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【Non Brokers】アンバランスさを残しながらも、合理化のその先を目指す選択 -不動産売買の世界に新しいインフラをつくる-|Players by Genesia.

STORY

遡ること鎌倉時代から、日本人は土地への帰属意識を育ててきたと言われています。報酬は土地で支払われ、歴史上の制度設計はほとんどが土地に関するものです。「一生懸命」の語源は「一所懸命」とも言われ、日本では長いこと、その土地(場所)に尽くすことが当たり前とされてきました。

そんな日本における持ち家比率は、2018年時点で60%強。これから先の変遷には、さまざまな仮説があります。テレワークやリモートワークへの追い風もあり、複数の生活拠点を持ったり各地を移動しながら暮らしたりといった軽やかな動きが徐々に広まり、持ち家比率は下がるのではないかという説もある一方で、東京への一極集中は実は今も進んでいたり、逆に地方創生や分散化、またはスローライフやセカンドライフといった文脈から、生まれ育ったのとは違う土地に根を張ったりという動きも生まれており、持ち家比率は上がるのではないかという説もあります。

人が存在するかぎり、人が住む場所や活動する場所は必須ですが、その関わり方はこれから一体どうなっていくでしょうか。あなたはどう考えますか?

Non Brokersは、不動産売買の安心感や流動性を高めるサービス群を提供するスタートアップです。日本最大級の不動産買取プラットフォーム『インスペ買取』、中古住宅の信頼性を評価するインスペクション用アプリ『インスペ』、インスペクション発注サイト『インスペマート』は、すでに関係者の視線を集めています。これらはいずれも、不動産売買の世界にフラットな機会と選択肢を持ち込む挑戦です。今回はそこに懸ける想いについて、Non Brokersの東峯さん・寺田さんと、担当キャピタリストの田島の対談をまとめました。

日本人は不動産への興味が薄い?

東峯:

たしかに昔々から、日本人は先祖から受け継いだ土地や建物といった不動産を大切にしてきた印象はあります。しかし、今はどうでしょうか。私は正直、今の日本人はあまり不動産に興味がないのではないかと思っています。
アメリカを見ると、自宅のリフォームやDIYなども盛んに行われています。車もそうです。アメリカには車検がないということもありますが、持ち主がエンジン見たりメンテナンスしたりということが当たり前です。
日本では、家は“一生に一度の大きな買い物”という印象が強いですが、アメリカでは、人生に3~4回程度売買されるというデータもあります。この違いは何か。先ほど、日本人は不動産にあまり興味がないのではないかと言いましたが、実はその原因になっているのは、日本における不動産の価値算定基準が「減点式」だからという点も大きいと思っています。耐用年数(築年数)で、ほぼ価値が決まってしまうんです。木造なら、22年でゼロ。そこが決まってしまっているので、例えば21年目で綺麗にリフォームしたとしても、その家の価値はほとんど上がりません。アメリカとはそこがまったく違います。つまりアメリカ人は、家や車の価値を上げるために手を入れるインセンティブがあるのですが、日本人にはそもそも「不動産の価値を上げようというモチベーションがない」というのが正しいかもしれません。“買ったら終わり”ということです。
実はこの「減点式」があまり知られていないことに加えて、売り方がわからないということもあるかもしれません。誰に相談したらいいか、いくらが適当な値段で、誰に売ったらいいのか、どのくらいの時間がかかるのか、どんな手続きが必要なのか・・こうしたことがあまり整理整頓されておらず、業者と個人の間に情報の非対称性が存在するのが、不動産売買の現状なのです。

Non Brokers株式会社 代表取締役/CEO 東峯 一真
田島:

その不動産の価値算定基準によって500兆円の資産価値が吹っ飛んでいる、いわゆる「500兆円問題」と言われる問題も起こっていますよね。

東峯:

はい、この問題は深刻です。私たちは、これまでの算定基準が変わることを強く望んでいます。その大きなはずみ車になると期待されているのが、私たちのサービス名にも含まれている「インスペ」=「インスペクション(*1)」です。インスペクションへの対応を盛り込んだ改正宅地建物取引業法が2018年4月から施行されていますが、残念ながらまだ爆発的な普及には至っていません。しかし、2020年4月の民法改正によって、不動産に瑕疵があった場合、「瑕疵担保責任」ではなく「契約不適合責任」という重責が売主(オーナー)に問われることとなったこともあり、私たちは、近い将来、中古住宅にインスペクションが義務付けられ、フェアで透明性の高い不動産売買が行われるようになると信じています。

寺田:

家の所有にはお金がかかるし、簡単には売れない。それに、場所に縛られる。そんなイメージってありますよね。逆にそのあたりの負が解消されれば、私たちに必要不可欠な「家」の選択肢は大きく広がり、社会がより良くなる気がしています。
例えば、iPhoneも、高いからすぐには買い換えられないですよね。でも、メルカリという市場が生まれて、適正な値段で売れるようになったことで、乗り換えやすくなった。不動産も、そんな風に価値が正当に評価されるようになるといいと思っています。

株式会社Non Brokers 取締役CTO 寺田 洋輔

(*1)インスペクション:住宅の設計や施工に詳しい専門家が住宅の劣化や不具合の状態について検査し、その修繕費等の目安をつけること。中古物件では売り手も買い手も個人であることが多いためインスペクションによる建物状態の可視化は注目されてきている。 ※関連記事

「合理化」を目指す二人が集った

田島:

東峯さんが起業を考え、そしてこの不動産領域でビジネスを始めるに至った経緯を改めて伺ってもいいですか?個人的にも、当時を振り返るととても思い出深いですし、何もない状態からビジネスデザインを描き切るまでのスピードはすごかったなぁと思います。

東峯:

父親が独立して車の修理屋をやっていたので、その背中を見て、自分も独立したいと思っていました。結果的には、39歳で起業することになりました。
不動産領域を選んだ理由は、過去に中古車の個人間売買事業をやっていたときに、中古車ではうまくいかない部分があったんですが、「不動産でも同じスキームが実現できるのでは」と考えついたのがきっかけです。そんなときにピッチ大会で出会った田島さんのメンタリングを経て、この領域にコミットすることにしました。そこから猛勉強を重ね、宅地建物取引業免許を取得し、不動産業界に入りました。
さまざまな仕事を経験してきましたが、不動産領域は初めて。不安がなかったと言えば嘘になりますが、基本的にはいつでも、それまでやってきたことに依存せず、後悔しないのはどちらか?とシンプルに考える意志決定を大切にしてきたと思います。

田島:

大阪市主催のスタートアップ向けイベントで、私が起業家向けにピッチデックのシナリオ構成について講演する機会をいただいたのですよね。そのイベントに東峯さんが参加してくれていて。講演が一通り終わった後に、私が「今日参加していただいた皆さんの中で、どなたか実際にプレゼンしたい方はいませんか?」という提案をしたところ、大きく手を挙げてくれた人がいて。それが東峯さんの出会いでした。
当時、東峯さんは『クルマフリマ』という中古車のC2C売買の事業をされていたのですが、私は前職でまさに同じチャレンジをしているスタートアップにリード投資家として出資していたので、投資検討はできませんでした。でも、その後も何度もミーティングを繰り返す中で、東峯さんは不動産領域にチャレンジするというお話になり、私もそれまでのコミュニケーションを通じて、東峯さんの事業に対する熱意はもちろんのこと、レスポンスのスピード感やクオリティの高さ、洞察力の高さなどに感銘を受けていたので、東峯さんの新しい挑戦への出資をコミットしました。
言ってしまえば、当時の東峯さんは不動産のプロという立場ではなかった。つまり、一からラーニングして今に至るわけですよね。その馬力は本当にすごい。原動力は何なのでしょうね。

株式会社ジェネシアベンチャーズ 代表取締役/General Partner 田島 聡一
東峯:

基本的なマインドとしては、「大きな市場を合理化したい」という気持ちがあるように思います。とはいえ、これまで全く関わってこなかった業界、かつ旧態依然とした業界― それが不動産業界だったので、正直、入りにくいとは思っていました。しかし、CAD業界で仕事をしていたときにも、もともと体育会系+文系の自分に、理系(回路図や基板など)の、目に見えない電気の領域はかなりハードルが高いと思っていましたが、短期間でキャッチアップすることができましたし、「何でもやればできる」という自信はありました。
しかし当時、不動産業界の友人・知人はゼロでしたので、ネットから得られない現場の一次情報を取りに行くのには苦労しました。いろいろなセミナーに忍び込んだり、テレアポ・飛び込みなどを地道に繰り返したりしていましたね。そうしていたら、そのうち徐々に協力してくれる人も出てきました。「業界を良くする夢」を自分の言葉で語ると、業界の方々も一目置いてくれるのと同時に、応援してくれるようになりました。今では、そうした方々の想いも背負っているということが原動力になっています。

田島:

まさにラーニングアニマルというか、未知の領域に対して変にためらわない勇猛果敢さというか、がありますね。
相棒の寺田さんはいかがですか?今に至る経緯など、改めて教えてください。

寺田:

昔からアウトドア派というよりはインドア派でゲームが好きだったので、いつか自分でも作りたいと思っていました。進学した高専では化学科で、卒業後は化学メーカーに入りましたが、一年くらいで退職。改めて独学でプログラミングを学び、プログラマーとしてのキャリアをスタートさせました。20歳の頃ですね。
私はお金や権威よりも、「合理的でシンプルな世界」という言葉に興味が強いです。それをシステムで果たすことがおもしろい。それが実現できるかどうかが、意志決定の軸にあるように思います。
なお、今このスタートアップという道を選択しているのは、前職のCADメーカーで出会った東峯さんの実績や性格などを知っていた上で、自分たち二人のチカラが合わさることで、何か違う景色が見れらるのではないかと思ったからです。

田島:

なるほど、「合理化」というキーワードがお二人を結び付けている印象ですね。「合理化」とは一見、冷たいというか味気ない印象を受ける言葉ですが、そこにわくわくがあるという感覚がおもしろく感じます。

寺田:

「合理化」について、考えるのも実行するのもおもしろいです。加えて最近は、合理化の先に何があるのかということも考えてみたいと思っています。どんな人の、どんな表情があるのか、ということですね。

人生に入り込むような仕事

田島:

どんな人の、どんな表情があるのか、というのは、ステークホルダーについて考えるということですね。最近、私も「強いチーム」について人に話すことがよくあるのですが、そのときにこんなことを伝えています。 ※下図参照
ビジョンが言語化されているチームは少なくないですが、単に言葉だけだとその意味の解釈や方向性が、受け取る人によってずれてしまうこともあります。言葉だけではなく世界観としてビジョンを共有するには、具体的な世界観を描くこと。そのためには、その世界の中にいる人々=ステークホルダーの状態をイメージすることが大切だと思っています。そのイメージを合わせることが、世界観=ビジョンの共通認識になり、チームの方向性を合わせることができると思っています。
お二人は、「強いチーム」とはどんなチームだと思いますか?

強いチームを創るためのシードスタートアップの組織論|note
東峯:

チームには、「自立 × n = 価値」の方程式が重要だと思っています。「自立」の定義は、メンバーそれぞれがプロフェッショナルであり、当事者意識があるという意味です。それぞれの領域のプロフェッショナルが互いの知見や信頼を深め、領域を超えて生み出すチカラこそ「強いチーム」であると考えており、そうした「チーム力」は、変革がなかなか難しいと言われている不動産領域で成功するために欠かせないことだと考えています。また、「プロフェッショナル」というのは、自身で課題を見つけ、解決策を提示するという繰り返しができる人。その繰り返しがチームの中で回っていくことが、成長へのレバレッジであると考えています。
あと、今いるメンバーの特徴としては、「ポジティブ+ニコニコ」があります。ただでさえ険しい道と言われるスタートアップの事業推進に、今年であれば新型コロナウイルスの影響が追加されて、「ネガティブになるチャンス」というのは何度でも来ます。それをしっかりと深く受け止め、思考し、笑顔でトライできるメンバーです。

寺田:

私は職種柄、プログラマー視点で考えがちですが、Non Brokersの今のフェーズでは、マーケットフィットをより深めるために、クイックにユーザー検証のPDCAが回せる体制であったり、最適化を行っていくことが欠かせません。それらの結果を数値分析し、既成概念を排除し、私見を入れず、ニュートラルな状態で意思決定できるチームづくりを意識しています。まずは全員でそこに向かう必要があります。
それを実現するためには、縦割りの業務領域だけでなく、隣接する業務の理解であったり、お互いのプロフェッショナルとしての信頼や、業務の領域を飛び越えて勉強をしていくアンテナの高さっだったりも重要だと実感しています。会社の規模が大きくなるにつれ、一定の業務分散はしていくので、特定の技術の深いところまで理解している人材も必要だし、勉強熱心で経営目線の思考を兼ね備える人材も必要だと思いますが、ミッションの実現のためにまずは全員でユーザーを向き、ニュートラルな意思決定を行えるチームこそ強いチームになり得ると思います。

東峯:

「不動産売買の新しいインフラを創る」というNon Brokersのミッションは、私の言葉です。これから流動性が高まる未来があったとしても、やはり不動産は生涯で一番大きな売り物・買い物です。また、家にはいろんなドラマがあります。笑ったり泣いたり怒ったり。つまり、その取引に入り込むことは、人の人生に入り込むようなもの。そのような「大きな機会」に関わり、ユーザーの安心・安全な売買に貢献し、顧客満足がダイレクトに伝わってくることが、メンバーの満足にもつながり、誇れる仕事になると考えています。

非対称性を残しながら、進む

田島:

世の中の変化の方向を俯瞰してみると、倫理観を保ちながら、物事はユーザーにとって最適化する方向に変化していると感じています。つまり、東峯さんもおっしゃっていた、業者優位だった情報の非対称性はどんどん解消されていく流れだと思っています。また、ビジネスに関わるステイクホルダーそれぞれの役務の提供価値と対価や利潤も適正化される方向にリストラクチャリングが進んでいると感じています。そういった具体的な変化の一つが、インターネットやテクノロジーによって、取引する人たちの間に介在するプレイヤーがリプレイスされ、取引する人同士を直接つなぐプラットフォームが生まれる流れで、まさにC2CやD2Cがその代表例だと感じています。そして、この流れは不動産や自動車などの高額取引にも波及してくるはずだと思います。中でもC2C取引は原則非課税取引のため、高額取引ほど直接取引化するメリットが大きいですよね。

東峯:

今あるのも、長い時間をかけてでき上がったしくみですから、それを構成し直すにはやはり時間はかかると思っています。不動産領域の情報の非対称性も、すぐには解消されないでしょう。ただ、ある程度の非対称性は残しながらも、私たちは私たちにできることを徐々にやっていきたいと思っています。
私たちが目指す不動産売却の未来とは、売主(オーナー)がインターネットでNon BrokersのWEBサイトを開いて物件情報を入力すると、「仲介(*2)」だと何ヶ月かかっていくらで売れる、「買取(*3)」だと何日かかっていくらで売れる、個人間売買だと・・というのがすぐにわかり、「利活用」や「C2C」取引の提案もあり、売却や活用の方法を柔軟かつ自由に選択することができるようになっている状態です。内見はオンライン or スマートロックで完結し、現地立ち会いは不要。鍵はサーバー内で管理されており、入退出管理も可能。すべての物件にはインスペクションが実施されていて、売買主も安心。売買契約はもちろん、決済や登記もデジタル化され、ミスなく手元で作業が完結できる。
また、インスペクションを通じた正当な価値算定によって、金融機関でも物件の価値が正当に評価されるようになる。それによって、“一生に一度の大きな買い物”が、二度三度と経験できるようになる。そんな未来をイメージしたとき、Non Brokersがいつでもベストストラクチャーを提案するインフラの役割を果たしていたいです。すごく合理的な世の中ですよね。想像するだけでワクワクします。

寺田:

私自身は今は持ち家ではありませんが、これから家族が増えたら、きっと住まいや暮らしについて改めて考えることもあると思います。私だけでなく、誰しもそういったタイミングはあるはず。そのときにNon Brokersのサービスを当たり前に使う未来をイメージしています。まったく手を抜けませんね。

田島:

お二人なら間違いなく道を切り開き、合理化を進めるだけではなく、合理化のその先の姿までを実現してくれると心から信じていますし、私自身これからもチームNon Brokersの一員として、その実現に貢献していくつもりです。チーム関西出身としても、がんばっていきましょう!

(*2)仲介:不動産取引の当事者の間に入って契約成立を補助すること。 ※関連記事
(*3)買取:不動産取引において、文字通り当事者が直接書い取ること。

※こちらは、2020/12/9時点の情報です
(デザイン:割石 裕太さん、写真:尾上恭大さん、聞き手/まとめ:ジェネシア・ベンチャーズ 吉田 愛)

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