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【DBJキャピタル】変わり続ける社会の中で何ができるか ―人と社会を見つめ、大きなインパクトを目指して挑むスタートアップ投資―|Players by Genesia.

STORY

「金融」とは文字通り、必要なところへお金を融通すること。

では、金融業の醍醐味とは、ビジョン(目指す世界観)とは、役割の価値とは、何でしょうか。

私たちベンチャーキャピタルは、金融業の一職種として、より良い社会を実現していこうとサービス・プロダクト開発に取り組むスタートアップに対して、投資家の方々から預けていただいたリスクマネーを提供していくというミッションを背負っています。そして、スタートアップの大きな成長と成功、及びその対価としてのリターンに全力でコミットしています。

その動くお金のとなりには、必要なところ=あるべき姿について考え抜き、自分自身というリソースも融通・投下する、強い想いを持ったPlayersがいます。

「世界への大きなインパクト」というミッションを掲げ、政府系VCというポジションからスタートアップ投資に積極的に取り組む、DBJキャピタル。今回は、ジェネシア・ベンチャーズのLP(Limited Partner)でもある同社のディレクター・河合さんと田島との対談をまとめました。

コロナ禍を経て、人々の目がこれまで以上に世界や社会のあるべき姿へと向く中、私たち一人ひとりはその社会の一員として何を目指し、自分自身のリソースをどう融通するか。考えるきっかけになれば幸いです。

面倒見のいい兄と過ごした学生時代

田島:

河合さん、本日はよろしくお願いします。
僕たちはこの『Players』というコラムを通して、新しい産業の創出に関わる当事者(Players)の方々の想いに触れてきました。DBJキャピタルさんのお話もですが、河合さんご自身のお話もぜひ伺いたいです。今に至る経緯・ルーツやこれからのビジョンなどです。
早速ですが、河合さんの幼少期から教えてください。ご出身はどちらですか?

河合:

富山県の高岡市で、高校生までずっとそちらですね。
幼少期に川崎病を患って一ヵ月入院していたり、小学生のときはずっと小児喘息だったりして、周囲の子どもたちに比べるちょっと病気がちなところがありました。ただ、今から振り返ると、自分の負けず嫌いな性格だったりとか、粘り強さだったりって、そういう体験から形成された部分もあるのかなと思っています。例えば、喘息ってけっこうつらくてですね、階段の一段二段の上り下りもけっこうしんどかったんですけど、友人にそういう自分の弱いところを見せたくないという気持ちも強かったですし、体育の授業なんかもけっこう必死でついていっていた感じですね。中学になると自然と小児喘息は治ったんですけど、小学生の時はけっこう大変でしたね。

田島:

中学以降はどんな風に過ごされたんですか?

河合:

私には兄貴がいたんですけど、兄が社交的で面倒見のいい性格だったのもあって、小さい頃からずっと兄について回ってるような感じでした。兄の友人達と一緒にいる機会も多かったですし、当時熱中した趣味とか聴いていた音楽も、兄の影響を強く受けてましたね。なので、中学時代の趣味なども、同世代というより兄世代くらいのものをかじってるものが多いかなと思います。

田島:

勉強はする子どもだったんですか?

河合:

人並みにはしていたかなと思います。趣味が多い自由人の兄貴がいるとだいたい弟は反対といいますか、親に勉強しろと言われなくても空気を読んで勉強するようになる、みたいな。我が家はその典型でしたね。親に勉強しろとか言われた記憶もあんまりないです。むしろ、試験前とかに私が勉強していると父親が私をゲームに誘いに来るみたいな。

田島:

クラスの中ではどんな存在だったんですか?

河合:

田舎なので人数も少なかったんですけど、生徒会長をやったりとか、比較的目立つ部類だったのかなという気はします。まぁ、どこにでもいそうな真面目な学生タイプだったと思いますが、小学生の時はガキ大将っぽいところも実はありまして、その頃は少し悪目立ちしていたところもあったかもしれません。

田島:

じゃあけっこうリーダーシップ型だったんですか?

河合:

そうだったかもしれないですね。でも一番トップに立って、先頭に立って、という意識はあまりなくて、部活では副キャプテンとか、リーダーのサポート役みたいなところがしっくりくる部分もありましたね。

DBJキャピタル株式会社 投資部 ディレクター 河合 将文

自分が“苦手なもの”に対する憧れ

田島:

将来的にどういうことをやっていこうとか、社会人になってどういう仕事がやりたいとかは、学生時代から考えていたんですか?

河合:

学生の頃は、なんとなくグローバルなことに関わりたいっていう漠然とした思いはありました。あとは、単純なんですけど、金融の世界に対する憧れもありましたし、投資業務っていうダイナミックなことに関わりたいなって。それで、新卒で入社した会社が農林中央金庫というところで、JAグループの金融部門を担ってる金庫番なんですけど、一方で世界有数の機関投資家という顔もありまして、やっぱり当時からグローバルにダイナミックな投資業務をやってみたいという気持ちはありました。

田島:

グローバルというところに目が向くきっかけはあったんですか?

河合:

もともとそういう家庭でもなかったですし、すごく英語ができたわけでもないんですけど、自分が“苦手なもの”に対する憧れみたいなものがありました。あとは、私は富山の田舎出身なので、田舎から東京に出てきたときにやっぱり世界って広がりましたから、じゃあ今度は海外に行ったらどうなるんだろうみたいな、仕事でもそういったことに関われたら楽しいだろうなっていう気持ちはありましたね。
苦手なことに飛び込むと、それが自分にもできるようになるんじゃないかって考えていました。本当は、できるようになってから飛び込むという順番なのかもしれないですけど、例えば農林中金に入ってから、のちに社費留学というかたちでアメリカの大学に留学させていただいたんですけど、それもやっぱりそういう環境に身を置いたから自然と英語が身についたりとか。環境に飛び込むことってすごく大事かなと思ってます。逆に、そういうところに追い込まれないとなかなか自分から率先してできないという部分があるのかもしれないですけど。

田島:

苦手なことに憧れがあったってことですけど、得手不得手やすでにできることとはまた別のところに「こうなりたい」「こうありたい」という欲求があったんでしょうね。自分の可能性を制限していないというか。
ちなみに、金融というのはどこから来たんですか?

河合:

金融ってなんとなく、わかったようでわからないというか、世の中のお金の動きって、抽象的すぎてちょっと実感が伴わないというところがあると思います。それを実務でやって、経済活動のしくみを俯瞰的に理解したい気持ちがありました。

田島:

僕も新卒で入社した銀行の面接のときに、「人間の体全体を見たときに、心臓は血液を送り出すところであり、また血液が戻ってくるところ。銀行はまさにその心臓のような存在で、お金を社会全体に巡らせる。そして、戻ってきたお金は情報をまとっている。その心臓にあたる部分に身を置くことによって、自分自身も成長したいし、社会全体の成長に貢献したい」みたいな話をしたところ、面接がうまくいったんですけど。金融ってそういう側面がありますよね。

河合:

世の中のしくみが少し見えるのではないか、というところですよね。

金融の現場で見た、崩壊と絶頂のサイクル

田島:

農林中金での仕事内容は、投資業務だったんですよね?

河合:

そうです。2000年に入社して2011年まで10年ちょっといたんですけど、その期間のほとんどがオルタナティブ投資の部門で、ずっと投資業務をやってましたね。特に欧米市場のクレジット商品への投資を担当していました。私が入社した2000年はドットコムバブルの最中でしたが、直後にバブルがはじけ、投資部門に配属された時はまさにクレジット市場の崩壊期でした。毎日毎日格下げのニュースとか金融商品の価格下落のニュースばっかりで、非常に暗い時代でした。そういったところから始まって、その後は世界的な景気回復とか金融緩和ですごく市場が盛り上がってきて、世界中の投資家が優良なアセットを奪い合うような時代に突入してきました。その頃は、世界でもトップティアのヘッジファンドや投資銀行のプロフェッショナルの人たちと仕事をさせていただく機会がたくさんありまして、その時期にそういった方々と一緒に仕事ができたのは、一流のプロの仕事ぶりや心構えなどを知るすごくいい経験になりましたね。ただ、2008年にリーマンショックが起こって状況は一変し、また厳しい冬の時代に逆戻りすることになりました。そういう意味でいうと、市場の崩壊期に投資家としてのキャリアをスタートして、絶頂期を経てまた崩壊期へ向かう・・といった一連のクレジットサイクルをすべて現場で体験できたことは、すごく貴重な経験になったと思います。
何事もそうだと思うんですけど、いい時があれば悪い時もあって、しかもそれは一定のサイクルで繰り返すもの、といった感覚がすごく身に染みているところはあるかもしれないですね。

田島:

実際に一回りして見えた景色って何かありましたか?例えば、金融とグローバルという軸で飛び込んだ(入社した)当初に抱いていたイメージとの違いとか。
例えば自分の話でいうと、これはあくまで役割の違いの話だと思うんで、批判っぽくなってしまうのは避けたいんですけど、銀行からサイバーエージェントへの転職のきっかけになったのが、銀行って過去の実績に対して融資をするところで、企業や経営者の未来の挑戦には融資できない・寄り添えないということに対しての歯がゆさをすごく感じていた、というところがあるんです。なかなか今の金融のメカニズムだと実績のないところにお金を出すのは難しいのだという現実に直面したんです。また、当時は公的資金を受け入れたタイミングだったこともあって、お客様の方を向いて働くというよりは、銀行を主語にしてお客様からどう稼がせていただくかみたいな時期だったりもしたので、金融のいい部分も見たし悪い部分も見たなって思ってるんですよね。その上で、自分としては新しい価値をつくっていくことにもっと貢献したいなという想いがあって今があるんですけど、河合さんはどうですか?

株式会社ジェネシア・ベンチャーズ 代表取締役/General Partner 田島 聡一
河合:

それに近い感覚はありますね。特に私がやっていた投資業務はキャピタルマーケットの話なので、大きな金額は動くんですけど、生身の人の顔はあまり見えてこない世界だったんですね。最初はそれがグローバルでダイナミックで刺激的に感じたんですけど、逆にリアリティを感じることが難しくなっていました。数字だけが動いてる、みたいな。それでいて、ストラクチャー商品を扱う中で金融技術なんかを駆使したりはするんですけど、それもすごく机上の計算の話のように思えて。そこに対して、もう少し人の顔が見える距離感で、しかも、より投資対象に対して感情移入できるような仕事をしたいなと思うようになってきました。例えば、うまくいったときも一緒に喜べるし、うまくいかなかったときは苦労を分かち合うみたいな、運命共同体じゃないですけど、そういう関係性の中で投資業務をできたらやりがいがあるんじゃないかと思うようになりました。
あとは、今後のキャリアを見つめ直していた時期が2011年だったんですけど、まさに東日本大震災が起こって、これから世の中がどうなっていくんだろうという社会不安が高まっていましたし、直前まで留学していたということもあるかもしれませんが、なんとなく私の愛国心が高まっていた時期でもあって。人に寄り添い同じ船に乗って投資活動をやりたいということと、あとはやっぱりもっと社会貢献できるような公的な取り組みに関わりたいという想いが強くなりました。それで、その両方ができる会社、収益性と公益性の両立を追求しながらリスクマネーを提供している会社、ということでDBJに入社しました。金融業界ということに変わりはないですけど、金融や投資業務の中でもやりたい切り口が少し変わった感じですね。

田島:

農林中金時代に金融のダイナミズムを知ったり、グローバルな投資家と関わったりする中で、金融のおもしろさを理解しながら、なかなか人の顔が見えづらいということを感じて、より肌感覚を持って、お金の流れの先で何が起こっているかだとか、そういった部分をしっかりと自分自身で理解したり体験したりしたいと考えて、転職に結びついたということですよね。けっこう悩まれましたか?

河合:

そうですね、農林中金は日本の第一次産業を支えるという社会的な意義も大きく、また尊敬できる優秀な先輩方や同僚に恵まれて、本当に素晴らしい組織でしたし愛着もありましたので、かなり悩みましたね。今から思えば、32歳(転職時の年齢)ってこれから何でもできる年齢だと思えるんですけど、その時は、もう32か!みたいな必要以上に焦る気持ちがありまして、新しい環境で自分自身を変えなければ!みたいに少し大げさに考えていたかもしれません。
結果的には、自分のやりたいことを突き詰めていく中で、リスクマネーの提供ということを意識して転職したんですけど、その最たるものを考えていった時に、やっぱりベンチャー企業なんじゃないかというところに行き着きました。なので、DBJの中でもいくつか部署を経験してきましたけど、DBJキャピタルに行かせてくれとずっと言っていて。さっきのお話とも重なるんですけど、投資する側と投資を受ける側がこれほど深い関係性にある投資ビジネスってあんまりないかなと思っていて、まさに一蓮托生というか、(ベンチャーキャピタルには)そういうことが前提としてあるから、自然と責任感みたいなものも出てきたり、真剣に取り組もうという高いモチベーションにも繋がってきたりするのかなと感じています。

人はどこまでいっても、社会の一員だから

田島:

転職の軸として、リスクマネーの提供と、公共性・公益性とおっしゃいましたが、それはどのあたりから生まれてきた想いなのでしょう?

河合:

自分が何に対して誇りを感じるか、満足感を感じるか、みたいなことだと思うんですけど、それが人によっては経済的なリターンだったりもするでしょうし、いろいろなことがあると思うんですけど、私の場合は、世の中の役に立っているという感覚を持ちながら仕事をしたい、というのはなんとなくありますね。農林中金もDBJも公益性という共通点はあるのかもしれないです。やっぱり人はどこまでいっても社会の一員だということは変わらないと思いますし、社会との関わりの中でこそ個性も輝くものだと思いますので、やっぱり社会の役に立って初めて満足感があるような気がしてますね。

田島:

僕たちも、社会というのは広義のチームで、自分たちや自社はその一員だと考えています。勝手ながら、想いが似ている部分があるなと感じました。
繰り返しになりますが、私たちのこの『Players』というメディアでは、社会をより良くしようと取り組んでいる当事者(Players)の方々に、人生のビジョンだったり、そう考えるに至った経緯だったり、その方を突き動かす想いだったりということをお聞きしているんですが、ズバリ、河合さんにもそういうものはありますか?忘れ得ぬ経験のようなものなど。

河合:

人生のビジョンを一言で、みたいなことはちょっとすぐには思い浮かばないんですが、少し先のことまで考えて設計したいタイプかなとは思っています。こんな風になりたいからそういう風に変わっていけばいいなって。
例えば今の業務でいうと、ちょうど4年前の2017年からDBJキャピタルに来て、キャピタリストとしての投資業務ももちろんですけど、DBJグループの中に散らばっているリソースを有効活用したいなという想いがずっとあって、そのために動いている部分もあります。スタートアップやイノベーションに興味がある職員って実はグループの中にけっこういるんですけど、たまたまそういう機会や接点がないだけなんですよね。そして、彼らも独自のスキルや人脈を持っていたりするわけなんですけど、そういう個々のイノベーションに対する熱意やリソースが組織内で分散された状態はもったいないなって。そういう分散状態にある熱量を有機的に繋げて社内に広く伝播させ、一つの塊のような大きなエネルギーに凝縮していくイメージで、そういう取り組みができたらいいなって思ってます。例えば銀行の融資部隊のセクター担当者とキャピタリストを集めて、自分たちの投資先と取引先でどんなオープンイノベーションを実現できるかとディスカッションする場を設けたりとか、投資部門間で投資テーマを話し合うのもそうですし、ジェネシアさんもそうですが、国内外のVCとの連携についてもディスカッションの場を設けたりとかですね。そうして、いろんな人たちで、組織の壁とか垣根を越えて、どうコラボレーションできるかというところを意識して取り組んでいます。その結果、DBJグループの中でも、コミュニケーションが格段に良くなったなという実感があります。今までDBJで大企業だけを担当していたようなディール担当者などがスタートアップに触れる機会も増えたのかなと思いますし、いろんな人たちの関わりが増えてきて、うまくつながり始めてきたという感覚がなんとなくあるんです。ある先輩から「君が台風の目みたいな起点になって動いてくれて、グループとして熱量が上がったよね」みたいなことを言っていただいたことがあったんですけど、それは非常にうれしかったですね。ずっと意識して取り組んできたという想いもあったので、周りの人にもそう感じていただけるのはすごくうれしいなと思いました。

田島:

僕たちもよくチームについて議論するのですが、いつも一緒に働いている身近なチームだけでなく、河合さんがDBJグループ全体のリソースに目を向けたように、広い視野で俯瞰的にチームというものを考えることはとても大切だと思っています。相手を別のチームの人だと考えると、どちらが利益を得るか、どちらが勝利するか、みたいな発想になりがちな部分も大きいと思うのですが、そうではなく、広く仲間として捉えるというか。

河合:

人に機会を与えてあげようみたいなつもりではなくて、自分一人やDBJキャピタル単体でできることは本当に限られていると思うので、いろんな人の協力を得ながらネットワークを最大限活用していった方が絶対に良い結果に繋がるだろうという発想ですね。実際にそうやっていくと、いろんな人がいろんなリソースを提供してくれますし、やっている人たちもみんなハッピーであれば、相乗効果というか好循環が続いていくと思うんですよね。やっぱり何かを一緒に実現しようとしたときに、どちらか一方だけが利益を得る関係性は持続的じゃないというか。Win-Winなかたちで、ギブアンドテイクというか、お互いにメリットがあるかたちでやっていかないと続かないかなって気はします。

田島:

河合さんの中に、いつから、どこから、そういう思想が生まれたんでしょうね?

河合:

キャピタリストとして、特に今意識しているところではありますね。この業界での経験が長い方々がいる中で、特に私たちは銀行からの出向で、ローテーションもありますし、期限もあったりする立場で投資活動をしていて、そこをどう組織力で強化していくのかっていうのは最初からすごく思っていたところですね。

変わり続ける世の中で、社会に向き合う

田島:

組織力を強化しようという目的は、やっぱりスタートアップに貢献しようという想いですか?

河合:

そうですね、キャピタリスト一人の経験値だけではアドバイスや支援できる内容も限られてくると思うんですけど、そこを組織力で補完することで、スタートアップの事業成長にしっかりと貢献したいという想いがありますね。

田島:

しかも「持続的に」とおっしゃいましたよね。そのメカニズムに気づくと、いろんなことがWin-Winなかたちで回っていくよなと、改めて実感しながら伺っていました。その逆は「分断」ですよね。ここに気づく人と気づかない人がいる気はしています。言ってしまえば、持続的であるということは、地球の人類全体を掛け算にするメカニズム。実現していきたいですよね。

河合:

田島さんもそういう発想をお持ちだと思うんですけど、田島さんは何かきっかけがありましたか?

田島:

銀行員、そして前職(サイバーエージェント・ベンチャーズ)時代から今も共通していることって、ずっとビジネスのカウンターパーティが経営者だということなんですよね。銀行の法人営業時代も、自分が新入社員であろうが基本的に相手は経営者が出てきてくれたし、前職も、ベンチャーキャピタルだったのでやっぱり基本的には経営者がカウンターパーティでした。その中で、やっぱり持続的に成長して成果を出し続ける経営者と、途中でドロップアウトしちゃう経営者がいるなと。銀行8年、サイバーエージェント12年、でだいたい20年ですけど、当時初めて会ったときには言語化できなかったけど、何とも言えない違和感を感じた経営者や起業家が最終的にどうなったかという結果を見られるだけの時間を経ているわけです。その結果を見ると、当時の違和感がかなりの確率で当たっていたりもしていて。じゃあその違和感の正体が何だったかというと、経営者のベクトルがどちらかというと自分自身に向いていると感じる発言だったり態度だったりしたんですよね。そういう再現性を問い続けてきた結果、自分が自分が・・というベクトルの人は、持続するのは難しいんだなと。実際の経営者や起業家との出会いを通じて、そしてその結果がどうなったかを知るということを通じて、学んできたということが一つ。あとは、僕自身も子どものころに憧れていたようなモノを少しずつ手にできるようになってきた中で物質的には満たされつつあって、でもそれだけではもう自分の欲求や興味関心のLTVが長くなさそうだなと考えたときに、ビル・ゲイツをはじめ、世界の名立たる経営者が社会貢献活動とかに挑戦している姿を見て、自分も社会への貢献の中に足跡を残したいというような欲求に向きつつあるというのは感じていますね。これが二つ目ですかね。

河合:

田島さんのお話を伺っていて、私も気づいたことがあったんですけど。投資業務のクレジットサイクルの中では、例えばバブルな時期にそのバブルに乗って一時的には金儲けしたんだけど、それが行き過ぎて最終的に人生を破滅させてしまった人たちも世の中にはいて、その結果すごく社会に迷惑をかけて大不況をもたらすことにもなりました。これって何なんだろうなって。ちょっと冷めた目で、虚しいなって思って眺めていたことが、もしかしたら持続性について考える一つのきっかけになっているかもしれません。より多くの人々が、より持続的に幸福でいられる環境の方がいいですよね。普段あんまり意識して考えたことなかったですけど。
あとは、少ししんみりした話になっちゃいますけど、先ほど話に出てきた兄貴が、私が社会人3年目のときに、まだ20代だったんですけど病気で亡くなったんですよね。そのときに、何で兄貴だったのかとか、なぜ自分ではなかったのかとか、自然に考えました。そういうことを考えるうちに、絶対に自分じゃなきゃいけないことなんて別にあんまりないなって。どんなことでもそうだと思うんですけど、だいたい代わりが効く。誰か他の人がやろうと思えばできる。そして、一人の人の人生って(例えば死などで)突然変わることがある。そういった感覚の中で、物質的な欲求というよりも、社会の中で僅かでも自分の存在意義を示せるような爪痕を残したいという気持ちはあるかもしれないですね。投資業務で経験した経済サイクルもそうですし、プライベートでの家族に生じた出来事もそうですけど、世の中って常に変わり続けるものというか、浮き沈みや循環がありますよね。諸行無常というか。だからこそ、一過性の流行で終わるのではなく、持続性のあるしくみづくりを意識しているというのはあるのかなと思いました。

「大きなインパクト」にこだわる

田島:

お兄さんのお話は、けっこう大きな出来事ですね。

河合:

まったく想像もしないことが起こるんだなって思いましたね。

田島:

僕の親父は50歳で亡くなったんですよね。僕が高3のときだったんですけど、やっぱりけっこう出来事として大きくて、命の有限性とか、そういうところに意識がいきましたね。僕は今45なんですけど、ずっとどこかで50を意識してるんですよね。例えば、人間が80年生きるとして考えたときに、一年の価値って1/80じゃないですか。でもあと50年ってなったら1/50ですよね。そこから、1/49、1/48と分母が減っていって、最後の一年は1/1じゃないですか。じゃあそれを全部足したときの総和って、ずっと1/80の人は1にしかならないですけど、そうじゃなく分母を意識したかたちで足し合っていくと、その数字はどんどん大きくなっていく。そういう、命の有限性みたいなことはすごく意識しますね。だからこそ、自分ならではの価値を残したいなって。それに僕の場合はインパクトの大きさを求めたいなと思っていて、なのでベンチャーキャピタルだなって。自分が、こういうサービスがあったら世の中がもっとあるべき姿に向かえるなって考えたときに、僕が起業して死ぬ気で頑張ってもインパクトの大きさには限界があると思うんですね。ベンチャーキャピタルは、高い志を持つ起業家に投資させてもらって一緒に伴走させてもらう、それによって何倍も何十倍も大きなインパクトを生み出す現場やプロセスに当事者として関わらせてもらえる、欲張りな仕事だなと思ってるんですけど。やっぱりインパクトは大きいなって。

河合:

ジェネシアさんも今「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」を掲げられてると思うんですけど、本当にDXできるかどうかって、それによって日本の競争力が左右される国家的な課題であり、インパクトの大きな話だなと思っています。ジェネシアさんにLP出資させていただいた背景みたいな話をすると、投資実績がおありだということはもちろんですけど、組織の壁を越えて一緒に連携させていただきたいというところがあったので、それができる会社さんだなと思いました。やっぱり組織の壁を越えて何かを一緒に成し遂げようとしたときに、プロジェクトが成功するかどうかって、根本的な価値観が共有できていないと難しいと思ってるんですよね。その部分で、私たちとしても共感させていただく部分がありました。まさに田島さんがおっしゃったように、大きなインパクトを目指してDXにフォーカスしてっていうチームカルチャーというかコーポレートアイデンティティがはっきりしている印象を持っています。
ちなみに、そうしたビジョンなどをチームに浸透させる取り組みって普段からされているんですか?

田島:

採用の、最初の面談のときから言い続けてますかね。それで、そういう、描いている世界観に対して当事者として実現したいという人以外は採用しないようにしています。最初にお話ししたときの浸透度というかシンクロ度というかで、ほぼ決まっているかもしれないです。ビジョンが合っていない人とか、同じ世界の方向を向いていない人をどうにかして合わせようっていうのはとても難しいじゃないですか。それであれば、もともと同じ想いがある人に仲間になってもらうことが大切だと思いますね。チームの核となるビジョンやベクトルをキャンセルするような人を入れないことで、自然とどんどん強みの掛け算が生まれていくようなイメージを持っています。そうすると、どんどんインパクトが大きくなる。あとは、ビジョンの解像度を上げていくということは意識しています。

河合:

ジェネシアさんはそこが際立っている感じがしますね。

田島:

強く意識しているところなので、そう言っていただけると本当にうれしいです。

挑戦している人が報われる社会へ

田島:

たしか、DBJさんのミッションにも「大きなインパクト」というキーワードが入っていましたよね。勝手ながら、シンパシーを感じていました。

河合:

弊社のミッションステートメントに込めた思いは、DBJグループの基本理念でもある収益性と公益性の両立を図るため、社会的に大きなインパクトを生み出すことを重視し、政府系金融機関としての特長とグループ総合力を活かした支援を提供しながら、高いモラルと使命感を持って日本の新産業創造に貢献していくという決意表明です。これに基づき、社会的なインパクトへの期待は大きいものの、エグジットまでに比較的時間を要したり、新規性が高くて事業検証が難しいような、ライフサイエンス分野やフロンティア技術分野への投資にも積極的に取り組んでいます。政府系VCとしての役割や立場を意識しながら、他プレイヤーとの協調関係や補完関係をより強固なものにして、日本の起業文化の発展に貢献していきたいと考えています。

田島:

まさに、政府系VCであるDBJキャピタルさんだから出せる、大きなインパクトというものがあると思います。また、DBJさんには河合さんが学生時代から見据えていた「グローバル」という軸もありますよね。ずっとブレずに、ここまで掘り下げてこられているんだなぁと感じます。

河合:

そうですね。弊社では海外VCファンドへの出資等を通じて海外投資家や海外企業とのネットワーク構築を進めながら、一方でDBJグループの取引先企業との連携を深めるための取り組みにも注力しています。海外から日本の地方までを幅広く網羅する企業ネットワークを提供し、様々なステークホルダーを巻き込みながら、日本のイノベーション活動を持続性のあるものにしてきたいですね。
弊社のメンバーは、このような価値観を共有していますので、例えば投資検討時においても、経済性だけでなく社会的な意義について議論する機会も多くあります。個人としての業務活動が社会貢献に繋がっていることに喜びを感じるメンバーが集まっており、これがモチベーションの源泉になっていると感じています。

田島:

河合さんご自身は、何の制約条件もなしにしたときに、これをやって死にたいとかありますか?夢とか自己実現というのかもしれないですけど。この質問も、僕たちが面談のときによくする質問です。

河合:

はっきりとしたイメージではないんですけど、自己実現がどういう状態なのかなと考えると、好きなことをやっていってそれが同時に社会貢献にもなっている状態が自分に取っては自己実現された姿かなと思っています。こと仕事に関していうと、仕事を仕事と感じないような、オンとオフを切り替える必要がなくて、ただ楽しくて没頭している状態がオンでもありオフでもある、そういう姿が理想かなと思っています。尚且つ、そうやって楽しくやっていることが世の中の役に立ってる、というのは理想的ですね。すごくシンプルなんですけど、それを実現するとなるといろんなハードルもありますし、例えばサラリーマンだとなかなかそんな訳にもいかないと思うんですよね。意思決定も全部自分でできる環境を作れるかとか、リスクを負って変革に挑戦する勇気が必要な部分もあるでしょうし、簡単なことではないと思うんですけど、理想のかたちを追求していきたいとは思っていますね。

田島:

時間がお金だけじゃなくて、自分の成長にも繋がるというか、世の中のインパクトにも繋がるということですね。

河合:

ベンチャーキャピタルという仕事に照らして言うと、実現したい社会っていうとちょっと大袈裟かもしれませんけど、個人が最大限の努力を発揮できて、挑戦している人が報われる社会であってほしいなという願いはありますね。あとは、挑戦せずにリスク回避をすることが評価の対象になるような社会ってすごく閉塞感があると思うんですけど、今の日本って多分にそういう側面もあるかなって思ってまして。だから、ちゃんと努力している人や前向きに挑戦している人が正当に報われる活力のある社会であってほしいですし、それができるのがまさにベンチャーキャピタルの仕事でもあるかなと思っています。

人と人とが掛け算であり続けるしくみ

田島:

一つ前のお話に戻るかもしれませんが、僕たちは、スタートアップがそのビジョンを実現するために「強いチーム」が必要だということを伝え続けてきてるんですけど、僕たち自身も同じように強いチームでありたいと思っています。というのは、一人でできる自己実現も当然ありますけど、やっぱり仲間と叶える、よりインパクトの大きな自己実現もあると思うんですよね。河合さんにとって、「強いチーム」とはどんなチームだと思いますか?

河合:

まずは共通の価値観があって、共通の目的に向かっていて、あとはやっぱり自律的・有機的に機能するチームが理想かなと思っています。何かを指示したり強制したりしなくても、放っておいても最大限のパフォーマンスをみんなが出していくっていう姿かなと。例えば、スポーツのチームで言うと、これから戦う試合のトーナメントにおける位置づけをみんなが理解していて、戦略も戦術も浸透していて、いざ試合となればアイコンタクトと阿吽の呼吸だけで展開して、最後はみんなでゴールを決めに行くみたいな。しかも試合運びだけじゃなくて、その試合に臨む前にどういった練習をすべきだとか、あるいは日々どういう自己管理をすべきだとか、そういったことすらも当たり前のことのようにできる。そういう、チームカルチャーが共有されているチームはすごく強いんじゃないかなと思いますね。しかも、共通の価値とか目的とか自律性とかってお互いに関係性があるような気がして。例えば、共通の目的が、運用するファンドのパフォーマンスの最大化だったとしても、そこに至る動機は人それぞれ違うと思うんですよね。単に個人のトラックレコードを作ることにしか興味がない人と、社会や組織への貢献も意識しながら取り組んでる人では、目的は同じでも価値観が違っていると、そういう個々の集団がチームとして自律的・有機的に機能するとはちょっと思えないですよね。なので、目的だけではなくて、価値観もしっかり共有されている必要があるんだろうなという気はします。そこが違うと、そもそも例えば「スタートアップ」という言葉の定義も違うかもしれないですしね。

田島:

スポーツの例えはとてもわかりやすいですね。価値観をそろえていくためには、やっぱりコミュニケーションし続けるってことですかね。

河合:

最初に全体に向けて言うことはすぐにできるかもしれないですけど、それを定着させることの方が難しいでしょうから、そこは、言い続ける、やり続ける、背中を見せ続ける、みたいなことがきっと必要ですね。

田島:

ギブ&テイク[*1]という本があって、ギバー(人に惜しみなく与える人)、テイカー(真っ先に自分の利益を優先させる人)、マッチャー(損得のバランスを考える人)という三者がいるとしたら、誰が成功するか・うまくいくか?誰が失敗する・割を食うか?という話があるんですけど、答えはどちらもギバーなんですよね。つまり、ギバーにはタイプAとタイプBがいて、うまくいくギバーはテイカーとほどよい距離を取れる人、うまくいかないギバーはテイカーに搾取され続けてしまう人、という話です。これはチームづくりにも言えることで、メンバーがギバーばかりであれば掛け算のチームになるんですけど、一人でもテイカーが入ってしまうと、ギバーもギブすることを止めちゃうんですよね。それは僕自身、チームづくり・仲間づくりの中で意識している部分です。

河合:

テイクだけの人がいると、周りもギブするのがだんだん馬鹿らしくなってくるというか、悪影響がありますよね。

田島:

掛け算に一人でも0の人(テイカー)が入ってくると、全体が0になっちゃいますよね。そういう意味では、コーポレートアイデンティティやカルチャーというのも、合う仲間を集めるという意味もあれば、一方で、合わない人を入れないための防波堤みたいな役割もあると思っています。

河合:

自社のコーポレートアイデンティティやカルチャーづくりの経験、それに基づく採用のあり方に関する哲学を投資先のスタートアップにも展開できるというのは、いいですね。ただスタートアップと一口に言ってもそれぞれカルチャーが違うでしょうし、マッチする人も変わってくるんですよね。それっておもしろいことですよね。

強いチームを育てる挑戦

田島:

いいビジョンやいいWillを持った人が集まることが一番インパクトが大きくなるしくみという気がしているので、まさにギバーが集まる場づくりをしていきたいです。それで、その人たちの方向性や価値基準の部分の共通の解を持てれば最強だと思うんですよね。だから僕たちは、自社だけじゃなく、スタートアップやLPの方々や協業先の方々なども含めて、基準を絶対に妥協することなく、チームというものを大きく広げていくことにチャレンジしたいなと思っています。それが結果として、いい社会に向かうはずなんですよね。こういうところって、すぐにはAIには取って変わられない領域だと思うので、チャレンジしていきたいところですね。
なんだか、居酒屋での熱い会話みたいになっちゃいましたけど。

河合:

田島さんが強いチームづくりに注目したきっかけって何かあったのですか?

田島:

けっこうメンバーの影響が大きいかもしれないですね。僕自身は創業者として、もともとビジョンなどもしっかり持っていたし提示していたつもりだったんですけど、創業3年目にメンバーの吉田(あ)起案でWEBサイトのリニューアルプロジェクトが立ち上がった段階でコーポレートアイデンティティについても見直してみましょうという話になって。最初は、へー・・という感じだったんですけど、その策定プロセスが、どんな言葉をチョイスするかからロゴのデザインまで、想いとか世界観とかを設計していくプロセスがすごく美しいなと感じたんですよね。それによって自分の想いが自分の心の中だけじゃなくて、言葉やロゴやいろいろなデザインに見えるかたちで浸透していくのが、すごくいいなと思いました。当初は正直、CIやビジュアルデザインはおまじないくらいにしか思ってなかった部分もあったんですけど、想いが伝わるかたちになって広がっていくイメージが膨らんだときに、これは価値があることだと実感しました。こういう、アイデンティティをかたちにしていくプロセスって、立体的に考えると、まさに強いチーム作りなんですよね。チームの羅針盤をつくる作業なんですよね。
河合さんは、チームづくりやコミュニケーションにおいて何か心がけていることなどはありますか?

河合:

DBJキャピタルの場合は、けっこうバックグラウンドが違っていて、私のような出向者もいればプロパーの職員もいて、しかも投資業務で飛び抜けて長いキャリアがある人もいないので、そういう意味ではスタートラインのバラつきが大きいと思うんですよね。なので、その部分のすり合わせみたいなところは、こだわっているところですね。それに、つまりは多様性があるチームでもあるので、会話だけではなかなか相互にコミットしきれない部分は、やっぱり行動やアウトプットとして示しながら共有していくというところは意識していますかね。

田島:

河合さん自身のとても前向きな姿勢、そしてそれにより人の前向きな部分も引き出す力、あたたかく、育てる姿勢のリーダーシップには僕たちもすごく共感しています。これからもぜひ一つのチームとして連携させてください!

[*1]GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代
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(デザイン:割石 裕太さん、写真:尾上恭大さん、聞き手/まとめ:ジェネシア・ベンチャーズ 吉田 愛)

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