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【シード調達のリアル #6】”着金(クロージング)” – Finance by Genesia. –

FINANCE

どうもこんにちは、ジェネシア・ベンチャーズの水谷(@KokiMizutani)です!

シード期のスタートアップとして、VCからの初めての資金調達に臨むとき、不可逆な資本政策となる着金までになにがどういった順序で進んでいくのかについては、事前に知って準備しておきたいところです。

Finance by Genesia.と銘打つこちらのシリーズでは、そんなシード期のスタートアップの資金調達のリアルをお伝えし、起業家がスムーズな資金調達を進める上での一助になればと思い、メンバー一同で筆を進めております

本稿では、投資委員会の後から無事に着金(クロージング)に至るまで、起業家とVCの間でどのようなコミュニケーションが行われ、どういった手続きが必要になるのかについて、ジェネシア・ベンチャーズの事例からお伝えしていきます!本稿の最後には「おまけ動画」も用意しているので、是非、そちらもセットでご覧頂けると嬉しいです。

全体の流れ

投資委員会を経てVCから出資を受けるまでのプロセスは、以下の流れで進んでいくことが多いかと思います。

①VCからの投資意思(コミットメント)の表明
②投資する場合の主要条件(タームシート)の提示
③主要条件の調整
④座組(アロケーション)の確定
⑤投資契約書の作成と最終合意
⑥着金!

「コミットメント」「タームシート」「アロケーション」といった単語は、VCからの資金調達に特有の言葉の使いまわしでもあり、聞き慣れないところもあるかもしれません。いずれも大事なポイントになってくるので、以下ではそれぞれの流れを追っていきます。

また参考までになりますが、ジェネシアの場合、投資意思の表明(コミットメント)から着金(クロージング)まで様々なケースはあるものの、1週間から1か月ほどで完了していることが多いです

①VCからの投資意思(コミットメント)の表明

まずは、「コミットメント」というステップからお話しします。

ジェネシア・ベンチャーズでは、投資委員会の後にあまり時間を置かずに、その投資検討の結果(Go or No Go)を経営チームにお伝えするようにしています。そして、コミットメントとは、検討の結果「Go」となった場合に、口頭やメッセージにて、VCとして投資の意思があることを経営チームに表明するものです。

明確に定義された概念ではないので、VCによってはこの「コミットメント」を明確には表明していないケースも多くあるように思っています。唯一解はないプロセスですが、ステップとして意識をするとわかりやすいです。

VCによっても投資の意向表明時のコミュニケーションの仕方は異なります。コミットメントの際に、Goということしか伝えない場合もあれば、詳細な条件面も併せてお伝えする場合もあります。

ジェネシアの場合、コミットメントの表明に合わせて、バリュエーション(株価)と投資金額、株式種別といった主要項目をお伝えすることが多いかと思います。

例えば、以下のようなイメージです。

「Preバリュエーション●●円で、●●円を優先株式(参加型1.0倍)による引受にてコミットメントさせて頂きます!」

このコミットメントは、詳細条件を含めたオファーを作成して共有する準備が完了する前に、いち早く検討の結果を経営チームにお伝えすることを優先したコミュニケーションの一つです。従って、起業家としては詳細な条件が出てくるまでは、冷静にVCからのオファーを見極める必要があります。

そのオファーの見極めに当たってカギとなるのが、次に説明する「タームシート」です。VCからコミットメントの表明を受けた起業家が、次に取るべきコミュニケーションは、「タームシートをお待ちします」ということになります

②投資する場合の主要条件(タームシート)の提示

続いて、「タームシート」についてです。

タームシートとは、資金調達ラウンドのリードVCが当該ラウンドの投資契約の各条項をサマリーして共有するものです。

分量も多くなる投資契約のドラフトをいきなり始めるのではなく、投資契約の骨子をサマリーしたタームシートをベースに、経営チームとリードVC間で主要条件をすり合わせるために活用します。

このタームシートも、VCによってフォーマットが異なります。Excelやスプレッドシートで共有するVCもいれば、WordのVCもいます。ちなみに、ジェネシアのタームシートのひな型はWordです。

タームシートそのものに法的な拘束力があるわけではなく、すり合わせの過程においては、個別内容の受け入れについて留保しつつ、投資契約の本文を見てから判断するということも可能です。また、タームシートでは合意をしていたけど、投資契約の本文を確認した後にやはり変更する、ということも、稀にあります。

タームシートの趣旨は、投資契約の全体像をまず理解し、論点になりそうな個別条項について予め合意をしておくことで、投資契約の作成に当たっての手戻りを最小化することにあります。このタームシートの提示を受けることで、経営チームとしてより具体的な資金調達の条件を検討することができます。

また、経営チームとしては希望する条件(バリュエーションや株式種別)を提示してピッチをすることが多いと思いますが、必ずしも経営チームの希望条件に沿った形でリードVCからタームシートが出てくるわけでもありません

ジェネシアとしては可能な限り経営チームの希望に沿った形でのオファーを検討しますが、どうしても乖離が出てきてしまう場合、その理由や考え方についてもしっかりと説明をさせて頂いた上で、タームシートタームの提示をしています。

③主要条件の調整

リード候補となるVCからタームシートの提示を受けたら、その内容について受け入れが可能であるか、精査する必要があります。この段階で、タームシートのレビューに当たって一度リーガルチェックを入れることが多いです。

J KISSのような契約雛型を採用する場合はリーガルチェックをスキップすることもありえますが、J KISSの雛形に条項を部分的に追加するケースも多いことから、しっかりとレビューを入れる(投資契約に関して専門家から客観的な意見をもらう)ことは大事かと思います。

そのリーガルレビューの結果も踏まえ、経営チームとして交渉が必要な箇所があれば、VC側と折衝を行い、タームシートのすり合わせ(主要項目に関する仮合意)を進めていきます

またもし、スタートアップのエクイティ調達実務に精通している弁護士さんに知り合いがいなければ、ジェネシアから紹介もしていますので、お気軽にご連絡ください。

④座組(アロケーションの確定)

スタートアップの資金調達においては、必要な金額をどの投資家からいくらずつ調達するか(アロケーション)を決める必要があります。まずはリードVCを一社定めた上で、必要に応じ複数社のフォロー投資家や個人投資家からも調達を行う、ということが多いです(ただ、リードVCを二社とすること(共同リード)もあります)。

実際の資金調達局面において悩ましいのは、リード投資家候補となる複数のVCからオファー(タームシート)が出てきたときです。このとき、ラウンドをリードするVCを決める上でも、タームシートの条件面の比較検討はとても重要となってきますし、複数のVCからオファーが出てきたときには、それをフックに第一希望のリードVCに条件交渉をすることも可能です。もちろん、どこまで条件交渉が可能となるのかは、状況次第ではあります。

ただし、リードVCを決める上では、タームシートの条件面はもちろん重要ではあるものの、投資検討の過程でのコミュニケーションの相性や意思決定のスピード感、経営戦略や業界・事業への理解度、実際に出資を受けているスタートアップや業界内のレピュテーションといった点を重視しているケースが多いと感じています。

(ジェネシアもリードVCに選んでいただけるように日々、精進しております。またもしジェネシアから投資支援を受けている起業家に知り合いがいないけど直接レピュテーションを聞きたい、ということであれば、こちらもご紹介検討できますので、プロセスの過程でお気軽に仰ってもらえればと思っています!)

リードVCを決めてタームシートをすり合わせたのち、投資意向を示しているフォロー投資家や個人投資家にも引受を希望する金額を伝えてタームシートを共有し、主要条件の仮合意を得ることができれば、アロケーションを確定することができます。

ここまでくれば、着金(クロージング)まで残りはあともう一歩です!

⑤投資契約書の作成と最終合意

アロケーションを含めて仮合意を得たタームシートをベースに、リードVCが投資契約書一式のドラフトを作成します。

作成された投資契約ドラフトについては、ここで再度、経営チームとしてもリーガルレビューを行ってタームシート通りに投資契約が構成されているかを確認し、必要に応じて折衝を行いながら、文言の細かな意味の確認を進めて、内容を確定できれば、投資契約の捺印に進んでいきます。

投資契約の捺印に際しては、臨時株主総会での決議といった手続きも必要になってきます。資金繰りに余裕を持って調達に臨むことが、足元を見られることなく、最後まで落ち着いて手続きを進めていく上で重要となります。

⑥着金!

投資契約の捺印が終われば、あとは契約に記載の期日までに銀行口座に資金が振り込まれるのを待つことになります。

口座への着金が確認できれば無事にクロージングとなり、長かった資金調達も一つの区切りです。着金するまでは、経営チームとして決して気が抜けることのないファイナンスのプロセスですが、ここからがようやく新たなフェーズのスタートとなります

ジェネシアとしても、投資支援をさせて頂くご縁を得た起業家から、「着金しました!」と連絡をもらうと、ものすごい気合が入るのを常に感じます。大きなチャレンジをする起業家と同じ船に乗り込む感覚はいつだってとても新鮮です。

「Finance by Genesia.の第六稿「着金(クロージング)」は以上となります。

実際のクロージングに当たっては、VCによって投資契約がとてもシンプルな内容でタームシートが存在しないケース、リード投資家とフォロー投資家の稟議のスケジュールが資金繰りのデッドラインと必ずしも合致しないときにクロージング時期を分けるケースなどもよくありますが、参考にしてもらえると嬉しいです。

終わりに & おまけ動画

今回のおまけ動画はベトナムで活動する河野さんに東南アジアVCとの競争環境について、話を伺いました!

第六稿は以上となります。Finance by Genesia.第七稿は、「投資後の関係性」について、河野からお送りします!

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