
#27 あなたの“食と健康”の未来!生体データとAIが拓く個別化ヘルスケア【ゲスト:株式会社ザ・ファージ 代表取締役CEO 徳永 翔平さん】|Ayo! by Genesia.
ジェネシア・ベンチャーズが配信する『Ayo! by Genesia.』は、スタートアップの“挑戦の裏側”に光をあてるPodcastです。プレスリリースなどのオフィシャルな情報だけでは伝えきれない、挑戦のプロセスで生まれる想いや葛藤、そしてリアルな学びを、起業家と投資家、それぞれの視点からお届けします。
「Ayo!」はインドネシア語で「Come on!」「Let’s Go!」という意味。スタートアップのチャレンジをリアルにお届けしていきます💁♂️💁♀️
今回のゲストは、生体情報と生活行動の解析を通じて、個別化医療・ヘルスケアを実現する、株式会社ザ・ファージ代表取締役CEOの徳永 翔平さん(以下:徳永)です。モデレーターは、同社の投資担当でもあるジェネシア・ベンチャーズの水谷が務めます。
目次
- 若年化する「血糖値スパイク」のリスク
- AIヘルスコーチがもたらすイノベーション
- 「血圧を測る習慣」をつくったオムロンの功績
- 「病気にさせない」予防医療への挑戦
- データが拓く「好きなものを食べながら健康」な未来

若年化する「血糖値スパイク」のリスク
水谷:本日は「あなたの食と健康」がテーマです。ゲストとして、株式会社ザ・ファージ代表取締役CEOの徳永 翔平さんをお迎えしています。よろしくお願いします。
徳永:ザ・ファージの徳永です。僕たちは生体情報をもとにAIの研究開発をする会社です。
水谷:生体情報というと、具体的にどんなデータを活用して事業に取り組んでいるんですか?
徳永:食領域で主に取り扱っているのが「血糖値」です。血液中の糖の濃度みたいなものです。「血糖値スパイク」って聞かれたことはありますか?僕たちは、血糖値スパイクのデータを大量に集めて、その人に合った食事などを解析できる技術を作っています。
水谷:最近話題になっていますよね。血糖値スパイクはなぜ起きるんでしたっけ?
徳永:加齢に伴って体の中がだんだん弱くなっていくことで、みんな起こるようになります。例えば、レッドブルのような甘いものを飲むと、体内の砂糖の濃度が一気に上がるので血糖値もぐんと上がります。最近の食べ物や飲み物には砂糖が多く含まれいるので、若い人にも非常に多く起きています。
水谷:普通はある程度年を重ねてから起こるものが、若年化してきているということですか?
徳永:そうです。血糖値スパイクが続くと、糖尿病などの生活習慣病につながります。加齢に伴って起こる病気が多かったのですが、最近はそれが20代、早いと10代で始まってしまうこともあります。
AIヘルスコーチがもたらすイノベーション
水谷:ザ・ファージを経営されている中で、今注目しているヘルスケアテックのトピックスがあれば教えていただけますか?
徳永:最近一番注目しているのは、やはり生体情報のAI分野です。Googleも最近出しましたが、Fitbitの情報をもとに個別化して、その人に合った運動や生活改善案を提案するAIはどんどん進歩しています。
水谷:いわゆる「AIヘルスコーチ」「AIヘルスエージェント」的なサービスレイヤーですね。海外— 特にUSではその領域で伸びているスタートアップも出ているんでしたっけ?
徳永:結構たくさん出てきています。去年ナスダックにOmada Healthという会社が上場しました。
水谷:Omada Healthは、どんなところがすごいサービスなんですか?
徳永:一番すごいのは、AIと人の業務がちゃんと住み分けられながら、LTVをめちゃくちゃ伸ばせる点です。ヘルスコーチ一人が、例えば一日に5,000人とかを見られるんです。普通はどんなに頑張っても、一日8人くらいしか見られないんですよ。それだけの人数を見られているのは、相当すごいなと思います。
水谷:それは非常に明確なイノベーションですね。USではそういった企業も出ている中で、日本国内でAIヘルスコーチのような領域で伸びているサービスは出てきているのでしょうか?
徳永:これからかなというところです。日本だと規制の観点でみんなあまり入り込めていないんです。だから、本当にここからグイグイ伸びる領域だと思います。
「血圧を測る習慣」をつくったオムロンの功績
水谷:ウェアラブルデバイスは日常的に装着されるようになりました。僕も徳永さんとご一緒するようになってから、Apple Watchを勧められてつけていたのですが、最近かぶれが出てしまって外しています。しばらくはそれで取られたデータを見ながら生活していましたが、個人的にはそこまでの行動変容は起きてこなかった感覚があります。これからより深い生体情報が取れたりAIが実装されたりすると変わっていくのかなと思っていますが。徳永さんが今、個人で一番利用しているヘルスケアのテックサービスはありますか?
徳永:やっぱりApple Watchが強いなと思っています。Apple Watchの中に「バイタル」という機能が新しくできていて、複数のバイタルを勝手に解析して、自分の状態が枠の中に収まっているかどうかなどを定性的に見せてくれます。
水谷:どんな指標が取れるんですか?脈拍とかですか?
徳永:心拍、体温、睡眠、呼吸、体の酸素状態などです。
水谷:お酒を飲むと睡眠時の脈拍がめっちゃ上がるとか言いますよね。例えばそういうときに、「水谷さん、脈拍がだいぶ早いですよ」みたいに通知してくれるイメージですか?
徳永:いえ、バーの中に点を示して、今が良い状態なのかどうかを見せてくれます。それをもっと深掘りしたいと言えば、今水谷さんが言ったように、どういう状態なのかを説明してくれる。すごくいい機能ですよ。
水谷:それはまた装着しないといけないですね。日本のものでは、徳永さんがすごいなと思っているヘルステックのサービスや医療機器メーカーなどはありますか?
徳永:オムロンさんはやっぱりすごいなと思います。僕の起業のきっかけもオムロンなんです。
水谷:『サイニック(SINIC)理論』でしたっけ?
徳永:そうです。オムロンの創業者の方が「世の中がこういうふうに変わっていくんじゃないか」と唱えた理論があって、それをもとに起業しました。今、ジムとかいろんな場所で血圧って簡単に測れるじゃないですか。あんなに血圧計があるのは日本くらいです。あれってオムロンがいろんなところに測定器を置きまくってデータを取っているんです。
水谷:血圧を測る習慣をオムロンがつくったということですか?
徳永:間違いなくそうです。高血圧は生活習慣病の中でも重要な疾患で、日本にはたしか3,000万人くらい患者さんがいるはす。うちの父も毎食後に血圧を測ってExcelにつけていますが、あれはオムロンの功績です。日本は高血圧の薬代もすごく安いんですよ。100円、200円とかそういうレベルです。それくらい治療法も確立されていて、本当に素晴らしいなと。
水谷:生活習慣病は、実際に症状として発症する前の「未病」の段階でいかに察知するかが大事ですよね。血圧を習慣的に測って食事や運動を改善していくのはアナログなやり方ですが、文化として広めたという意味で、オムロンという巨人が日本にいるということですね。
「病気にさせない」予防医療への挑戦
水谷:スタートアップに限らず、大手企業の新規事業でも、予防医療や未病領域へのチャレンジは社会的意義が大きいし、社会保障費の削減につながると言われます。しかし、予防はお金になりづらい。なぜなら、ユーザー自身にまだペインがないから。だから僕自身、「予防領域にチャレンジしたい」という起業家の話を聞いた瞬間、「どうやってマネタイズするんだろう」と瞬発的に思考が走ってしまうのですが、ザ・ファージも予防や未病の領域で価値提供をしていこうと考えているということでいいですか?
徳永:はい。医療になるとたしかにペインが顕在化していますが、そもそも「病気にさせない」というテーマに誰も挑戦していないじゃないか、というところがあって。
水谷:誰も病気にさせないというのはなぜ難しいのでしょうか?
徳永:個人では、未症状なのでわからないという点があります。例えば、糖尿病患者は日本に2,000万人くらいいると言われています。健康診断で引っかかった人も含めてです。でも、このうち通院している人は300万人くらいしかいないんです。では通院していない人たちはどうなるかというと、急に重症化して大変なことになってしまうんです。
水谷:糖尿病は重症化すると、目が見えなくなったり手足が使えなくなったり、場合によっては透析が必要になったりと、日常生活に支障をきたす疾患のイメージがあります。
徳永:起業する少し前に透析の病院で血糖値の話などを聞かせていただく機会がありました。そのときに見せていただいた別の部屋には、車椅子に座っている方たちが何百人といたんですが、みなさんもう意識がなかったんです。それを見て、「これはどうにかしなくちゃいけないな」と思いました。「病気にさせない」ことにやっぱり挑戦したいと思っています。
データが拓く「好きなものを食べながら健康」な未来
水谷:病気じゃない人が病気に変わるところのデータは取れるものなんですか?
徳永:取れますよ、今は。
水谷:何が変わって取れるようになったんですか?
徳永:大きいのは、やっぱりウェアラブルデバイスの存在です。ウェアラブルが医療の前に日常的に付けられる世の中に変わってきたので、体の解析はしやすくなりました。ただ、それだけだと病気になったかどうかはわかりません。でも最近、病院に行ったときのデータ― つまり薬が処方されたとか診断がされたといったデータも取れるようになったんです。そうすると、病気になる「Day1」までのデータが取れる。
水谷:それは技術的なイノベーションと規制緩和のどちらが起因しているんですか?
徳永:ウェアラブルは技術的な話ですが、検診や診断のデータが取れるようになったのはマイナポータルの普及といった行政の動きが大きいです。医療費が高騰しているので、どうにかしなきゃいけないという流れで、今データの連携が急速に進んでいます。
水谷:なるほど。ウェアラブルデバイスから取れるデータと、マイナポータルに紐づく診断情報が、規格化されたデータとして扱えるようになった。本当にここ1-2年の話ですよね。
徳永:そうです。マイナポータルは今、日本国民の99%くらいが使っているらしいですが、特に去年一年で急速に広がりました。
水谷:そういう意味では、投資対効果の高い税金の使い方ですよね。ヘルステックを大幅にブレークスルーさせるわけですから。
徳永:健康診断データの取得については日本が圧倒的に世界1位で、他では取られていません。これだけ何十年分もデータが取られているのは、絶対に日本だけです。
水谷:これまで「予防は儲からない」という偏見を持っていた自分が恥ずかしいです。いつの間にか時代は変わっていたんですね。
徳永:病気になる前の方たちに介入していくための技術も制度も揃ったタイミングです。高市早苗政権が掲げる戦略17分野にも「攻めの予防医療」として、まさしくウェアラブルを使ったパーソナルケアのサービスが入っていました。
水谷:ただ、そういうサービスで「常に鶏ムネ肉を食べましょう」みたいなサジェストばかりされたら嫌だなと・・
徳永:僕もですが、誰だって好きなものを食べたいじゃないですか。それ、叶えられます。例えば、揚げ物は太るとか言われますが、あれは人によって全然違うということがもうわかっているんです。カロリーや脂質、糖質の情報だけではわからないんです。個々人の体のデータを見ることで、自分に合ったものがわかります。
水谷:いつまでも健康でおいしいものを食べ続けたいですね。ということで、前半パートはここまでです。次回も引き続き、ザ・ファージの徳永さんにさらにお話を伺っていきます。
徳永:ありがとうございました。Ayo~~
全編はPodcastでお楽しみください💁♂️💁♀️:


