【シード調達のリアル #2】初回面談|Finance by Genesia.
面談の質を高める「出会い方」と「アプローチのコツ」
私自身のこれまでの投資経験を振り返ると、実際に投資へと至った起業家との出会いは、大きく以下の2つのパターンが大半を占めています。
- 投資先(支援先)の起業家からのご紹介
- 他のVC(ベンチャーキャピタル)からのご紹介
すでに関係値のある方からのご紹介は、対話のスタート時点から一定の信頼関係が担保されているため、スムーズに事業の本質的なディスカッションに入れるという大きなメリットがあります。
また、私自身のキャピタリストとしてのスタンスは、「とにかく手当たり次第に多くの起業家とお会いする」というものではありません。自らの中にその時々に「複数の投資テーマ」を設定し、そのテーマに沿った事業を運営・検討されている起業家の方との対話を優先しています。
なぜなら、自らテーマを持つことで、海外の類似事例や市場のステークホルダーに対する事前のリサーチを深め、「自分なりの事業仮説」を持った状態で、起業家の壁打ち相手として質の高いディスカッションができるよう意識しているからです。
こうした背景を踏まえ、起業家の皆さんが私たちVCにアプローチする際には、ぜひ以下の2点を意識してみてください。
- 共通の友人・知人を探し、可能であれば紹介を経由してアプローチする
- VCが日々発信している「投資テーマ」をチェックし、その文脈に沿ってアプローチする
事前にこのステップを踏んでいただくだけで、初回面談が単なる「自己紹介」で終わらず、お互いの事業仮説をぶつけ合う、より有意義でスムーズな時間になるはずです。
投資検討で私たちが重視する「3つのポイント」
私たちが投資検討を進める際、主に「市場(マーケット)」「経営チーム」「戦略」の3つのポイントを重要視しています。
ただし、私たちが主戦場とするシード(創業初期)ステージにおいては、特に「市場」と「経営チーム」の2つに大きなウェイトを置いています。なぜなら、シード期の「戦略」は、事業の仮説検証を進める過程でどんどん変化(ピボット)していくのが当然だからです。
では、重視している「市場」と「経営チーム」について、具体的にどのような観点でディスカッションさせていただいているのかをご紹介します。
1. 市場(マーケット)の魅力度
単に「市場規模(マーケットサイズ)が大きいか」だけでなく、以下の観点を掛け合わせて有望な事業領域かどうかを判断しています。
- トレンドとの合致: 世の中の大きな変化や潮流に沿ったサービスか
- 競合の混み具合: 対象領域における競合(既存の代替手段やプレイヤーを含む)がどの程度ひしめき合っているか
- ニーズの強さ: そのサービスが、世の中にどれだけ強く求められているか(ペインの深さ)
- 抵抗の強さ:スタートアップのスピード感で拡大する際に、摩擦を生み出すファクターを取り除くことができるか
2. 経営チームのポテンシャル
シード期の段階では、まだチームが小さく未完成であることがほとんどです。だからこそ、今の完成度よりも、ディスカッションを通じて以下の要素を感じられるかを大切にしています。
- 仮説の解像度の高さ: 事業に対して、独自の深い洞察や仮説を持っているか
- 実行(エグゼキューション)能力: 仮説を泥臭く検証し、やり抜く総合力があるか
- チーム構築力: 将来的に、優秀な人材を巻き込み「強い経営チーム」を作っていける創業チームか
このように整理すると、少し「審査」のように聞こえてしまうかもしれませんが、目的はあくまで「同じ船に乗って、一緒に大きな壁を乗り越えていけるか」のお互いの目線合わせ、仮説を共に構築していくためのプロセスと捉えていただければ嬉しいです。
初回面談では、「思考の変遷」を聞かせてください
投資検討のポイントとして「市場・経営チーム・戦略」を挙げると、どうしても初回のピッチ(プレゼン)が「いかに市場規模が大きいか」「いかに戦略が緻密か」という説明に終始してしまうことがあります。もちろんそれらも重要な要素ですが、実は初回の面談において、私たちはそこまで完成された答えを求めているわけではありません。
私が初回面談の場で最も知りたいのは、起業家や経営チームの「思考の変遷」です。具体的には、皆さんがどのような軌跡を辿り、どういった背景で今の意思決定に至っているのか、以下のようなポイントに注意深く耳を傾けています。
- 起業の原点: なぜ、起業という道を選んだのか
- チームの結成: なぜ、今のパートナー(共同創業者)と組むことにしたのか
- 市場の選択: なぜこの領域を選んだのか、他の選択肢は検討しなかったのか
- 戦略の背景: 今の初期的な戦略は、どのようなプロセスで決めたのか
- 組織の理想像: 将来、どのようなチームを作っていくのが理想か
- 現在のリアル: 現時点で直面している「最大の壁(チャレンジ)」は何か
なぜこうした問いを重ねるのか。それは、シード期においては「何をやるか(What)」以上に、「誰がやるか(Who)」が重要だと考えているからです。
事業の方向性(What)は、検証を進める中でいくらでも変化していくものです。だからこそ、起業家の皆さんがどのようなバックグラウンドを持ち、どんな強い想いを持ってこの事業に向き合っているのかという「揺るがない原点」を、まずは深く理解したいと考えています。
面談は「審査される場」ではなく「相互理解の場」
最後に、私が日々起業家の皆さんとお会いする中で最も大切にしていることをお伝えします。それは、資金調達の面談を「投資家が一方的にプレゼンを聴いてジャッジする場」ではなく、「お互いの理解を深め合う場」にすることです。
スタートアップの経営は、長く険しい長期戦の連続です。だからこそ起業家の皆さんにも、私たちVCとの面談を通じて「投資家の人となりや、自分たちとの価値観の相性」を、ぜひシビアに見極めていただきたいと思っています。
投資家を単なる「資金の出し手」や「審査員」ではなく、「これから共に困難を乗り越えていく、チームメンバーの一人」として捉えてみてください。お互いが対等なパートナーとしてフラットに語り合えたとき、そこから事業を加速させる最高のパートナーシップが生まれると私たちは信じています。
