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ヘルステックNight Vol.1[後編] ”健やかな人生”のために私たちができることの可能性|Players by Genesia.

PLAYERS

※こちらは後編です

ヘルスケア×テクノロジー×スタートアップをコアに、みんなで考えるコミュニティ・イベント「ヘルステックNight」Vol.1のレポートをお届けいたします。

イベント概要|Notion

  • ▼デザイン:割石 裕太さん、写真:尾上 恭大さん
  • ▼聞き手・まとめ:ジェネシア・ベンチャーズ Relationship Manager 吉田 愛

登壇者

スタートアップに医療バックグラウンドは必要?

鈴木:

湊さんや金澤さんはもともと長く社会人経験を積まれてきた上で起業に至ったと思うんですけど、それはなぜかとか、その経緯みたいなところとかも伺ってもいいですか?

金澤:

僕の場合はめちゃくちゃシンプルで、親も自分で事業をやってたので、僕も学生時代から起業したいって想いがありました。武田薬品には長く勤めたんですけど、最初は3年から5年くらいで辞めようと思ってたんです。でも、自分の成長に繋がるいろいろな仕事をさせていただいたり、仲間や居心地もよかったので、ついつい長居しちゃったという。次のキュアアップは、やっぱり僕自身もスタートアップをやりたいって想いがあった中で、よくいろんな先輩起業家の話とかを聴いてると「大企業で働くこととスタートアップで働くことは、使う筋肉が違う」みたいなことを言われるじゃないですか。だから、フルコミットじゃなくてもいいから創業期のスタートアップに入って、スピード感とか働き方とか使う筋肉の動かし方みたいなことをちゃんと学ぼうと思ったんです。キュアアップの佐竹さんとは武田時代からの知り合いで、僕が辞めるって言ったら声をかけてくれたっていうのもあります。

鈴木:

もう少しツッコんでもいいですか?僕自身はずっとスタートアップ畑を歩んできたので、大企業とスタートアップの使う筋肉の違いって、なんとなくは想像できるけど、なんとなくしか想像できないって感じなんですよね。金澤さんが実際に大企業から創業時のスタートアップに入って感じた違いとか、苦労したポイントとか、それをどう乗り越えたかとか、そのあたりを聴いてみたいと思ったんですけど。

金澤:

大企業とスタートアップの働き方の違いっていろいろあると思うんですけど、集約すると三つぐらいかなと思ってます。一つ目が、一人の動く範囲の広さですね。特に創業期のスタートアップは、体操競技で言うと「総合」みたいな感じです。大企業の中にいると、鉄棒とか平均台に特化するイメージです。そこがやっぱりけっこう違うなと思いました。もう一つは、意思決定のスピード感みたいなところです。スピード感と意思決定のプロセスが全然違う。大企業だと、やっぱり多少時間をかけてでも合意をとりながら意思決定を進めていくじゃないですか。でもスタートアップだと、その場でスパスパ決めていかないといけない。一人の人が意思決定をする回数もすごく多いので、その時の脳の使い方みたいなところは大きく違うなと思います。三つ目は、金銭感覚。スタートアップには潤沢な資金がないので、特に、やらないことをまず決めるのがすごく重要かなと思います。仕事の進め方というか。そうですね、大きくはこの三つかなと思います。

鈴木:

湊さんはどうですか?湊さんはもともとサイバーエージェントの広告領域でお仕事されていて、僕もご一緒させていただいた時期がありましたけど、そこからどうしてヘルスケア領域に進まれたんですか?

湊:

僕の場合はメンタルヘルス領域ですけど、メンタルヘルスって、本人だけじゃなくて家族や周りの人も巻き込むすごく大きな課題なんですよね。そう感じる経験が僕自身にもあったんです。そして、この課題をどうにかしたいなと思っていた中で、サイバーエージェント時代にデータ関連の事業を担当していて感じたのが、データってすごくピュアだってことなんですよね。例えば、お金を持ってる人も持ってない人も、健康な人も健康じゃない人も、データ上で見ると全員“点”で表現される。つまり医療においても、その人自身をしっかりと理解するって意味では、その人をデータとして見ていくこともできるんじゃないかなと思ったんです。僕は30代、テクノロジーやデータの領域で事業を作ったりいろんな経験をさせてもらったりしてきたので、これからはそれらを使ってもっと人のためになるようなことをすることが使命みたいにも感じたのかもしれません。データって、新しい世界の見方を教えてくれるので、もっと人のために使いたい、使い方を拡げたいって感じですね。

鈴木:

あ、今ちょうど「医療バックグラウンドじゃない人がこの領域に入るときに必要なことって何ですか?」という質問をチャットでいただいたんですけど、まさに湊さんもそうですよね?ヘルスケア領域に飛び込むときのステップとか、ここに関わる意義みたいなところをどう考えていたのかとか、伺ってもいいですか?

湊:

やっぱり今後もこの領域にいろんなベンチャーが挑戦してくるであろう中で、医療バックグラウンドの有無っていうのは一つの大きなテーマだと思うんですよね。僕は医師と共同創業してるので、チームとしてのたしかな医療視点の強さっていうのは絶対に必要だなと思いますし、僕自身もサイバーエージェントを辞めてから慶應医学部の精神科に入局して研究をやっていたので、間違いなくそっちにディープダイブすることは必要だったと思います。ただ、さっき申し上げた通り、ヘルステックって一言で言ってもかなり領域が広がっている中では、いろんなケイパビリティが必要になってくると思います。我々のチームで言えば、やっぱりデータやテクノロジーに関してのケイパビリティは重要です。留意点としては、医療業界や医療従事者の方々特有の慣習的みたいなものも当然あるので、そこをしっかり理解しにいくことは、他領域からやってきた僕たちの使命かなと。ただ、意識することってたぶんそれくらいで、もっと他領域からの人やアイデアの流入が増えていいと思います。

鈴木:

金澤さん自身もそうですし、金澤さんのチームも共同創業者は医療バックグラウンドの方だと思うんですけど、そうじゃないメンバーの方々とかがこの領域に関わる意義みたいなものをどう見てますか?

金澤:

ポジティブな意義が本当に大きいと思ってます。この業界にずっといると、その内側の深い課題が見えやすいっていうのはいいことなんですけど、逆に言うと、業界の固定観念みたいなものに縛られちゃってるところもあるんです。僕らにとっては当たり前なんだけど、外から見ると「何でそんなことやってるの?」みたいなことがけっこうあるんです。その視点は、内側にいる僕らにはなかなか持てない。その外せない枠みたいなものを外してくれるのが、まずすごくいいと思ってます。
もう一つは、医療従事者には特有の使命感というか、もっと患者さんにこうしてあげたいとか、医師や看護師や薬剤師とはこうあるべきだとか、そういうところがあるんですけど、それが患者さんやユーザーにとってはNo Thank youだったりもするんです。医療提供者の想いと患者さんのニーズのギャップって、実はけっこうあるんですよ。でも、そこはやっぱり患者さんやユーザーさんにとって必要なものでなければいけないので、そういったサービス視点やユーザー視点をしっかり持ってくれている方がチームにいることは本当にありがたいです。

湊:

僕はどっちかというと社会学のバックグラウンドで、社会学の中には医療社会学っていう分野があるんですけど、今の医療の問題とかコロナ禍で課題になってきていることって、実は医学だけで解決できるわけじゃないっていう話なんですよね。要するに、社会の仕組み全体に課題があって、テクノロジーが進化したり新しい感染症の発生とか社会全体で解決しなきゃいけない問題が出てきたりしたときに、そういう視点を持つ必要があるってことなんです。
例えば、我々のサービスって、データで痛みを定量化するとか、そういうチャレンジなんです。今はたぶん、金澤さんが感じる痛みと僕が感じる痛みって違うんだけど、お互いのそれがわからない状態。でも、それが定量化・可視化できたら、痛みやつらさを共有するみたいなことが初めてできるようになるかもしれない。でもこれって、医療や医学だけでは、どんなに先生たち頑張っても実現できなかったりする。そういうところは外から見て本当に感じるところなので、本当にいろんなバックグラウンドを持った人がこういった課題解決のために力を入れていくのは大事だと思います。

株式会社テックドクター CEO 湊 和修

患者やユーザー視点のUXへ

鈴木:

金澤さんがおっしゃっていた、医療提供者の想いと患者さんのニーズのギャップみたいな話題で個人的に思うのが、病院のUXについてですね。病院のUXってあんまり良くならないじゃないですか。OMO的に待ち時間が減るようなしくみを取り入れてるクリニックとかも出てきたりはしてますけど、まだまだというか。言ってしまえば現状って、医師や病院都合のUXなのかなと思うんです。他の産業がどんどんユーザー視点のUXに向かっている中で、病院や医療のUXが真にユーザー視点になる、そんな地殻変動って起こり得るのかなって、個人的には気になってます。

湊:

僕もずっと考えてますね。やっぱり医療って特殊な産業のあり方だと思うんですけど、患者さんに対してのUXの改善っていうのは進んでいくとは思います。ただ、医師側もしくみの中の一つの役割を担っているに過ぎないので、彼らがそこを強く推し進めようとするかというと、そうではないかなと。患者側のニーズに応えていくっていう方向性もあるとは思うんですけど、一方で、現状のしくみ全体をどうリプレイスするか、どうイノベーションを起こしてアップデートしてかっていう、そっちの発想もすごく大事だなって思います。

タカ:

たしかに、ディスラプトしないって視点も大事ですよね。
金澤さんはどう思いますか?自由診療の方だともっとUXを作りやすかったりもするかなと思いますけど。

金澤:

僕も薬局で保険診療もやってますし、皮膚科のクリニックを経営してるメンバーもいるので、現場感みたいなものはすごく持ってると思います。それで言うと、確実に変わってきてると思います。実際にオンライン診療を受ける人の割合って本当に多くなりましたしね。ただ、やっぱり世代が変わらないと変わり切らないところはあるのかなと、正直思ってます。医療を受ける人って、多くは高齢者じゃないですか。だから、若者は変わりつつあるんだけど、やっぱりおじいちゃんおばあちゃんはなかなか変わらない。長い待ち時間というペインも、今までずっと経験してきたから、もうそれが当たり前になっていて、ペインだってことに気づいてない。初めて体験する人からしたらとんでもないことなんですけどね。それが顕在化しづらい、認識していない人(高齢者)が多いっていう点はあると思ってます。
あとは、そもそも論ですけど、やっぱり医師の中にも名医というか人気のある先生がいて、そういう人の診療や治療なら行列に並んでも受けようっていうモチベーションも、正直あるかなと思います。混んでるドクターは余計に混む、みたいな。それは飲食店と同じじゃないかなと。名店のおいしいものは、行列に並んで長時間待っても食べたい、みたいな。なので、全ての待ち時間がなくなるわけじゃないと思います。
加えて、今後の変革のトリガーとしては、やっぱり国のしくみですかね。オンライン診療やオンライン服薬指導はOKなんだけど、いまだに処方箋は紙で郵送されてくるのを待たなくちゃいけなくて、それを薬局に持って行かなくちゃいけない。そのあたりも含めて整備されてこないと、本質的には変わらないと思います。

鈴木:

ペーパーレスの流れは、ここにもちゃんと来てほしいですね。

湊:

とは言え、医師たちの話を聴いていると、この1年くらいでやっぱりかなり反省というか、変えねばという想いを持った方はけっこう増えてる印象があります。だから個人的には、想像以上にポジティブに進んでいくんじゃないかなと思ってますね。

鈴木:

もう一つ、僕から質問いいですか?今、お二人ともそろそろ組織の規模を拡大するフェーズに入って来てるかなと思うんですけど、実際にどんな人と働きたいとか、どんな人がヘルスケア領域に向いてるとか、そのあたりを伺ってもいいですか?

湊:

はい、積極的に採用していこうと思ってます。大前提として、経験者・未経験者に関わらず、プロジェクトマネジメントやプロダクトマネジメントみたいなこと― つまり、一つのソリューションを自分で作り上げていきたいという想いのある方と一緒にやりたいなと思っています。あとは、データの活用に興味があることも大前提ではあるんですけど、やっぱりメンタルヘルスの領域で事業をやってるので、例えば自分自身も心の状態を崩したことがあるとか休職したことがあるとか、そういう経験がある方にその想いを活かしてほしいなっていう気持ちもあります。仮にテックドクターでそういう状態になってしまっても、その状態を解決するソリューションを作ってるので、周りも協力的だし、ちゃんと本人にも享受してもらいたいなと思います。

金澤:

この領域にどんな人が向いてるかで言えば、病気で苦しんだり辛い思いをしたりしている人を助けたい、それによって人から感謝してもらえる、そういうことに喜びを感じられる人はヘルスケアに向いてるんじゃないかなと思います。これは職種問わずにですね。逆に、健康な人がよりハピネスを追求するためのサービスや領域の方(エンタメなど)に喜びを感じる人もいるじゃないですか。ヘルスケアについては、そういう人よりもやっぱり、負を解消して感謝されてそこに喜びを感じられる人がいいんじゃないかなと。あとは、さっきの話とも被りますけど、人の健康に関わるってことは、つまり極端に言えば命に関わる仕事なので、倫理感とか誠実さみたいなところはめちゃくちゃ大事かなと思います。
僕たちや弊社がどんな人と一緒に働きたいかで言えば、弊社はセルフメディケーションの体験をテクノロジーで変えていくっていう非常に難しいチャレンジをしているところなので、大きな市場の一端ではあるんですけど、そういう「変えていく」ってところにやりがいを感じてくれるような人と一緒に働きたいです。

株式会社エムボックス CEO 金澤 大介

ヘルステック企業を見る、投資家の目線

鈴木:

では、質疑応答の時間にしたいと思いますが・・

湊:

僕から鈴木さんに質問してもいいですか?

鈴木:

どうぞ!

湊:

投資家目線で、ヘルスケアテック領域に投資するときに、どういう経営者だったりチームだったりがいいなとか、どういう視点で見てるんですか?

鈴木:

僕たちはシード期、つまり創業期のアイデア段階で投資させていただくことがほとんどなので、経営チームの強さみたいなところはまず見ています。具体的には、一つは、やっぱりヘルスケア領域なので、経営チームの中に医療バックグラウンドがあって医療視点を持っている人がいるチームがいいということ。でも、その条件にハマらずに投資に至ってるケースもあるんですよね。一社の例を挙げると、起業家自身がその領域の課題を絶対に解決したいっていう想いが強かったというのと、その課題を解決するための当事者の人たちへのインタビューの量が異常だったんですね。医師のニーズを探るために、全国の医学部を全部回るみたいな。そんな行動力ってなかなかないじゃないですか。あと、僕が思うのは、自分が頭の中でイメージしてる課題って実はあんまり大したことないことが多い。思い込みのケースもあると思ってます。そういう意味では、とにかく一次情報に触りに行く、その行動量は大事かなと思ってます。結果的に、そういう行動力がある人っていろんな人も巻き込めちゃうんですよね。
あと、僕はジェネシア・ベンチャーズの中でもヘルスケア領域に一番多く投資してるんですけど、どういうポイントでヘルスケア領域の会社がおもしろいと思ってるかっていうと、すでに上場しているような大手のヘルスケア系スタートアップのマネタイズポイントって、主に、そのサービスに登録している医師や患者さんにリーチしたい製薬会社さんの販促費だったりするんです。でも、新しいスタートアップが同じお財布を取り合う必要はないし、次のイノベーションは次のプレイヤーに託されてる、たくさんのチャンスがあるってシンプルに思うんです。
「医療データの民主化」って、いいコメント書いてくださっている方がいますけど、例えばパーソナルヘルスレコードって、かれこれ10年以上前から言われているもののなかなか社会実装されていないなと思っていて。でも、やっぱりスマートフォンの進化だったり、それを通じた遠隔診療だったりが進んでくると、自分のデバイスから医療にアクセスしに行くってことが増えて、医療データが自分で集約できるかたちに変わっていく気がしてます。そうなると、今まで取れていなかった心拍データとかホルモン値のデータとか、そういったデータが病院側じゃなくて、患者さんやユーザーに紐づく。そういうパラダイムシフトみたいなものが起きる。そうなると、ユーザーデータをたくさん抱えるところにお金が動いたり集まったりすると思うんですよね。創薬ベンチャー以外では、今はマネタイズポイントが製薬会社の販促費や開発予算と言いましたけど、もちろん医療体系の最適化って意味でもユーザーにデータが寄っていくべきだというし、ビジネスとして見たときにも、製薬会社ありきのBtoBのビジネスモデルから、患者さんやユーザーサイドに寄せていくプレイができるようなら、確実に価値を作れると思ってます。時間かかるかもしれないですけど。なので、そういったところへの出資は日本でも東南アジアでも仕掛けてます。

湊:

もう一つ、いいですか?スタートアップに入るタイミングとして、0から2-3人目くらいのタイミングとか、10人くらい、10人から30人くらい、50人、100人、どれくらいがいいのかってありますかね?適性とかいろいろあると思うんですけど、採用される側としては悩むと思うんですよね。我々としてはポジショントークで、10人目くらいで入った方が絶対におもしろいよって思うんですけど、そのあたりってどう考えますか?

鈴木:

そればっかりは適正でしかないと思いますけどね。わちゃわちゃした中でもいろんなことを進めていかなきゃいけないカオス状態が好きなら早いタイミングがいいと思うし、そういう状態を整形することが好きだったり得意だったりする人は30人とか50人とかのフェーズから参画する方が力を発揮しやすい可能性は高いと思います。1,000人とかの会社じゃないので当たり前ですけど、スタートアップって自分の成長が組織とか事業の成長にダイレクトにヒットすると思うんですよね。一人当たりの業績とかに対する貢献度が大きい。それが、組織規模が小さければ小さいほど大きく感じられますね。プレッシャーでもあるんですけど、楽しいと思える人はやっぱりスタートアップに向いてますし、ここの気持ちが強い人はどんどん活躍できると思います。我々経営側も、その人の成長がどれだけ自社の事業にインパクトを与えてるかをしっかりとフィードバックして、やりがいを作っていくみたいなところも大事かなと。

ジェネシア・ベンチャーズ General Partner 鈴木 隆宏 @ジャカルタ(写真は別の日のもの)

10年後にまず、目指す世界

鈴木:

一つ、質問が来てます。これはたぶん金澤さんが得意とする領域なんじゃないかなと思うんですけど、医療系の中でも特に自由診療系のスタートアップとかの中には、薬機法とかのかなりグレーなゾーンを突っ走るところもあるじゃないですか。それで炎上したりしたときに、対応してリカバリする人たちもいれば、そのままダメになってしまうケースもあるなと思ってます。その点、金澤さんとエムボックスはかなりしっかりと基準を遵守してるし、差別化のブランディングにも取り組んでると思うんですけど、このあたりをどうご覧になってますか?

金澤:

最近感じるのは、真っ当にというか、正直にオープンにやっていることそのものが、これからブランディングになっていくだろうなということです。僕らのAGAの領域とかで言うと、一昔前に比べて、やっぱりユーザーさんというか消費者の方々の知識レベルってすごく上がってきていると思うんですよ。それはやっぱり個人がYouTubeとかSNSとかで情報発信できるようになったことで、体験をシェアする人が増えてきた。そうすると、「3ヶ月でフサフサ!」みたいな薬を使っても、増えるわけないってことにみんなが気付き始める。だから、そういういわゆる消費者をだますようなマーケティングやプロモーションをしているところは、むしろブランドを棄損する一方だと思っていて、価格帯とかも含めてオープンに正直にやっている方が逆に圧倒的に評価されていく。そんな消費社会になるんじゃないかなと思っています。

鈴木:

おっしゃる通りですね。これは医療・ヘルスケア領域に限らず、誠実であり続けるっていうことが、当たり前のようでけっこう難しいことでもあって、そこを特にしっかりとやり続けることが大事になってくるっていうのは、僕もすごく共感します。

あ、もう一つ質問が。Noomなどの評価が高まっているアメリカでは、肥満が大きな社会問題になっているという背景もあると思いますが、日本特有の健康に関する社会問題みたいなものはどんなものがあると思いますか?という質問ですね。

湊:

これはもう完全ポジショニングトークになりますけど、やっぱりメンタルとかストレスですよね。僕らFitbitさんとも仕事をしてるんですけど、一番ストレスで反応するのは日本人らしいんですよ。やっぱり皆さんメンタルのことは気になってると思います。

金澤:

難しい質問ですね。ちょっと浅はかな意見かもしれないですけど、いろんなところで言われてる通り、日本って世界に先駆けて高齢化が進んでるじゃないですか。そうするとやっぱり、高齢者に起こりやすい症状や疾患っていうのは、日本特有なわけじゃないですけど、日本の解決のしかたをこれから世界が参考にするのかなと思っています。じゃあ何の疾患領域かっていうと、例えば認知症とか、あとはフレイル=脆弱ってやつなんですけど、身体的フレイルだけじゃなくて、独居のおじいちゃんやおばあちゃんの孤独から来る精神的な脆弱みたいなところもやっぱりすごく問題になっているので、そういう、高齢者が増えることによる問題というのは、日本が世界に先駆けて社会課題になりがちなところかと思います。

鈴木:

たしかにそうですね。
あともう一つ、最後にまた壮大な質問が来てます。医療領域の新しいプロダクトやサービスは、世の中に浸透するまでにどうしても時間がかかる側面があると感じていますが、会社やサービスを通じて、10年後に世の中がどうなっていればいいなと思いますか?という質問です。

金澤:

最初にもお伝えした通り、僕らはセルフメディケーションの課題を解決したり、その体験をもっともっとユーザーにとって快適なものにすることを実現したりしていきたいなと思っています。その立場から言うと、セルフメディケーションって、医療費の観点だけじゃなくて医療リソースの有限性って観点からも、これからさらに重要性が高まっていく中で、その一端を僕らが担っていくと思っています。それを通じて、10年後には、医療費の削減もそうですし、市販薬の廃棄問題とか、無駄な受診を減らすとか、そういう社会課題を解決している1プレイヤーになれればいいなと思っています。自社のポジションみたいな話になっちゃいましたけど。

鈴木:

自社を通じて社会に貢献する、自社を通じて理想の世界を作ることが、我々が頑張れる一番の理由だと思うので、すごく響きます。

金澤:

医療とかヘルスケアの問題って、その国にとっても本当に重要だし、課題も本当にたくさんあるので、たぶん1スタートアップだけで全部解決するのは難しいですけど、その一端は担うことができるし、一部を変えることはできると思うんです。

湊:

タマが大きいのでこちらも大きく返すと、我々は今データを扱ってるんですけど、たぶん今年SPO2とかを取れるデバイスも増えてくると思っていて、さっきもお話しした通り、データを扱う一つのロマンとしては、やっぱりお互いのことわかるようになるってことですね。テクノロジーが進化して、いい話っていうのはSNSでどんどん共有されるようになってきてますけど、逆に言うと、ネガティブなこととかつらいこととかはちょっと共有されづらくなってきてると思うんです。だから、“データを使ってお互いのことを知ることで、人と人が気遣い合える”みたいなことを実現したい、そのためにテクノロジーを使っていきたいと思ってます。
そういうサービスが世の中に浸透するのには時間がかかるっていうのは確かにそうなんですけど、それをいかに早くできるかっていうのが、我々ベンチャーのチャレンジでもありますよね。コロナ禍もきっかけに、もっとプレイヤー同士でも横の連携とかもしながら、さっき「医療データの民主化」っていういい言葉がありましたけど、それを本当に進めていきたいですね。

鈴木:

たぶんそこを加速させる一つのポイントには、我々ベンチャーキャピタルがしっかりとリスクマネーを供給することもあると思ってますし、テックタッチのソリューションなどの普及も含めてもっとヘルスケアが開かれた領域だとわかってくると、今までインターネット産業に従事されてたような方々が活躍するフィールドも非常に大きくなってくると思いますね。大企業にいる方々も徐々にスタートアップに流入してきていますけど、SaaSやDXってところから、こういった領域へのチャレンジも増えてくるといいのかなと思ってます。

ということで、今日はカジュアルにお話しできてよかったです。また今後は実際に現場で働いている方々のお話なども聞いていただければと思いますし、また皆さんと最新の動向などもアップデートしていければと思っていますので、引き続きよろしくお願いします。

ご登壇いただいた湊さん、金澤さん、視聴してくださった皆さん、今日はありがとうございました!

※こちらは、2022/3/1時点の情報です

株式会社TechDoctor

ご視聴ありがとうございました!次回のスタートアップNIGHTシリーズもお楽しみに!

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