【シード調達のリアル #3】起業家と事業領域|Finance by Genesia.
シード期の投資検討における「3つの基本構造」
私たちジェネシア・ベンチャーズは、シード(創業初期)ステージに特化したVCです。
そのため、私たちが起業家の皆さんと初めてお会いするタイミングでは、プロダクトがまだ存在しなかったり、具体的な事業戦略が固まりきっていなかったりするケースがほとんどです。
「現時点での完成度」でその事業が持つ可能性を推し量ることが難しいシード期だからこそ、私たちは投資判断(=同じ船に乗ってご一緒できるかどうか)において、主に以下の「3つの軸」を重要視しています。
- 挑戦する「事業領域」の魅力度:起業家が挑む市場やテーマについての、投資家目線で見た、急成長を目指すスタートアップとしての可能性
- 「起業家」自身の人となりやチームの魅力:想定外の困難が訪れたとしても、私たちが「この起業家とともに泥臭く伴走し続けたい」と心から思えるか
- 生み出す「社会的インパクト」の大きさ:その事業が成功した未来において、世の中に対して大きな価値やポジティブなインパクトをもたらせるか
これら3つのポイントについて、私たちが具体的にどのような視点を持っているのか、一つずつ詳しくお話ししていきます。
私たちが起業家と共に挑みたいと考える「事業領域」とは? 時代の潮流とポテンシャルの見極め
私たちが事業領域(マーケット)のポテンシャルを考える際、最も重視しているのは「大きな時代の方向性に沿っているかどうか」という視点です。
世の中の変化には、普遍的かつ不可逆な「大きな波」が存在します。例えば、ダイバーシティ&インクルージョン、個のエンパワーメント、シェアリングエコノミーといった社会的な変化や、多重取引構造の解消、オンデマンド化、サブスクリプション化といったビジネスモデルの転換などがそれにあたります。
創業初期の段階で、事業の正しい道筋(戦略)をすべて完璧に見通すことは、誰にとっても不可能です。私たちのこれまでの経験則からも、大きく飛躍したスタートアップは例外なく、高速で試行錯誤を繰り返しながら、この「大きな時代の方向性」に沿う形で成長してきました。 だからこそ私たちは、今の戦略や戦術の確からしさよりも、「その事業が進もうとしている方角が、時代の潮流と合っているか」を何よりも優先して見ています。
加えて、もう一つの重要なポイントが「マーケットポテンシャルの見極め」です。ここでは主に以下の観点でディスカッションを行っています。
- 変化の強さと市場規模: 変化を引き起こす要因の強さと、そこから生まれるマーケットサイズは十分大きいか
- 提供価値の本質: 既存の競合や代替サービスが提供している「価値の本質」はどこにあるか
- アプローチの筋の良さ: それらを踏まえ、最も「水の勢い(=顧客からの強いニーズと成長のモメンタム)」があるアプローチを取れているか
ただし、競合がまだほとんど存在しない未知の領域(ブルーオーシャン)に挑む場合は、判断のウェイトが少し変わります。その場合は、「なぜ、他の誰でもなくあなたがこの事業をやるべきなのか(Founder/Market Fit)」という、起業家自身と事業領域の強い結びつきや熱量に、最も大きなウェイトを置いて判断することが多いです。なぜなら、変化の強さや市場規模が十分大きければ、投資判断時点におけるアプローチの巧拙よりも、「事業を進める中で見えてくる現実を踏まえ、スピード感を持ってそれらをアップデートし続けられる起業家(経営チーム)なのか」という点の方が、はるかに重要な意味を持つと考えているからです。
私たちが伴走したい起業家像:「強い欲求」と「仲間への光」
私たちがご一緒したいと心から願う起業家像。それを一言で表すなら、「澄んだ水で満たされている、大きな欲求のタンクを持った起業家」です。
事業を成功に導くためには、泥臭い粘り強さや高いスキルが不可欠です。しかし、困難な道のりの中でその情熱や努力を持続させる最大のエネルギー源は、根底にある「純粋で強い欲求(原体験や使命感)」だと考えています。だからこそ私たちは、表面的な戦略だけでなく「なぜ、あなたがその事業に挑戦するのか」を、深い欲求のレベルで理解することを何よりも大切にしています。
具体的には、その「澄んだ欲求」を持った上で、以下の2つの力を持つ起業家の皆さんと深く長く伴走したいと考えています。
- ビジョンに共感を集める「巻き込み力」:大きなビジョンを実現するためには、優秀な仲間を集める力が欠かせません。実は資金調達も単なる資金集めではなく、「想いを共にする『投資家』という仲間を集めるプロセス」に他なりません。
- 自分ではなく「仲間に光を当てる」リーダーシップ:個人の手柄ではなく、「チーム」を主語にして考え、行動できる起業家であるかどうか。リーダーが仲間に光を当てることで、メンバー一人ひとりの力が足し算ではなく「掛け算」になり、チームとしての成果が最大化されると信じているからです。
「社会的インパクト」と「収益性」はトレードオフではない
ビジネスの世界では、「収益の追求」と「社会的インパクト(社会課題の解決)」はトレードオフ(二律背反)だという意見を耳にすることもあります。しかし、私たちは決してそうは考えていません。むしろ、社会的インパクトを追求することこそが、結果として中長期的な収益性を高めると考えています。
例えば、消費者が環境配慮型の商品を積極的に選ぶようになった事例や、搾取構造に陥りがちな建設・運送業界で多重下請け構造の見直しが進んでいる動きは、その好例です。社会をより良くする本質的な価値を提供し、長期間にわたって顧客や社会から「選ばれ続ける」こと。中長期的な視点に立つと、それこそがスタートアップの企業価値を最大化していく最も確実な道だと考えています。
私たちジェネシア・ベンチャーズは、「すべての人に豊かさと機会をもたらす社会を実現する」というビジョンのもと、未来に向けて以下の6つのチャレンジを掲げています。
- 豊かな生き方: 個が自身のWill(こうありたい)を選択し続けられる社会の創造を通じて、幸福度の高い、豊かな生き方を実現する
- 循環型経済: 時間・モノ・空間などのシェアやリサイクルを通じて、利用効率や生涯価値が最大化される、持続可能な経済活動を実現する
- 情報・機会の均等: 情報の非対称性が生むさまざまな「負」や「不」の解消を通じて、誰もが得られる機会の最大化を実現する
- 叡智の発揮: ソフトウェアやテクノロジーとの共創を通じて、人間の叡智を活かした働き方を実現する
- 共存・共栄: 生きものや自然と共存・共生できる社会の創造を通じて、持続可能な生態系を実現する
- 健やかな社会: 日進月歩の医療技術の発展を通じて、その恩恵を受けられる、心身にやさしい健やかな社会を実現する
圧倒的な事業成長と社会を大きく前進させるインパクト。この2つを高い次元で両立させ、上記のチャレンジに共に挑んでいただける起業家の皆さんと、私たちはお会いできることを心待ちにしています。
