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事業のネタ帳 #15 マッチングビジネスの事業機会と進化の方向性についての考察

IDEA

目次

  1. はじめに
  2. 人材紹介サービスの概観
  3. アドテクノロジーの概観
  4. マッチングビジネスの進化の方向性

1.はじめに

インターネットの普及によって私たちが大きな恩恵を受けていることのひとつに、世の中に存在しているあらゆる情報の可視化が進み、情報の非対称性が減少していることに伴う、人と人・企業と企業・人と企業・人と情報・企業と情報などの出会い(マッチング)の増加があると思います。

インターネットが普及する前は、出会うことは疎か、気づくことすらなかったであろう自分と同じ興味や関心を持つ仲間との出会いや、新たなクライアントやビジネスパートナーとの出会いは、私たちの生活はもちろん、様々な産業活動を滑らかにする上で欠かせない役割であり、マッチングビジネスが社会にもたらす恩恵はとても大きいと感じています。

本稿では、産業DXの領域における起業を検討している方々や、産業DXをミッションとされているスタートアップや大企業の方々に向けて、マッチングビジネスとしての歴史が長く、多様な進化を遂げている人材紹介ビジネスからマッチングの形態を俯瞰するとともに、マッチングのプロセスが直接取引や自動化まで進化を遂げているアドテクノロジー領域を俯瞰し、それらを一般化することを通じて、様々な産業におけるマッチングビジネスの事業機会と進化の方向性について考察したいと思います。

2.人材紹介サービスの概観

人(求職者)と企業(求人企業)のマッチング(出会い)を生み出す人材紹介サービスは、依然オフラインをベースとした人材紹介サービスの存在感が大きいのも事実ですが、ここでは主にインターネットを活用した様々な人材紹介サービスを見ていきたいと思います。

・検索マッチング型人材紹介サービス
インターネットが普及する前は、企業が雑誌や新聞などの紙媒体に求人広告を掲載し、求職者がそれらを購入・閲覧して個別に電話などでエントリーするのが一般的でしたが、インターネットの普及により、それらの紙媒体をリプレイスする形で、求職者がネット上に掲載された求人情報を検索し、ネット上でエントリーできるようになったことで急拡大したのが検索マッチング型人材紹介サービスです。

言わばインターネットを活用した人材紹介サービスの老舗ともいえる、リクナビマイナビエン転職などの検索マッチング型人材紹介サービスですが、求職者からすれば、膨大な企業の中から自分の求める条件に合った企業を見つけられると同時に、少ない工数で多数の企業にエントリーでき、求人企業からすれば、多くの求職者からエントリーを受けられるのが検索マッチング型人材紹介サイトの特徴です。その一方で、求職者からすると、1社1社しっかり内容を確認してエントリーするというよりは、興味のある事業領域やよく似た企業に数多くエントリーする形になりやすいこと、また求人企業からすると、数多くの求職者からエントリーが届くため、どちらかと言えば出会いの質よりも出会いの多さを重視する際に適したマッチングの形態になっています。

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・スカウト型人材紹介サービス
求職者がプロフィールと自己PRを作成しておくことで、求人企業や人材エージェントが求職者のプロフィールや自己PRをチェックし、気になる求職者に面談オファー(スカウト)するマッチングの形態で、ビズリーチオファーボックスなどがこの形態にあたります。また、近年では大企業やスタートアップも優秀な求職者の採用のためにスカウト型人材紹介サービスを積極的に活用しており、マーケットが大きく拡大しています。

スカウト型人材紹介サービスは、求人企業側や人材エージェント側から求職者に面談オファー(スカウト)するため、検索マッチング型人材紹介サービスよりも採用に至りやすい傾向にあり、日々仕事や勉強などが忙しくて就職(転職)活動の時間を十分に捻出するのが難しい求職者や、出会いの多さよりも出会いの質を重視する求職者にとって欠かせない、質の高い出会いが得やすいマッチングの形態になっています。

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・プラットフォーム型人材紹介サービス
人材業界はとてもフラグメンテッドな業界で、有料民営職業紹介事業所(いわゆる人材紹介会社)は全国に約3万くらい存在しており、現在でも増加し続けていると言われています。このことは、大手やカテゴリーキラーの人材紹介会社を除くと、求職者・求人企業の情報が小口分散していることを表しており、人材紹介会社から得られる情報は、彼らが持っている求職者・求人企業の情報に限定されるため、求職者・求人企業双方にとって機会損失を生みやすい状況があります。プラットフォーム型人材紹介サービスは、これらの状況を解決すべく、人材紹介会社が持っている求職者・求人企業の情報をプラットフォームとして集約・共有し、これらのデータを人材紹介会社が活用できるようにすることで出会いの確率を高めており、Circus AgentJoBins47 Agentなどがそれぞれ異なる特色や強みを持ちながら、このマッチングの形態を取ることでマーケットを大きく拡大させています。

また、リクルートダイレクトスカウトのように、検索マッチング型人材紹介サービスの提供を通じて、多くの求職者情報を保有している大手人材紹介会社が、彼らが保有している求職者情報を人材紹介会社に有料で開放する流れ(検索マッチング型人材紹介サービスからプラットフォーム型人材紹介サービスに参入する流れ)が出てきているのも興味深い動きです。

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以上を纏めると、人材紹介サービスは

・検索マッチング型人材紹介サービスは、主に紙媒体をデジタル化することによってマーケットを拡大させた

・スカウト型人材紹介サービスは、提供価値を出会いの多さから出会いの質に転化させることで後発ながらマーケットを拡大させた

・プラットフォーム型人材紹介サービスは、人材業界がフラグメンテッドな業界構造であることから、人材紹介会社が持っている求職者・求人企業の情報をプラットフォームとして集約・共有し、これらのデータを人材紹介会社が活用できるようにすることでマーケットを拡大させた

といった進化を遂げており、他の産業におけるマッチングビジネスの事業機会や進化の方向性を考察する上では、その産業におけるデジタル化の進み具合や需給バランス(買い手市場なのか売り手市場なのか)、及び業界構造(独占的市場なのかフラグメンテッドなのか)などを俯瞰することによってマッチングの形態を適正にデザインすることが大切だと感じています。

3.アドテクノロジーの概観

次に、アドテクノロジーの概観を見てみたいと思います。

アドテクノロジーの概観に触れる理由は、広告ビジネスの本質は人と情報のマッチングだと考えているからです。

以下はジェネシアの相良が執筆した記事(DXの「はしり」)からの抜粋です。
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人とモノ、人とサービス、人とブランド、といった具合に、告知の対象になる人と告知したい商品やブランドを結びつける役割を、広告(とその配信面としてのメディア)は担っています。

そんな広告ビジネスを産業としての視座で振り返ってみると、これまで大きく三つの段階を経て進化を遂げてきていることが分かります。

まず第一に、一般大衆に対して新聞や雑誌、テレビといったマスメディアを通じて広く情報を送り届けるという原初的な形態を取っていたオフライン取引の時代。第二に、インターネットの普及によってWebメディアやモバイルアプリが新たな媒体となって、広告取引手法の多様化を促した「データ化」と「可測化」の時代。そして最後に、広告主と媒体双方の成果向上をサポートするテクノロジーの登場により、取引主体のエンパワーメントと仲介者の介在価値変容が促進された「直接取引」と「自動化」の時代です。
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ここで注目すべきは、アドテクノロジー領域においては、「データ化」「可視化」に留まることなく、「直接取引」「自動化」まで進化を遂げているという事実です。アドテクノロジーの本質は、主にはユーザー属性やユーザーの行動・思考データと、膨大にあるデジタルメディアとの最適なマッチングであり、「データ化」「可視化」がしやすい情報であること、及びマッチングのプロセスにおけるテクノロジーの介在価値が大きいことから、「直接取引」「自動化」まで進化を遂げていると考えています。

4.マッチングビジネスの進化の方向性

ここまで人材紹介サービスとアドテクノロジーといった2つの事業領域のマッチングの形態を俯瞰してきましたが、これらの事例からどのような一般化ができるでしょうか。

改めてマッチングの本質を考えると、サプライサイドとデマンドサイド双方が持っている情報の「データ化」「可視化」が進み、情報の非対称性が減少するほど、マッチングがより滑らかになっていく。もっと具体的に言えば、「直接取引」「自動化」まで進化する可能性を秘めていると言えると思います。また、今後あらゆる産業のデジタル・トランスフォーメーションや、IoT・ブロックチェーンの社会実装が進む中で、私たちの生活や産業活動における「データ化」「可視化」される範囲が拡大していくのはもちろん、データの信憑性が増していく(データの改竄が難しくなっていく)といった時代の変化を勘案すると、様々な産業におけるマッチングビジネスの未来を考察する上で、「データ化」「可視化」が進み、「直接取引」「自動化」まで進化を遂げているアドテクノロジーの歴史から得られる示唆はとても大きいと考えています(車の買い手と売り手とのマッチング(車のC2C販売)を一例に挙げると、取引履歴・修理履歴・所有者や購入者の証明などがデジタルベースで実現すると、「直接取引」「自動化」まで進み、業界構造を大きく塗り替える可能性があると考えています)。

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また、このような時代の変化の中で、マッチング対象(例えば、人材紹介サービスで言えば”求職者”と”求人企業”)が持つ情報を直接的に「データ化」「可視化」することが出来るようになれば、これまでマッチングのプロセスにおいて情報の伝達をしていた仲介プレイヤーの必要性がなくなり、多重取引構造の解消も合わせて進むと考えています(→DXの型はこちら)。

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とても複雑で、一般化・類型化が難しいマッチングビジネスですが、「直接取引」「自動化」の余地や、多重取引構造の解消など、進化の余白はとても大きく、様々な産業におけるデジタル化のフェーズを的確に捉え、適切な形で参入出来れば、マーケットポテンシャルはとても大きいと考えています。もっと深く考えるべき要素や、加えるべき視点はたくさんあると思いますが、思考を整理する際の参考にしていただければと思います。

筆者

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