チームのアシスタントとして、“シードVCの成功のパズル”の1ピースを担う|市原 めぐみ
ジェネシア・ベンチャーズは2016年の設立以来、「新たな産業の“種”から”最初の芽”を出すこと」を自分たちの役割だと考え、一貫して創業初期のスタートアップの1stラウンドにおいて投資をしてきました。まだ事業アイデアしかない、起業家一人だけのチームで組織もオフィスもない、そんなフェーズのスタートアップに投資し、未来をより豊かにするサービス/プロダクトを広く世の中に届けるために私たちも“チームの一員”という意識で伴走しています。
2022年に、国が主導する「スタートアップ育成5か年計画」が策定され、日本のスタートアップに各方面からの注目と投資マネーが集まり、また、スタートアップを生み出し育てるためのエコシステムも各地・各所で大きく育ちつつあります。
その中で、新しい技術、新しいサービス/プロダクト、そして新しいリーダーたちとともに、「社会に対して大きなインパクトをもたらすスタートアップを生み出すこと」を担うのはやはり、創業初期=シード期から投資をするベンチャーキャピタル「シードVC」であると、そして、私たちがまさにその当事者であると考えています。
本シリーズ『シードVCのシゴト観』では、ジェネシア・ベンチャーズで実際に働くメンバーそれぞれが改めて考える「シードVC」の役割についてご紹介します。
- なぜ「シードVC」なのか?
- 「シードVC」としての役割やこだわりは何か?
- そして、ジェネシア・ベンチャーズで実現したいことは?
本稿の主役は、Exective Assistantのめぐみさん(以下:めぐみ)です。
- 聞き手・まとめ:Relationship Manager 吉田 愛
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みんなが輝いて見えた、ジェネシア・ベンチャーズとの間に感じた“ご縁”
カレンダーを見返していたら、私(吉田)がめぐみさんと最初の面談でお会いしたのが、2022年9月でした。そして、2023年7月にご入社いただきました。特に積極的に転職活動をされていたタイミングではなかったかと思いますが、ジェネシア・ベンチャーズの採用選考フローではどんな印象を受けていましたか?
ジェネシア・ベンチャーズとの出会いのきっかけは、ミキさんからのご紹介でした。社内の誰とお会いしても、皆さん、すごくエネルギーに満ち溢れてる印象でした。どんな障害でも乗り越えてやるぞ!多少躓いてもどうってことないぞ!みたいな、そういうオーラや雰囲気を感じました。目がキラキラして見えました。
キラキラ!そんなメンバーと一緒に働いてみたいと思ったきっかけなどはあったんでしょうか?
「違う方に内定を出そうと思う」と、私は一度お断りされたんです。それで、前職でのお仕事を続けていたんですが、その内定者の方からご辞退があったとのことで、「もう一度お話しさせてください」とご連絡をいただいたときに、「これは何かのご縁かもな」と感じました。前職には9年在籍していて、とてもいい会社だったんですが、シンプルな秘書業務を淡々とこなす毎日に、「このままでいいのかな・・」と少しだけ悩んでいた時期でもあったんです。転職活動をするなら早い方がいいだろうなと思いながら、なかなか動けていないタイミングだったので、ジェネシア・ベンチャーズとの出会いや改めてお声がけいただいたことは、ご縁かなと。どういう展開になるかはわからないけど、少しでも気持ちがあるのならチャレンジしてみたら?と、誰かや何かが背中を押してくれているということなのかなと。そんなことを感じて、飛び込んでみることにしました。
その時点で、VCのことやVCでのご自身のお仕事のことはどれくらいイメージできていましたか?
田島さんのアシスタントポジションでの採用だったので、当然ながら、わざわざ予算を割いてそのポジションを設けるほどに会社や事業の規模が拡大していて田島さんもとてもお忙しいのだろうなとは感じていました。そうした中で、スケジュール管理などの基本的な秘書業務は前職での経験が活かせるだろうと思っていましたが、当時のジェネシアはまだ20人以下という会社規模でしたから、きっと秘書業務以外のカバー範囲も広くなるんだろうなという覚悟は持っていました。
これまで経験してきた業務+チャレンジ要素のどちらも予感していたということですね。当時は私も何人かの候補者の方と面談させていただいてたんですが、秘書業務の範疇を超えることはあまりしたくないという方が意外と多かった印象があるので、その「チャレンジへの覚悟」「境目を超える覚悟」がめぐみさんの強みであり、ベンチャーマインドというものかもしれませんね。
ただ、実際に入ってみたらチャレンジの方が9割って感じで、本気の「Wow!!」が出ましたね(笑)
Wow~~…
マルチタスクと圧倒的なスピード感で展開する、初めての景色
予感と覚悟はお持ちだったということですが、入社後に感じたギャップなどはありましたか?
それまでに経験してきた秘書業務とは少し違うんだろうなというイメージは持っていて、入社後はまさにその通りの景色が広がっていたので、ギャップはあまりなかったかもしれません。もちろん、衝撃はありました。150社超の投資先があって、常時全社とではないにしてもそれぞれの起業家の方々と深く関わっていたり、投資先以外の方々とも同時進行でいろいろなことが動いていたりと、マルチタスクやスピード感が度を超えているなぁと。私自身はマルチタスクに苦手意識があったので、ここは伸びしろだなと気持ちをつくりました。
ちなみに、それまでの秘書業務というのはどんな感じだったんでしょうか?
私が秘書としてやりとりするお相手は、やっぱりエグゼクティブの秘書の方々で、秘書同士のコミュニケーションが業務の7-8割でした。部署とのやりとりも必ず窓口の方を通していたので、関わり合う人の数が圧倒的に違います。
秘書の方同士であれば、ある程度の共通言語や暗黙知で通じることもありそうですが、150人の起業家の方々と~となるときっと全然勝手が違いますよね。
起業家の方もいらっしゃれば、投資家や協会の方などもいらっしゃいますから、お名前を覚えるのも一苦労。田島さんから「起業家とはどんどん距離を縮めていこう」と言われていたこともあったのですが、誰を「さん」とお呼びしてよくて、誰を「様」とお呼びしなければいけないのか、といったところから試行錯誤で、当初はなかなかさくさくと仕事を進められないもどかしさがありました。今思えば、ちょっと慎重になりすぎていたのかも・・
めぐみさんがお一人お一人に丁寧に対応しようとされているからこその反応だと思います。それに、そういう慎重さやしっかりとした対応から生まれる信頼感みたいなものは、私たちがまさにめぐみさんに期待していたことだったかなと。まだまだベンチャー感があって若いメンバーも多い中に、安定感や安心感をもたらしてくださったことは期待通りだったんじゃないかなと思います。
チームのサポートを通じて、成果のパズルの1ピースを担っている
今お仕事を進めていく中で感じていることなどはありますか?
VCの秘書ポジションってまだまだ少ないと思うので、秘書としていろいろなことを相談できる仲間がもっとほしいなと思っています。JVCA(日本ベンチャーキャピタル協会)で田島さんと共同会長を務められているUTEC郷治さんの秘書さんとはとても仲良くしていただいていて、初めてお話しできたときには、同じポジションだからこそ共感できるようなお話がたくさんできて本当にうれしかったです。
VCは少人数でベンチャー的なチームも多いので、投資担当者やファンド管理担当者がフロントもバックも担うケースや若手育成のための業務と位置づけていることも多いように感じます。ただ、これからVCがより大きな投資マネーを運用していく中では、チーム全体の活動を円滑にするようなアシスタントやサポートポジションのニーズも増えてくるような気がします。
前職やその前の会社も、管理職には秘書がつくことが当たり前という環境でした。でも、VCにはまだそのポジションが確立されていない。ということは、今実際にその希少なポジションにいる私は、特にしっかりと価値を出していかなくちゃいけないと思っています。そういう、今までにないプレッシャーみたいなものはすごく感じています。
現在進行形ですか?
直なところ、今は忙しすぎてそんなプレッシャーを感じる余裕もないというか・・当初よりは多少鈍感になってきました(笑) ただ目の前のことに集中するのみという。
いいバランスなんじゃないでしょうか。めぐみさんはご自身のミッションについては、何か言語化されていますか?
私にとっては田島さんのアシストがもちろんトッププライオリティです。でもそれだけでなく、メンバー全員やチーム全体が目の前の業務にちゃんと専念できるように、私がしっかりとサポートしたいと思っています。潤滑油的な存在になれることが理想です。雑務というか、誰でもできるような小さな仕事でも、最高の成果のためには欠けてはいけないものがたくさんあるので、私もその成果のパズルの1ピースを担っているという感覚でどんな仕事にも臨む姿勢でいます。
やっぱり楽しく働けるのが一番!というシゴトの原動力
めぐみさんはキャリアを通じて、アシスタント職を選ばれてきているんでしょうか?
そうですね、前職は秘書、前々職はオフィスマネージャーみたいな職種でした。上司や仲間の業務サポートや就業環境の整備みたいな方向性は共通しているかもしれません。
それは、そういうシゴトが好きだったり自分に合っていると思っていたりするからなのか、たまたまの流れなのか?というとどうですか?
半々でしょうか。観葉植物のお手入れをしたりウォーターサーバの掃除をしたりしていると、ふと「私何してるんだろう・・」と思う瞬間もありますが、「いつもありがとう」と言われたら嬉しいですし、そういう作業が嫌いなわけでもないですし、やっぱり皆さんが楽しく働けるのが一番!と思ってるんでしょうね。
楽しいのが一番!同感です。
シゴトに使う時間ってかなり大きい割合ですから、それは、楽しい方がいいですよね。そういう意味では、私は「このシゴトがしたい」というよりも「皆さんが楽しく働けるようにこれをしよう」とか「私が楽しく働くためにこれをしよう」という感覚でシゴトをしているのかもしれません。
個人的には、そういう感覚を持っている方ってすごく特殊だと思うんです。例えば「ウォーターサーバの掃除」を毎日のルーチンワークとして指示されていれば、それは“誰でもできるシゴト”だと言えるかもしれませんが、そうして明確に指示されていなくても気づいて実行する人と、気づいても実行しない人やそもそも気づきもしない人との間には大きな違いがあると思います。その行動が売上のためになるとかお給料に影響するとか、成果がわかりやすいならまだしも、そうではない“名もなきシゴト”を「みんなのため」「自分のため」という動機でアグレッシブにできるというのは、ものすごい特殊能力だしレアキャラだと思うんです。
ジェネシアでは、代表の田島さんご自身もいろいろと気づいて指摘されるじゃないですか。会社で一番上の立場である方がしっかりとオフィス環境のことに目を向けていて、気づいたことがあればチーム全体に声をかけている。そのこと自体も、みんなでやりましょうっていう姿勢も、素敵だなと思います。
同じ職種というつながりの中でも、支え合える関係構築を
今、シードVCであることを感じる瞬間ってありますか?
そこまでないかもしれません。ベンチャーという意味では、いろいろな人を巻き込んで~というシゴトの仕方に、最初はすごく抵抗がありました。これまでの職場では、役割がしっかりと分けられていたので、自分のシゴトは自分で完結させるということがほとんどで。何でもかんでも訊くというのもNGでした。やりとりの相手はもちろんいますし、プロジェクトチームというものもあったりはしましたが、自分が任されたシゴトに別の人の手を借りるということが文化・習慣としてあまりなかったんです。だから、人を巻き込んで当たり前、むしろ「巻き込み力」が大事だ、というカルチャーには本当に衝撃を受けたというか・・でも、嬉しかったです。私自身、もっと助け合いの精神を持とうと思いました。
めぐみさんが“サポートの提供者”ではなく、みんなでいいチームをつくるための“台風の目”というか“中心人物”になっていくイメージでしょうか。
今は少しずつキャッチアップしていて、特にジェネシアのコア・プリンシプルの一つである『Achieving Shared Leadership』を意識するようにしています。「アシスタント」=「人助けのために陰で動く黒子的存在」というイメージが強い中で、皆さんを進むべき方向に導いて行くのも黒子の役目だと、「自分はほとんど表には出ることはないけど、こういった形でリーダーシップを取れるんだ…!」と、今日までの業務を通じて気付かされる場面が何度かありました。巻き込み力がまだまだ弱い自分なのですが、自分から巻き込むときは、相手の立場や状況を配慮しながら伝えたい用件を丁寧、簡潔、かつ分かりやすく述べるよう心掛けています。
これからチャレンジしてみたいことや取り組んでいきたいことなどはありますか?
繰り返しになりますが、横の繋がりをもっと増やしていきたいです。キャピタリストの方たちもいろいろなネットワークや繋がりを構築されてると思うので、VCでアシスタント業務を担当している方がいれば、積極的につながっていきたいです。横の繋がりがほぼゼロだった入社当初と比較して、今は同じアシスタント職の方々数名と実際にお会いする機会もあり、それによってその後のオンラインコミュニケーションがとても取りやすくなりました。面識を持つことによって、お互いの距離もぐっと縮まり仕事がしやすくなったというか。同じアシスタント目線でお話を聞いてもらえてアドバイスを下さる方の存在は大きく、とても心強いです。自分も(お役に立てるかどうかは別として)日々の業務を通して仲間の支えになってあげられるような、そういうコミュニティが構築できたらと思ってます。