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【2024年版】シードVC ジェネシア・ベンチャーズ 注目の投資領域

私たちジェネシア・ベンチャーズは、「新たな産業の“種”から”最初の芽”を出すこと」を自分たちの役割だと考え、2016年の設立から一貫して、創業初期のスタートアップの1stラウンドにおいて投資をしてきました。シード投資の意思決定にあたり、私たちは「起業家(経営チーム)」と同じくらい「マーケット」を重視しています。このスタイルを取る前提には、私たちがミッションとして掲げている「持続可能な産業創造プラットフォーム」の実現があります。マーケットや事業領域が時代の大きな流れに沿うものなのか、人々の豊かさに繋がり、将来にわたり拡大していくことが信じられる領域なのかを考えながら、「マーケット」と「起業家(チーム)」の相性を見るようにしています。

現にジェネシア・ベンチャーズ社内では、属人化しがちなシード期の市場仮説の見立てを『Market.iO(マーケットアイオー)』という共通のフレームワークをもとに行うことで、その事業が社会に与えるインパクトも加味して投資判断を進めています。

こうした市場仮説をもとに、ジェネシア・ベンチャーズの各キャピタリストが2024年に注目している領域をまとめてみました。事業相談やオフィスアワーも随時行っていますので、フォーム各キャピタリストのSNSまでお気軽にご連絡ください!

※このブログで記載しているものは、特に注目している領域としてピックアップしたものです。この領域以外でも、創業前後・シード期の起業や資金調達相談はいつでも大歓迎ですので、気兼ねなくコンタクトしていただければ嬉しいです。

高度な技術で社会をより豊かで安全なものにする【AI-powered エコノミー領域】

リテールフィンテックの進化は、Post-ChatGPT時代においても継続的な注目を集めています。特に今後インフレ等による大規模な資金流入が予想される資産形成の領域では、高度にパーソナライズされた投資アドバイスが重要な役割を果たすと考えられます。従来のロボアドバイザーは、基本的なポートフォリオ管理やリバランシングを中心に機能していますが、複雑な財務計画や個々の投資家の独自のニーズに応じた高度な提案までは至っていません。個々の投資家のリスク許容度、投資目標、財務状況を綿密に分析し、人間のアドバイザーを超越した投資提案を実現することは、AI技術の高度化によって可能になると思います。投資は、チャートや数字だけではなく、感情的な側面をも含む複雑な決定プロセスです。ロボアドバイザーは近い将来データ分析だけでなく、感情コントロールも出来る「人間らしさ」も兼ね備えることが可能になり、より広範囲にサービスが広まると考えます。

さらに、AIは対話を超えて、エージェントとして具体的なタスクの実行をサポートする方向へと進化していくと考えています。そうなると時差の壁を超えて、世界中の市場で様々な取引が可能になり、ユーザーに新たな価値を提供するサービスの創出が期待されます。

祝 煜洲(Yushu Shuku)
DMはこちらから:@Shuku_Genesia

自動車の電動化において、ハードウェアの部分は一定有力な企業が出揃いつつありますが、Software Defined Vehicle (SDV) への移行はまだ始まったばかりだと思います。スマートコックピットは、運転体験をより直感的で安全かつ快適にするために、最新のテクノロジーを活用した車内環境を指し、ここの事業機会に注目しています。

LLMを活用した自動運転システムや、インフォテーメント周りの革新(ストリーミングサービス、リアルタイム交通情報、オンデマンドコンテンツ、Incar payment 等)、データ分析によるパーソナライゼーション等、Softwareを強みとした自動車開発は今後増えて行くと見ています。

祝 煜洲(Yushu Shuku)
DMはこちらから:@Shuku_Genesia

ロシアのウクライナ侵攻や米中の対立、中国の台湾・南シナ海問題等によって、日本における国家安全保障の重要度が急速に高まっています。政府はGDP比1%程度で推移していた防衛費を2027年度には2%に倍増にする方針で、2023年度からの5年間の防衛費は43兆円となり、前5年間の約1.5倍の規模になっています。また、米国をはじめとして、国防におけるAIやドローン等の最新のテクノロジーの導入が活発化する流れも生まれています。さらに、日本版SBIR制度の広がりによって政府調達におけるスタートアップの存在感が高まってきており、今年DefenseTech領域は大きな潮目を迎えると考えています。

DefenseTech領域では具体的には以下の事業に注目しています。

  • ドローンや衛星等を用いて国防に関するデータの収集・分析を行う事業
  • ドローンや衛星はもちろんのこと、SNSも含むサイバー空間等で得られたデータとAIを用いて的確な状況判断と意思決定を行う、もしくはサポートする事業

一戸 将未(Masami Ichinohe)
DMはこちらから:@ichinohe_GV

高度なAIの出現により、人間と機械とのインタラクションの在り方に大きな変化が生まれる潮流を感じています。これはリハビリテーション、身体障害者の支援、さらには娯楽や教育といった社会の多くの人々の生活を豊かなものとする源泉となり得るもので、AIによりその実現可能性は加速していると考えています。

例えば脳波などの生体信号をより正確に解析し、外部デバイスへの命令変換の精度を高めることが可能となることで、身体の不自由な人が思考だけでコンピュータを操作したり、遠隔地にある装置を制御することが可能となったり、他にも教育分野では学習者の集中度や理解度をリアルタイムで測定して、パーソナライズされた学習プランを提供したりするなど、複数の新たな事業が生まれるポテンシャルを有していると思います。

曽我部 崇(Shu Sokabe)
DMはこちらから:@shu_sokabe

持続的な成長を続けるための企業基盤を再構築する【既存産業のDX領域】

SaaSの認知・理解度が増していく中で、エンタープライズ企業でも比較的ライトな業務領域からSaaSソリューションの導入・活用が広まりつつあります。一方でペインが深刻なのは、基幹系システムと言われる企業の活動の根幹に関わる領域です。この部分はオンプレベースで構築されていることも未だ多く、そのUXや使用言語のレガシーさからエンプラ企業従業員の生産性を落としている側面もあるのではと捉えてます。

SaaSの導入がこの15年ほどで加速し、その市場規模は1兆円を超えますが、実は日本国内におけるIT投資の市場は9兆円にのぼります。SaaSがカバー出来ていない領域はSIerやITコンサル、伝統的なパッケージベンダーが主要プレイヤーですが、この市場に進出出来れば新興プレイヤーの戦うフィールドは一気に広がると考えます。

「2025年の崖」への危機感からも、その対策として基幹系システムのリプレースやモダナイゼーションが進んでいる傾向も見受けられます。この流れにのって巨大な基幹系システムの中でも、企業がカスタマイズ機能として独自開発する部分とSaaSを利用して汎用機能として使う部分の優先度仕分けが進むと見られており、汎用利用で良いと判断したモジュール単体ないし複数のモジュール組み合わせに関しては、SaaS利用が加速すると予測しています。

また別角度の方向性として、SaaSサービスを集約するAPIベースのプラットフォーム基盤にも注目しています。エンプラ企業でのSaaSの部分利用は進んでいる中で、SaaS同士または既存システムとのデータ連携を求めるニーズが増えています。最近で言うとパトスロゴス(株式会社パトスロゴス)は人事領域でプラットフォームを作り始めていますが、会計・ロジ領域でも同様のアプローチが実現できる可能性もあると見ています。

黒崎 直樹(Naoki Kurosaki)
DMはこちらから:@Kurosaki_GV

大企業における賃上げが進む一方、日本における雇用の約7割を占める中小企業に関しては大企業と比較して賃上げが難しいのが実情です。一方で、人手不足や物価上昇を背景に、中小企業がDXに対してこれまで以上に積極的になる機運が高まっており、特に中小企業ビジネスの根幹に関する業務のDXを実現することで、その企業の競争優位性をさらに強化させ、結果的にその恩恵を従業員にも還元させていくことができると考えています。

具体的には、単なる業務の効率化ではなく、自社の強みを有する中小企業が、これまでカン・コツ・経験によって行ってきたことを可能な限りロジックに落とし込み可視化することで、その企業の競争優位性をさらに強化し、最終的には売上や利益の増加にしっかりと寄与する事業に注目しています。

一戸 将未(Masami Ichinohe)
DMはこちらから:@ichinohe_GV

感動を生み出し続ける仕組みをつくる【次世代メディア・エンターテインメント領域】

InstagramやX(旧Twitter)などのSNS、YoutubeやTiktokなどの動画・ライブプラットフォーム、そしてクリエイティブ制作ツールの発達によって、クリエイターとして活動し、ファンを作ることのハードルが大きく下がりました。

何か新しい価値を創り出す人は全員クリエイターです。映画や芸能、小説や漫画、ゲームや広告など分野に限らず、美容や食事、不動産や金融、そして盆栽やアクアリウムなどのニッチな趣味領域でも日々クリエイターが生まれています。

クリエイターとは生き方であり、アイデンティティを確立する手段でもあります。パンデミック、インフレ加速、武力衝突などの社会不安の高まり、そしてAIやロボット技術の発達による人間の仕事の代替の中で、人々は自分らしく生きることを強く望みます。

生成AIはテキスト、画像、音声、動画、そしてそれらの組み合わせによるコンテンツ生成を実現します。生成AIのクリエイターへの影響については様々なシナリオが議論されていますが、私はクリエイターエコノミー市場全体にポジティブな影響をもたらすと考えます。

既に工場や物流施設のオペレーション自動化が発達しているように小売店、飲食店、ホテル、フィットネスジムなどの自動化も進み、効率性を追求することで安い・早い・うまいが様々な分野で実現されていきます。それは高品質なサービスへのアクセスを民主化するという意味で社会に大きな価値をもたらすでしょう。

しかし、人の消費行動を決定づけるのは機能的価値だけではありません。ブランド物のアパレルやバッグ、時計や車、スニーカーやトレカなどは、ストーリーやコミュニティを通じた情緒的価値が価格決定の大部分を占めています。

同様の変化がクリエイターエコノミーにおいても起こるだろうと考えます。生成AIによって生み出されるコンテンツは膨大に増加し、効率性の観点で人間が太刀打ちすることは難しいですが、同時に効率性の高いコンテンツのコモディティ化も引き起こします。

クリエイターは、ストーリーやコミュニティなどの情緒的価値を梃子として、コンテンツやサービスをファンに届け、マネタイズするプロセスに生成AIを活用することができます。これが生成AI時代におけるクリエイターエコノミーの中長期的な成長を確信する理由です。

クリエイターエコノミー×AIにおいて注目する分野は下記6つです。

①コンテンツ制作AI Copilot
②マネタイズ/コミュニティ構築
③グローバル展開
④挑戦を支えるセーフティネット
⑤ファイナンス
⑥倫理問題・規制対応

河野 優人(Yuto Kono)
DMはこちらから:@yutodx

既存大手プレイヤーでなく、いわゆる「インディーズ」からの大きなヒット作が生まれる事例が国内外問わず増えつつあります。

例えば、若い世代を中心に日本だけでなく海外でも人気な「おぱんちゅうさぎ」のクリエイターが所属するCHOCOLATE Inc.は、キャラクターを作れるクリエイターのほかに、映像制作・CGの領域で業界トップクラスのクリエイターが多く在籍しています。一見VCファイナンスを選ぶ企業にはあまり多くないビジネスモデルですが、JAFCO(ジャフコグループ株式会社)から出資を受けていることはもう少し知られても良いかもしれません。

また、Vtuber事務所であるホロライブ(カバー株式会社)やにじさんじ(ANYCOLOR株式会社)が大きく成長していることは周知の事実ですが、TikTokでのフォロワー数No.1のキャラクター「あさみみちゃん」が所属する「Simple Side Mascots」を運営する株式会社アダビトや、VFXやメタバース空間のデザインを得意とするクリエイター事務所 stu inc.など、尖ったクリエイターを抱える新しい事務所が生まれており、実際に資金が流入し始めています。

特に2024年には、

  • 人材不足を主な理由として、人材の流動性が高まる市場が現れること
  • 新しいテクノロジーの登場により、生産プロセスの大幅な効率化が起こりうること
  • メディアの分散及び新しいプラットフォームの登場により、既存大手プレイヤー以外からのコンテンツが生まれやすい環境になり続けていること
  • いわゆる「インディーズ」と「大手」の境界がますます溶けてゆく

ことが加速し、さらにこの領域が期待できる土壌が整うと考えています。

インディーに関しては、直近だと「パルワールド(発売2週間で全世界で1200万本販売)」や、2023年のアカデミー賞を総なめにした「Everything Everywhere All at Once(配給元はインディーズ系映画会社のA24)」の現象からも、音楽・ゲーム・映画と様々な領域でインディー発のコンテンツが爆発的なヒットを生んでいます。

エンタメコンテンツのビジネスは大きなヒット作が出るまで時間がかかることがほとんどですが、クリエイターがその会社に所属し続けたくなる仕組みを作ることができれば、受託等でベースとなる売り上げを立てながら、大きなヒットコンテンツ、ひいてはグローバルかつ生存期間の長いIPを生み出す挑戦を続けていくことが可能となります。次世代のサンリオ・ポケモンがスタートアップから生まれる可能性は十分にあると感じています。

水谷 圭吾(Keigo Mizutani)
DMはこちらから:keiggg_gv

持続可能な社会の基盤をつくる【資源・マテリアル技術領域】

脱炭素社会の実現に向けて様々な製品にレアメタル等の鉱物資源が求められる一方、世界の多極化が進む中で戦略物資の安定確保が課題となっています。また、鉱物種類によっては精製プロセスで大量のエネルギーを必要とするため、環境面のみならず製造コストの面でも大きな負荷が生じています。このような課題を解決して循環型社会の確立に貢献する、安価で低エネルギー消費な革新的な精製・回収技術に注目しています。

河合 将史(Masafumi Kawai)
DMはこちらから:@MasaKawaiTT

輸送機器のカーボンニュートラル(CN)化に向けて、電動化や燃料電池が期待されるものの、航空機や船舶、大型車両や産業車両では電動化が難しく、燃料電池では水素供給インフラの整備等が課題になります。これに対して、既存の内燃機関を活用しながら、利用する燃料をCN化するバイオ燃料や合成燃料への期待が高まると考えています。現状では製造コストがボトルネックではあるものの、これを解決できる革新的な技術の登場に期待しています。

河合 将史(Masafumi Kawai)
DMはこちらから:@MasaKawaiTT

VC入社以前に在籍していた総合商社では、電力エネルギーや鉄鋼流通の事業に携わっていました。その経験からも、「鉄と水素」は持続可能な社会経済活動を実現する上で避けては通れない、素材とエネルギーのビッグイシューだと考えており、個人的にチャレンジしたいテーマです。技術的なブレークスルーと流通インフラの準備が重要な変化の因子になると考えており、これからの変化に注目しています。

水谷 航己(Koki Mizutani)
DMはこちらから:@KokiMizutani

サステナブルなエネルギー生産に必要な水素、そしてエネルギー生産だけでなく食料品生産にも必要なアンモニアの製造における効率化に資する触媒等の開発は、今後さらに注目を集めると考えています。
水素に関しては、現在の水素製造の主流となっている蒸気メタン改質(SMR)や水電解のプロセスをより効率的かつ環境に優しい方法で行うための触媒に期待しています。アンモニアに関しては、現在の主流製造法であるハーバー・ボッシュ法は、高圧と高温を要求し大量のエネルギーを消費し、さらにその過程で大量のCO2を発生してしまっています。そのため、より低エネルギーで環境負荷の少ないアンモニア製造法への移行を可能とする技術に注目しています。

曽我部 崇(Shu Sokabe)
DMはこちらから:@shu_sokabe


ジェネシア・ベンチャーズのキャピタリストが今年注目する投資領域、いかがだったでしょうか?

ぜひこれら領域での事業アイディアをお持ちの方がいれば、フォーム各キャピタリストのSNSからご連絡ください!起業前やアイディアが粗い段階の壁打ちでも大歓迎ですので、ぜひオフィスやオンラインでお話しできればと思います。

また、ここに記載のない領域での壁打ち・資金調達の相談も、もちろん行っています!あくまで「特に注目している領域」としてのピックアップなので、気兼ねなくコンタクトしていただければ幸いです。

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