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【ユアニチャー】わたしの暮らしは、わたしがつくる -「家具D2C」で挑む、暮らしにストーリーを乗せる未来-|Players by Genesia.

PLAYERS

「世界のデジタル化が進むことによって、どんな“豊かさ”がもたらされるのか?」
わたしたちにはいくつかの仮説があります。業務フローやオペレーションの効率化、多重構造の解消など・・世界はきっと、より良い方向に進むでしょう。

その仮説の一つに「個人のエンパワーメント」があります。組織に所属し、ルールとフレームワークに則り、与えられた役割を効率的にこなすことが良しとされてきた時代から、デジタルはわたしたちに、自分の「好き」や「やりたい」にすぐに手を伸ばせる環境を与えてくれました。「カスタマイズ」や「パーソナライズ」も、それを象徴するキーワードです。

ユアニチャー/Yourniture.は、Your Furniture(あなたの家具)を組み合わせた造語で、デジタルがもたらす“豊かさ”を「パーソナライズ家具」というかたちで届けることを目指します。最初の産業革命のずっと以前から存在する“ものづくり”。そのエンパワーメントに挑む、第4次産業革命時代の“Craftsman”たちの対談をまとめました。

設立、集った仲間たち

和田:

私は、15歳の時に家出して、18歳で起業。20代前半はエンターティメント業界のど真ん中、20代後半から30代前半はものづくり関連の事業を展開してきました。
2014年にユアニチャーを設立した経緯は、私が当時、年間50万台を超える建具や什器、家具を製造するOEM工場を経営していた時に、製造業小売業が今後10年で絶対的に直面する問題は「人、HR(ヒューマンリソース)」にあると確信したからです。
製造業界においては、日本の高度経済成長を経てバブルが崩壊した時は、まだ材料費や人件費が安い東アジアや東南アジアに生産拠点を移転させることによって、企業は延命してきました。しかし、そういったことは長くは続かない。所詮は焼き畑で、私が今10年以上拠点にしているインドネシアでも、年に40%以上も労務費が上がったという年もありました。では、またさらに人件費が安い国を探すのでしょうか?否、またきっと10年後には同じ問題に直面するでしょう。インターネットにより、これだけ情報がフラットな時代には、そもそも無理な話です。
そこで、私は「製造小売におけるサプライチェーンを徹底的に自働化するプロジェクト」を開始しました。それにより、持続可能なサービスを作ることができると確信したからです。
「消費者が商品を注文してから手元に届くまで、人の手を一切介さない」究極のD2C。それが、ユアニチャーです。

ユアニチャー株式会社 代表取締役CEO 和田 直希
田島:

和田さんとは、前職からの長い付き合いですね。
「パーソナライズ家具」というコンセプトを聴いたとき、ありそうでなかったし、ピンときました。
パーソナライズやカスタマイズというと拡大が難しそうな印象を受けますが、生産プロセスの自動化を進めていくことで、世界中の購入希望者の近くにある世界中の工場にデジタルデータ化されたPO(Purchase Order/注文書)を飛ばして自動生産できるーそんな世界が実現できれば、とても大きなビジネスになると感じたことも大きいです。
「D2C」の盛り上がりも、デジタルの力があってこそ。もの(家具)とテクノロジーの両方に精通している起業家はそれほど多くないことから、和田さんにFounders Market Fitを感じました。
同様に、ものとテクノロジー両面に想いのあるメンバーが集まって、チームも良い感じにできてきていますね。

堀江:

私は学生時代からずっとソフトウェア開発の仕事をしてきましたが、一方で、現実世界で目に見える“ものづくり”にも携わってみたいと感じていました。元々はユアニチャーのサービスのモック開発を受注することで最初の接点を持ちましたが、自分の得意分野をものづくりに活かせる良い機会と感じ、ジョインしました。
いわゆる DIY は昔から好きで、木工から電子工作まで色々やってきました。一番大きな木工作品は、実家で今も使っている机です。部屋の間取りに合わせてできるだけ大きな作業面を確保するよう自分で設計・製作をし、棚や抽斗(ひきだし)もつけるなど素人なりに頑張りました。やはり部屋にぴったりあっているというのは気持ちのいいものですよね。実家の家族も気に入ってくれているようで、使い続けてくれています。
ユアニチャーのユーザには、DIY までせずとも、気軽にそういった体験を提供できれば嬉しいなと考えています。

ユアニチャー株式会社 CTO 堀江 光
梅田:

私も、ユアニチャーにジョインする以前から、“ものづくり”に対しては漠然と興味を持っていました。本当は小さな頃からだったのかもしれないですが、ある程度具体的に認識し始めたのは大学生の頃です。当時、『Make:』というDIY色のあるアメリカの雑誌を偶然本屋で見つけ、ものづくりというよりは、「ものをハックする」というような感覚が面白くて読んでいたのですが、そのうち自分も何かを作ってみたいと思い、大阪の日本橋にはんだごてなどを買いに行きました。日本橋は東京でいう秋葉原みたいな電気街です。色々詳しくなりたくて、その界隈でアルバイトしていた時期もありました。その頃からプログラミングにも興味を持ち、ソフトウェアエンジニアとして最初のキャリアをスタートしました。
一方で、ハードウェアの制作にもずっと興味がありました。新卒で東京に引っ越してきて住み始めた家では、まず最初に部屋にぴったり合う机を探したのですが見つからず、2週間近くかけて自分で作りました。ベッドなどもないまま、部屋に作業用のブルーシートを引いて、作りかけの机と生活していました。そんな経験もあってか、ユアニチャーのサービスには親近感を覚えましたし、家具というハードウェアと、それを支える製造図面作成システムなどのソフトウェアの融合も、自分の興味にぴったりだったので、ユアニチャーへのジョインは自然な流れだったと思います。
また、これまで1->10はある程度経験してきましたが、0->1を作る経験はほとんどありませんでした。人生を通して、情熱をかけてやりたいことを見つけるには、1->10よりも0->1を作ることがキーになると、漠然とですが考えていたので、スタートアップを選択しました。

ユアニチャー株式会社 CPO/開発マネージャー 梅田 祐貴

ものづくりと暮らし、ユアニチャーが目指すところ

和田:

日本のように経済的成熟を迎えると、次のステップとして「如何にQOLを高めるか」というフェーズに入るのは、自明です。
「パーソナライズ家具」は、そういった時代に背中を押してもらっている気がします。
特に、日本の家具の歴史は“収納の歴史”です。椅子座の文化は明治以降にヨーロッパから入ったもの。侘・寂(わび・さび)を大事にし、機能性にフォーカスを当ててきた日本の家具の歴史においての究極のデザインは「美しく佇む」というものであると考えると、サイズも色も可変であるユアニチャーの家具は、究極のデザイン家具でありパーソナライズ家具だと自負しています。

堀江:

コンピュータの性能向上やインターネットの普及により、時間的・空間的な隔たりを超え、個人のニーズに合わせたサービスが、様々な分野で提供されるようになってきました。一方、ものづくりの分野では、実際にモノを製造・運搬する制約もあり、同じような自由度でのサービス展開は困難でした。しかし、3D プリンタや工場機器のネットワーク制御が普及してきて、徐々にこのハードルも下がるでしょう。遠くない将来、大量生産品と同じような感覚でオーダーメイド商品を入手できることが当たり前になると思います。ユアニチャーの事業は、そのさきがけとなる要素のひとつと考えています。

相良:

まさに、ソフトウェアの世界では既に当たり前になっている「パーソナライズ」の概念が、産業のサービス化を背景として、ものづくりにも染み出してきているように思います。
家具というものは、暮らしに溶け込むという性質上、本来的にはひとりひとりの好みに合った、パーソナライズされたものである方が良いのでしょうが、規格化と大量生産をベースにした大手メーカーではそれを実現しづらく、また家具の生産プロセスに知見のないピュアインターネット系のスタートアップも同様に難しい。ここに、ユアニチャーの大きな存在意義があります。

インベストメント・マネージャー 相良 俊輔
梅田:

世の中ではサブスクリプションサービスが盛り上がっていて、モノを所有する価値はこれまでと比較して低くなってきていると言われています。家具も例外ではなく、すでにサブスクリプションサービスがあり、ライフスタイルの変化や引っ越しに合わせて気軽に家具を変えられるという点ではとても良いサービスだと思います。ただ、「暮らしに合った家具を簡単に手に入れる」ことを追求していくと、もう一つの重要な要素は「パーソナライズ」だと思います。数百万パターンの選択肢を提供できるユアニチャーは「暮らしに合った家具」ひいては「“自分に合った”家具のある暮らし」を実現するための重要なキーを持っていると思います。

高田:

モノ消費からコト消費へのトレンドの変化があり、企業からの一方通行による“売りたいものを売る”というコミュニケーションは、もはや通用しない時代です。働き方改革により、以前よりもプライベートの時間を持てるようになっても、所得が増えるわけではない、むしろ残業代がなくなり収入が減る人だっている。そのため、限られたお金の使いみちというのは、今まで以上にシビアに吟味されていくことになります。そのお金の使い方、そして余暇を楽しむための時間の使い方。その選択肢に、ユアニチャーも入れてもらえたら嬉しいですね。

ユアニチャー株式会社 CMO 高田 洋平
田島:

これからの時代、モノは単に作られて届けられるだけではなく、購入者ごとに異なったストーリーや体験を乗せてユーザーに届けていくかたちに進化していくと考えています。特に家具は、置かれる場所や置かれる空間、またその時のオーナーの気持ちによって、その表情を大きく変化させていきます。
D2Cが注目されていますが、家具におけるD2Cとは、データドリブンな経営であり、データドリブンなプロダクト思想であることはもちろんのこと、人の暮らしに大きく影響を与えるものだからこそ「モノと、ユーザーの暮らし、そして想い。そのすべてが融合した世界」を深くイメージし、デザインすることが求められるのではないでしょうか。

ジェネラル・パートナー 田島 聡一

ビジョン、ミッション、チームへの想い

梅田:

会社のビジョンやミッションの作成に携わることなんてなかなかないと思うので、できる限り自分の考えを盛り込みたいとは思っていましたが、同時に、和田と堀江、代表陣の想いも余すことなく盛り込むことも意識しました。
ビションの『わたしの暮らしは、わたしがつくる』は、比較的すんなり決まりました。ありとあらゆるものがそれなりに簡単に手に入るようになってきた時代ですが、「自分に合った暮らし」を自分で作り上げていくのは、まだまだ簡単にできることではないと思います。時間などのリソースがなかったり、なかなか要望に合うものがうまく見つからなかったりと様々な理由はあると思いますが、それらの課題を解消し、「自分に合った暮らし」をぐっと実現に近づけるサービスを提供できればと思っています。
カスタマイズやパーソナライズというとまだまだ面倒なイメージがあるので、これからそれを爆発的に普及させるには、そのギャップを超える必要が絶対にあると思っています。ZOZOスーツなんかもそうですよね。やらないといけないことや越えなくてはいけない壁は少なくないですが、テクノロジーの力で乗り越えていきたいと思っています。ミッションの『これがいい、をカンタンに』は、そんな思いから生まれました。

ユアニチャーのVISION・MISSION・CORE VALUE
堀江:

もともと自分で何かをつくることや、ものづくりの手法などに対する興味はかなり強かったのですが、その最大の魅力は、自分が“本当に欲しい”モノ・コトが手に入ることなのかなと感じています。そのような体験を誰でも気軽にできるようになったら、皆がより幸せに生きられる世の中になるのではと思っています。ビジョン、ミッションには、そんな世界を目指す思いを込めています。

田島:

オンリーワンな家具というのが真の目的なのではなく、オンリーワンな生活そのものを創るというのが真の目的であるということと、まさにユアニチャーだからこそ提供できる新たな体験をうまく表現していますよね。

相良:

ひとりひとりの暮らしに寄り添う「パーソナライズ家具」というサービスの特性上、提供者視点だけでは魅力的なビジョン、ミッションにはなり得ないと考えていたため、CI(コーポレートアイデンティティ)の策定を支援させていただく過程においては、ユーザーを主語に世界観を言語化していくことを意識しました。社員はもちろん、ユーザーも、生産パートナーなども、ユアニチャーに関わる人すべてを巻き込んで、ビジョンの実現に邁進していきたいですね。

和田:

先述の通り、この成熟期を迎えた日本で「どう生かされるか」ではなく「どう生きるか」を考え、自身の人生を選択していくことが非常に大切だと思います。
そんな時代背景と、私たちのサービスの本質である「ひとりひとりの、あなた自身のための家具」を作るユアニチャーとして、『わたしの暮らしは、わたしが作る』というビジョンは、まさに私たちの作ろうとしている未来を表現できていると思います。『これがいいを、簡単に』というミッションも、製造小売業における「サプライチェーンの総自働化」というゴールに対して、まさに一番コアとなる使命です。いずれも、私たちのテクノロジーでは実現できるものと信じています。

田島:

チームについては、どうですか。

和田:

いくつかキーワードがあります。
「虫の目」、「鳥の目」、「魚(うお)の目」を持ち、ラストワンマイルまで妥協しない。

堀江:

縦割り組織ではなく、各メンバーが自分の責任の範囲内外にも目を配り連携する、有機的なつながり。

高田:

全員が経営者マインドを持つ。誰かがやるだろうではなく、自分でやる。その共通認識、信頼関係。

梅田:

「パーソナライズ家具」を通じた体験を最大化するためのビジョンのもと、それを実現するための販売チャネル・生産・物流などの最適化のロードマップをマクロに描きながら、それらをミクロにスピーディーに実行できるチームづくりが必要になると思います。戦略を描くだけでなく泥臭いことも実行できるような人が集まると、ぐっとあるべき姿に近づけるのかなと思っています。

田島:

あるべき姿の実現には、強いチームが不可欠です。CIを軸にしたカルチャーフィットを決して妥協せず、新しいメンバーを迎えていきましょう。

いくつかの戦略と、これから

和田:

・経験に基づく業界随一の生産におけるコスト競争力
・サプライチェーンの自働化による大幅なコスト削減
・製造データを消費者の足元で生産することによる物流コストの低減
この3つを自社のテクノロジーで実現していることで競合が絶対に入ってこられないコスト優位性を保つプロダクトアウト型の製品であると同時に、ユーザーが望むプロダクトを作るマーケットイン型の発想で開発されたサービスであること。それらを両立することで、唯一無二のブランドを作り上げていきます。

高田:

購買行動は年々多様化しています。多少高くても、こだわりを持ち、自分が気に入った物には対価を払うことを惜しまない人が増えている時代。こうした消費者を第一に満足させられる商品を提供する。Consumer focusを徹底します。

梅田:

まずはお客様の声を反映したり目の前の課題を解決したりしながら、着実に家具のパーソナライズ体験を磨きこみ、それをより多くのユーザーに体験してもらうことが大事だと思います。そのためには、オンラインはもちろんオフラインでもユアニチャーを体験してもらうタッチポイントを準備していきたいです。
また、ユアニチャーだけでは世の中にパーソナライズ家具を浸透させるには足りません。ユアニチャーの持つ生産機能・生産図面自動化などの機能をサービスとして開放することで、家具業界以外の会社でもいろいろなパーソナライズを提供できるようになれば、より家具のパーソナライズも身近に、かつバラエティ豊かになると思っています。

堀江:

CTOとして、技術的な観点から述べます。
私は、組織やサービスの優位性を得るために、技術や知見を自社で抱え込みスケールアップを図るのは時代遅れになりつつあると考えています。もちろん自社が選ばれる理由や特徴・個性は必要ですが、アイデア一点突破!秘伝の技!というよりも、様々な最新の技術・知識を組み合わせて、高品質なサービスを構築することが当たり前になってきたためです。
この流れの中で、私たちも様々な技術的知見を積極的にアウトプットしていくことで、ユアニチャーのプレゼンスを高め、強い共感を持ってくれるメンバー候補にもたくさん出会っていきたいです。スケールアップではなく、オープンに周りを巻き込んでスケールアウトを狙っていくことで、ユアニチャーのビジョンの実現に大きく近づけると考えています。

和田:

私は「パーソナライズ家具」が、ニッチなマーケットではなく、業界や市場の中心になると確信しています。「自分に合った色やサイズが選べなかった時代があったなんて信じられない」という時代が、きっと来るでしょう。それは、ひとりひとりが自分の暮らしを自分でつくることが当たり前になっている未来です。そして、快適な暮らしを基盤に、世界を今よりもずっと広く豊かに感じられる未来だと思っています。

※こちらは、2019/11/13時点の情報です
(デザイン:割石 裕太さん、写真:尾上 恭大さん、聞き手/まとめ:ジェネシア・ベンチャーズ 吉田 愛)

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