
#30 AI時代、人はどう学び、どう動く?教育と身体性から描く次の挑戦【ゲスト:Manabie CEO 本間 拓也さん、NEULO 代表取締役 船瀬 悠太さん】|Ayo! by Genesia.
ジェネシア・ベンチャーズが配信する『Ayo! by Genesia.』は、スタートアップの“挑戦の裏側”に光をあてるPodcastです。プレスリリースなどのオフィシャルな情報だけでは伝えきれない、挑戦のプロセスで生まれる想いや葛藤、そしてリアルな学びを、起業家と投資家、それぞれの視点からお届けします。
「Ayo!」はインドネシア語で「Come on!」「Let’s Go!」という意味。スタートアップのチャレンジをリアルにお届けしていきます💁♂️💁♀️
今回のゲストは前回に引き続き、アジアの教育機関のDXを推進するEdTechカンパニーManabie International Pte. Ltd.共同創業者兼CEOの本間 拓也さんと、パフォーマンスフットギアの製造・販売を行うNEULO株式会社 代表取締役の船瀬 悠太さんです。モデレーターは、ジェネシア・ベンチャーズの鈴木が務めます。
目次
- 「教育機関のデジタル化を全部引き受ける」Manabieの現在地
- 「芝生の上を裸足で歩くような感覚」を目指したシューズ『NEULO』
- AI時代だからこそ、人間の価値は「身体性」に深く回帰していく
- 変わる、教育の形。教育機関や親は何を重視すべきか?
- 「日本発でアジア、グローバルへ」それぞれの海外展開

「教育機関のデジタル化を全部引き受ける」Manabieの現在地
鈴木:前編では、起業に至るまでや、お二人の前職であるQuipperでのお話を中心にお伺いしましたが、後編ではそれぞれが今チャレンジしていることについて深掘りしたいと思います。では、Manabieからお願いします。
本間:改めまして、Manabieの本間です。現在、Manabieは日本、フィリピン、ベトナムで事業を展開しています。日本では、教育機関さま向けの学習管理システムや校務システムなど、教育機関を運営するにあたって必要なデジタル化は全て引き受けさせていただくぐらいの気概でプロダクトを作っています。特に大手の学習塾や通信制高校、専門学校、最近では大学でも使っていただいています。教育と生成AIの相性が非常に良いため、AIを活用した学習サポートシステムや採点・添削システムなども含めて一気通貫で提供することで、かなりのオペレーションを自動化・効率化できていると思います。
鈴木:海外での展開についてはいかがですか?
本間:ベトナムとフィリピンでも近しいことをやっています。ベトナムでは元々、自分たちで学習塾を一気通貫で運営するところから始めました。今は自分たちでやるだけでなく、他の学習塾にも我々が日本で展開しているシステムを使っていただいており、BtoBで成長しています。日本とベトナムは非常にマーケット感覚が近いため、日本で実績のあるプロダクトを展開しています。フィリピンでは、直近で私の前職であるQuipperの現地法人を買収しました。すでに約700校で35万人ほどの生徒さんが使ってくれている、フィリピンの中では一番シェアが大きいシステムです。とはいえ、フィリピンはまだ市場が大きいので、事業を拡大しつつ、大学など他のセグメントへの展開や、日本で作っているAIプロダクトをどんどん導入していくといったことを進めています。
「芝生の上を裸足で歩くような感覚」を目指したシューズ『NEULO』
鈴木:次に、NEULOもお願いします。
船瀬:NEULOは先月、最初の製品である『PathOne』を先行販売という形でリリースしました。現在、対面のみで販売しています。どんなシューズかというと、人間がみんな持っている足本来の感覚を呼び覚まし、裸足のような自由さと現代社会における快適さを両立することを目指したシューズです。履いた感覚を「芝生の上を裸足で歩くような感覚」と表現しています。指が解放されて足が動かしやすく、いろんな力を使いやすい。それでいて、アスファルトの上でも芝生のような柔らかさを感じられる作りになっています。指が動くスペースの確保、姿勢がまっすぐになるフラットな構造、指を動かすためのヒール周りや中足部のフィット感などを、かなり細かく設計して作りました。
鈴木:リリースおめでとうございます!
船瀬:先行販売前から何百人という方に試着していただきましたが、履き心地に関するフィードバックが非常にポジティブで、期待以上の反応をいただいています。「柔らかいけど指がすごく動く」「気持ちいい」「履いてるけど何も履いてないような気がする」「軽い」といった声や、「このまま履いて帰りたい」と言ってくださる方も結構います。まずは、これまでにない履き心地を提供したいと思っています。
鈴木:僕も購入させてもらい、ジャカルタで『PathOne』を履いて歩き回っています。船瀬さんにも直接フィードバックしましたが、今までにない履き心地で、思った以上に足にダイレクトに衝撃が伝わるというか、足を使って歩いている感覚がありました。最初の数日は、いつも使ってないふくらはぎの筋肉が使われて少し疲れましたが、慣れてくるとすごくいい。まさにNEULOが目指しているパフォーマンスフットギアを体現しているシューズだなと日々実感しています。
AI時代だからこそ、人間の価値は「身体性」に深く回帰していく
鈴木:お二人はQuipper出身の起業家という共通項があり、個人的には、AI時代に必要となるであろうプロダクトや事業を見据えて最先端でチャレンジしている2社だと感じています。とはいえ、「AI時代にシューズ?」と疑問に思う方もいると思いますが、そのあたり船瀬さんはどう考えていますか?
船瀬:AI時代だからこそ、僕個人としてどういう時間の使い方をしたいかをすごく考えています。やっぱり身体は資本ですし、大事にしたい。あと、移動もたくさんしたいです。AIで情報収集が簡単になった一方、生のものを見に行ったり現場に行ったりするという体験は、より重要になっていくと思います。また、AIの使い方はいろいろありますが、私が思うのは、AIに対して「良い問いを投げる」ことが人間にとって大事なスキルになるということです。この問いを立てるというスキルや、創造的なアイデアを生み出すスキルは、まだまだ人間が担っていかないといけないと思うんです。その点、「森の中を歩くと創造性が豊かになる」という研究成果がスタンフォード大学から発表されています。シューズだからこそ、AI時代において人間がやるべき活動に時間を使うための一歩を支える存在になれるのではないかと思っています。
鈴木:僕自身も、AIが脳の一領域を代替していく流れは不可逆だと思っています。その上で、人間の価値はどこにあるのかというと、思考や情報処理はもちろんですが、やはり「身体性」に深く回帰していくのではないかと感じています。毎日当たり前に繰り返す「歩く」という身近な身体活動を支えるフットウェアというビジョンにすごく共感しました。
船瀬:人類の歴史を考えても、体を使うことが先になっているケースは多いですよね。400万年前に二足歩行が始まったから手が空いて、道具や火が使えるようになり、結果として言語を話すようになった。実は歩くことが、いろんなことのトリガーになっていたんだなと思うと、おもしろいです。
鈴木:本間さんも歩いていますか?
本間:実は、船瀬さんに触発されたところもあって、去年の11月くらいから一日1万歩欠かさず歩いています。AIにいろいろな物事を任せられますし、ミーティングも歩きながらできます。
変わる、教育の形。教育機関や親は何を重視すべきか?
鈴木:僕自身もEdtech業界を長く見てきた中で、AI×教育という領域において直近で大きな変化が二つあったと感じています。一つはコロナ禍によって教育機関のDXが待ったなしになったこと。もう一つが、まさにAI時代における教育のあり方の変化です。最前線に立たれている中で、本間さんから見えている景色をぜひお伺いしたいです。
本間:教育とAIの現状については、三つのポイントがあると思っています。一つ目は、フィットが良いこと。LLMは言語で、教育もほとんどが言語で伝達されるので、特にティーチングの部分はほとんどAIでテクニカルに代替可能です。むしろAIのほうがクオリティが高くなるでしょう。他の業界と比べても、AIがカバーできる領域は非常に大きいと感じます。二つ目は、日本も東南アジアも教育者が少ないという課題に、AIが非常にフィットしていることです。先生になりたい人は減っていますし、学習塾でも大学生のアルバイト講師を雇うのが年々難しくなっている中で、AIに頼らざるを得ない状況になっています。三つ目は、すでにAIが教育現場に深く入り込み、教育の形自体が変わり始めていることです。当然というべきか、ポジティブな面もネガティブな面もあります。例えば大学のレポート課題は、おそらく80%ぐらいの学生がAIを使って書いてしまっている。先生方からすると「何のためにレポートを出しているんだ」という話で、評価が完全に壊れてしまっているんです。先生方も学生がAIを使っていることは認識しつつも、打ち手がない。対策として、口頭試問や目の前で小テストを行う形式に切り替える動きもあります。
こうした止められない流れの中で、次の2-3年でさらに教育にAIが入るのが当たり前になっていくでしょう。我々としては、「5年や10年先のAIネイティブな教育機関とは何か」を定義しながらプロダクトを作っていかなければいけない、というぐらいのトランスフォーメーションが進んでいると感じています。大学の学長さんや学部長さんなど、月2-300人の方とお話しさせていただいていますが、本当に大きな動きを感じます。
鈴木:子どもをもつ親としての立場からも、AI時代の子どもの教育は大きく変わっていくだろうという感覚があります。そのあたり、船瀬さんはどう思いますか?
船瀬:今までの教育システムで求められてきたスキルが、10年後や20年後も同じかというとそうではないでしょうね。自分で何かを体験することやコミュニケーションといった、昔からある当たり前の「社会でどう生きていくか」がより重要になっていくと感じます。あとは「GRIT(やり抜く力)」も。AIは延々と稼働してくれますが、人間側も問いを投げ続けたり、意思決定をして最後までやり切ったりする必要がある。その胆力をどう磨くかというのも、教育として難しい課題だなと思います。
「日本発・アジア発で、グローバルへ」それぞれの海外展開
鈴木:最後に、それぞれの今後の展開についてお伺いします。まずEdtechについて。個人的には日本市場もまだまだ大きいと思っていますが、一部では、人口減少を理由にシュリンクするマーケットではないかという見方もあります。このギャップについて、どう考えますか?
本間:少子化は進みつつも、一人ひとりの子どもにかける教育費は上がっており、市場自体は微増しています。次の10年くらいは、この傾向が続くと考えています。その中で、我々のようなテクノロジーがどれだけ貢献できるかについては、これまでのEdTechが教育費全体に占める割合は1%にも満たなかったと思います。それがAIになってくると劇的に変わり、4-5倍のお金をいただけるようになると考えています。なぜなら、これまで人間の先生がリソース不足でできていなかった部分をAIが巻き取って、提供できなかったサービスが提供できるようになるわけですから、その分のシェアが売上になる。マーケット自体はシュリンクしておらず、その中での我々のシェアは増え、市場はまだまだ大きくなると考えています。
東南アジアは、今はまだ市場として大きくないですが、人口が圧倒的に多く、教育を投資と見てお金をかける中産階級がものすごく増えています。インドネシアは一学年500万人、フィリピンは200万人、ベトナムは150万人ほどいます。日本の新生児が今60-70万人なので、相当な数の子どもたちがいます。日本と東南アジアには非常に大きなマーケットが広がっていると思っています。
鈴木:今後のグローバル展開や野望についても教えてください。
本間:特に基礎教育に関して、日本は世界一だと思っています。数学や理科などの力を平均的に高めていく教育システムは、PISAのスコアでもトップレベルです。実際にフィリピンの先生方を日本の学校にお招きすると、皆さん感銘を受けて帰られます。そこに我々がプロダクトを提供していくことで、非常に高い親和性を生み出せると考えています。ベトナムの教育システムも日本にすごく似ているので、AIやDXを使って効率を高めていくというナラティブは全く一緒です。なので、日本のプロダクトはかなり親和性高く持っていけると思っています。
今後の展開ですが、他の東南アジア諸国からも問い合わせが非常に増えています。私たちのAIチューターやAI採点を、現地のプロダクトと組み合わせてクロスセルできないかといった話がよく来ます。AI時代になり、国やセグメントが変わってもワンプロダクトで一気に展開できるようになったのは大きな変化です。これまで以上に多国籍展開を進めていきたいですね。最近ではウズベキスタンや中東などからも問い合わせが来ていて、グローバルにもっとアグレッシブに攻めていきたいと思っています。
鈴木:続いて船瀬さん。9月にプレローンチした『PathOne』について、皆さんが履きたくなるようなお話をお願いします。
船瀬:特徴は先ほどお伝えした通り「芝生の上を裸足で歩く感覚」で、指がしっかり動かせる作りになっています。現代の多くのシューズは、つま先が反り上がった「トウスプリング」という構造で重心移動を楽にしていますが、我々のシューズはあえてトウスプリングをあまり使っていません。あとは、ソールの厚さ。世の中には、ソールが非常に薄い「ベアフットシューズ」というカテゴリーと、トレンドの「厚底シューズ」がありますが、その中間にあたる13ミリぐらいのソールのシューズが本当になかったんです。それで実際に作ってみたら、十分なクッション性を確保しながらも、指が動かせて接地感覚が感じられるものになったので、自信を持って送り出しました。
市場にないということは、参入障壁の高さもあるのだと考えていますが、そこに新たな価値を生み出していきたいです。最初からグローバル市場を目指していますが、インドネシアのような国でもシューズ市場は十分に大きいですし、日本のブランドは東南アジアでも人気があるので、海外展開との相性も良いと感じています。実際、オンラインではすでに10ヵ国でローンチしていますが、香港、台湾、シンガポールなどからすでに注文が入っています。コンセプトと写真だけで買ってもらえるというのは、非常にチャンスを感じていますね。
鈴木:日本発のものづくりのクオリティや信頼感は、東南アジアに住んでいても実感する部分なので、グローバルに展開しやすいプロダクトですよね。すでに反響があるというのは嬉しいサプライズです。今後の海外展開はどのように考えていますか?
船瀬:国内では、今は購入してくださる方と直接お話できる貴重な機会を大切にし、リアルな声を次の製品開発に活かしていきたいです。海外については、これから注力国を定めて展示会やポップアップショップを開くなど、日本と同じようによりハンズオンで事業展開していく予定です。来月にはイギリスの展示会にも行きます。ベアフットというカテゴリーの展示会は欧米にかなりあるので、自分たちの製品がどういうリアクションをされるか見てきたいと思っています。海外では新興ブランドがたくさん出ているので、どんどん積極的にやっていかないといけないと思っています。
鈴木:ジェネシア・ベンチャーズは、4号ファンドから改めて『Asia Origin』というテーマを掲げて投資活動をしています。これは、日本発のみならずアジア発でグローバルにインパクトを生み出す事業や起業家を応援したいという思いを込めたテーマです。本間さんと船瀬さんは、まさに「Asia Origin」なチャレンジをされている起業家です。今回のお話にも、とてもわくわくしました。引き続きよろしくお願いします。ありがとうございました。
本間・船瀬:ありがとうございました。Ayo!!
全編はPodcastでお楽しみください💁♂️💁♀️:


