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志の高い起業家に選ばれる為に〜Genesia Principles(行動指針)を刷新

私たちジェネシア・ベンチャーズは、「すべての人に豊かさと機会をもたらす社会を実現する」というビジョンと「アジアで持続可能な産業がうまれるプラットフォームをつくる」というミッションを掲げ、「新たな産業の“種”から”最初の芽”を出すこと」を自分たちの役割だと考え、2016年の設立から一貫して、創業初期のスタートアップの1stラウンドを中心に投資をしてきました。

また、投資先へのサポート活動の一環で、起業家・経営チーム向けに様々な勉強会を開催しています。 その中でも特に力を入れているトピックが「強い組織創り」です。

本記事では、投資先に向けてミッション・ビジョン・バリュー(MVV)の重要性を唱え続けている私たちが、2023年4月より半年ほど掛けて行動指針でもあるバリューをアップデートした過程を公開します。この情報が、一つのサンプルとして、これからバリューを策定・改訂するスタートアップの皆さまの参考になればと思います。

なぜ、行動指針をアップデートすることにしたのか

そもそも私たちが初めてバリューを策定したのは、創業して3年が経った2019年12月に上海で開催した全社オフサイト合宿でした。

GPである田島、鈴木(本記事筆者)の前職同僚の北川さんも一緒に食事@上海

当時の私たちのチームは、インターンを含めて11名。 仕事を進めていく上での共通の価値観を持つ必要が出て来たこともあり最初のバリューを策定しました。

この時のバリューの策定方法は、各メンバーがこれまでのキャリアを振り返って

・成果を出しているビジネスパーソンに共通する要素
・成果を出すために大切にしている自分の価値観

この二軸に沿って議論&整理を進めていきました。

このオフサイト合宿を経て作った旧バリューがこちらです。

これらのバリューは、確かに仕事で成果を出す上で非常に大切な要素が詰まっていると感じています。 しかし、これらはあくまでも“ビジネスパーソンとして”成果を出す上で重要な要素であり、言葉を変えると、“ジェネシア・ベンチャーズらしさ”のない行動指針となっていました。

2019年末以降、私たちのチームも更に拡大(2024年2月時点で、インターンを含めて23名)しており、多様なキャリア・バックグラウンドをもった仲間が集まっています。

そうした中で、私たちのビジョンを実現する為に、また、ステークホルダーに選ばれ続ける為にこのタイミングでバリューのアップデートを行いたいと考えました。

どのようにアップデートを進めたのか

まず、社内でバリューのアップデートを中心的に推進するプロジェクトチームを組成し、どのようにアップデートをするべきか?という議論を重ねていきました。

今回の策定プロセスにおいては、私たちがビジョン達成に向けて「ステークホルダーに選ばれる続ける為」に、私たちは、「どのようなイメージを持ってもらう ≒ どのようなアクションをとることが良いのか」という視点からアプローチしました。

「ステークホルダーに選ばれる続ける為」をベースのアプローチにした背景としては、チーム内であの人は仕事が出来る、パフォーマンスが高いよね、という社内に閉じた行動や評価ではなく、あくまでもステークホルダーに対して高い価値を提供し続けることが大切であると考えた為です。

私たちの大切なステークホルダーとは

私たちはミッションとして「持続的な産業がうまれるプラットフォーム(産業創造プラットフォーム)」という言葉を掲げており、日々「挑戦者を増やす」「挑戦者同士の出会いを増やす」「挑戦者の可能性を解き放つ」ことを目指して活動しています。 結局のところ、いち企業単体で何か大きな事業を行うことはできません。 多くの場合、大企業や自治体など、多様なステークホルダーと連携することが成功には不可欠となります。人のネットワークはもちろん、知的なナレッジやノウハウへのアクセスも重要です。 私たちはそれらすべてが集積した、産業を創造するためのプラットフォームとなることを志向しています。

産業創造プラットフォームの実現を考えた際に、私たちにとって重要なステークホルダーを大きく分類すると

  • 志の高い起業家
    志の高い起業家に選ばれるベンチャーキャピタルであり続けることが、VCで永続的に活動を続けていく上で最も大切であるため、最上位概念のステークホルダーであると考えています。
  • 国内外トップクラスの機関投資家
    永続的にファンド活動を継続していく上で、リターンを出し続けることが大切です。 志の高い起業家に選ばれ、産業創造プラットフォームを通じて様々な支援をすることで大きなリターンが生み出され、結果として国内外トップクラスの機関投資家に選ばれるファンドになれると考えています。
  • 産業創造プラットフォームを実現する為のパートナー
    ビジョンを実現する上で大切な産業創造プラットフォームにおいては、事業会社、政府、地方自治体、NPO・NGOと数多くのサポーターが存在します。 産業創造プラットフォームに共感し、共創するパートナーが増えていくことが大切です。

一方で今回の行動指針のアップデートの策定プロセスにおいては、対象となるステークホルダーを増やして議論をすると焦点がボヤけてしまう恐れがあった為、最終的には、ビジョンの実現、そして永続的なファンド活動の実現の為に、最上位概念のステークホルダーである「志の高い起業家」「我々のファンドをサポート頂いているLPである機関投資家・事業会社」に選ばれ続けるという視点で議論を深めていきました。

全メンバーで実施した複数回に渡るワークショップ

チームメンバーと以下のワークショップを複数回に渡り実施しました。

  • 「志の高い起業家」「我々のファンドをサポート頂いているLPである機関投資家・事業会社」に選ばれ続ける上で彼ら/彼女らが私たちに何を期待しているのか?
  • 「志の高い起業家」「我々のファンドをサポート頂いているLPである機関投資家・事業会社」に選ばれ続ける上で私たちが体現する理想の自社イメージはどういうものがあると考えられるか?
  • 自分が考える「志の高い起業家」「我々のファンドをサポート頂いているLPである機関投資家・事業会社」から見た際の私たちのイメージ(≒ブランド)に当てはまると考えるキーワードをピックアップし相互理解を深める

上記、ワークショップを通じて、チームメンバーとジェネシア・ベンチャーズの現在地と理想のイメージのすり合わせをしていきました。

言語化に向けてどのようにアプローチをしたのか

上記ワークショップを踏まえて、(想定より時間が掛かってしまいましたが)以下の論点を何度も行ったり来たりしながら言語化へのアプローチを行いました。

ワークショップ後、初期的なプロジェクトチームでのメインアジェンダ

  • 日常的な行動指針とステークホルダーからの期待をどうリンクさせるか
  • VC業界も競争環境にある中で、他VCと比較した自分たちの強みをどう落とし込むか
  • これまでの議論の内容を一度まとめた上で、自分達としての認識や、強化していきたいポイントなどを可視化し、投資先起業家へのヒアリングを実施

投資先の起業家に対してランダムにアンケートを実施

実際に投資を受け入れてくれた私たちの投資先起業家にランダムで、上述したワークショップの中で出てきたキーワードリストを渡し、以下の内容でアンケートを実施しました。

  • 今のジェネシア・ベンチャーズを表すキーワードを5つ選択してください
  • ジェネシア・ベンチャーズに持ってほしい理想の姿を表すキーワード5つ選択してください

このアンケートの回答結果を見るまでは正直、ドキドキしたのを今でも覚えています。 ある種の投資先起業家の皆さまからの通信簿的なフィードバックでもあると考えたからです。 ただ、本アンケートを通じて、私たちの現在地、そして志の高い投資先起業家からの期待を知れる良い機会にもなりました。

アンケート実施後のプロジェクトチームでのメインアジェンダ

  • ワークショップを通じて言語化した私たちの大切にしたいことと、アンケートを通じて得た投資先起業家が抱いている&理想とするイメージの重なりを模索
  • その上で、本プロジェクトを通じて、私たちはどのような集団になりたいのかを議論
  • 具体的な言語化に向けた方向性の議論
    • 参考となる国内外の他社事例の収集
    • 言語化における留意ポイント:ジェネシア・ベンチャーズらしさを表現できる言語化
    • 行動指針・バリューという言葉にせずに、ジェネシア・ベンチャーズらしさを表現できる言葉は何か?
  • 言語化後の浸透の仕組みに関して

以上を通して、新たなバリューを定めました。

新たに策定したGenesia Principles

私たちは、行動指針・バリューという言葉ではなく、「Genesia Principles(ジェネシア プリンシプル)」としました。 Principlesには、基本的な原則・指針・主義や行動規範という意味があります。

ジェネシア・ベンチャーズとしての行動規範を皆で体現することで、私たちらしさを磨き、結果として志の高い起業家、機関投資家、産業創造プラットフォームを実現する為のパートナーなど多くのステークホルダーの皆さまに選ばれると信じています。

Genesia Principles

1. Always Opening New Doors

私たちは、先入観にとらわれず、目の前にある扉を開く好奇心を大切にします。新たな出会いや体験は、常に変化する現代社会において、私たちの視野を広げ、未知の可能性へと導きます。また、これらの経験が一つ一つ繋がり、私たちの未来に豊かな糧を提供することでしょう。

2. Longer Relationships, Better Partners

私たちは常に投資先やLPをはじめとしたステイクホルダーにとっての最良のパートナーでありたいと考えています。だからこそ、相手の期待を上回る努力を惜しまず、異なる意見や価値観を受け止め、互いに切磋琢磨し合いながら相手が持つ可能性を解き放つ存在であり続けます。

3. Team of Hungry Overachievers

私たちは貪欲にチャレンジするハングリー精神を持ち、仲間の期待を超え続けることで大成するチームです。互いが持つ個性を活かし、強みを掛け合わせることで、仲間の成長機会と成果の最大化を目指すチームコラボレーションは、まだ見ぬ高い山を登り切るためには欠かせません。

4. Achieving Shared Leadership

私たちは皆リーダーです。自身が持つ想いやWillの実現に向け、一人一人がリーダーシップを存分に発揮することを通じて、チームのビジョン・ミッションを実現します。自ら試行錯誤し、仲間を巻き込み、共に前進する私たちのリーダーシップは、チーム内に留まることなく、社会全体の変革をも加速させることでしょう。

5. Resilience in a New Era

テクノロジーの進化によってこれまでの常識やルールが一変する変化が激しい現代においては、私たち自身がそれらに精通し、変化の本質や方向性を見抜くための優れた洞察力を養うことが欠かせません。また、私たち自身が新たな価値の創造に果敢に挑戦することで、あるべき変化を生み出す渦の中心となり、主体であり続けます。

ミッション・ビジョン・バリューは作って終わりではなく、浸透が大切で、そのために運用し続けることが非常に大事です。

現在は、プロジェクトチームがオーナーシップを持って浸透施策などを推進しています。 例えば、週2配信の社内ラジオや、週次All-Hands、Slack内の日頃の学びなどを共有するチャンネル上でGenesia Principlesに関するトピックを共有するようにしています。

浸透施策に関しては、また成果が見えてきたタイミングで詳細をお伝えできればと思います。

ジェネシア・ベンチャーズの行動指針のアップデートの裏側、いかがだったでしょうか? 皆さまの強い組織創りの参考となると嬉しいです。

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