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COO Night Vol.2 in IVS  事業戦略は組織図に表れる 注目企業のCxOが語るハイパーグロースの裏側|Players by Genesia.

STORY

2020年末に発足した、『COO Night』。

日本のスタートアップエコシステムのステージを一段上のレベルに引き上げていくには何がセンターピンになるかということを考えたときに、「変化や混沌を楽しめる経営レイヤーのビジネスパーソンの層が厚くなること」が重要なドライバーになる、その役割にはまさにCOO(Chief Operating Officer/最高執行責任者)というポジションが該当するのではないかという仮説のもと、とことんリアルな情報・コンテンツの集積場を作っていきたいという想いを背景にスタートしました。

<Vol.1の記事はこちら>
COO Night Vol.1[前編] 経験の年輪はコピーできない -事業家という手段と、その役割について-|Players by Genesia.
COO Night Vol.1[後編] 経験の年輪はコピーできない -事業家という手段と、その役割について-|Players by Genesia.

今回、COO Night Vol.2は、2021年3月18日に開催された『IVS(Infinity Ventures Summit)SPRING2021』のセッションの場をお借りする運びとなりました。

テーマは、「事業戦略と組織、そして人」。

-非連続なイノベーションと継続的な改善を生み出す、起業=組織の成長の姿とは?-

ということで今回は、ジェネシア・ベンチャーズのInvestment Manager・相良がモデレーターとなり、急成長企業のまさにハイパーグロースを経験している“Players”が登壇したイベント「COO Night Vol.2 in IVS」のレポートをお届けします。

登壇者

はじめに:COO Nightのミッション

相良:

本日も敬愛するお三方にお集まりいただきました。ありがとうございます。
それでは、イントロダクションに入ってきたいと思いますが、まずこのセッションは、もともと昨年末に福島さんと開催を始めた『COO Night』というイベントを、今回はIVSさんとタイアップさせていただいたものです。そのCOO Nightを始めたきっかけとしては、今個人的に課題として考えているのが、スタートアップ界隈において、目指すべきビジョンや世界観の重要性とか、その先の、事業計画に落とし込まれた後のKPIやメトリクスについての情報ナレッジは広く普及していると感じる一方で、そのビジョンとメトリクスの中間地点を埋める情報ナレッジというのはそこまで多く流通していないと感じたことです。この間を埋めるためのナレッジシェアやゆるやかなコミュニティづくりの場ができればと思い、始めたという経緯があります。
プロジェクトのミッションとしては、共創と深化/具体と抽象、こんなバリューを掲げて開催をしています。対象としている参加者・登壇者・視聴者としては、あらゆる企業の現職のCOOの方、あるいはCOOと同じような視点や目線を持ったCxOの方、また、キャリアの選択肢としてCOOを志向しているビジネスパーソン、非連続と再現性の間で日々悩み解決策を探しているような方々を巻き込みながら、一緒に場づくりをしていきたいと考えています。イベントは、四半期に一回くらいの開催をイメージしています。こんなテーマで話が聞きたい、こんな人の話が聞きたい、といったリクエストもお待ちしています。
ということで、セッションの本題に入っていきたいと思いますが、今日のテーマとしては、「事業戦略と組織戦略の有機的な連動性」というところを扱っていきたいと思ってまして、お三方からも前もって、入社当時と現在の組織図を持ち寄っていただいています。それらを見ながら、どういった経緯で、なぜその組織体制になったのか、ということを深堀りを前半パートで、そして、その組織体制の練度や強度をどう高めて、どう生産性を維持・向上させているのか、ということを後半パートで、それぞれ触れていきたいと思っています。

相良:

では、まずは登壇者の方の自己紹介からお願いします。

福島:

ラクスルの福島です。2015年なので、5年半くらい前にラクスルに入社しました。当時の組織は30名、売上は30億円くらいのタイミングでした。そして、現在が、300名、300億円くらいの規模になり、そのグロースステージを経験してきました。私自身は、サプライチェーンなどヨコの機能部門を担当したり、タテの事業部長を担ったり、全体のポートフォリオマネジメントをしたり、いろんな役割をしながら、組織のあり方について考えてきたという立場です。よろしくお願いします。

倉橋:

SmartHRでCOOを務めています、倉橋です。私は約4年前に、当時25人くらいだったSmartHRに、最初はCOO候補として入って、半年後にCOOになりました。この4年近くで、組織は14倍になっている状況です。SmartHRというのは人事労務を効率化するクラウドでして、こういった組織図を簡単に出力できる機能もある、とてもいいサービスです。よろしくお願いします。

佐久間:

ユーザベースの佐久間と申します。ユーザベースに入社したのは、だいたい8年前ですね。30人くらいの、混乱した組織でしたね。私はいちメンバーとして入って、半年後くらいから日本事業の担当というかたちになってCOOっぽいことをしばらくやっていたり、それからCOOというよりは新しい事業を立ち上げに専念する期間があったりして、今年から共同で代表をやっている感じです。よろしくお願いします。

非連続なイノベーションと継続的な改善:ラクスル

相良:

ありがとうございます。では、前半パートでは、持ち寄っていただいた組織図を見ながらいろいろと聞いていければと思っています。
ではまず、福島さんからいきたいと思います。左の組織図が2015年ですから6年ほど前ですね。当時はまだ30人ほどのラクスルに参画されたということですね。事業としては、祖業の印刷事業しか存在していなかった時期ですかね?

福島:

そうですね、チラシ・名刺など、紙への印刷のラクスルという単体事業だった頃のラクスルです。

相良:

CEOの松本さん直下に各機能ユニットが紐づいていたのですね。ここに、福島さんがどんなミッションを持って参画されたのかを伺ってもいいですか?

福島:

30人規模のスタートアップは、組織図もあってないようなもの。まだOrganizationじゃなくて、ファウンダーを中心にしたワンチームという感じでしたね。当時は、グロースがメインだったんですけど、加えてサプライも大事になってきたので、そのサプライサイドの責任者という立ち位置で入っていきました。
現在は右のようになっているんですが、5年で一気に変化したわけではないので、フェーズを分けてお話します。まず、フェーズ0の最初の図が「組織じゃなくてチームだった」ときです。次に、大型調達をしてグロースの型ができて、ハイパーグロースをしていくフェーズ1がありました。縦のリーダーシップはいたので、横の機能部をちゃんと作って走り切ったのがフェーズ1ですね。
その次に、100億がみえてきたところで、チラシの一本足じゃなくて、ノベルティ・シールなど、印刷のドメインの染み出しの事業開発を加速化するために、タテのビジネスユニットを立てて、ヨコの機能部とのマトリックスに進化したのがフェーズ2です。
そこから、ラクスル事業が200億円くらいまで伸びてきた時に、縦も横もマトリックスでガチっと固めたら、非連続を起こしにくい組織になって、新しい成長やチャレンジが少なくなってしまったので、PROJECTというかたちで、フェーズ0のチーム時代のよかったカルチャーをちゃんと別で持ち続けようとなりました。非連続なイノベーションと持続的な改善を組織に両方持たせるトライをしていたのが、このフェーズ3ですね。
今チャレンジしているのは次のフェーズ4で、ラクスル・ノバセル・ハコベルと産業単位でどんどんポートフォリオを作っていく中で、コーポレート機能は事業本部横断で効率化するけど、事業の推進力や産業別の課題については縦の本部が向き合えるかたちにするという、右のような組織にチャレンジをしています。
こんな4つくらいのステップを踏んだのが、ラクスルのこの5年くらいのオーバービューかなと思ってます。

相良:

人事総務・経営管理・企画というところは全事業に跨って横に伸びているのに対して、オペレーション・プロダクト開発・システム開発というのは各事業部との掛け算になっている、そんな構図ですね。

福島:

そうですね。コーポレート機能は事業依存しないかたちで全体効率を目指し、プロダクト・テック・オペレーションは、事業本部・産業単位でまとめて、ベクトルを合わせていくけれど、BU(Business Unit)には分けずに事業本部単位で効率化していく。同時に、ハイパーグロースを引っ張るのはタテのリーダーシップなので、タテヨコのマトリックスにおいて、タテの箱が前面に出る組織の作り方をしています。

相良:

そうなると、このHRBPというのも、縦のグロースを人事的な側面からサポートしているようなミッションになるんでしょうか?

福島:

タテヨコを整理してみて、一番歪みが起きたのが、コーポレート機能の採用・人事でした。採用・人事は事業のドライバーでもあり、事業側から「そんな横串で効率化してもらっては困る」「事業として持ちたい」という要求があったので、組織図上は、人事機能をヨコとしての位置づけながら、HRBPという役割は縦の事業本部に貢献していく工夫をしています。

相良:

HRBPは事業ごとに一人ずつということですか?

福島:

はい、各事業本部に3人いますね。

相良:

ちなみに、今ラクスル・ノバセル・ハコベルと大きく3つの事業を手掛けられているかと思うのですが、祖業のラクスルから第二の矢・第三の矢を作っていく、事業を複線化するということを考えた時に、どういった経緯・議論を経てそこに至ったかというところも触れていただいていいですか?

福島:

ラクスルはB2Bプラットフォームの集合体で、会社としては30%の率成長を掲げています。そのためには、次々と成長する事業を作り続けなきゃいけない宿命を背負ています。その実現には、事業本部内でも染み出しの周辺領域の開発も必要ですし、一方で、大きな産業に対して、新たな事業本部を立てていくというトライアルも同時に必要になってくる。そういう中で、オーナーシップをきちんと分けて、複線化にトライしていきたいと思っていて、その背景の中でこういう組織になっています。

新機能開発を進める、PMMグループ:SmartHR

相良:

それでは、続いてSmartHRの倉橋さんに伺っていきたいと思います。倉橋さんは2017年の7月入社ということなので、今から3年半ほど前ですかね。当時は25人ほどの組織だったということで、CEOとCPOを中心にユニットが大きく二つに分かれている感じですね。入社のタイミングでは、COOとして入ったというよりは、ビジネス全般を任せたいけど、タイトルは入ってから決めようというかたちでジョインした経緯だったんですよね。

倉橋:

うちの会社は、今もそうなんですけど、パラシュート採用はしないんです。例えば、マーケティング責任者の方も1年半くらい前に入っていただいたんですけど、その方も「候補」として入ってこられたんですね。それで、実際に本人としても活躍できて、周りもそれが心地よいと感じられて、みんながOKとなった時にやっと正式にタイトルがつく、というようなやり方を今もやっているので、私も最初は名刺に何も書いていないという状態で入って、半年後に正式にCOOになりました。

相良:

当時、CEOの宮田さんが持たれていた、マーケティング・セールス・CSなどビジネスに関するフロントのユニットを徐々に引き継いでいったというイメージですか?

倉橋:

そうです。

相良:

僕がこの初期の組織図を見て少し意外だったのが、宮田さんはプロダクト作りに強みを持たれている方だと思うので、初期はおそらくプロダクト側もご自身で見られていたと思うんですけど、割と早いタイミングからCPOを置かれているという点でした。これは、宮田さんがCEOのミッションに集中するために、強みはあれど、あえて切り出していたのですか?

倉橋:

もともとCEOの宮田はWEBディレクターだったので、プロダクトを作る方が好きだったんですけど、CPOの内藤は共同創業者なので二人で始めたかたちですね。ただたしかに、私が入る前は宮田はプロダクト側も見ていたらしいんですけど、何かのきっかけで忙しくなってプロダクト側の定例ミーティングに出なくなったら、むしろ議論が活性化していいものができるようになったということがあって手放したらしいんですね。それで、その成功体験をビジネス側でもやりたいんだって言って、私が呼ばれた感じです。

相良:

現在は14倍のグロース、350人体制というところで、中でも倉橋さんのグループが一番多くなってますが、今倉橋さんの管掌で何名くらいをマネジメントされているんですか?

倉橋:

だいたい200人くらいのチームですね。

相良:

SmartHRは、ラクスルやユーザベースと比べるとシンプルに1プロダクトで人事労務管理のサービスをグロースさせるところに重きを置きつつ、大きめの新機能をいくつか追加・実装されていたりとか、右下にあるようにグループ会社をいくつか立てて第二・第三の矢の仕込みをされていたりするのが印象的です。例えば、さっき冒頭でご紹介いただいた組織図作成に関する機能だとか従業員サーベイだとか、人事労務の領域から派生的に染み出してくるような機能っていうのを最近けっこう積極的に開発されているなとお見受けするんですが、先ほど福島さんにしたのと同じ質問で、社内でどういった経緯で新機能開発などの意思決定をされるかというところをお伺いしてもいいですか?

倉橋:

新機能は、COO配下のPMMグループで起案します。PMMは、プロダクト・マーケティング・マネジメントの略なんですけど、一般的な企業だとサービス企画とかプロダクト企画とかにあたるような部署ですね。役割としては、PM(プロダクト・マネージャー)とペアになって働きます。PMMの仕事は、マーケットのニーズを具体化してPMに伝えるというのがまずあって、それをPMがより詳細な要件定義にしてワイヤーフレームを作ったりしながらプロダクトにして開発をしてリリースまで担保するかたちです。そして、「この機能がリリースされますよ」となったら、今度はまたPMMに役割が戻ってきて、例えばマーケチームに「こんな感じで広告を打ってください」とか、セールスに「こういうところが推しポイントなので、強調して売ってきてください」とか、CSに「こういう機能なので、こういうところまで触ってもらって、こういうところは危ないのでちゃんとオンボーディングしてください」とか、差配します。というように、PMMがマーケットを見て(新機能開発に進める)ということもありますし、あとは一番大きいのはユーザーさんの声ですね。こういう機能がほしいという声を普段からいっぱい集めていて、単純な機能改善だったらそれはそのままチケットを切って手をつけますし、今回の組織図作成機能みたいなものでいうと、けっこう要望が貯まってきたからそろそろ本腰入れて企画しようかとなって、そもそもこの機能作ってビジネス的に意味あるんだっけ?というところからPMMが企画を練って、月に一回のロードマップを揉む会みたいなところで、CTOも含めて話して決める、みたいなかたちですね。

相良:

PMMグループはいつぐらいに立ち上がった組織なんですか?

倉橋:

1年くらい前ですね。それまでは、今のPMMの役割をみんなが手を伸ばして拾ってるっていう感じでした。なので、新機能の案も、それまでは誰からでも出てきてましたね。

相良:

SaaS企業でよくあるのは、セールスやCSなど、お客様と対峙しているチームから要望が上がってきて、この機能があればいくら受注できるんだ!みたいなところからプロダクトチームに持ち込まれて、優先順位をつけて開発に落としてリリース、のようなケースかなと思うんですけど、初期的にはそんな感じだったんですかね?

倉橋:

そうですね。

シンプルとオープン:ユーザベース

相良:

それでは、ユーザベースの佐久間さんにもお伺いしていきます。佐久間さんが入社されたのは2013年ということで、8年ほど前ですね。本当に創業期というか創業初期ですね。

佐久間:

シリーズAくらいですね。

相良:

なるほど、アーリー期ですね。当時はSPEEDAが収益の柱ですよね。NewsPicksもまだない頃ですね。つまり、1プロダクトで、チーム一丸となってやっていた時期ですかね。

FORCAS、INITIALの二事業については2021年4月1日よりユーザベース本体に統合。それに伴い、新たに事業CEOを設置することを発表(公開日:2021年4月1日)
佐久間:

ユーザベースは、特に創業者の新野が、オープンでフラットで自律的な組織にしたいという想いがめちゃくちゃ強くて、そこは今でも我々の強みだと思いますし、7Valuesというものでも「自由主義でいこう」と掲げてるんですけど、本当に自由すぎるな・・と私は最初、本当にびっくりしました。まず、各チームのミッションすらあまり定義されていない。あるタスクがチームAのものなのかチームBのものなのかもよくわからないし、かつチームAとBを兼任している人もいるし、リーダーもいないという状況で、すごいな・・と思ってました。ちなみに、私が入るちょっと前まで経営会議もなかったです。なので、私はチーム全部のミーティングに出たりとか、そこからタスクを拾ったりとか、たぶん福島さんや倉橋さんもされていたと思うんですけど、まず各チームの状況を把握して、そこからミッションを定義して組織図を作るってことをやった記憶がありますね。
それから1年後くらいに、リーダーを置きました。経営会議の出席者しか、チームをまたぐ情報をオープンにすることができないので、情報共有のコストがかかって、組織の階層を無くすと逆にオープンにならないということがわかったんです。あとは、次のリーダーが育たないという問題もありました。ここから三階層の組織にしました。シンプルな三階層の組織というのが本当に経営しやすいですね。

相良:

経営、ミドル、現場、という三段階ということですね。

佐久間:

ここはいろいろなご意見があるかとは思いますが、個人的には、階層を増やすと組織がサイロ化して横の情報共有が滞ったり失敗しやすいので、三階層のままどこまでいけるのかっていうのがチャレンジでしたね。

相良:

情報共有というキーワードが出ましたが、ユーザベースではオープンコミュニケーションをすごく重視されたバリューを掲げられてると認識しています。社内のコミュニケーションをオープンにするということを具体的にどう実践されているかを教えていただけますか?

佐久間:

noteにも書いたんですけど、我々はOKRを運用していて、OKRを決めていく過程もオープンに公開しています。これはけっこう勇気がいることだったんですけど・・普通リーダーってえらそうにしたいというか、自信をもって目標をバーンと示したいじゃないですか、悩んでる姿ってあんまり見せたくないじゃないですか、生煮えのプレゼントかしたくないじゃないですか。それをあえて、生煮えの状態で次期の目標とかをプレゼンして、悩みも共有する。今だと、一番多くの人が関わるユーザベースOKRっていうものがあるんですけど、それすらも生煮えの状態で、これどう?みたいに公開して議論していく。メインで議論するのは10人くらいですが、チャットでもたくさん意見が来ますし、質問にも後で全部答えるので、けっこういいんじゃないかなと思っていますね。目標をみんなで納得して決めていくってことですね。もちろん最後に決めきるところは一人の人(リーダー)が当然やるんですけど、決める過程を共有するプロセスはいいかなと思っています。

相良:

SmartHRも共通するところがありそうですね。

倉橋:

そうですね、うちもオープンにできるものはすべてオープンにしています。していないのはたぶん人事的な意思決定くらいです。うちは経営会議を一週間に一回やってるんですけど、議事録もZoomのURLも完全にオープンなので、必須の参加者は十数人なんですけど、Zoomの参加者を見ると50人くらいいたりして、BGM変わりに聴きながら仕事してくれてたりしますし、社内のKPIも全部貼りだしていたり、預金残高も全社員が見られるくらい、オープンを徹底しています。フルオープンが楽なんですよね。マネジメントをしていて一番嫌な時が、NOって言わなくちゃいけない時だと思うんですね。やる気のある人がやるって言ったらやらせてあげたいのが基本的な心情だし、その方が絶対にいい結果が出ると思うんですけど、たまにどうしてもNOって言わなくちゃいけない時がある。例えば、資金調達する前の時期にTV CMやりたいっていう声が上がったんですけど、預金残高が共有できているので「いまは発注できないです」って説明しやすいんです。逆に、資金調達のスケジュールも、どこどこのファンドからこういうオファーが来たとかもオープンにしたら、みんな見てるんですよね。それで、着金のスケジュールに合わせて代理店と話し始めていたりして。そんな感じで、オープンであることが楽ですね。説明コストも下がるし、自律駆動も生まれるので。

相良:

倉橋さん、ありがとうございます。
では、もう一度ユーザベースの佐久間さんにお話を戻して、右の組織図の気になるところをいろいろ聞いていきたいと思います。まず今、プロダクトがSPEEDAからアルファドライブまで6つあるかなと思うんですけど、開発やセールスマーケティングも含むフロントの機能部隊っていうのが、バーティカルにユニットを切っているというよりはシェアード型で運営されているのが一つの特徴かなと思っています。

佐久間:

もともとはそれぞれのプロダクトが独立していて、私もそっちの方がすごくやりやすくかったんですね。全部に目が届くし失敗したら自分のせいだっていう、やっぱり事業を立ち上げる時にはそういう環境が不可欠だなとは正直今でも思うんです。ただ、昨年に私がSaaS事業担当取締役になって、SPEEDAも含めて3事業を担当することになりまして。まぁ、実際やっていることはちょっと重複していたし、たまたま私は3事業ともリーダーだったので、私の(1事業にコミットするという)起業家精神が害されることはないし、とりあえず大胆にやってみようってことで、やってみたら、めちゃくちゃよかったんですよね。一番よかったのは、エンジニアのところですね。やっぱり、Agile at Scaleというか、エンジニア組織にスケーラビリティと流動性を持たせられるのってめちゃくちゃ大きくて。新たにこの機能を立ち上げるっていうときに、短期間でかなり大きな機能を作れたりとか。例えば、MIMIRは去年4月に完全子会社にした会社なんですけど、この会社にはエンジニアはいなかったんですね。エキスパートリサーチ事業という、専門家の知見をマッチングさせる事業を、データベースはあるけど、手動でやっていた。そこに対して、私たちがエンジニアリソースを共通化していたからこそ、一気に大量のエンジニアを注入して、そのエキスパートリサーチ事業をプロダクト化した。それで、今SPEEDAとの共通機能でFLASH Opinionというのがあるんですけど、例えばバイデン政権に変わったことで半導体セクターにどんな影響があるのか?みたいなことってパッとはわからないじゃないですか、そういうことを詳しい人にすぐ訊ける(という機能)。エキスパートリサーチって専門家とのインタビューのマッチングのコストがすごく高いんですよね。下手したら何日もかかる、みたいなスケジューリングとか。そこを、我々のFLASH Opinionだと、例えば2、3時間とかで分厚い回答が10人の専門家から集まったりするんです。それで十分だし、次にインタビューする時も、そこで知見を披露してもらっている人から選べるからハズレがないんですよ。これは手動では不可能で、そういう機能を三ヶ月くらいで作れたので、そこは、アジャイルにリソースを動かせるエンジニア組織あってこそだなという、そういう成功体験もあります。当然、失敗体験もいろいろあるんですけどね。

人が先か、組織の最適化が先か

相良:

事業の戦略やリソース配分も含めて今期はここを注力するっていう方針と、実際のエンジニアリソースやセールスリソースなども含めて差配をしていくプロセスって具体的にどういう時間軸でどういう工程を踏んでやられているんですか?

佐久間:

全部OKRに連動させる三ヶ月周期ですね。さっきの、FLASH Opinionを立ち上げるプロジェクトも、当然エンジニアだけじゃなくてコンテンツやデザインやマーケも絡むので、この期間はこれに注力するぞ!と宣言する。そんな感じですね。

相良:

OKRが経営システムとしてかなり機能しているんですね。

佐久間:

私が事業リーダーを兼任しているからこそできている部分は当然あると思っていて、ただ、それだとあまり先がないですし、いろんなCEOをたくさん生んでいきたいので、まさにリソースの最適配分と起業家精神の両立というのが我々のすごく大きなテーマなんですよね。

福島:

おっしゃる通り、佐久間さんだからできるっていう話はあるじゃないですか。その時に、組織図と人材の配置のどっちを先に考えるかというテーマがあります。初期は、明らかに組織図よりも人材が先で、ヒトに役割を持たせてグロースしていくというかたちだと思うんですけど、組織が大きくなってきた時には、欧米みたいに組織の箱を決めてから人を決めるっていう王道に戻るのか、そこのバランスというか、人と組織の関係ってユーザベースさんはどうマネジされているんですか?

佐久間:

今でもけっこう人が先ですね。さっき言ったようなことができるのも、我々のCTOに林という人間がいて、XPを厳格に実践した組織運営をしていて、だからこそエンジニアリソースの柔軟性が生まれているというか、スケールするエンジニア組織を作れているんですよね。彼がいなかったらエンジニア組織を統合していないと思います。・・というような話がいくつかあって、けっこう人に依存してますね。

福島:

マネジメントチームが違えば、いまの組織図じゃないかもしれないってことなんですね。なるほど。ユーザベースさんは、三階層のお話も含め、シンプルに組織を作られるなと感じています。普通は、組織は大きくなると、より複雑、より細かくなりがちですが、シンプルにキープし続けているのはなぜですか?

佐久間:

おもしろい話になってきましたね・・そうですね、両方なんですけど、私はやっぱり組織はシンプルにするっていうことにけっこうずっと強くこだわってきましたね。たぶんいろんな会社でありがちなのは、組織図が組織の実態を表してないっていうことだと思っていて、そうなると狂っちゃうと思うんですよね。なので、組織図はシンプルに、組織の実態もシンプルに、そして両者を合致させる、っていうのはすごく心がけてました。情報の流れも同じようにシンプルにする。SmartHRさんみたいに基本的にオープンなSlackチャンネルにしたり、Slackのチャンネルの構成と組織の構成を合わせたりとか、ひたすらシンプルにいきたいと思っていますね。

倉橋:

私も、レイヤー(階層)は少ない方がいいというのは完全合意なんですけど、どこかのタイミングでやっぱりうちも諦めちゃって、1レイヤー増やしたりっていうことがあったんですけど、ユーザベースさんだとどういうタイミングで、この人が一人ではもう見切れないからレイヤー増やそう!みたいな意思決定をされたんですか?

佐久間:

「リーダーのリーダー」が育つかどうかっていうところですね。例えば私が四階層の一番上になると、四階層の一つ下って「リーダーのリーダー」になるじゃないですか。チームリーダーを育てることがミッションになる。その人がちゃんと育っていれば、階層を増やしても問題は起こらないので、ひたすら「リーダーのリーダー」を育てられるかどうかってやってますね。

倉橋:

いつ、育ったって判断されるんですか?

福島:

チキン&エッグのどっちが先かもあるじゃないですか。組織を作らないと人は育たないみたいな話も。デリゲーション(権限移譲)が先か、それともリーダーの出現が先か。それでいうと、育成やデリゲーションに関するポリシーは、どうマネジメントされてるんですか?

佐久間:

当然デリゲーションが先なんですけど、ただ単にデリゲーションすると失敗するので、その「リーダーのリーダー」を育てるということに私だったり誰かだったりがコミットしてデリゲーションする、という感じですね。

人の成長と事業の成長

相良:

さて、パート2のアジェンダにシームレスに入っていっているのでこのまま続けられればと思うんですけど・・
今、3社とも本当に高い成長率でハイパーグロースされている中で、毎月倍々でチームが増えていくっていうような急拡大を経験されてると思うんですけど、そこで一つ聞いてみたいことがあります。やっぱり組織の急拡大において一人当たりの生産性をいかに維持するかっていう観点も課題として出てくるかなと思うんですけど、その防止策だったり工夫されていることだったりってありますか?各社にお伺いしてみたいと思います。倉橋さんはいかがですか?

倉橋:

私も日々考えていますね。うちはKPI文化が強いので、指標はあるんですよ。全従業員でいうと、従業員一人当たりのARR(年間売上)はいくらかっていうのは常にモニタリングしていますし、チームごとでも一人当たりの生産性いくらかっていうのは見てはいるんですけど、見てるだけでは当然よくはならないですよね。なので、それを見ながら「あ、ヤバイ、下がってきてる・・じゃあ仕事のやり方変えよう」となって、効率化プロジェクトが走る、みたいなことが多いんですけど、悩ましいのは、そうしようと思うと、結局やっぱり企画部みたいな人が増えてくるんですよね。非生産部門ですね。そこをどれだけ増やせばいいんだろうっていうのが常に悩みですね。私も、「ここの部署でもっと人を採用したいです!」と言われた時に、直接生産部門は「増やして増やして!」って言うんですけど、企画部門になると「本当に必要?何やるの?」と一応確認しながらっていう感じで、悩み多きところですね。

福島:

ラクスルは、ビジョンが「仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる」なので仕組みの会社という特徴と、マネジメントチームに組織マネジメントが得意な人が少ないっていう傾向があります。その環境で、事業を30%成長させようとした時に、組織人数は20%以上のペースで伸ばしたら壊れることが分かったので、事業の成長に組織の成長をリンクさせないポリシーを強く持ってます。組織人数の拡大を20%以下に抑え、一人当たりの生産性は毎年10‐20%で必ず改善していくルールになっています。簡単に言うと、事業成長の30%のうち、人数は最大20%に抑え、一人一人の生産性がもう10%伸びて、30%成長を支えていく構造を目指すのがラクスルの考え方ですね。生産性を改善してないと新規採用にストップがかかる規律を持って組織を運営してます。

佐久間:

福島さんが凄まじいですね。そして、倉橋さんの「企画の人をどれくらい増やすか」というテーマにはすごく共感します。極力0でいきたいっていうのはありますよね。我々はそんなにしっかりできていないんですけど、生産性を上げるために特に注力していることで言うと、シンプルに「メンバーを昇進させる」ですね。我々の評価は、びっくりするくらい360度評価とリンクしていて、一緒に働いてる人がどれくらいのタイトルなのかっていうのを共通の指標に基づいてけっこうシンプルに評価していけるんですよね。それがOKRとリンクしていて三ヶ月周期であるので、成長する人はすごい勢いで成長していきます。新卒2年目とかでも事業部長の一つ下みたいなポジションのメンバーもけっこうゴロゴロいますし、だからいかにその人にとって最高の成長機会を作るかってことばっかり考えてますね。そして、その成長にとってはこの横断組織はけっこういいなと思っていて、明らかに自分よりも専門性が高い人と切磋琢磨する環境が作りやすいし、事業の垣根を越えて最高の成長環境を作れていると思うので、今のところはいいかなと思っています。

相良:

事業をまたいだ人材配置や配置換えというのもされてるんですか?

佐久間:

そんなに多くはないです。共通部門みたいなところではたまにありますけど、それ以外ではM&Aのところですね。例えば、今MIMIRにシニアメンバーを3人送っていますし、アルファドライブにもNewsPicksのシニアメンバーが入っている。彼らは他の事業での成長期を経験してきたメンバーで、例えばMIMIRがこれから組織拡大していく時にどういうことが起こりそうなのかっていうことにもある程度対応できるし、押しつけじゃないかたちで組織の融合も実現していける。

相良:

ラクスルはどうですか?ミドルマネジメント層を新規事業立ち上げにあたって二人三人と送り込む、みたいな人事ってされているんですか?

福島:

ローテーションはやってますが、ミドルじゃなくてけっこうマネジメント層を動かしますね。ラクスルでいろんなフェーズを経験したシニアを、新規事業に送り込みます。過去の失敗で、アドバイスをすればいいんじゃないか?と考えた時期があって、アドバイザリーボードで口出すパターンもやってみたんですけど、機能しませんでした。現在は人材を送り込んで、事業コミットしている経営チームの中に、次のフェーズを知ってる経験者がいる状態をなるべく作るようにしています。

佐久間:

共感しかないですね、やってみないとわからないですから。

相良:

テキストで見聞きしても伝わらないってことですね。

福島:

例えば、「厳選採用は大事」と口で伝えても、これはやっぱり、実際に採った人がミスマッチで、パフォームせずに会社を去った経験を経てしか、「厳選採用」の意味はわからない類のものですね。

新しいポジションをどう作るか

相良:

ちなみに、例えばひと昔前のカスタマーサクセスやさっきのPMMみたいに、労働市場に人がいない新しいポジション・職種を採用していく時の基準とかって何か設けられたりしているんですか?

倉橋:

倉橋)おっしゃる通り、めちゃくちゃ大変ですね。新しいポジションを作る時の、一人目は社内からの異動が多いです。二人目以降はマーケットから必要な素養のある方を採用するというケースばっかりになっています。
新ポジションを作る時にいきなり外から採用しないで、まずは中で人間関係も含めて型を作って、それから採用するっていうのはやってますね。そうじゃないと無理だとは思ってます。うちの中の表現で「タライが2回回ったら新しいポジションが必要」っていうのがあってですね、誰がやるべきかが明確じゃないような、左中間に落ちてるような仕事があまりに増えすぎたら左中間に一本ポールを立てるように人を配置した方がいいっていう考え方です。いろんな人が手を伸ばしてなんとか支えてた仕事をきれいに切り取って型にするっていうのが一番最初の仕事なので、人間関係ができてる人じゃないと最初の一人にはなり得ないかなという風に感じてます。

相良:

よくわかります。ありがとうございます。
それでは、残り時間も少なくなってきたので、いただいている質問に答えたいと思います。
「皆さんが最初に経験した組織課題とそれへの対応について教えてください」ということなんですが、組織課題というと広いので、例えばマネジメントの中で感じた課題とか失敗談ないしそれを乗り越えた方法みたいなことはありますか?

佐久間:

福島さんもおっしゃってましたけど、本当に「採用」ですよ。組織図うんぬんもありますけど、やっぱり我々も人をメインに組織図を規定している部分は大きいし、会社のカルチャーや組織コンディションは採用でほぼ決まると思っているので、一番大きな失敗も一番大きな成功も両方「採用」だと思います。我々だと、オープンなカルチャーにフィットするかって非常に大きくて、採用の面談でどこまで自分の弱みとか人生の目的とか幸せの定義とかを深く開示して話せるかっていうところが大きいですね。あとは、候補の人に我々を選んでもらう、逆の姿勢ですね。私が最終段階で面接に出る時とかは、逆に、早期に退職された失敗例とかをたくさん話してます。最終の手前までは、候補者の人もユーザーベースのこと知らない状態だと思うので、ビジョンを語ってモチベーションを上げることは当然するんですけど、最終の段階になってきたら逆にネガティブ情報をたくさん出して、どういう人が早期退職しやすいか、陥りやすいところは何かっていうのを話した上で、その人に選んでもらう。これはミスマッチが減り、すごくいいですね。この方法はたしか、SmartHRの宮田さんが言ってた気がします。ありがとうございます。

相良:

あえてアンチパターンもお伝えして、相互認識を深めるということですね。ありがとうございます。

と、盛り上がってきたところなのですが、お時間になってしまいましたので、本セッションはこれにて終了としたいと思います。
『COO Night』は、今後も四半期ごとのペースで開催していくつもりですので、スピーカーの皆さんも視聴してくださった皆さんも、またぜひご参加いただけると幸いです。本日はありがとうございました!

イベントレポートは以上です。ご視聴・ご協力いただいたみなさま、ありがとうございました!

次回のCOO Nightは、2021年6月頃の配信を予定しています。イベントの情報を知りたい方は、相良吉田をはじめとしたジェネシア・ベンチャーズのメンバーのTwitterかFacebookをフォローしていただくか、ページ最下部のメーリングリストにご登録ください。次回もお楽しみに!

※こちらは、2021/3/18時点の情報です
(デザイン:割石 裕太さん、聞き手/まとめ:ジェネシア・ベンチャーズ 吉田 愛)

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