講義Vol.8:スタートアップの法務・各種契約の留意点
ジェネシア・ベンチャーズが主催する、プレシード・シード起業家 / スタートアップ向けの創業支援プログラム『Ignition Academy 2024』。
第八回目の講義テーマは「スタートアップの法務・各種契約の留意点」。講師には、AZX総合法律事務所のマネージングパートナー兼CEOである後藤 勝也氏をお迎えしました。豊富なスタートアップ支援の中でご覧になってきた失敗事例なども交え、法務に関する重要事項や投資契約書で押さえるべきポイントについて、網羅的にご説明いただきました。
主な講義内容
Part ① スタートアップの法務重要事項
事業を始める際に、まずビジネスモデルの適法性についてきちんと把握する必要がある。同業他社がすでに展開している事業であっても違法な場合はあり、特に著作権法、金融商品取引法、出資法、薬事法、資金決済法等はよく問題になるので注意が必要
適法利用性を高めるには 、利用規約における禁止の明示、登録取消その他のペナルティー、違法行為の検知体制や通報制度をしっかりと整える必要がある
IPOの引受審査等では、違法行為を排除するための ①仕組み ②体制 ③運用実績 が問われるため、これらについて説明できるようにしておくことが重要
事業を進める中で様々な契約書を交わす場面が出てくるが、契約書の一般的なチェックポイントとして下記をしっかりと押さえておくこと
- 競業禁止規定など、会社の事業活動を制約する規定が存在しないか?
- 知的財産権が適切に確保される規定になっているか?
- 法令に違反する規定は含まれていないか?
- 契約の有効期間が適切に確保されているか?容易に解除されることはないか?
- 契約書の内容が取引の実態及び会計上の処理と適合しているか?
- 高額の保証金の授受、相手に対する不合理な拘束など通常の取引慣行から逸脱している規定はないか?
Part ② 投資契約書について
投資契約は、適切な投資を行い、会社をサポート/コントロールすると共に、投資撤退時等のリスクをヘッジすることを目的とする
VCが入る資金調達ラウンドだと、株式引受契約、株主間契約、合意書(財産分配契約)の三つの契約書を締結することが多く、それぞれの当事者と目的をしっかり理解する必要がある
種類株式の利用が拡大している背景には、高いバリュエーションをつけるためのリスクヘッジ、とExitとしてM&Aの重要性があることを理解し、各項目の裏にある投資家の考えをしっかり理解した上で、契約書の交渉に挑むことで、お互いに納得感のある条件に着地させることが出来る
参加者からの声
- 会社を設立してから多く直面してきた法規問題ですが、非常にわかりやすく気を付けるポイントをまとめていただき助かりました。また、個人的に現在進行形で困っているところを質問でき非常に良い機会となりました。
- 実体験をベースにした講義なので、都度講義の後に自分のビジネスのどこをアップデートすべきかを考えることができて有意義でした。
- 創業者間契約をまだ締結していなかったので、改めて良い気づきや学びになりました。ありがとうございました
今回がIgnition Academyの最後の講義となりました。講義の前半は「起業の心構え」、や「PMFまでの道のり」など事業面での内容が中心でしたが、後半は、「エクイティファイナス」、「融資、補助金」、「スタートアップの法務」といった座学中心の内容で設計しています。ここまでの4ヵ月間を通じて、アカデミーメンバーにはビジネス戦略の考え方から実務に直結する知識まで、多角的な学びを得られる機会を提供してきました。今回の講義をもって、Ignition Academyは一つの区切りを迎えますが、ここで培った知識と経験が、メンバーの今後のチャレンジに力強い支えとなることを期待しています!