。

水谷: 祝さんは使っていましたか?

祝: 僕はやっぱり否定派でしたね。ほぼ使ってなかったですし、流行っているのを見てもそのユーザー心理みたいなものは正直わかりませんでした。

水谷: 中国でもああいった位置情報を共有するようなサービスってあったんでしょうか?

祝: 中国は、『WeChat』などの常に使われているSNSの中に近しい機能はありますが、僕の知る限り、それに特化したサービスで大きくなったものはないと思います。西村さんの分析によると、Zenlyがうまくいかなかったのはなぜだと考えているんですか?

西村: SNSには二段階の壁があると思っています。一段階目が「めちゃくちゃユーザーを獲得すること」、二段階目が「ユニットエコノミクスが合うようにすること」。つまり、通信量が多い中でもちゃんと儲かるようにすること。特に位置情報SNSは、基本的に常にデータ通信をしているのでサーバー代も高くなってしまう。なので、普通のメッセージングアプリよりも儲ける必要があります。ZenlyはSnapchatに買収されたんですけど、取り込まれた機能はZenlyの劣化版みたいなもので、そこで収益化を試行錯誤するインセンティブがなくなって終了したそうです。位置情報SNSはサービス自体の歴史も浅いですし、マネタイズの研究もされ尽くされていなかったという経緯もあって、終了せざるを得なかったんですよね。なので、Zenlyが買収されずに自力でがむしゃらにやり続けていたらどうにかなったのかもしれません。

祝: ユーザーのニーズにはちゃんと刺さっていたんですかね?

西村: そうですね。SNSには二つの軸があると思っています。一つは「ツールとしての利便性」。もう一つは「ソーシャルキャピタル」といって、繋がっていること自体が資産になる=自慢したくなるようなものということです。例えば、クラスで一番人気の子とZenlyを交換していること自体がステータスになる、みたいな。祝さんも、ジャスティン・ビーバーとZenlyで繋がって彼の位置情報をいつでも知れるとなったら、めちゃくちゃ優越感に浸りますよね。

祝: たしかに。

西村: Zenlyはその両方を兼ね備えていたと思うので、その点は秀逸だったと思います。

「みんなが知らないお店の方がかっこいい」クローズドSNSの価値とマネタイズ

祝: 西村さんは、SNSを使うユーザーの心理をめちゃくちゃ深く考察していますよね。どんな風にユーザー心理を読み解いているんですか?その思考回路みたいなものをすごく聞きたいです。

西村: B向けのSaaSとかと基本的な考え方はあまり変わらないと思います。課題があって、それを解決するものがあったときに、新しいサービスがその上位互換になっているかどうかから考えます。『Zenly』の場合は、位置情報を共有するときに、既存のサービスでは逐一メッセージングで共有していたところ、常に共有しておくというユースケースが成り立つと思いました。
でも、どうしてもそれで説明がつかない場合は「ソーシャルキャピタル」という要因があると整理しています。繋がりを自慢したくなるとか、関係性が長いことを自慢したくなるとか、そういった心理的な要因です。単に機能の上位互換だとテクノロジーの進歩によって競争が激化してしまいますが、ソーシャルキャピタルで戦えている場合は優位性が維持されるので、そのバランスが重要だと思っています。

水谷:フォロワー数やビュー数もソーシャルキャピタルの一要素だと思うんですが、その追求が行き過ぎることで、逆に繋がりや関係性が希薄化されてしまうトレードオフも一定ありそうだなと思っています。
昔話ですが、僕が社会人になったばかりの頃にiPhoneが広がり、フォロワー数を追い続けていくようなSNSの使い方も拡大していました。そんな中で、仲がいい人同士でしか繋がらないという真逆のコンセプトの『Path』というサービスがあり、そっちに投稿している方がなんとなくかっこいい、みたいな感覚があったのを覚えています。結局は、SNSはビュー数やフォロワー数などのボリュームがないとマネタイズができないという致命的な課題を抱えてPathはサービス終了してしまいましたが、このあたりのバランスを取るのはすごく難しいですよね。

西村: めちゃくちゃ人気があるお店より、みんなが知らない“頑固おやじが作るおいしいお店”を知ってる方がなんかかっこいいですよね。ソーシャルキャピタルの中にはそんな感覚もあると思っています。ただ、クローズドになればなるほどマネタイズは難しいですね。

祝: SNSって、最初はあまりマネタイズを考えない方がいいんですかね?マネタイズに引っ張られてしまうと、ユーザーに刺さるものがぼやけて見えてしまうとか。

西村: それはあると思います。ただ、SNSの中でもユーザーが儲けて運営が手数料を取るようなサービスであれば、ユーザーのために儲ける仕組みを提供しているわけなので、収益化の方向性と合っていると思うんです。なので、そのSNSが何を目指しているかだと思います。『Jiffcy』の場合は、別にユーザーが儲けるようなサービスではなくて、ユーザー同士がもっと仲良くなったり意外な一面を知れたりするという方向性なので、そこにお金が介在する余地はあまりなく、マネタイズは後の方にするという方針です。

Instagramが『Threads』を別アプリにした理由。SNSにとって最も重要な「世界観」

水谷: SNSが“どこでマネタイズするか問題”は極めて難しい問題です。どれだけの時間滞在してもらい、どう繋がりを増やしてもらうかというところも、特に0→1のところで腕が試されるポイントだと思います。ここの設計がうまいと感じているSNSはありますか?

西村:『Threads』ですかね。ThreadsがInstagramに内包されたXみたいな存在になっているところがおもしろいなと思っています。Threadsって常に結構ダウンロードされているんですけど、その流入の大半がInstagram経由なんですよね。Instagramの中になぜかツイートみたいなものが表示されている欄があって、「もっと見る」を押したら別のアプリに飛ばされるという不思議な仕様。ただ、Instagramの中にその機能を作ったら世界観が壊れてダサくなっちゃうので、違うSNSという形を取っている。やっぱりSNSにとって重要なのが「世界観」だということを、Instagramの運営チームはよく知っているからだろうなと思っています。手強いですね。

水谷: 機能を足すときに、場を変えて空気感に個別性を持たせて、ちょうどいい距離感で送客していくという感じですよね。

西村: はい。

水谷: 今、FacebookにしてもInstagramにしてもYouTubeにしても、開くとまずショート動画が出てくるじゃないですか。違うプラットフォームで見た動画が別のプラットフォームでも流れてきて、また見て「いいね」して、みたいな。メガプラットフォーマーの世界観の差別化がだいぶ失われてきているんじゃないかなとも思っているんですが、西村さんからはそのあたりはどう見えていますか?

西村: 機能面での差別化はやはり減ってきているなと思いつつも、そのSNSを開く目的みたいなところは違うかなと思っています。それこそがブランディングの力かなと。例えば、『TikTok』に一時的に『BeReal.』的な機能が付きましたが、あっという間に廃れましたし。Instagramを開くときに画像以外のものを見ようとしている人もいないでしょうし。SNS同士が「皆さん一緒に収益効率を高めましょう」みたいな仲良しな感じなんじゃないでしょうか。

「機能は真似できても、人間関係はコピーできない」模倣戦略にどう立ち向かうか

水谷: そういう意味では、Xは独自路線を行っていますよね。言語を自動翻訳したグローバルなポストが流れてくるようになって一気に世界観が変わったなと思います。AIともかなりシームレスに結びついています。西村さんはどう見ていますか?

西村: ビジネス的な進化に乗り遅れたことが、結果的に今のXを形作っているかなと思っています。Facebookみたいに他のSNSをガンガン真似していくということを、ジャック・ドーシーさんはしなかった。それが哲学だったのか、ただの怠け者だったのかはわからないですけど。その結果、他のSNSには付いているけどTwitterには付いてない機能がたくさんあるという状態になった。その後、イーロン・マスクが取得していよいよ進化させようとなったときに、時代はAIだった。そこで今さら他のSNSに当然のようについている機能を真似しても仕方ないということもあって、独自路線にいったのかなという気がします。個人的には好きですけど、正直ブランディングの観点では、イケてない方のSNSに分類されると思います。

水谷: なるほど。

西村: いわゆるキラキラした人が使っているInstagramに比べると、ちょっと地味に映っちゃいますよね。

水谷: もうちょっと大衆向けという感じではありますよね。

西村: 論破が好きな人というか、頭がいい人が集まっている印象です。

祝: そういう意味では、SNSって一つのカテゴリーのように見えても、細分化していくニーズは一定あるのかなと感じました。例えば、中国版TikTokの『抖音(Douyin)』が最近『抖音精選』という別のアプリを出したんです。TikTokの中の長編コンテンツだけを切り出した、縦動画アプリです。TikTokは元々長くても1分程度のショート動画がメインでしたが、最近は教育系だったり映画やドラマの解説だったりでがっつり20分くらいあるようなコンテンツも出てきている。そういったものを別アプリで切り出しているんです。別にTikTokがあればいいじゃんって思うんですけど、そこをあえて別アプリで切り出すというのは、やっぱりアプリごとのカルチャーやコンテンツを確立することでメイクセンスするということなのかなと感じました。

西村: あとは、リスク回避的な側面もあるのかもしれないですね。ショート動画を見にきた人が、最初こそ物珍しさから長い動画も見たとしても、そこからは続かないどころか、ショート動画を見にきていた人たちを消しちゃう懸念があるというか。長期的な成長のためにまだ検証している段階という可能性もありますね。

祝: 昔、C向けのサービスを提供している起業家が、投資家に訊かれて一番鬱陶しい質問として「MetaやTencentが同じサービスを作ってきたらどうするの?」を挙げていました。これってナンセンスな質問なんでしょうか?西村さんはそのあたりはどう思いますか?

西村: 当然うまくいったサービスは真似されますから、投資家としては絶対に確認しておきたい質問ですよね。そこで起業家が“諦めないか”は重要だと思います。その点、私は「機能は真似できるけど、そのSNS内の人間関係はコピーできない」と考えています。

祝: なるほど。

西村: そのSNSの“内輪ノリ”があったとして、それを別の場所でやれと言われてもやらないじゃないですか。なので、自分たちが提供しているSNSの中に独自の生態系を築けている場合は、機能が真似されても大丈夫だと思います。

水谷: 普段何気なく使っているSNSの裏側に、いかに人類の叡智が高度に活用されているのかを改めて気付かされました。さて、今回はここまでです。次回は実際に西村さんたちが提供している『Jiffcy』がどんなサービスなのかに迫っていきたいと思います。ありがとうございました!

西村・祝:ありがとうございました!Ayo!


全編はPodcastでお楽しみください💁‍♂️💁:

西村さんと祝さんの1on1もあわせてご確認ください💁‍♂️💁:

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