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つくる人がいきる世界へ -『製造業×人材』領域で日本発のグローバルスタンダードに挑む-(株式会社イノービア)|Players by Genesia.

STORY

Product Market Fit(PMF)という言葉があります。これは起業家の創ったプロダクトが市場に受け入れられ、顧客が抱える特定の課題に対して明確なソリューションを提供することができるようになった状態を指しますが、シード投資を手掛ける私たちにとってPMFと同等、あるいはそれ以上に重要度の高い指標として、Founders Market Fitがあります。

つまり、起業家や経営チームの経験や属性が選定市場と合致しているかを見るのですが、この有無によって、Go To Market戦略の肌触りや、来たるハードシングスに対する耐性も大きく変わってくるため、プロダクトが未成熟なステージで投資検討を行う上では、非常に重要なポイントになります。相良曰く、「イノービアに関しては、これがピタリとハマっています」とのこと。『製造業×人材』で産業変革に挑むイノービアの山川さんと、担当キャピタリスト・相良の対談をまとめました。

起業・イノービア設立の経緯

相良:

山川さんとの出会いは、2019年の春でしたね。
製造業に対する深い愛着を持ちながら、真摯に業界の未来を慮る山川さんの姿勢を見て、ぜひご一緒させていただきたいと感じました。
何より、製造業でVertical SaaSを手掛ける起業家になくてはならないポイント(本部と工場それぞれの役割や関係性を正確に理解していること、工場向けの販売チャネルをスムースに構築できること等)を山川さんが備えていたことが、実際に投資の意思決定を行う上でも大きな比重を占めました。
また、山川さんは経験豊富なシニア起業家である一方で、新しい考え方や異なる視点を貪欲に吸収してアクションに活かす力が強いですよね。産業を変えていこうという強い想いで挑戦する起業家にとってこの力は必須と考えており、とても頼もしく思っています。

株式会社イノービア 代表取締役 山川 隆史
山川:

学生時代から起業には興味を持っていました。就職活動のときに、一生かけて何をやっていきたいかを考えていろいろな会社を訪問していたのですが、一番は「自分で会社を経営すること」と漠然と決めていました。実家が自営業で、子供の頃から商売が身近にあったので、その影響が大きいかもしれません。ただ、大学卒業時点では経験も事業アイデアもなかったので、当時の自分の専門分野に近い業種で、かつグローバルな事業をやっている面白そうな会社ということで、縁あって大手化学素材メーカーである信越化学工業に入社しました。
同社では電子材料の技術営業として、世界中の様々なメーカーとの仕事をさせてもらいました。その中で、インテル社との仕事にも深く関わらせてもらい、同社のトレーニングや人材育成に触れる機会があったのですが、これが非常にシステマティックで素晴らしく、当時の私は強い衝撃を受けました。「日本の製造業にも、誰もが享受できるシステマティックな人材育成の仕組みをつくりたい」そう思ったのが、起業の原点です。

相良:

現場オペレーションの効率化ではなく、「人の成長」にフォーカスしているのも、山川さんらしいなと感じます。

山川:

製造業で仕事をする中で、やはり企業の競争力を決定づけているのは「人」だと思うようになり、人材育成には強い興味を持っていました。輝いている人もいれば、一方で、目の前の業務に追われ、将来の目標も持てずに力を出し切れていない人にも出会いました。このような経験から、「製造業で働く人が、成長しながら、もっと活躍できる社会を創りたい」と考えるようになっていました。

ビジョンとチームづくり

相良:

「人」に焦点を当てたビジョン、ミッションが印象的です。

山川:

当社は「つくる人が、いきる世界へ」というビジョンを掲げています。「つくる人」とは、作る人・造る人・創る人と、いろいろな「つくる」をしている製造業の人を意味しています。ものづくりに携わるすべての人が、成長実感を持ちながらイキイキと働き、活躍できる社会をつくりたいというビジョンです。
人は目標をもったり、成長を実感できるとすごく充実して頑張れる。逆に目標もなく、ただ目の前の仕事に取り組むのは非常につらい。私ももともと製造業出身ですが、製造業では分業が進んで仕事の全体像が見えなかったり、また目の前の仕事に追われたりと閉塞感が漂っていることも少なくありません。自らが成長できること、人を成長させる・育てることは、キャリアの中でとても大事なことだと思います。人材の成長を深く追究することで、製造業で働く人を笑顔にしていきたいと思っています。
また、ビジョンを実現するために、私たちは「人材の成長を科学し、ものづくりをアップデートする」ことをミッションとしています。産業をさらに活性化する原動力となるのは、「人」の力。私たちは、科学的な側面から人の成長にアプローチすることで、ものづくりの生産性向上に貢献し、製造業の未来を変えていくつもりです。

イノービアのVISION・MISSION・CORE VALUE
相良:

同じ「エンジニアリング」でも、IT業界に比べて製造業は技術や事業の模倣困難性が高く、現場オペレーションのノウハウがそのまま競争優位に繋がる特性を持ちます。また、一つの技術や製品を磨き上げるのにも多くの時間と労力を要すと思っています。一朝一夕で大きな成果が上がるものではないからこそ、日々の業務で細部にまで拘りを持って改善を積み重ねることが重要になる。
コアバリューにある「一日一進、日々試行」というフレーズからも、“コツコツ、や“積み重ね”というニュアンスを含む製造業らしさが見受けられ、『製造業×人材』で事業を手がけるイノービアならではの色がふんだんに出た、特徴的なCI(コーポレートアイデンティティ)だと思います。

山川:

当社のコアバリューには、「フロントランナーであれ」という言葉もあります。私たちのやっていることは先人がおらず、未知の領域でプロダクトを創る仕事です。聞こえは良いですが、なかなか大変なことでもあります。
スタートアップという小さいチームで難しいことを実現しようとしているので、この大きなチャレンジに一緒に、かつ主体的に取り組み、その中で自分たちも成長することを楽しんでくれるメンバーと、強いチームを創っていく必要があると感じています。そこで、設立から3年半が経ちましたが、今年に入って改めてビジョン・ミッション・バリューを見直す機会を設けました。相良さんや吉田さんにもご協力いただきました。その結果、納得のいく言語化ができましたし、それらを積極的に発信し始めたことで、頼もしいメンバーが集まってきている手ごたえがあります。

相良:

強いチームは、骨太なCIによって下支えされると考えています。その意味で、特徴的かつ強い想いのこもったCIを持っている今のイノービアは、強いチーム創りの前提条件をクリアしているように思います。今後はさらに、それをチーム全体に浸透させ、メンバー全員が共通の思考軸や行動指針、そしてオーナーシップを持って自走できるような状態を作っていけるといいですよね。

インベストメント・マネージャー 相良 俊輔

製造業の今、そしてイノービアが目指すもの

山川:

「デジタルトランスフォーメーション」という言葉もかなり一般化してきたかと思いますが、製造業にも大きな変革の波が来ています。第4次産業革命といわれるようなデジタル化の流れが急速に広まっており、IoT、AI、センサー、ロボットなどの導入が進んでいます。ものづくりの今後は、デジタル活用によって、大きく様変わりしていくことは間違いありません。
この流れの中で、製造業で求められる人材像も変わってきています。デジタルによって人が全て置き換えられることはないと考えていますが、今後は複数の技術領域をカバーできる人材や、データやロボットを使いこなせる人材などがより求められるでしょう。ものづくり人材も進化しなければならないですね。

相良:

山川さんの言うとおり、業界全体として大きな地殻変動が進んでおり、単純作業はどんどんロボット化され、ロボットはセンサーネットワークの一部に組み込まれることで、生産設備が自動でものを作るようなことが可能になりつつあります。また、今後ますます、ものづくりの簡素化や効率化のトレンドは加速していくと思っています。
ただ、この「生産の効率化」というトレンドは今に始まったことではなく、日本経済が低迷期に入り、コスト削減や生産性向上が叫ばれた1990年代から継続して積み重ねられてきた「KAIZEN」のうちの一つです。翻って今、製造業が全て自動化されて雇用がゼロになっているかといえば、現状そうはなっていないわけですよね。
もちろん長期的には、製造そのものに従事する人材は限りなくゼロに近づいていく未来は想像に難くないですが、製造業に携わる人員の数は、場合によっては(プロシューマーの増加等によって)増える可能性すらある。つまり、押さえておくべきトレンドは「製造業のサービス化」であり、生産図面に解釈を加えたり、効果的な生産指図を出したり、人と機械、あるいは機械と機械の効果的なコミュニケーションのあり方を設計したりする業務は、人間の役割として残るわけです。
そこで重宝されるのは、ITを含む機械との「共生力」の高い人材になることは明白なので、イノービアとしては、そうした時代のニーズやトレンドを押さえた、ものづくり人材の輩出プラットフォームのポジションを獲りにいけると面白いと思いますし、それが十分実現可能な位置につけていると思います。

山川:

まさに、当社は「人材の成長」という部分にフォーカスして、製造業におけるスキル管理や人材育成の仕組みを科学的なアプローチで再構築し、世界をリードすることを目指しています。ニッチな領域ですが、現場のスキル管理や人材育成のあるべき姿を徹底して追究していきます。
その上で、『スキルノート』というサービスを日本発のグローバルスタンダードに育てていきたいです。これは私の経験からの癖かもしれませんが、製造業でやるからには、とにかくグローバルでトップにならないといけない。日本のソフトウェアで世界一になったものはまだ前例が少ないですが、それを実現したいです。
先日アメリカであるグローバル企業を訪問した時、壁に「KAIZEN」という文字が書かれていました。日本はかつて、製造業における品質管理や生産方式をリードして、世界に広げた製造立国ですよね。今度は私たちが、日本発のグローバルスタンダードをつくっていきたいです。

相良:

3Dプリンティングやロボティクス関連のテクノロジーが進化・発展する中で、これからの5年10年で業界構造も大きく変革していくことが想定されますが、繊細かつ機微な動作が多く含まれるものづくり人材のシゴトが全てテクノロジーに置き換わるというようなことはなく、ある種のグラデーションを形成しながら、「テクノロジーと親和的なものづくり業界」ができ上がっていくのだと思っています。
テクノロジーに呑まれる人材を産むか、はたまたテクノロジーとうまく付き合い、共生する人材を産むか。現代に生きるものづくり人材をネアンデルタール人にするかクロマニョン人にするかは、製造業界を相手にサービスを提供する者の比肩に掛かっていると思っています。

山川:

初めてお会いした時も、相良さんはクロマニョン人の話をしていましたね。

相良:

ネアンデルタール人が使っていた矢じりは、どの時代・どのエリアで出土したものでも同じ形状をしているのに対し、クロマニョン人のそれは時代やエリアによって形状が異なっていて、環境の変化に上手く対応してその時々に求められる矢じりを開発、改良していたことが推測されるんですね。結果的にネアンデルタール人は絶滅し、クロマニョン人は生き残って現代まで続く人類の祖先になった。この話、結構好きなんです。

これから

山川:

今の『スキルノート』は、製造現場のスキル・教育を管理するソリューションです。現在は国内の製造業のお客様から様々な課題について相談をいただいていますが、まずはそうしたお客様の課題に真摯に向き合い、解決していきたいです。しかし、『スキルノート』を単なる便利ツールで終わらせるつもりはありません。中長期において、グローバルに、ものづくり全体をアップデートすることを常に頭に入れています。
当社の行動指針(コアバリューをさらに落とし込んだもの)の一つに、「現場現物を大切にしよう」というものがあります。当面は、日本の製造業の現場としっかりと向き合ってモデルをつくりながら、並行してグローバル展開の準備も進めていく計画です。
最近では、SAP社のスタートアップ向けアクセラレータープログラムに採択していただいたのですが、グローバル展開やものづくり全体のアップデートという目標に向けて、グローバルNo.1のERP企業であるSAP社との連携にも積極的に取り組んでいます。 ※2019年10月現在
現在、日系企業の海外工場、また外国企業からの引き合いも増えています。「現場」を大事に地に足のついたソリューションをつくりながら、スピーディなグローバル展開も実現していく。難しいチャレンジですが、すごくワクワクしています。

相良:

目の前のユーザーが求めるものを創りつつ、一方で近未来を予測しながらあるべき方向へ先導していくという意味では、近くを見ながら遠くを見通すという複眼的な戦略が求められるように思っています。その成立には絶妙なバランス感覚が必要ですが、製造現場の痛みへの理解、そして今後の展望への確かなイメージを持ち、ものづくりの未来を真剣に想う山川さんとチーム・イノービアなら、それが実現できると信じています。

(デザイン:割石 裕太さん、写真:尾上恭大さん、聞き手/まとめ:ジェネシア・ベンチャーズ 吉田)

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