STORY
STORY

世界のESGスタートアップ30選(前編)

NOTES

ジェネシア・ベンチャーズで、パートナー兼チーフESGオフィサーを務める河合です。

スタートアップ関連のESG情報を発信していく連載企画『ESG for Startups』の第2回目となる本稿では、世界のESGスタートアップ30社をご紹介したいと思います。ESGのテーマは幅広いため、今回ご紹介するスタートアップの事業内容も、ハードウェア、バイオ、データ分析、ブロックチェーン活用、消費者向けサービスなど、非常に多岐にわたる興味深い顔触れとなっています。
なお、紹介記事は、前編・中編・後編の3回に分けてお届けしますので、本稿(前編)にご興味を持って頂けた方は、ぜひ近々公開予定の中編・後編も合わせてご覧ください。(筆者のTwitterアカウントのフォローもぜひお願いします!)

目次

  1. Novisto(カナダ/2019年)
  2. Green Li-ion(シンガポール/2020年)
  3. Patch(米国/2020年)
  4. Symbrosia(米国/2018年)
  5. CozZo(ブルガリア/2017年)
  6. ESGAnalytics.AI(米国/2019年)
  7. Circulor(英国/2017年)
  8. Prometheus Fuels(米国/2019年)
  9. Smarter Sorting(米国/2015年)
  10. SmartCloudFarming(ドイツ/2019年)
  11. おわりに

1. Novisto(カナダ/2019年)

カナダのスタートアップ企業Novistoは、組織内の各部署に散らばった様々なESG関連の非財務情報を、効率的に収集および可視化してくれる社内プラットフォームを提供しています。ESGレポートを作成するために必要となるデータは、定量・定性を含めて非常に多岐にわたりますが、それらを一つのツール上で集中管理することで、レポートの作成や改善点の把握、情報ソースの確認などを容易に行うことが可能になります。
また、第三者機関とのデータ連携によって、入力作業にかかる手間も削減することができます。更に、社内で集められたESG関連のデータを、AIを用いて自動分析できる機能も備えており、類似企業や関連企業とのベンチマーク比較やESGスコアの改善ポイントの把握が可能になるほか、ESGに関連する自社の経営アクションと財務パフォーマンスの相関を簡単に把握することができるようになります。
ESG関連のデータを、情報開示のための単なるレポート作成で終わらせることなく、経営改善や事業成長に活用したいという企業のニーズは強く、財務パフォーマンスとの相関分析など、ESGデータからの価値創造をサポートする同社のサービスは、多くの顧客にとって魅力的なものとなっています。

画像10
(画像:Novist)

2. Green Li-ion(シンガポール/2020年)

Green Li-ionは、リチウムイオン電池のリサイクル技術を持つシンガポールのスタートアップ企業です。同社は、使用済みリチウムイオン電池を、純度99.9%の正極に直接リサイクルできるマルチカソードプロセッサー「GLMC-1」を開発し、従来のリサイクルプロセスを大幅にスピードアップすると同時に、収益性を4倍以上も高めることに成功しました。
電気自動車は気候変動対策に不可欠な産業である一方、EVバッテリーの原材料となるリチウムは埋蔵量および生産量が限られているため、需要の増加に伴って価格は高騰しています。また、リチウムの採掘方法は環境に悪く、水資源や生態系を脅かす要因にもなっているのです。このような採掘時の環境汚染や労働環境における人権侵害の問題に加えて、使用されたリチウムイオン電池のほとんどが電子廃棄物となって埋め立てられています。
このような様々な問題を回避する手段として、使用済みリチウムイオン電池のリサイクルが注目されているものの、電池の中に含まれているリチウムなどの物質を分離・抽出することは容易ではなく、現在のリサイクル方式では大量のエネルギーを必要とするほか、排出される有毒ガスや廃棄物を回収しなければならないといった問題も抱えています。そこで、同社が強みを持つ使用済み電池のリサイクルの純度と効率性の高さが求められているのです。

画像2
(画像:Recycling Product News)

3. Patch(米国/2020年)

Patchは、誰でも手軽にカーボンオフセットを実行できるAPIを開発しています。企業は、わずか数行のコードを入力するだけで、様々なデータと連携して自身のCO2排出を自動で細かく算出することができ、そのような排出量に見合ったカーボンクレジットを、最先端のCO2回収技術や森林再生・保存プロジェクトなど、多様な支援先から選択することができます。
PatchのAPIは、会社と個人の両方で使用できますが、例えばECサイトではカーボンニュートラルな配送を提供し、注文の履行と出荷に関連する排出量を測定して相殺を行います。消費者には販売時点でオプトインするか、配送料に自動的に費用を含めるかを選択できるようになっています。
現在、20以上の異なる種類のオフセット技術に関する、50以上のプロジェクトが出資対象プロジェクトに含まれており、豊富な選択肢を提供しています。
顧客企業にはTripActionsのほか、未公開株式投資会社のEQTなども含まれます。2021年2月、同社はAndreessen Horowitzをリード投資家とする調達ラウンドで、450万ドルの資金調達に成功しています。

画像3
(画像:Patch)

4. Symbrosia(米国/2018年)

CO2は何千年もの間大気中にとどまり、地球環境に対してゆっくりと影響を及ぼしますが、メタンガスはわずか12年間しか大気中にとどまらない反面、地球環境に対してより激しい影響を及ぼします。そのため、短期的にはメタン排出量を削減すると、同じ量のCO2排出量を削減するよりも、はるかに大きな冷却効果が得られます。そのようなメタンガスは、牛や他の家畜の腸内発酵と呼ばれる消化プロセスを通じて排出されており、世界の地球温暖化の6%を引き起こしているとも言われています。
米国のスタートアップ企業Symbrosiaは、Asparagopsis Taxiformis(カギケノリ:紅藻の一種)という海藻を使って、家畜の消化段階で炭素から水素をブロックし、メタン生成物質を自然に減少させることで、家畜由来のメタンガスの排出削減を実現しています。
Asparagopsis Taxiformisは、養魚場から出る廃棄物を利用して生産される持続可能な原料で、真水を必要としません。また同社は、海藻を動物飼料に加工するために、再生可能エネルギーを使用しています。同社の海藻を牛の飼料に散布すると、動物の成長速度が向上し、メタンガスの排出も削減されるため、畜産農家は飼料にかかるコストを削減しながら、持続可能性を向上させることが可能となるのです。

画像10
(画像:Symbrosia)

5. CozZo(ブルガリア/2017年)

パン、バター、乳製品、缶詰などの生鮮食品の多くが、賞味期限を過ぎてゴミ箱に入れられており、このような廃棄食品が環境汚染や生態系への悪影響を引き起こしています。
ブルガリアのスタートアップ企業CozZo は、消費者が食品廃棄物を避けるのに役立つモバイル・アプリケーションを提供しています。このアプリは、冷蔵庫、パントリー、冷凍庫のデジタル画像を表示して、各アイテムの有効期限がいつになるかを示してくれます。全ての食品の「賞味期限」と「使用期限」の日付を追跡することで、消費者がいつ食品をビンに入れるべきかを決定してくれます。また、消費された食品と廃棄された食品のレポートや毎月の使用内訳を提供してくれるほか、期限切れのアイテムを自動的に削除して、消費者に在庫を補充するように通知します。
無駄な廃棄を削減することで環境問題に配慮できるだけでなく、必需品の買い忘れや不用品の購入を防ぐことで、ユーザーのお金・時間・労力の無駄も排除できます。また、このアプリは家族全員が無駄のないキッチンを運営できるように設計されたコラボレーションツールにもなっており、専用のチャットルーム、クイックメッセージ、共有通知を使用して、一緒に買い物や料理を計画することも可能です。

画像5
(画像:CozZo)

6. ESGAnalytics.AI(米国/2019年)

ESGAnalytics.AIは、ESGデータセットに基づく最先端の分析を提供するフィンテック企業で、2019年に米国の主要研究大学の研究開発部門がスピンオフして設立されました。同社のチームメンバーには、気候科学、データサイエンス、統計学、AIなどの幅広い分野の専門家が在籍しています。
同社は、人工衛星、ドローン、国勢調査、ソーシャルメディア、その他の代替データソースから取得した様々なビッグデータを活用して、対象となる地域・産業・事業のESGテーマに関連するデータセットを作成し、これらのデータセットをAPIまたはSaaSプラットフォームを通じて提供しています。1,000項目を超えるデータセットには、健康と福祉、AIの自動化、COVIDからの回復状況、社会正義、デジタルデバイド、教育機会格差、水質、グリーンエネルギー移行、気候シナリオ、CO2排出量、性別と人種格差など、広範なテーマが含まれます。
同社の顧客は、ポートフォリオマネージャー、機関投資家、CFAなどが対象となっています。金融アナリストは同社のデータセットを利用して、投資検討におけるグリーンウォッシュの問題を回避しながら、戦略的な目標に沿ったパフォーマンスとインパクトを、より適切に測定することが可能になります。

画像10
(画像:ESGAnalytics.AI)

7. Circulor(英国/2017年)

商品や材料の出所を正確に把握できない限り、グローバル化した複雑なサプライチェーンにおいて、社会・環境基準を効果的に適用することは困難です。
英国のスタートアップ企業Circulorは、ブロックチェーンや機械学習などの技術を組み合わせた、産業サプライチェーンの追跡ソリューションを提供しています。同社のツールは、原材料の原産地と、サプライチェーン内の生産プロセスや材料のフローを追跡します。商品にデジタルIDを割り当て、生産、リサイクル、使用終了の各段階におけるサプライチェーンデータを追跡するもので、これにより従来不透明で複雑だったサプライチェーンを完全に可視化することが可能になります。
このようなきめ細かいリアルタイムのデータ捕捉によって、サプライチェーンで起こった異常や不正行為を特定し、またその来歴を確認することで、企業による「責任ある調達」を実証することができるのです。
Circulorは、電気自動車業界へのソリューション販売に成功しており、現在、自動車メーカーやサプライヤーがコバルト、マイカ、リチウムなどの材料を追跡できる数少ない実証済み技術となっています。同社は、ニッケル、銅、プラスチック、革など他の商品も追跡しており、自動車部品の再製造などの循環型経済ソリューションにも導入されています。

画像7
(画像:Circulor)

8. Prometheus Fuels(米国/2019年)

Prometheus Fuelsは、大気中からCO2を回収し、これを効率的に変換することで、カーボンニュートラルなガソリンを生成しようとしています。
燃料の製造プロセスは、まずCO2を直接空気から回収して電気化学スタックに移動し、炭素と水中の水素分子を結合させて長鎖アルコールを生成します。このアルコールはプロセス水からろ過され、最後の触媒工程でアルコールが結合されて水が回収されます。この工程では、さまざまな炭化水素系燃料を製造するためのカスタマイズも可能です。生産プロセスは、再生可能エネルギーと周囲の空気にのみ依存するため、燃料製造の拡張性は事実上無限大であるとしています。
2021年9月、同社はデンマークの海運コングロマリットであるA.P. モラー・マースクから出資を受けて、15億ドルの評価額によるシリーズB資金調達ラウンドを終了しています。これにより、Prometheus Fuelsは、世界初の電気燃料ユニコーン企業となりました。

画像8
(画像:Prometheus Fuels)

9. Smarter Sorting(米国/2015年)

多くの小売業者が、賞味期限切れ、破損、返品、あるいは単に消費者が望まないという理由で大量の商品を廃棄しており、埋め立てるか焼却処分を行ってます。
この問題を解決するため、Smarter Sortingは、小売業者向けにクラウドベースの廃棄物管理プラットフォームを提供しています。AIを活用することで、再利用、寄付、分解、部品ごとのリサイクルなど、売れない商品や返品された商品を、より持続可能な方法で処理するための情報を提供します。また、廃棄が避けられない製品については、最も環境にやさしい処分方法を提案します。この選別システムでは、自治体や州の廃棄物処理法に照らし合わせたチェックも行ってくれるため、企業にとってはコンプライアンス管理が容易となり、売却不可能な物品をどう扱えば良いのかという意思決定を自動化できます。
従業員がバーコードを使って品物をスキャンすると、同社のプラットフォームはその品物をどう扱うべきか最適化された指示を出します。寄付・返却・リサイクルするべきか、電子廃棄物・医薬品・有機廃棄物として処分するべきか、といった具合です。これにより、小売業者は廃棄量と廃棄コストを削減することができ、ある小売業者のケースでは、導入後約3ヶ月で廃棄物の70%以上を埋立せずに済みました。

画像9

10. SmartCloudFarming(ドイツ/2019年)

過剰灌漑や過剰施肥などの農業活動は、土壌の健康と肥沃度を低下させ、最終的には環境への深刻なダメージと砂漠化をもたらします。土壌分析は、土壌を肥沃に保つために必要な行動を教えてくれるため、収益性と回復力のある農業にとっては重要な要素と言えます。
ドイツのスタートアップ企業SmartCloudFarmingは、リモートセンシング、地上データ、ディープラーニングに基づく高度な土壌分析ソリューションを提供しています。また、土壌管理を簡素化するために、独自の3D土壌マップを搭載したリモート土壌管理ダッシュボードを開発しています。
土壌の効果的な灌漑と最適な施肥のためには、さまざまな深さでの土壌水分レベルと土壌養分含有量および地下の分布を知る必要があります。3D土壌マップは、個別のセンサー測定と2D表面地図による既存の方法とは対照的に、さまざまな深度で継続的にこれらの情報を提供することが可能です。
また、リモートセンシングデータと先進的な気候科学研究を利用した土壌有機炭素モニタリング・アルゴリズムによって、土壌管理と炭素貯蔵に関する農業関係者の意思決定も支援しています。

画像10
(画像:SmartCloudFarming)

おわりに

ESG領域での起業をご検討の方や、そのようなスタートアップとの協業をご希望の方がいらっしゃいましたら、まずはぜひカジュアルにお話させてください!(筆者のTwitterアカウントのフォローもぜひお願いします!)

『ESG for Startups』連載一覧 [再掲]
#1 PRI署名及びESG投資方針の策定について

筆者

BACK TO LIST