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【コノセル x オリエンタルランド・イノベーションズ】学習塾とオリエンタルランドグループのあいだに、出向者を通じて生まれた共通言語|Collaboration by Genesia.

COLLABORATION

ジェネシア・ベンチャーズは、「アジアで持続可能な産業がうまれるプラットフォームをつくる」というミッションを掲げ、創業前後のシードラウンドのスタートアップに対して投資と経営支援を行っています。スタートアップがより大きな産業を作り出すための支援の一つとして、私たちはスタートアップと事業会社が出会い、そして「共創」する機会の創出も行っています。

スタートアップと事業会社の結節点となるのが、Portfolio & Partnership Management (PPM) チームです。PPMチームはファンドのLP出資者にとどまらず、多くの大企業・政府・自治体などの方々とのコミュニケーションに取り組んでおり、様々なステークホルダーが出会う場をつくり、そして私たちの考える『産業創造プラットフォーム』を実現するために日々奔走しています。

本稿は、スタートアップと事業会社のCollaborationの現場を取材し、お届けするコンテンツシリーズです。


オリエンタルランドは、2020年に新規事業創出を目的にCVCであるオリエンタルランド・イノベーションズを設立し、積極的にスタートアップ投資を行っています。その3号案件として投資を受けたのは、OMO(Online Marges Offline)型の学習塾『コノ塾』を運営するコノセル。オリエンタルランド・イノベーションズからコノセルには当初から「出向者を受け入れてほしい」という強いリクエストがあったそうです。

今回のCollaboration by Genesia. では、オリエンタルランド・イノベーションズ代表の豊福さんと、オリエンタルランドでの社内公募によりコノセルへ出向中の山手さん、コノセル代表の田辺さんに出向というスキームを活用した共創についてお話を伺いました。

  • インタビュアー:ジェネシア・ベンチャーズ Senior Portfolio & Partnership Manager 吉田 実希
  • 聞き手・まとめ:ジェネシア・ベンチャーズ Relationship Manager 吉田 愛
  • デザイン:割石 裕太さん
  • 写真:尾上 恭大さん
  • 以下、敬称略

出資検討の段階から話題に挙がっていた、出向のリクエスト

吉田:

ジェネシア・ベンチャーズの投資先でもあるコノセルは、私たちのLP(Limited Partner|ファンドへの出資者)であるオリエンタルランド・イノベーションズからの出資、そして、オリエンタルランドの社内公募で選出された山手さんを出向者として受け入れています。今日はその両者の関係構築の経緯や今後の再現性についてお話をお伺いしていきたいと思います。
 両社の最初の出会いは私たちからのご紹介だったと伺っていますが、オリエンタルランド・イノベーションズからの出資検討を始めるときから出向者のお話はされていたんでしょうか?

豊福:

はい、ジェネシア・ベンチャーズさんの投資先ということで紹介を受けて、コノセルについて知りました。出向者については必須ではないが強めのリクエスト、というかたちでお話ししていました。

吉田:

コノセルとして、それを受け入れてもいいかなと考えた理由やきっかけはあったんでしょうか?

田辺:

投資契約にこそ入っていないものの、出資検討の初期からそういうお話は聞いていましたし、その後も何度もリクエストをいただいたので、社内でも真剣に検討しました。ただ、当時の僕らはまだ約10人の組織だったため、実際の採用プロセスに僕たちがあまり関われない出向者を受け入れることについて、正直相当悩みました。

豊福:

私たちとしては、仮に田辺さんやコノセル側の担当者に出向者の選考プロセスに入ってもらったとしても、こちらの組織や人事の事情もありますし、最終的なジャッジに深く関わってもらうことは難しいというのが実情でした。一方で、どんな人が来るかわからないのは困るというのも当然のお話です。実際に行ったプロセスとしては、田辺さんに人材募集を呼びかけるビデオメッセージを撮っていただき、その後にオリエンタルランド社内から応募者を募り、田辺さんと候補者が直接会話できる座談会の場を用意して、双方の認識のすり合わせをしました。

田辺:

座談会でお会いして、印象的な質問や筋のよいコメントをしてくださった方についてフィードバックしましたが、最終的な人選は信じて待ちますという状態でした。

株式会社コノセル Co-Founder / CEO 田辺 理

自ら手を挙げた候補者からの出向者の選出

吉田:

社内公募、座談会、そして選考を経て実際に出向者として選ばれたのが、山手さんなんですね。

山手:

僕はオリエンタルランドで採用や育成を担当していました。充実していたものの、自分の成長のために社外の環境に身を置いてチャレンジしてみたいという考えと、大学では教育学部を専攻しており、コノセルの教育事業に興味を持ちました。出向というスタイルでチャレンジできる機会はなかなかないですし、とても迷いましたが応募に至りました。

吉田:

大学で教育学部に行かれたんですね!実際に田辺さんとの座談会に参加されてどう感じましたか?

山手:

大学で教育学部に進学したのは小さい頃から人に何かを教えることや人と関係性を作っていくことが好きだったからです。部活の顧問の先生への憧れがあって教育学部に進学し、教員免許も取りました。
 座談会に参加した当初は正直、よくわからなかったです。「ベンチャー企業」というイメージしかなかったため、事業内容に興味はありつつも、自分がその世界に入った際に何が起きるかが想像できているようないないような、そんな曖昧な状態でした。ただ、今見えているもの以上に何かおもしろいものに出会えるのではないかという興味で飛び込んでみようと決意しました。

豊福:

山手さんと面接した際に、自分自身の経験を踏まえた想いをしっかりと言語化している印象を受けました。まさに今山手さんが言った、チャレンジしたいという気持ちが一番伝わってきたのが彼を選んだ理由でもあります。

株式会社オリエンタルランド・イノベーションズ 代表取締役社長 豊福 力也

事業のコアである、学習塾の教室長としての配置

吉田:

山手さんの出向は2021年の10月からなので、今ちょうど約2年強経ったところですよね。コノセルでのお仕事はどんなことから始められたのか、また、当時考えていたことなどをお伺いしてもいいですか?

山手:

まず最初に、コノ塾がブランドを変えて運営していた2教室[*1]に行き、そこでの業務を経験しながら新規の教室を立ち上げるための準備などをしていました。当然ですが、事業とプロダクトを理解する、という初歩的なところから始まりました。

[*1]:最初の2教室は別の学習塾を譲り受け「コノ塾」としてリブランディングし運営

コノ塾はリアルとデジタルを掛け合わせたハイブリット学習塾で、デジタルベースの教材を用いながらリアルで教師陣が生徒とコーチング型の対話をしています。僕が中学生の頃、個別指導塾に通っていたときに生徒として感じていた授業料の高さや先生毎の指導スキルのばらつきに対するもやもやを、デジタルで解消するという点と、とはいえすべてをデジタルに振り切るのではなく人の手を残しているところのバランスが印象的で、自分が中学生のときにコノ塾があったら通いたかったなと純粋に思いました。

吉田:

山手さんにとっても初めての出向だった一方で、コノセルとしても出向者の受け入れは初めてですよね?オンボーディングの戦略などはありましたか?

田辺:

まずはユーザーとの接点である教室に入ってもらおうと考えました。人がもっとも必要な部分でしたし、他のロールに挑戦いただくにしても現場理解が必須なため、最初にやっていただくなら教室長しかないと。その後については山手さんご自身がどんどん切り拓いていってくださって、今は企画もがっつりとお任せしていますし、こちらはもう、あれもこれもお願いします!という状態です。

吉田:

結果的に山手さんは教室長としてめきめきと頭角を現したわけですが、コノ塾の教室長に求める資質はありますか?

田辺:

一つは、教室長=商品ともいえるので、生徒と保護者から信頼されて愛される人柄やコミュニケーション能力。一つは、まだまだサービスが完璧に出来上がってはいないので、その余白や不足部分を自分の創意工夫で乗り切れるバイタリティ。あとは、先ほどの山手さんのお話にもありましたが、デジタルで完結させながらもヒューマンタッチを残すという僕たちのプロダクト設計に共感してくれるかどうか。その3点を特に見ています。
 今はコノセル側の採用担当でもある山手さんは何を見ていますか?

山手:

教室をマネジメントしていく仕事なので、チームを作る力、経験、そうした経験から何を学んできたかといった点を見ています。教室の運営体制として、今は基本的に教室長(社員)一人とアルバイトの講師10人ほどで回しています。その先に生徒と保護者の方々がいる構図です。そのため教室長の役割は、授業で活躍してくれる講師を育成する側面と、生徒一人一人の学習をマネジメントする側面を持っています。自分のパフォーマンスだけを高めることよりもその先の人の活躍を引き出すことがとても大切なんです。

株式会社コノセル 教室運営部門スーパーバイザー(株式会社オリエンタルランド・イノベーションズから出向中) 山手 浩史

期待通りの働きとポジティブサプライズ

吉田:

アルバイトも含めるとコノセルもなかなか大きな組織ですが、全体での集合研修はありますか?

山手:

社員全員が集まる機会は半年に一回設けていますが、アルバイトの講師全員まで集まる研修はありません。代わりに、毎日一時間ずつ、「ユニット」と呼んでいる5-6人単位のグループでのシャッフルミーティングを実施しています。集客業務や教室運営、学習支援の成果を出すための情報交換・意見交換の場で、エリア同士の助け合いもそこから生まれてきています。実はこの仕組みは僕が発起人の一人で、グループやリーダーの必要性を感じて去年からトライアルを始めて、現在もアップデートしている段階です。

吉田:

そうしたアクションには、オリエンタルランドで培った経験が活かされているんでしょうか?

山手:

最終的に組織がスケールしたときにこんな世界になっていると事業を運営しやすいだろうなというゴールイメージを持ちながら施策を検討するという姿勢は、オリエンタルランドの組織運営での経験が活かされているなと思います。

田辺:

山手さんは特に組織関連の施策の要点をしっかりと押さえられる印象があります。例えば労務管理でここは優先的に扱うべき事項であるなどの優先順位付けや、必須事項の見極めが非常に上手です。期待通りに業務を遂行しつつも、ユニットの施策のように期待以上の活躍もしてくれるポジティブサプライズもありました。

出向者を通して形成された、両社の共通言語

吉田:

山手さんのコノセルでのご経験をオリエンタルランドの方に報告・還元する仕組みなどはありますか?また、山手さんのような投資先スタートアップへの出向の取り組みの認知を高めたり存在感を出したりするために意識されていることはありますか?

豊福:

具体的にはこれからです。オリエンタルランドのやり方には素晴らしいところもたくさんある反面、それで完結してしまうと井の中の蛙になってしまう可能性もあるので、新たな風を吹き込んでほしいですね。
 認知を高めるための施策としては先日、山手の経験をオリエンタルランドの経営層に話してもらう機会を設けました。田辺さんにもお越しいただき、コノセル目線でのお話もしてもらいました。他には社内報や社内講演会の機会も設けて、人材育成や事業創りの観点でメッセージを発信しています

吉田:

どのような反応がありましたか?

山手:

皆さんすごくポジティブに捉えてくださっている印象です。組織が大きくなると役割が分業されたグループができ、縦のレポートラインを明確にするなど守りが強化され、結果的に組織がサイロ化する傾向がある一方で、スタートアップの規模感だからこそできる組織全体を巻き込んだ仕組みづくりを30代前半である僕の年次で経験できているのはベンチャー出向ならではの経験ですし、経営陣もその価値を理解いただいているように感じました。

田辺:

僕が印象に残ってるのは、コノセルの事業について皆さんが積極的かつ前向きにインプットしてくださっていた点です。プレゼンテーションをしに行ったつもりが、実際にはオリエンタルランドの経営層の方たちとコノセルの事業についてディスカッションさせていただき、貴重な体験となりました。

吉田:

そのオープンマインドな雰囲気は、オリエンタルランドの企業カルチャーなんでしょうか?

豊福:

おそらくは。真面目な人たちが多い会社なので、役員の方々も「来ていただいたんだからしっかりと話を聞いて議論させてもらおう」という姿勢だったのかと思います。オリエンタルランドと塾とで重なる人材要件についてや、学習塾をサービス業として考えたときの将来の絵姿など、細かな質問から俯瞰的な問いまで、この取り組みに真摯に向き合ってくださっているからこそのコメントがたくさん出ていました。

吉田:

山手さんが架け橋になって、双方に共通言語が増えたのではないかと想像しました。

田辺:

それは絶対にありますね。コノセルの事業の説明も、僕がするのと山手さんがするのとでは印象が全く異なるはずです。山手さんはオリエンタルランドの事業との関連性なども含めて自分の言葉でコノセルのことを話すことができるので、オリエンタルランドの皆さんにも届きやすいですよね。

「今ここ」のギャップをすり合わせる勇気を持つ

吉田:

少し抽象度を高めた質問です。他の大企業とスタートアップ間における出向のスキームや異文化交流などで活用できそうなナレッジはありますか?

豊福:

一つは、山手のケースのように社内公募などで希望者が自ら手を挙げるということがすごく大切だと感じています。自分の意志で決めたことだからこそ、想像とのギャップや不完全な部分がありヘコんでも乗り越えられると思うんです。自分の選択をどのように正しいものにしていくかというセルフモチベートが鍵ですね。
 また、スキームについて補足すると、ポジション相当の山手の人件費はコノセルからしっかりといただいてます。だからこそ、お互いにプロとしてその役割を果たしていこう/果たしてもらおうという緊張関係があり、それを保つことも重要かもしれません。

吉田:

山手さんは先輩として、次の出向者がいたとしたら何を伝えたいですか?

山手:

一番は、思っていることを遠慮せずにぶつける勇気を持つべき、ということです。モヤモヤすることがあるのだとすれば悩んでいる時間がもったいないですし、そのモヤモヤを共有することで新たな視点を発見することもあるはずです。今解決すべき課題が明確になり、自分自身が変わらなければいけない部分がわかったりすることも。改めて自分の置かれている状況が理解できるはずです。

吉田:

それは今回の出向の経験から学んだことでしょうか?

山手:

最初の頃は「僕が課題だと感じること」がたくさんあったんです。でも、それはあくまで「“これまでオリエンタルランドで仕事をしてきた“ 僕が課題だと感じること」でした。大企業が既存のプロダクトをより良くしていく段階と、スタートアップが全く新しいプロダクトを磨き上げていく段階では、やるべきことが全く違う。つまり、僕が大企業の感覚で課題を見つけても、スタートアップにおいては「今じゃない」ということもたくさんあるんです。最初はそれに気付きにくかったし、わかってもらえない・・という感覚もありましたが、必要なのは「“これまでオリエンタルランドで仕事をしてきた“僕が課題だと感じること」と「コノセルが今取り組むべきこと」の思考の切り離しやチューニングであると徐々に理解していきました。コノセルを主語にした思考ができないと自分がバリューを発揮できる領域も見極められません。長期的には必要なことでも、スタートアップの状況によって、実は今はあえてそこに着手しない判断をしていたり他に優先すべきことがあったりするんですよね。そのズレを認識して優先順位をつけていくということが必要です。そうした経験から、思うことがあれば遠慮せずに勇気を持ってぶつける大切さを感じています。

吉田:

大企業においては95/100が整っている状態で残りの5をどうするかという話が多いかと思いますが、スタートアップにおいてはまだ5/100しかできていない状態からどのように95の差分を埋めるかがテーマですよね。その段階では96/100の課題ではなく、まずは6/100の課題に着手しようという優先順位の合意形成は確実に必要になりそうですね。

株式会社ジェネシア・ベンチャーズ Senior Portfolio & Partnership Manager 吉田 実希
山手:

オリエンタルランドでの仕事を通して、課題を直感的に捉えて順次解決していくということを当たり前にやってきましたが、それが何番目に解決すべき課題かという感覚は持っていませんでした。

吉田:

100/100が達成された状態がどういう世界なのかを共有することも大切かもしれませんね。

山手:

あとは、守りよりも攻めを優先させる勇気を持つことも大切です。組織の管理体制などいわゆる会社の基盤がしっかりとしていることは働きやすさにも繋がりますが、会社として立ち上がっていく段階ではまずはプロダクトそのものや顧客への還元価値の磨き込みに注力すべきです。限られたリソースをどこに配分させるか判断する際にはまず攻めの動きを優先させるという意思決定をする勇気も必要だと思います。

柱を立てることと整えることのマインドシフト

吉田:

田辺さんからスタートアップに向けて、大企業からの出向者受け入れに際するアドバイスはありますか?

田辺:

第一には、先ほど豊福さんもコメントしていたように出向者が自ら手を挙げてくることと、その背景にある共感やパッションですね。あとは、山手さんの活躍を見てきたから言えることですが、内省力やチューニング力かなと。今のお話を聞いてわかるように、山手さんは内省力が非常に高く、自分の置かれた状況を客観的に捉えてチューニングする力が強いです。リスクも取れる。大企業とスタートアップでは環境が全く違うので、そのあたりの力はとてもポジティブに働きます。自分のプレイスタイルが違うとわかったら切り替えられる。我慢できる。そういうところが本当に素晴らしいです。
 大企業とスタートアップの本質的な違いは、大企業にはサービスの柱が既にあり、儲かっているからそこは揺るがしたくないという経営思想があることだと考えています。柱は経営層がしっかりと計画しているから弄らないでほしい。一方で、スタートアップにはまだ柱がなくて、みんなで柱を立てている最中です。それなのに柱が立った後の枝葉の話をされてもまだいいよってなります。ただ、その両者のマインドセットを行き来できることに大きな価値があります。大企業でも新しい柱を立てたいと心の底では思っているけど難しいから怖い。それで大体が柱の周りを整える方向に向かうんですけど、大企業からの出向者は柱を立てることが求められる。そこをマインドシフトできるかが成果に直結すると思います。

吉田:

山手さんは、ご自身の内省力について何か意識されていることはありますか?

山手:

もともと僕は直感や右脳の感覚のようなものを大事にしています。その直感を自分の中で整理し、言語化する際に左脳を使っているイメージなのですが、その変換作業を常に意識しています。あとは、何かを考えるときに自分の軸は持っていた方がいいと思いますが、こだわりすぎても良くないので、自分の価値観や性質のバイアスを自覚することも心掛けています。そのきっかけには、オリエンタルランドでの経験があります。新卒一年目で何百人ものアルバイトの皆さんのマネジメントをしたのですが、一人一人と向き合う過程で、自分の意見だけを押し付けても相手に行動変容が起きない瞬間があったんです。自分と相手の価値観をすり合わせる必要性を感じました。そのためにはまず自分が今何を感じ、考えているのか、何を大切にしたくて、どこに力みが入っているのかを客観的に捉えなければいけない。その上で、伝わりやすいように相手によって伝え方をアレンジしています。
 何百人と向き合っていると、それぞれの人生の歩み方や価値観、思考のパターンなどが全く違うことがわかります。社会に出るまで、僕たちは意外と家庭環境や経歴、興味関心などほぼ同じカテゴリーの人たちとしか関わっていません。だから、それらが違うと共通言語で話せないこともたくさんあります。例えばPDCAというビジネス上ではよく使われる言葉を知らなかったり、マニュアルの漢字が読めなかったりしても、現場でのパフォーマンスのクオリティは非常に高い人もいます。つまり、多様な人がいる中で一項目の優劣や可否だけで一人一人を評価することはできない。置かれている環境で求められる役割の違いなんです。自分や会社主体の言語やあるべき論を一方的にぶつけても、個々人の働き方を正当に評価できず、コミュニケーションが円滑に進められなかったので、そこは自分が変わらなきゃいけないと思いました。

豊福:

山手は特にギアチェンジが得意ですが、大企業とスタートアップのコラボレーションにおいては、両者の間に立ち、両者の思想や方法論をブレンドできるマインドが全てという感じがしますね。アクションに直結する足腰の強さやコミュニケーション力もそうですし、相手の立場や目線に合わせられる力が必要です。出向人材の重要な要件の一つかもしれません。

事業のコアに価値貢献してこそ生まれる信頼関係

吉田:

コノセルでは、オリエンタルランドから二人目の出向者を受け入れたそうですね。

田辺:

僕からお願いしました。コノ塾をハイペースで出店しているので、教室長採用の一つの頼れるチャネルだと考えています。互いに納得感のある出向となるよう、出資担当者の方と対話を重ねて実現した山手さんの実績があるので、二人目の受け入れに際して座談会は実施しませんでした。豊福さんと山手さんを信頼しているし、仮に合わない人が来たとしてもきっと対話して解決できるだろうと信じてます。未来を見据えてビジネスを作っている過程でどんなことが起こるかは誰にもわからないですよね。そこに企業と企業、人と人の信頼感があればきっとどうにかなると思っています。

豊福:

私の視点からすると、OMOの中ではオペレーションが非常に重要ですし、ラストタッチで教室長がお客さまの満足度を向上させるという点で親和性は非常に高いと思います。コノセルと信頼関係を築き、共に山を登れている感覚が個人的には一番嬉しいです。

山手:

僕にとっては「外から来たお客さん」として扱われなかったことが一番良かったです。濃厚な出向期間にして僕にも成長してほしいというコノセルの育成の愛情を強く感じていますし、社員と出向者である僕の違いがわからないほど対等に向き合ってもらっています。文化が自然と混ざっているような不思議な感覚です。田辺さんと豊福さんが企業と企業の関係をフラットにしようとしているからこそ人と人ともフラットになっている気がしています。

田辺:

山手さん自身が誰よりもアグレッシブであることの効果も大きいですよ。

豊福:

これからコノセルもどんどん規模を拡大していく中で、人や組織の課題など守りの部分の強化が求められてくるタイミングもあると思います。その時々で必要な知識や仕組みが出てきた際にまた私たちからサポートを提供できる可能性もあるので、さらなるコラボレーションをしたいですね。

吉田:

スタートアップの成長段階によっては、また違うタイプの出向者や連携の仕方がベストマッチかもしれないということですよね。

田辺:

例えばコノセルがもっとできあがった状態で出向を受け入れていたら、こんなに感謝していないかもしれません。社外には任せられない、事業の立ち上げ期のコアのところで大きく価値貢献してくれているからこそ、仲間だと思えたと考えています。

豊福:

レイターなフェーズからサポートしても、ここまで信頼関係は築けないかもしれないですね。早期のフェーズで、しかも一番重要な事業の本丸に貢献するということが連携の一歩目としては大事なのかなと思いました。

吉田:

皆さん、今日は貴重なお話をいただきありがとうございました!

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Collaboration by Genesia.シリーズについて

Collaboration by Genesia. は、ジェネシア・ベンチャーズが考える大企業・事業会社とスタートアップとの共創のあるべき姿を主軸に、そのコラボレーションの事例をご紹介していくシリーズです。

大企業とスタートアップの共創のあるべき姿 | Collaboration by Genesia. Episode 0 は、「共創」について紐解き、大企業とスタートアップの連携の型をご紹介している記事となります。よろしければぜひそちらもご覧ください。

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