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【Teatis】A Tasty Habit for All People ーおいしくてやさしいソリューションが、健康な命と私たちをつなぐー|Players by Genesia.

PLAYERS

「目に見えないもの」

そう聴いて、何をイメージするでしょうか?

私がイメージするのは、「心」「感情」「想い」「魂」「マインド」・・
たぶん頭のあたりか胸のあたりに、自分の内側に、存在していそうだけど、見えないもの。

もう一つ。今回の対話/対談を通じて実感したのは、「体の中のこと」でした。
心と同じように、生まれてから死ぬまでいつでも一緒で、こんなにも身近にある。すぐに手が届くものだと、コントロールのきくものだと思っている。でも、そうじゃないもの。見えないもの。

心と体。それらをどうやってケアするか、それらとどのようにお付き合いするかは、私たちの大切なアジェンダだと思います。

ヘルスケアやコンディショニング、ウェルネスやレジリエンス。そういった単語やプロダクトは溢れているけれど、私たちは自分に本当に合ったものに出会えているでしょうか?大切な人とも一緒に続けられる、心と体と同じようにずっと付き合っていけるものを選べているでしょうか?

見えないものに触れるからこそ、大切に考えたい(つい後回しにしちゃうけど・・)。

そんなことを感じたインタビューになりました。

Teatis(ティーティス)は、糖尿病をはじめとする慢性疾患の治癒に特化した完全栄養食「Teatis」の開発・販売と、管理栄養士によるオンラインカウンセリングサービスを提供しているスタートアップです。代表の高頭さんは、今回が二回目の起業となる、シリアルアントレプレナー。一社目のアドテクサービスからはかなりの“飛び地”となる、ヘルスケア/フード領域に人生を懸けて挑みます。そのきっかけは・・?

体、そして心。その密接な関係について、そして私たちはそれらとどう付き合っていけたらよいか。そんなストーリーについて、担当キャピタリストの相良が聴きました。

  • ▼デザイン:割石 裕太さん、写真:尾上 恭大さん
  • ▼聞き手・まとめ:ジェネシア・ベンチャーズ Relationship Manager 吉田 愛

「離見の見(りけんのけん)」からの学び

相良:

高頭さん、よろしくお願いします。
実は同い年かつ大学の同級生ということで、勝手に親近感も持たせていただいており、高頭さんと一緒にチャレンジできることにわくわくしてます。今日は、高頭さんの歩み・・幼少期のお話から起業に至るまでみたいなところから、これからTeatisを通じて実現したいビジョンについてなど、いろいろお伺いしていければと思います。

高頭:

はい、よろしくお願いします。僕の歩みからですね。
一つは、やっぱり一人っ子だってことが挙げられるかなと思ってます。父親は液晶の研究をやってる科学者なんですけど、僕が中学くらいの時に民間の企業勤めから大学の教授になったんです。そんな父は、とにかく自分の好奇心を追求するタイプで、やっぱりそこからの学びはけっこう大きいかなと思ってます。自分自身も常に好奇心を頼りにして何をやるかっていうことを決めてきたところもあるし、好奇心で捉えた標的に対してはとにかく深掘りするみたいな姿勢は自分に受け継がれたかなと思っていて、それが幼少期の自分を思い返した時の一つのエピソードかなと思います。
順を追っていくと、中高時代は進学校に通ってたんですけど、とにかく勉強しなくて、とにかく目立つことに必死で、どうやったら目立てるかばっかり考えて過ごしてましたね。それでいざ大学に行こうってなったときに何がやりたいかが全くわからなくて、一年間浪人したんですけどそのときに、自分は文学が好きだから深く学びたいと思って、慶応の文学部に行きました。それで僕が一番多くを学んだのが、サークルを通じて出会った、伝統芸能の「能」でした。そこで学んで本当に今も生きてるなと思うのが、能ってすごくミニマルな芸術なので、極力自分の動きを殺してどれだけ能の世界観の中にあるものを表現できるかっていうことが重要になってくるんです。ご覧になったことがあるかもしれませんけど、すり足みたいな動き一つをとっても本当に静かな動きを徹底していて、やっぱりそういった動きをするために、高度に自分を客観視したり律したりするみたいなことが求められるんです。能の言葉の中に「離見の見(りけんのけん)」、つまり、自分から少し離れて自分を見るっていう言葉があって、それが今ビジネスをやる上での自分の一つの姿勢になっているのかなと思います。やっぱり起業ってハードシングスが多いですけど、その中で、自分なりユーザーなり環境なりチームなりを俯瞰して見る姿勢は、能から教わった部分がけっこうあるなって思ってます。

Teatis, Inc. CEO 高頭 博志
相良:

たしかに高頭さんとお話ししていて感じるのは、思考がすごくフラットというか、客観的に事実と意見を分けながらお話しされるところとかは、今の、能を学んだというエピソードに通じるところがあるのかなと思いました。能から来ているっていうのは意外でしたけど!

高頭:

大学のときを振り返ると、あとは、大学3年生からスタートアップ(READY FOR)に入って、当時まだ日本になかったクラウドファンディングというビジネスモデルを一から作る経験をしました。本当に少人数で、もちろんみんな学生なんですけど、「新しいビジネスモデルを作ろうぜ」ってう熱気のど真ん中にいて、本当にそれが実現できるんだなっていう経験をしたのは、ものすごく大きかったですね。震災の直後で、その復興を自分たちのサービスが担えるっていう経験ができたのは、やっぱり「スタートアップが世界を変えることができる」っていう確信に繋がるきっかけになったかなと思います。

相良:

そのスタートアップ(READY FOR)の立ち上げメンバーとはどうやって出会ったんですか?

高頭:

(READY FOR代表の)米良さんは慶応の一つ上の代で、「活きのいい学生はいないか」っていろんな人に声かけてたみたいなんですね。僕のそのときのインターン仲間に共通の知り合いがいて、紹介されたって感じです。彼女は本当にパッションがすごい人なので、おもしろいなと思って、3-4年にかけてはそっちに参加することにしました。ほぼ大学にも行っていなくて、東大の近くの根津にあった事務所で寝泊まりするくらいの生活だったので、当時の彼女には振られました。
そこから一回GREEに入って、インターネットビジネスっていうものをある程度体系的に経験させてもらって、もう一度起業したいなと思って、Momentum(モメンタム)っていうアドテクの会社を作りました。

大好きなテクノロジー領域で起業、そして売却

相良:

新卒でGREEを選んだのってなぜだったんですか?

高頭:

この場を借りて本音をいうと、本当はREADY FORにずっと携わっていこうと思ってたんですけど、僕大学4年生のときに結婚したんですよね。で、米良さんやみんなともいろいろ議論したんですけど、一回就職した方がいいっていう結論に至ったんです。ただ、その時にはもういわゆる就活シーズンは終わってて、それでも何か自分にできることはないかって見ていたときに、たまたまGREEの通年採用があったって感じです。当時の僕って自身満々だったので、新卒なのにいろいろ計算して給与の交渉とかもしたりして、めちゃくちゃ嫌われてたんですけどね。

相良:

なるほど、READY FORの立ち上げをそのままやろうとしてたけど、プライベートのライフイベントもあって、GREEに入ったんですね。

高頭:

結果的にはGREEではすごくいい経験をさせてもらったと思ってます。今は少し形が変わってますけど、当時本当に新規事業を立ち上げる!っていうミッションの部署があったんです。領域問わず自分が手を上げた事業を作っていいよっていう。そのときに、教育系の事業を立ち上げるってなったので手を挙げて参画したんですけど、そこにいた先輩方とかは今も最前線で活躍されてる方々ばかりなので、そういう方々と一緒に事業を作る経験ができたのは本当に貴重でしたね。僕の今のコアコンピタンスの一つって、事業をプロダクトマネージャーとして作っていくってところなんですけど、そういうところに本当に長けてる人たちに学ぶことができました。

相良:

事業開発を学ばれたんですね。それから、Momentumを創業したと。

高頭:

そうですね。当時、インターネットとテクノロジーが大好きだったので、それを使って社会の課題を解決するみたいことをやってみたいと思っていたんです。ちょうどその頃、インターネット広告の市場がどんどん大きくなっていく中で、いろんなメディアが参画しやすくなった半面、不正なメディアも現れたり不適切な広告が表示されてしまったりという望まれないことが起きてしまっていたので、そこを解決するサービスを創りました。そこでは本当にテクノロジーをコアにした企業経営・・テックドリブンな開発だったり、エンジニアが中心の組織だったり、そういったものを経験することになりました。

相良:

そのMomentum社をKDDIに売却したのが、2017年ですよね。それからPMI(Post Merger Integration)でKDDIの中に入って、一時経営をされていたと。それから4年間経って、今年の6月にTeatisを創業した。その経緯を教えてもらってもいいですか?

高頭:

Momentumを売却したことについて、会社の外から言うと「売却できた」「一つのマイルストーンを達成できた」っていう風に捉えられるかもしれないんですけど、やっぱり自分の中では、“社会の課題を解決するために会社を作ったけどそれを自分自身が生涯をかけてやりきるんだっていうモチベーションを失ってしまった”っていう、そういう喪失感はありました。結局、売却に至った理由としても、自分がこの課題を20年30年かけて解決する価値があるっていう規模感が見出せなくなってしまって、より大きな課題に挑戦する必要があると感じたことがありました。
なので、次につくる会社は本当に自分の人生を全部かけてもいいと思えるくらい大きな課題を解決する企業である必要があると思っていて、そういう課題をずっと探している時期があったんですけど、やっぱり自分の人生を全部かけるってなると、そこらへんで見つけてきた課題っていうよりも、自分の何かと強いコネクションがあったりリンクがある課題である必要があるとは思っていました。そんな中で、嫁ががんで亡くなったんですね。その闘病中、僕は食事療法を通じて妻を介護した経験があって、忙しい日々の中での食事療法っていうのがすごく大変な行為だっていう実感を持ってたんです。それで、食事療法をより簡単にしたり誰でもできたりすることには価値があるんじゃないかなと考えました。世界にはいろいろな疾患を持った方々がたくさんいて、それを僕と同じように忙しい中で介護している人たちもたくさんいる。そう考えたら、これはきっと大きな課題に違いないと思ったんです。その課題の解決のためにTeatisを創業したという経緯です。

相良:

そのあたりについては、高頭さんのブログも読みました。事業領域をどう選ぶかっていうところで、もともとMomentumがアドテクの領域だったので、普通に考えれば次の事業もそこに類するというか、少なくともBtoBのソフトウェア事業の方が、自分自身の強みも経験も活きるしいいんじゃないかと。でも、高頭さんとしては、人生をかけてこれから何十年とチャレンジするってなったら、もっとドデカい課題で、かつ自分の体験に紐づいたものをやりたい、って書かれてましたよね。特に連続起業家って、一社目の起業を糧にしてその延長線上でドメインを選ぶことが多いかなって思うんですけど、高頭さんの場合はもう本当にかなりの飛び地を選んでチャレンジすることに決めたっていうところに、迷いももちろんあったでしょうけど、それ以上の並々ならぬ決意を感じました。

高頭:

それは、起業を通じて何を成し遂げたいかっていうところに関わっているかなと思っていますね。やっぱり僕がやりたいのは、「自分の人生の時間=自分の命を燃やして、世界の課題を解決したい」っていうところかなと思うんです。それを、このTeatisの事業領域で成し遂げるぞってことを自分の中で強く決意できたってことです。あとは、さっきの幼少期の話にも関連してるかもしれないんですけど、自分の好奇心とかそれを見つけたときのパッションとかを信じてる部分はあって、例え今回のチャレンジが飛び地であったとしても、そこに自分が情熱を持てるんであれば学習できるだろうって考えた部分はありました。

相良:

一社目の延長線上で~っていう話をしましたけど、でも連続起業家が本当に強いのは、同じドメインでその経験が活きるっていうこと以上に、組織の作り方だったりとか、あるいは今回僕らも出資させていただくことになりましたけど、そうした(資金調達を含む)広義の仲間集めだったりとか、壁にぶつかったときにどう対処するかとか、そういうところだと思うんです。課題の内容はそれぞれの会社や事業領域によって変わるはずですけど、その対処法とか考え方とかは汎用的なのかなと。

高頭:

あともう一つ、僕が飛び地に行けたのはまさに、一回起業して売却するというところまでやったっていう経験ですね。このファウンダーとしてのナレッジは必ず汎用的に活かせるし、それをベースにチャレンジする自信を得たっていうのはあると思います。

Teatis ANOTHER WORLD!!

相良:

それじゃあ改めて、今回新しく創業したTeatisで実現していきたい世界について、聴いていってもいいですか?

高頭:

そのあたりはイラストに公開しているので、ちょっと見てもらえますか?

相良:

かわいいし、パワフル!

高頭:

僕たちのブランドって、糖尿病・・特に糖尿病2型の課題を解決して、彼女たちのような人たちがよりヘルシーでアクティブな生活を送れるようにしていくことがミッションなので、そういう人たちがより楽しく生活している様子を切り取ったような、僕たちのミッションを具現化したような、何かイラストみたいなもので表現したいなっていう気持ちはずっとあったんですね。
それに、僕たちは課題解決型の企業なので、ある意味でビジョンをきれいに整えて表現することって簡単にできるんですけど、同時に、言葉ってちょっと嘘っぽくなるところがあるじゃないですか。「糖尿病の課題を解決するんだ!」とは言えるんですけど、ちょっと違うというか。それがビジュアル化されてると、かっこいいね、そっちの方がいいね、って思えて僕たちらしい・・僕たちのコミュニティに関わるステークホルダーにとっても自分たちらしい・・って思えるんじゃないかなと。今は女性のキャラクターから始めてるんですけど、彼女たち一人一人にもペルソナがあるんですよ。

実は、名前にも秘密が・・!?
高頭:

一応この場では言葉でも表現しておくと、特定の疾患を持つ方々とその周りの方々の課題って、僕自身が体験して感じたことも含めて、世界中で大きな課題になっています。糖尿病患者だけでも世界で4億人いると言われていますし、アメリカ一国に絞っても糖尿病2型でかつ境界型の人は1.2億人いますし、本当に大きな課題があるんです。まずはそういった方々に対して食事療法のアクセサビリティを圧倒的に高めることを通じて課題を解決していきたいっていうのが、今思っていることですね。
すでにいろんなソリューションが出ている中で、なかなかこのあたりの解決が進まない一つの原因として僕が考えているのは、生活を変容させるハードルがすごく高いソリューションが多いってことです。例えば、自分の生活をトラッキングするだとか、メディケーション(服薬)を受ける手段は提供されてるけどそれがサステナブルな解決方法になっていないだとか、生活を変容させるための自分の強い意志の力が求められるんです。僕たちはそこに対して、ハードルの低いソリューション=おいしい食べ物によって生活の様式を変えていくっていうことを主軸として目指しています。

相良:

このあたりの課題を解決するアプローチっていくつかあるじゃないですか。日本でも糖尿病患者の生活習慣を改善するためのアプリを出してるスタートアップが何社かあったり、大手の製薬会社が出してるサービスがあったり、あるいは血糖値をモニタリングするデバイスとアプリをセットで提供したりとか、いくつかアプローチの方法はあると思うんですけど、その中でも高頭さんが食事=栄養食というアプローチを選んだのは、より生活に根づかせやすいとか、その密着度によって生活様式を変えやすいみたいな思いが一番にあったからなんですかね?

高頭:

おっしゃる通りで、僕たちがやりたいのは、医療や薬じゃない形で実行可能なソリューションを提供したいということなんです。そうなったときに、やっぱり糖尿病と密接に関わっているのは食生活なので、それをどう実行可能な形に変えるかっていうと、調理の時間もスキルも必要なく準備できて、明日からでも始めたい/自分が取り入れたいと思えるようなおいしいものがソリューションとしてあるべきって考えて、それを今一つ一つ具現化しようとしています。一つは今すでに販売している栄養食。そしてそこに加えて、食事療法に至るためのマインドセットをつくるところも含めたサービスを展開し始めています。管理栄養士によるカウンセリングにフード(栄養食)の提案を加えていくってものです。僕たちのプロダクトに共通するのは、実行に至るところまでもサポートして、そしてしっかり続けられるものを提供したいということですね。繰り返しになりますが、強い意志がある人に向けたソリューションはすでにあるんです。でもその意志の力に依存しないプロダクトをつくっていきたいと思っています。
これはやっぱり、本当に僕の個人的な経験に基づいている考えですね。妻を介護しているとき、常に自分の意志の力を天秤にかけられてたなと思うんです。一日スタートアップの経営をしてヘトヘトになって帰ってきた夜に、彼女のために本当に健康なものをつくらなきゃいけないっていうところにかける意志のカロリーって、本当にめちゃくちゃ高かったんですよね。それじゃあ続けられないなっていうことを自分ごととして実感したんです。だから、続けられないことを、意志の力が足りないんじゃないですか?とは言いたくないと思ってます。

相良:

その点は、投資検討に際して個人的に重視した点でもありました。というのも、ダイエットしかり筋トレしかり、こうした食事療法しかり、健康改善系のプロダクトのアキレス腱は「継続のしにくさ」だと思っていて。アプリで記録するとか割と意志の消費カロリーが大きなソリューションは市場に出始めていると思いますけど、そういうものと比べると、手間をかけずに取り入れられるTeatisのプロダクトは、意志の消費カロリーを抑えた形で、日々の生活に根づきやすいものになりそうですよね。あとはそこに加えて、Teatisの栄養食についてとか、あるいはそれ以外の食事の食べ合わせについてとか、日々のちょっとした疑問や判断について気軽に相談したいっていうニーズはあるかなと思うので、まさにそれを埋めているのが管理栄養士さんのオンラインカウンセリングサービスですよね。それら二つがあることによって、意志のカロリーを抑えつつ、継続してもらいやすくなって、しかも効果が出るというサイクルを回しやすい、そういうセットになっていると思います。

自分で自分のヘルスケアを選ぶ時代

相良:

もちろん僕たちのサービスは一過性のものではないですけど、まさに今Teatisを取り巻き、後押ししているトレンドについても、おさらいしておけたらと思います。

高頭:

一つはやっぱり糖尿病人口が増えていることですね。もう一つは、Consumerization of Healthcareっていって、消費者が自分で自分のセルフケアを選ぶっていうことは大きなトレンドとして来てると思っています。それにはいくつかの側面があると思うんですけど、一つは、医療費が圧迫されて政府主導のメディケアが今後サステナブルに継続されないというプレッシャーもありますし、なのでその次には、だからこそそこを支える形でいろんなソリューションが生まれ始めているってことですね。けっこうカンブリア的な時期だと思いますね。D2Cっていう別のトレンドも相まって、対象者に直接サービスを提供しやすくなってる。その波に、まさにTeatisは乗れているかなと思っています。しかも、フードだけじゃなく、かつデジタルだけでもない。リアルとデジタルを組み合わせて持続的に使ってもらうっていうことをこのトレンドの中で実現していきたいですね。

相良:

あと、いわゆるD2Cのモデルが普及する背景にもなりますけど、物流施設や製造工場を自前で持たなくても/作らなくてもよくなったっていうのはけっこう大きいですよね。僕らも提携工場を持ってやってますけど、そういう形で、サプライチェーンの委託モデルが普及して、さらにはそうした供給側の情報がインターネットによって束ねられて遊休資産を安く早く活用することができるようになったことで、デジタルチャネルに強くてアプリやソフトウェアは作れるけど、その製造のラインを持っていなかったりノウハウがなかったりするテック寄りのプレーヤーが、“製造物”を、そのソリューションの中の一要素として持つという選択をしやすくなったっていうのはあるなと思いますね。

高頭:

Teatisの管理栄養士と糖尿病の人をマッチングするサービスの側面でいうと、やっぱりコロナ禍において、多くの人がリアルに病院に足を運ぶっていうところをためらっていて、アメリカ全体の40%ぐらいの方がそういう機会をスキップしてるっていうデータもあるんです。そういうところでも僕たちのオンラインのソリューションっていうのはマッチしているし、さっきのリソースが遊んじゃってるって話でも、病院に足を運ぶ人が減ってしまうと、これまで病院で診断をしていた管理栄養士の方々の可処分時間が増えるんですよね。その時間を利用して、オンラインでの診断サービスを行ってもらうことで、その方々のリソースを効率的に使えるっていう面もあるんですよ。

相良:

ちなみに、管理栄養士さんって、典型的にはどういう属性の人たちなんですか?それを本業として生計を立ててやっている人なのか、それとも、本業は別にあるけど栄養士の資格も持ってる人なのかっていうと。

高頭:

勤め先は病院、企業の社員食堂、食品会社とかでしょうか。あとは、最近ではギグワーカー的な働き方も増えてきていて、レシピを開発してインフルエンサー的に活躍したり自分で小規模なコンサルティングをしたりしている方々もいますね。今後もそういう働き方って増えていくでしょうから、僕たちはTeaitsを通じて、そういった管理栄養士の方々に糖尿病の方とアクセスする手段を提供するっていう役割もできますね。

相良:

分散化の流れの中で、管理栄養士の方々もどこからでもオンラインで患者さんと繋がれて、サービスを提供できるってことですね。

株式会社ジェネシア・ベンチャーズ インベストメント・マネージャー 相良 俊輔

おいしいもの、おいしすぎるもの

相良:

さっきの意志の話にちょっと戻りますけど、僕、今OURA Ring(睡眠の質や運動量などを計測する指輪型のデバイス)をつけてるんですけど、基本的にはデータを取るだけのデバイスになっちゃってて。アプリに連動して、睡眠スコアとか日々のコンディションとかが可視化される状態になってるんですけど、毎日定点観測できているかというとあんまり見てないんですよね。自分でモニタリングしながら行動を改善するとか、余程のことがないとちょっと億劫だなって。だから、専門家の人がアプリの裏側にいてプッシュ型でリスク評価をしてくれたりとか、改善に向けて取るべきアクションを教えてくれたりとか、そういう付加的なフックやトリガーがあると、効果に繋げやすいだろうなと思います。だから、糖尿病患者さんにとっても、管理栄養士と繋がれることは、いいことなんじゃないかなと思います。

高頭:

CGM(Continuous Glucose Monitoring)っていう血糖値を測定するデバイスがあるんですけど、普及率が伸び悩んでるって最近アメリカでは言われていて。糖尿病1型の方はもともと利用されてたりするんですけど、糖尿病2型の方はマーケットがなかなか立ち上がらないらしいんですね。それってまさに直感的に、「計測したところで何が変わるの?」って思ってしまうからだと思うんですよ。そこに対して、Teaitsのソリューションは、エグゼキューションから始めて、その精度をさらに上げたかったら計測もする、でいいんじゃないですかっていう提案です。順番として、割と多くの企業がしているのは、まず計測をして、そこからパーソナライズしていくっていうソリューションです。一方で僕たちは、まずソリューションで信頼性を高めて、そこから幅広く継続できるような形に持っていこうというものです。

相良:

まず即効性のあるところでしっかりと効果を出して、そこから広げていくイメージですね。

高頭:

全体を整理するかたちになりますけど、今の糖尿病周辺の主要プレーヤーを挙げると、糖尿病をマネジメントするITソリューション群と、糖尿病の方にもいいですっていう栄養成分が入ったフードのプロダクト、主にその二つがあるんですけど、特に食品だけ関して言うと、as you like/どれか好きなのを使ってくださいっていうスタンスなんですよね。でもやっぱり消費者って、どれが自分に本当に合ってるかってことを知った上で取り入れたいはず。そこにTeaitsは、管理栄養士のカウンセリングを入れることによって、安心感を持ってもらおうとしています。あとは、糖尿病の方のコミュニティとかを見てると、プロダクトを使い方を間違ええてる人もけっこう見かけるんですね。いいプロテインパウダーなのに、それをゲータレードで飲んでるとか。そういうところを、僕たちは専門知識を持った人を入れることで変えていきたい。あとは、そうですね、意志のパワー・意志のカロリーが必要とされてたところを、実行可能な・持続可能な形に変えていきたい。

相良:

フードを作るD2Cっていう側面がすごくわかりやすいから注目されがちなんだけど、「意思の力を必要とすることなく糖尿病をケアできる」っていう状態を作っていくことが、実は本質的な提供価値になっていますよね。その手段としての完全栄養食があり、管理栄養士さんとのオンライン相談窓口がある。そういう意味では、課題解決に向けての手段は今後も増えたり変わったりしていく可能性はありますよね。
ヘルスケア関連の他のサービスが実施してるリテンション施策とか事業ポートフォリオの作り方とかも、参考にできるところはあると思うので、ウォッチしつつ、学びつつ、やっていきたいですね。

高頭:

そうですね。どういう形がより持続的なのかっていうところは、ずっと検証していきたいですね。

相良:

最後に、高頭さんが何か食生活でずっと続けられてることってあるんですか?

高頭:

食事でいうと、食物繊維が本当に重要だと思ってますね。なので、食物繊維が取れるような食事を、週の半分は僕が作っています。あとは、極力子どもには砂糖を取らせないようにしてます。もちろんゼロにはできないですけど、そういう信者ではありますね。報酬が大きすぎるというか、おいしすぎるんですよね。

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