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【HRBrain x JA三井リース】出資から始まった全方位の共創 | Collaboration by Genesia. Episode 1

COLLABORATION

Collaboration by Genesia. Episode 1では人事評価SaaSを手がけるHRBrainの代表、堀さんとジェネシア・ベンチャーズのファンド出資者であるJA三井リースの鶴田さん、上田さんにジェネシア・ベンチャーズの田島、水谷と共にお話を伺いました。JA三井リースとHRBrainは出資だけでなく、営業協力、そして自社採用と幅広い共創を実施しています。インタビューの中ではどのように投資の判断を下したのか、そしてなぜ営業協力が成功し、自社採用にも至ったのか、その舞台裏について詳しくお話いただきましたのでぜひご覧ください。

HRBrainとJA三井リースの共創の道のり

  • 2019年10月 ・・・JA三井リースがHRBrainに出資、営業協力を開始
  • 2020年12月・・・JA三井リース社内でDX(Digital Transformation)プロジェクトが発足
  • 2021年5月 ・・・JA三井リースがHRBrainのプロダクトを自社採用

出資に至るまで―「HRBrainのプロダクトがまさにジャストミート」

吉田:

本日はお集りいただきありがとうございます。HRBrainとJA三井リースは出資、営業協力、自社採用と幅広く共創されていますが、今までの道のりなどについてざっくばらんにお話を伺えればと思います。早速ですが、HRBrainへの投資検討を始めた当時にJA三井リースの社内で抱えていた課題について教えていただけないでしょうか。

鶴田:

私たちはいわゆるリース会社で、SMBから大企業までのお客様にリースやファイナンスのサービスをお届けしています。主力のリースは金融サービスの一種ですが、制度変更や超低金利の長期化などにより、金融機関全般的にも言えることですが、厳しい事業環境にあります。今後、私たちが法人のお客様にどのような価値を提供し、どうやって共に成長を軌道に乗せてくのかを考えたときに、金融とは異なる新しいプロダクトを届けたい、という思いがありました。今まで、リース・ファイナンスなどの金融サービス以外では、生命保険などの斡旋も行っていましたが目新しさに欠け、昨近は新しい商材の取り扱いが少なかったのが実情でした。私たちが最も多く接点を持つ取引先窓口が経営企画や人事総務部門なので、その方たちに新しいサービスを届け、生産性の向上をもたらすプロダクトを私たちのサービスラインナップとしてご提供したいと考えていました。 投資を検討した2年前はDXというキーワードで業務の効率化を図ろうという動きが活発になってきたころです。SaaSなどで劇的に業務改善や効率化ができるプロダクトの提供先にも投資し、成長の後押しをさせていただいくモデルを作りたいと考えていました。ちょうどその時期に、ジェネシアを通じてHRBrainと出会うことができました。

JA三井リース株式会社 ICT事業本部 本部長 鶴田 己起
吉田:

投資検討を始められた後に社内で出た論点や、投資の意思決定に至った経緯をお聞かせいただけますか。

鶴田:

検討を開始した当初は取引先としてSaaS企業にあまり馴染みがなく、社内検討過程でも、事業内容について細かく説明する必要はありましたが、投資できた一番のポイントはプロダクトの良さ、わかりやすさだったと思います。私自身がユーザーとしてEXCELを使った人事評価業務に課題を感じていましたし、評価する側も評価を受ける側も総じて同じ思いだったんですよね。そのような課題を感じていたので、HRBrainのサービスで「煩雑なEXCEL管理を変えられる」という説明がシンプルに伝わった。 次に問題になったのが、SaaSの取り扱いに不慣れな私たちが、どうやってお客様にHRBrainのサービスを効率的に届けられるかという点です。その不安に対する解として、堀さんからトスアップでいきましょうと提案をいただきました。JA三井リースのお客様をHRBrainに紹介し、HRBrainがカスタマーサポートを行う、という形ですね。その方式なら大丈夫かと安心感もあり、営業体制について方針が定まりました。 その次に競合比較が論点になりました。同じようなサービスを提供している競合各社のサービスを徹底的に比較し、ユーザーへのヒアリングなども行ったのですが、決定打となったのは何よりも堀さんの経営者としての魅力や会社全体が醸し出す活気、そしてチームの力強さでした。 HRBrainの販売実績も増えてきた頃であり、今後も成長していくことが期待できたので投資決定に至っています。

吉田:

社内ではそんなに反対意見が出なかったんですか?

鶴田:

当社が販売規模を出せるのか、その蓋然性に対する意見は多かったです。当時SaaSの販売は皆無に等しく、説明には苦慮しました。しかし、HRBrainのサービスの良さ・分かり易さが社内に浸透していき、先ほどお話しした営業方針を固めていく中で、会社全体としてサービスを取り扱う姿がイメージできるようになりました。

吉田:

堀さんから見たJA三井リースが入ったラウンドの位置づけや、当時抱いていたJA三井リースへの期待を教えてもらえますか?

堀:

当時はPMF (Product Market Fit)の段階で、資金ニーズはもちろんですが、今後協業できる先に入ってもらいたいと考えていました。既に自分たちでリード投資家を確保できていたのですが、JA三井リースに入っていただくことによりそこにさらに厚みを持たせられますし、販売チャネルの多角化も可能になるので非常に親和性が高かったです。更にはトップラインを伸ばす施策として社内の営業努力以外に、パートナーからのトスアップ、という流れを形にしたいと模索していたので、そこにもはまりました。そもそもパートナーさんとの協業って成り立つのか?というのは私たちも考えていました。大きなテーマとして、パートナーサクセスみたいなのをどのように進めればいいのか、こちらも手探りの状況でしたね。 パートナーサクセスについてはまだまだ途上で、今後もこれまで以上に考え、チャレンジしていきたいです。やっぱり弊社とパートナーとお客様、全員がWinになってないと、長続きしないですから。 あとはもう一つ足すとしたら、定性的な印象ではありますがとにかく鶴田さん、上田さんはじめ皆さんからHRBrainを応援しよう、という空気感を感じたことも協業のイメージにつながりました。

水谷:

上田さんにお伺いしたいのですが、昨年夏ごろにZoom飲みをさせて頂いたとき、ちょうどHRBrainを引き受けてこれから売っていくぞ、というタイミングでした。その時上田さんが「HRBrainを売ることしか考えてないです」とおっしゃっていました。「鞄の中もHRBrainの資料で一杯です」と。それが非常に印象深かったのですが、その後どのよう乗り越えられたのでしょうか。

上田:

確かにご一緒したときはなかなか結果が出てなかった時期で、HRBrainのサービス拡販の中心を担っていたので、どうやってお客様に届ければいいかなと悩んでいました。プロダクト自体が良いのは既にわかっているので、いかにその良さをうちの営業メンバーに伝えるか、ということと、メンバー各々自分たちの営業目標を抱えている中で、どうすればHRBrainのサービスの販売に対して力を入れてもらえるかが課題でした。そのため、まずは自分たちでサービスを顧客に紹介し、実績を作ることで各営業メンバーのモチベーションを活性化させていきたいと思っていました。契約自体は自分たちでする必要がなく、まずはしっかりと繋げるだけで十分、そして何よりもお客様のDXニーズに応えることができることは非常に魅力的です。その良さをうまく伝えるために、まずは自分たちで実績を作ることが必要と強く思っていた頃でした。

JA三井リース株式会社 ICT事業本部 ビジネス・リーダー 上田 真之

JA三井リースのDXプロジェクト

鶴田:

そんな中、社内でもDXプロジェクトが始まり、会社全体のSaaSへの感度が上がっていきました。HRBrainの営業については、現在50社以上が本格的な商談に進み、複数社の成約に至っています。

吉田:

そのDXプロジェクトのきっかけについて教えてください。

鶴田:

昨年度から始まった中期経営計画の重点テーマの一つとして、JA三井リースが持続的に成長し、収益性を改善していくためにDXを利活用することを定めました。ジェネシアにも導入段階からご協力いただいていますが、その具体策としてDXプロジェクトがスタートしました。ここでいうDXは自社の生産性を上げるDXもそうですが、私たちが担う営業面でのDXも含まれます。自社のDXについては人事総務部がいち早くHRBrainのような良いSaaSを使って業務効率化を短期間に実現しよう、という動きになっていました。今は社内情報システム基盤全般で取り組んでいます。 営業面については、各営業部門の特性により顧客との取引スタイルが異なる中で、全部門共通のテーマとして、顧客のDXニーズに応えられる商材を届け、営業力を強化していくことがタスクの一つになっています。 SaaSの取り扱いでいうと、DXプロジェクトが始まる前は、担当する営業部が個別に全国の営業メンバーにサービスを紹介していく「点」の取り組みだったのですが、今では組織的な「面」での取り組みになっています。販売体制が整ったこともあり、営業メンバーのHRBrainのサービスに対する理解は飛躍的に高まりました。

田島:

ジェネシアがJA三井リースの経営陣向けにDXについて講演させていただいたのは昨年12月でしたが、それがスタートだったんですね。

鶴田:

はい、営業面でのDXプロジェクト始動に先立ち、幹部にDXの現状や必要性について理解を深めてもらう為に講演していただきました。非常に短い準備期間だったにも関わらず、効果は抜群でしたので、大変感謝しています。また当社マネジメントがDXの重要性を良く理解しており、社員の意識改革を牽引してくれたことも良いスタートができた要因だと思います。トップマネジメントの知見や後押しにより、DXプロジェクトを進める環境が整い、組織的な取り組みが始まりました。

吟味された上での自社採用

吉田:

JA三井リースでは今年5月にHRBrainのサービスを自社採用されていますが、それはどのように決まったのでしょうか。

鶴田:

課題として強く感じていた人事部門が先行してSaaSの活用を進めていて、他のサービスを含め導入事例も多いのですが、タレントマネジメント分野のサービスを検討する際も先行事例と同様に多数のサービスを比較検討した中で、結果的に関係の深いHRBrainが一番良いだろう、ということで決まりました。 システム導入上の物理的な障壁もほぼなかったと思います。そこがSaaSの良さですよね。

田島:

HRBrainに投資していたから導入したんじゃなくて、フラットに吟味した上で、結果としてたまたま投資先だった、ということですね。

鶴田:

はい、相当しっかり他社サービスとの比較検討をしていました。完全なコンペだったと思います。 そして、自社導入した後は営業の進み方が変わりました。出資をして、自分たちも使って、そして会社全体でもDXを進めている、という状況になったことで、営業メンバーの納得感や説得力が向上したと思いますし、実際、商談件数も大幅に増えました。

堀:

本当の価値提供はまだまだこれからですけど、しっかりサポートさせていただきたいと考えています。具体的には、現在はまず評価の部分からになっていますが、今後評価データが蓄積されていくに従って、そのデータを活用した戦略的な人事への挑戦は今後機会をいただきながらやっていきたいと考えています。

株式会社HRBrain 代表取締役/CEO 堀 浩輝
田島:

大企業のDXはある意味組織のDXって位置づけになるとも考えられますよね。一人一人言われたことだけをやるような、いわゆる管理型の組織から、一人一人が能動的に動き回る、発案しながらどんどんトップダウンよりもボトムアップで進められる強いチームへの脱皮です。そのようなチームになれたほうがより変化に強くなると考えているのですが、JA三井リースではチームのあり方についてどのように考えてらっしゃいますか?

鶴田:

メンバーの動き方についての課題意識は社内で強く持たれています。リース業界では、従来型の仕事のやり方ではサービスを差別化することが難しく、繰り返しになりますが、長年にわたる超低金利や制度変更の影響により厳しい事業環境が続いています。そのため、最近は仕事の中身が従来の枠組みから大きく変わってきています。リースやファイナンスなど法人向けの金融サービスの提供だけでは立ち行かないので、これまでの事業領域を超えてどんな価値を提供できるかが問われていると思います。トップダウンではなく、個々の営業メンバーが多様なお客様のニーズを捉え、チームとしていかに適切な価値を提供するのか、情報の可視化やコミュニケーションがより重要になると思います。

田島:

HRBrainを導入する効果が期待できそうですね。

鶴田:

これまで以上に仕事の幅を広げて個人が自律的に動き、業務範囲を広げましょう、となった場合には人事評価制度の見直しも必要になるはずです。営業メンバーの力量による成果の個人差が広がり、これに応じた納得感のある評価が必要になるでしょうから、上司にはより充実したコミュニケーションが求められると思います。従来のEXCEL管理の延長線でやるより、HRBrainのサービスを使った方が圧倒的に便利ですよね。

中央:株式会社ジェネシアベンチャーズ 代表取締役/General Partner 田島 聡一
右:株式会社ジェネシアベンチャーズ Investment Manager 水谷 航己

これからのコラボレーション ー「好循環をますます図っていきたい」

吉田:

今後の共創のイメージについて教えて下さい。

鶴田:

人事のHorizantal SaaSはどの業種、業界、事業規模に対しても共通の基盤であることを、私たちはお客様にサービスを紹介する中で強く実感しています。HRBrainのサービスは様々なタイプのお客様に提案できるので、今後も我々が提供するDXソリューションの基軸にしたいと考えており、そこから派生する新たな顧客ニーズを捉えることもできると考えています。 また、HRBrainは今後もサービスを進化させ新たな価値を提供していくでしょうから、紹介先として連携し続けることで、顧客に対する当社のプレゼンスを引き上げる機会となることも期待しています。しっかりHRBrainが成長することが、結果として我々の顧客に対する新たな商機にも繋がっていく。そういった形での好循環を作っていきたいと思います。

堀:

そうですね。しっかりとサービスの提供価値を私たちは高めていって、JA三井リースの顧客の皆様に喜んでいただくということを第一に置きたいなと思います。そうしないとJA三井リースにとっても良くないし、お客様にも貢献できない。ぶれずにサービスを磨き込むと、結果としてネットワーク効果が働きやすいのではと考えています。 今は人事評価をメインでご紹介いただいていますが、二つ目としてタレントマネジメントのプロダクトについてもおそらくニーズが増えていくと思うので、売り方等も発明したいと思っています。 三つ目がEX (Employee Experience) インテリジェンスです。従業員体験をスコア化して改善に繋げていく新サービスを9月にローンチしたので、そちらの方の協業もまた一緒にやっていきたいです。

終わりに

今回お話を伺う中で、共創が進んだ大きな原動力としてはJA三井リースが抱えていた課題とHRBrainのサービスの提供価値がちょうど合致した、ということと、やはりJA三井リース社内でのDXプロジェクトが挙げられると感じました。単なる営業協力にとどまらず、会社全体がDXを推進する中で実際にHRBrainのプロダクトに触れ、その良さを実感し、そしてお客様にもリアルな体験談を交えながらご紹介する。JA三井リースが変わっていく姿を見て、お客様の感度も高まったのではないでしょうか。また、鶴田さん、上田さん、堀さんのやり取りの随所から約2年かけて築き上げられた互いへの信頼も感じられました。今後2社がどのように共創を深めていくのか、楽しみです。

左から:ジェネシア・ベンチャーズ 水谷、吉田、JA三井リース 上田さん、HRBrain 堀さん、
JA三井リース 鶴田さん、ジェネシア・ベンチャーズ 田島

※こちらは、2021/10/26時点の情報です
(デザイン:割石 裕太さん、写真:尾上 恭大さん、聞き手/まとめ:ジェネシア・ベンチャーズ Portfolio Manager 吉田 実希)

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