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【JobRainbow】誰も“多様性を意識しない”未来へ -個を受け止めきれない社会構造を、この手で変えると決めた|Players by Genesia.

STORY

SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)」は、2015年から2030年までの長期的な開発の指針として発表された、国際社会共通の目標です。そのコンセプトのひとつと言われているのが「誰ひとり取り残さないこと」。

つまり、現代社会は、誰かを取り残しているとも言えます。そして、それは間違っている、それを改善しよう、と人々が動き始めています。

その動きを一過性のものにしないため、「Sustainable(持続可能な)」という言葉が強調されます。では一体、何をもって「持続可能」と呼べるでしょうか。
私たちの一つの答えは、需要と供給がよどみなく巡ること。つまり、お金が巡ること。お金がないと叶わない夢は、あるのです。世界の、社会の、大きな構造を“本当に”変えようとするのなら・・

JobRainbowは、LGBTについて学ぶ研修から、職場環境改善のためのコンサルティング、そして社外に対する広報や、日本最大のLGBT向け求人サイト『JobRainbow』と合同企業説明会を通じた採用支援まで、日本唯一の一貫したLGBTトータルソリューションを提供しているスタートアップです。そう、「スタートアップ」として、持続的に収益を生み出し続ける企業として、JobRainbowは「多様な人々にフィットできない社会」のアップデートに挑みます。真の多様性を手に入れた「社会」の姿とは―?
今回は、JobRainbowの星さんと、担当キャピタリスト・一戸の対談をまとめました。

自分は「不自然な存在」だろうか

星:

自分自身がゲイであると気付いたのは、中学生のころでした。当時は、保健の教科書を開いても「自然と異性と惹かれ合う」という文章しかなく、自分は不自然な存在なんだと、家族にも友人にも言えずにいました。そんな中、テレビ番組にはオネエブームが到来。周りから「おかま」と言われいじめられ続け、結果として中学時代の半分を不登校で過ごしました。学校に行けずにインターネットカフェに通っていたとき、FPS(First Person shooter/ゲーム)で全国大会4位にまで上り詰め、オンライン上にたくさんの友人ができました。あるきっかけからその中の一人にカミングアウトしたとき、「お前はお前だから」と受け止めてもらえたことが大きな転機になり、「中学校のクラスの40人の中に自分の居場所がなくても、世界には自分のことを認めてくれる人たちがいるんだ」と、希望をもつことができました。
それで、高校からは学校に通いました。そして大学に入り、自分と同じように悩んだり孤独だったりする人のセーフティネットになりたい、とLGBTサークルの代表になったんです。そこで出会ったのが、高校時代までは男性として過ごし、大学には女性として入学されたトランスジェンダーの先輩でした。人生で初めて、女性として生きる生活を手に入れ、大学生活を謳歌していた彼女。とても輝いて見えました。けれど、大学三年の終わり、就職活動が始まったときに、学校から配られる履歴書や就職サイトの登録フォームには「男・女」の記入欄があり、戸籍が男性である彼女はふたたび自分自身と、そして、「当たり前ではない当たり前」を押しつけてくる社会と真っ向から向き合うことになったんです。履歴書の記入欄だけじゃない。スーツにしろ、お手洗いにしろ、不安は山積みだったでしょう。そもそもスタートラインに立てていないのでは?とアイデンティティが揺らぐ中、勇気を振り絞ってカミングアウトした面接官から言われたのは「あなたみたいな人はいないので無理です」という一言。彼女はその就活での体験がトラウマになり、けっきょく大学も辞めてしまいました。彼女だけじゃありません。その他にも、ゲイの先輩が入社後にホモネタなどで揶揄され退職してしまったり、レズビアンの先輩がやはり面接官にカミングアウトしたら「そういう精神に問題のあるひとはちょっと・・」と否定されてしまったりするのを見ていく中で、私は「すべてのLGBTが自分らしく働ける社会をつくりたい」と強く思いました。そして、株式会社JobRainbowを創業しました。

株式会社JobRainbow 代表取締役社長 星 賢人
一戸:

星さんとは、助太刀の我妻さんのご紹介でお会いしましたね。2018年の夏が始まる前くらいだったと思います。事業についてお話しさせてもらう中で、その社会的意義はもちろんのこと、ビジネスとして持続可能なかたちで事業をスケールさせていくことを目指す星さんを見て、ぜひ同じ船に乗る仲間として応援させてもらいたいと思いました。
星さんとの出会いで、LGBTについていろいろなことを知りました。そして、日本が多様性における“後進国”であることも感じました。様々なリサーチによると各国のLGBTの人口比率は様々です。しかし、個人的には、この比率は、LGBTの潜在層も含めるとおそらく国ごとに異なるものではなく、各々の環境による自己認識や、言い出しにくさなどの差などで、国ごとに違って見えているだけなのだと思っています。そのため、日本においても今後、社会に多様性がより浸透していったら、この比率は間違いなく変化していくはずです。“その時”をただ待つのではなく、自ら波を起こし、“その時”を引き寄せることのできる人物が、僕は星さんだと思っています。

アソシエイト 一戸 将未

慈善事業では叶わない、「社会的インパクトの最大化」というコア

星:

一戸さんも触れてくれましたが、私たちに欠かせない視点は「社会的インパクトの最大化」です。慈善事業としてではなく、持続可能なビジネスモデルを組み上げ、しっかりと収益を稼ぎながら、優秀な人材を惹きつけ、成長し続けることを目指しています。個人の課題に寄り添いつつも、その個人の課題や生きづらさを生み続けてしまうのは「多様な人々にフィットできない社会」や既存の産業構造の側だと考え、それらをどうより良いかたちにアップデートするかという、大きな視点を徹底して考え抜くことを意識しています。
私たちは、私たちが生きる社会そのものを、すべての人が自分らしくいられる、そのことにプライドを持てる場にしたい。そして、それぞれの“差異”をマイナスにではなく、“彩”というプラスに変え、社会や企業の強さに還元していきたい。そんな想いを込めて、ビジョンを言語化しました。また、そこに関わるのは当然、当事者だけじゃない。社会はすべての人によって構成されています。なので、ミッションの中にある「個」は、LGBTだけではないすべての人を指し、今後、障がいや国籍、その他にも言語化されていないマイノリティのすべての課題を解決することを事業のコアに置いています。

一戸:

たしかに、ビジョンにもミッションにも「LGBT」という言葉が入っていないことが、星さんとJobRainbowの姿勢だと思っています。言葉でも態度でも取り組みでも、すべてにおいてその真の多様性を表現し続けるチームであり続けたいですね。
僕が意識しているキーワードは、「フラット」です。本来、性別や体のつくり、人間性などはすべてその人の“特徴”で、それ以上でもそれ以下でもない。当然、それぞれの特徴によってグルーピングしたり、仲間意識を持つことはあると思うのですが、すべての人がお互いをフラットに認識して、目の前の相手に適した接し方ができれば、多様性についての課題の多くは解決されるのではないかと考えています。違いを違いとしてではなく、特徴として受け止める。それだけです。TEAM JobRainbowとして、その姿勢を表現し続け、リードしていくことで、あらゆる多様性の課題を解決することができると嬉しいです。

星:

まさに、大きく表現し続けることの大切さは、私も実感しています。もちろんいろいろな声はありますが、それでも表現し続けることでいろいろな方に声が届いている実感、そして、実際に企業やメディアの方から反応やお声がけをいただくこともたくさんあり、応援してもらえているんだという実感、それらが私たちの中にひとつずつ積み上がっています。だからこそ、そんなすべての人たちが生きるこの社会をより良いものにしたい、と何度でも思いますね。

成果も社会貢献も、多様性のもとにこそ成り立つ

一戸:

世界の膨大な歴史の中でマジョリティとマイノリティとして植えつけられてしまった概念を一手でがらりと変えることはできませんが、オセロのように一手また一手と重ねることで少しずつ変えることはできると思っています。社会や人々の変化も、すでに起こっていますよね。

星:

世界的なLGBTムーブメントは、あると思います。SDGsやESGというキーワードが注目される中、世界中の行政レベルでLGBTへの取り組みが行われていますし、社会的インパクトのある事業に資本も集まり始めていると思います。日本においても、東京オリンピックをきっかけに、企業はLGBTに向けた取り組みをしなくてはならなくなっています。東京オリンピックの調達コードでは、LGBT差別を禁止している企業としか取引をしないと定めているんです。あとは、急速な人材不足も大きなきっかけですね。ただ、単なる補填というだけではなく、多様性がイノベーションの源泉となり重要な成長戦略になる、という認識もされ始めてもいます。実際にそういった研究が進んでいるんです。

一戸:

「成果を出すために多様性を意識する」という考え方が浸透すれば良いのではないかと思います。社会とはつまり多様性で構成されているわけですから、社会貢献とはそもそも多様性のもとにしか成り立たないという。考えてみれば、自然なことですね。JobRainbow自体がいち早く成果を出していくことも、その裏づけになりますね。
また、僕は、マクロの環境変化などはもちろん、やはりインターネットの普及によるところもそもそもとても大きいと思っています。昔から現在、そして未来においても潜在層を含めたLGBTの人口比率は変わらないのではないか、という話は先述のとおりで、つまりインターネットによって情報開示が爆発的に進み、LGBTを含む”マイノリティ”が顕在化し、当事者がフラットな自己認識をできるようになったと思います。一方で、人が実際に生活していくのはオフラインの世界。このオン/オフの格差は未だ埋めきれていません。しかし現在、OMOをはじめとして、オン/オフの融合を前提として事業を展開するテック企業が増加しています。大きく捉えるとJobRainbowもまた、その1プレイヤーなのではないかと考えています。

星:

そうですね、二者を繋ぐHUBというのは一つのキーワードかもしれません。
オンとオフもそうかもしれませんし、企業と個人という面もあると思っています。企業においては、国やオリンピックの要請によって、LGBTへの取り組みをせざるを得ない状況が生まれてくる。そこに、多様性人材を「人材不足の解消」と「イノベーションの源泉」というソリューションとして提供していく。また、LGBT当事者自身においては、世界的なLGBTムーブメントによってカミングアウトがしやすくなったり、社会的地位が向上したりしている中で、その流れを後押しするサービスを提供する。私たちとしては、まず社会的インパクト投資の流れで大きく資本を集め、ビッグビジネスを展開していく。そんなイメージを持っていますし、今まさに私たちのような存在が必要だと信じています。

すべての多様性をサポートするサービス群を目指す

一戸:

星さん自身が当事者であるため、LGBTが抱えている課題については教えてもらうことが多いですが、その中でも、LGBT当事者にとって最も課題が深く、かつ顕在化しているのが「人材領域」だということで、フェーズ1としてはそこで事業を展開することになりました。

星:

そうですね、冒頭でお話しした、学生時代の体験もありますし、やはり社会を自分たちの居場所とするために、「仕事(Job)」×「彩(Rainbow)」を最初のテーマとしました。
現在は、「就職」を軸に、質の高いユーザープールと、LGBTをはじめとした多様性・ダイバーシティに先進的な企業ネットワークをつくっています。エンドユーザーのためのメディアやコミュニケーションアプリの提供を行いつつ、企業ネットワークをさらに広げていくため、e-ラーニングやアセスメント評価の提供、企業内ダイバーシティ推進をサポートするクラウドのツールの開発なども行い、JobRainbowとしては最終的に、「LGBTフレンドリーな求人サイト」から、「LGBTだけではないダイバーシティ広報採用ツール」へ進化させていきたいと思っています。
また、「就職」は、業界横断的な課題だからこそ、まずはそこで企業と当事者双方のを解消することで、現在取り組み始めているいろいろな商品開発にも活きてくると思っています。具体的には、保険会社と、LGBTでも安心して利用できる保険商品やファイナンシャルプランの提供を検討していたり、ブライダル企業と、同性カップルでも結婚式が挙げられる式場の案内などを検討したりしています。それ以外にも、教育や不動産、介護などに至るまで、LGBTの“ゆりかごから墓場まで”のライフイベントをサポートするサービス群をつくっていきたいと思っています。

一戸:

一手また一手と打っていく中では、オセロの四隅―つまり、LGBTや多様性についての課題の中でも顕在化しているものから解決することが重要だと考えています。
今は、CSR的な観点や人手不足などの理由で企業側から僕たちに興味を持ってもらうことも多いですが、JobRainbowとしては今後よりアグレッシブに、そうしたLGBTフレンドリーな企業をますます増やしていきたいですよね。本当の意味での多様性やLGBTに関する理解を深めてもらい、目的を持って、各社に適したLGBT人材を採用し続けてもらう。そうした流れをつくっていくことが、中長期的な成果に繋がると考えています。なので、企業側へのコンサルティングやe-ラーニングの提供も、しっかりと腰を据えて取り組んでいきたいですね。また、JobRainbowはユーザーの獲得に強いため、星さんの言う通り、ゆくゆくは人材領域のみならず、LGBTに関連する様々な領域に展開していきたいですね。就職や転職という、課題が顕在化しており、尚且つ人生の大きな決断や転機に関わる部分でまずサービスに触れてファンになってもらい、その後はより日常的に利用されるサービスを通してコアなファンに。そして、大きなプラットフォームというかコミュニティをつくっていければと思います。

誰も、“多様性を意識しない”世界

星:

当たり前に、同性カップルが手を繋いで歩いている。LGBTという言葉すらない。違いを特徴として、自分のありのままを愛せる。誰を愛するかも自由。すべての人が社会に貢献している実感を持って、また社会から肯定されているとも信じられて、働き、生きることができる。
私は、この手でそんな世界をつくります。

一戸:

まさに、誰も多様性を意識しない世界。お互いがお互いをフラットに認識し、その人に適した接し方ができる世界を実現したいですね。

(デザイン:割石 裕太さん、写真:尾上 恭大さん、聞き手/まとめ:ジェネシア・ベンチャーズ 吉田)

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