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【経済産業省/PIVOT】Model Locally / Fit Globallyで主権を取り戻す ―ミドルウェア戦略から描く日本の勝ち筋|Players by Genesia.

インタビュー

エンタープライズITの世界に身を置き、国内の起業家に投資する立場として、ITの主要市場の多くを外資プレイヤーが押さえている状態に対して、ずっと薄い危機感を感じてきました。SaaSにしろクラウド基盤にしろ、気づけば足元の業務インフラの相当部分を海外勢に依存している。その質感は、現場に近いほど肌で感じるものだと捉えています。

ただ、この危機感はどこか漠然としていて、自分の中でも明確な像を結びきれずにいました。それを「デジタル赤字」という言葉で過不足なく課題設定し、国際収支というマクロの話で終わらせず、ミクロ構造まで踏み込み問題設定を提起。その上で国内事業者の勝ち筋まで本気で描こうとしているレポートに出会ったとき、正直なところ感動しました。こんな仲間がいるものか、と。

外資プレイヤーを否定する意図では全くありません。彼らの優れたプロダクトは私自身の日々の業務を支えるものでもあり、世界の働き方を大きく変えてきました。

ただ、特定国のプレイヤーが、ある日突然サービスの提供範囲を絞る— そんな事態が現実味を帯びてきた今、依存そのものよりも、オルタナティブ(代替手段)を自分たちの手元に持っておけるかが、産業の自立を左右する時代になってきたと捉えています。代替がある、という事実そのものが交渉力になり、価格や条件のコントロールを取り戻す道筋にもなる。

そんな問題意識を、誰よりも構造的に考え抜いているのが、経済産業省の若手新政策プロジェクト『PIVOT』の津田さん・松尾さんでした。お二人と同プロジェクトチームがまとめた『デジタル経済レポート』を読み込むほどに、どうしても直接お話を伺いたくなり、この場を設けさせていただきました。

日本の勝ち筋はどこにあるのか

ミドルウェアという補助線をめぐって、じっくりと伺っていきます。

  • デザイン:割石 裕太さん、写真:尾上 恭大さん
  • 聞き手・まとめ:ジェネシア・ベンチャーズ Investment Manager 黒崎 直樹
  • 編集:ジェネシア・ベンチャーズ PR Specialist 吉田 愛
  • 以下、敬称略

津田》起業が身近にあった環境から、実際にエストニアでの起業に至るまで

黒崎:

今回は、2025年4月に経済産業省(以下:「経産省」と表記)から発表された『デジタル経済レポート』のプロジェクト編集チームである『PIVOT(ピボット)』の津田さんと松尾さんにお話を伺います。
まずは、今のポジションに至るまでのお二人のキャリアの変遷についてお伺いできればと思います。津田さんからお願いできますか?

津田:

うちはずっと起業家の家系なんです。江戸時代の純百姓だった樋口家が先代になりますが、津田家は農業が嫌だってことで分家して、私が六代目になります。六代全員が起業していて、かつ事業承継をしない方針の家なので、それぞれが好きなことにチャレンジして必ずその代でEXITしています。そういう意味では、起業ということがすごく身近にある家庭環境で育ってきたので、少なくともツールとしての起業はいずれ絶対にするだろうとずっと思ってきました。最初はそれこそデザインとかイラストレーションを請け負う個人事業主として稼いでいた期間が長かったんですけど。

黒崎:

ご経歴を拝見すると、最初はエストニアで起業されていますよね?それはどんな経緯だったんですか?

津田:

高校の時にアメリカに留学したんですけど、そこで「エストニアっていうおもしろい国がある」という話を聞いて、大学ではエストニアに行きたいと元々考えていたんです。でも、進学した大阪大学の学部間提携先にエストニアがなかったので、普通に受験して、ダブルディグリーという格好でタリン工科大学に進みました。資金は文部科学省の『トビタテ!留学JAPAN』に出してもらって。

黒崎:

そんなにエストニアに惹かれていたんですね。

津田:

エストニアはスタートアップの国。当時自分でやっていたフィンテック事業が税金関係で法成りをするタイミングでもあったし、現地のエコシステムを自分で体験したかったこともあって、エストニアで起業しました。

黒崎:

学生起業だったんですね。その頃やっていたフィンテック事業というのは具体的には?ご自身でソフトウェア開発もされていたんですよね?

津田:

小さい頃からソフトウェアが大好きだったので、もちろん自分で開発していました。当時は、BtoBのトレーダー向け金融指標のインジケーターと取引履歴の分析ツールで、金商法規制の対象外の投資前後の両方でLTVを上げる戦略でSaaSを提供していました。

黒崎:

渋いですね。

津田:

ちなみに、ミドルウェアにも子どもの頃から興味を持っていました。小学6年生のとき、『RPGツクール』っていうツールがめちゃくちゃ流行っていて、私も親に買い与えられたWindows XPでマップチップやゲームシナリオを作っていました。『RPGツクール』ってJavaScriptで動いてるので、うまく動かなかったらRuntimeErrorが出るんですけど、アプリでもOSでもない層からのエラーという体験が、ミドルウェアとの最初の接点でした。

津田》日本からGo Globalな事業を生み出したいという想いから、経産省へ

黒崎:

エストニアでの起業から今のポジションに至るまではどういう経緯があったんでしょうか?

津田:

フィンテック事業をやっていて気付いたのは、 アプリケーションビジネスをやっていてもグローバルレベルでのスケールはあまり見込めないということでした。私は、日本からGAFAのようなプレイヤーを出したいと考えていましたが、現状のままでは小銭稼ぎの域を出られないという感覚がありました。そもそもエストニアは人口120万人くらいの小さな国なので、最初からGo Globalが前提でないとVCも出資してくれないんです。一方で、日本でやろうとすると東証にIPOするのが前提になる。2018とか19年当時は80億くらいのバリュエーションでIPOできる時期だったので、そういうマーケットではもうGo Globalできない感覚がありました。それだったら起業家としてじゃなく、政策側からマーケットメイクするアプローチの方が日本にとっても大きなインパクトが出るんじゃないかと考えたんです。

黒崎:

それで、学生起業から新卒で経産省というキャリアになるんですね。

津田:

就職先を選ぶにあたっては、私の中で因数分解した明確な軸がありました。①自分の成長曲線の勾配 ②カルチャーフィット ③人材競合しないこと ④社会へのインパクト。これらの関数を最大化させるところ。①と④は組織に依存するので、業界を絞ると、戦コンか外銀かVC/PEか中央官庁か総合商社あたり。②と③はトレードオフなので、この二つを最大化する場所はどこかって考えた時に、民間だと③はあり得るので、じゃあ官公庁かなと。経産省の中に「起業経験があるソフトウェアエンジニア」なんていませんから。そこで自分でデジタルの政策を作れれば、よりBorn Globalな産業が生まれやすい環境を日本のために用意できるだろうと考えて、経産省に入りました。

黒崎:

その「日本のために」ということを意識されるきっかけってあったんでしょうか?

津田:

高校の時に留学していたアメリカのウィスコンシン州がスイング・ステート— つまり、共和党と民主党の支持率が拮抗して選挙のたびに勝者が入れ替わる激戦州だったんです。私が留学していた当時はオバマ政権だったので当初は民主党だったんですが、徐々に共和党色が強くなってきた時期でもあって。ある意味ドラマティックなんですけど、政権の安定性を気にしたりオバマケアをめぐる論争が日常的にあったりして、政治のことを深く考えるようになったというきっかけはあったかもしれません。また、アメリカって素晴らしいなと思うのと同時に、日本もそこそこ良かったなと思うきっかけにもなったんです。日本はかなり政権が安定した時期だったこともあって、アメリカに行ったことで日本の良さを再発見した経験でもあったかなと思います。そこから、日本のために自分のレバレッジを効かせていければいいなと考えるようになりました。

黒崎:

留学を通じて、日本の良さを俯瞰できたんですね。そこに後のエストニアでの起業経験も結びついて、自ら一つの会社を経営するよりも、日本という国の動きにダイレクトに関わることができる官僚というキャリアにチャレンジしたくなったと。

津田:

当時自分の会社から得ていた役員報酬に比べたら、経産省に入ることで足元のキャッシュフローはどう頑張っても下がる状況でした。でもそれよりも、自分のバランスシートに乗っかる無形固定資産やそこから得られる将来的なキャッシュフロー、そして何より、日本の経済に対するインパクトには他では代え難いものがあるなと思いました。

松尾》三代続く繊維メーカーの跡取りを意識しながらのキャリア選択

黒崎:

続いて、松尾さんからも自己紹介をお願いします。

松尾:

うちも自営業なんですが、津田くんのところとは真逆で、アパレル系の家業があって私が三代目になります。なので、それを継ぐこともシナリオに入れた上で自分の将来設計を考える必要があったんですが、中学・高校・大学では自由にアメフトをさせてもらっていて、あんまり勉強はしてこなかったんです。その後、大学院くらいからようやくちょっと勉強するかというモードになって、MBAを取りに行きました。家業を継ぐのであれば、父の年齢を考えてもそこまでの猶予はないのかなという思いもありましたし、とはいえ、何の経験・実績も無いまま父の会社に入社して、いきなりボンボンが入ってきたと思われるのではないかということもあったので、自分としてはどこかに就職して修行をしてから家業の方にスイッチしようと考えていました。

黒崎:

それでまずは、マーケティングの企業に就職されたんですよね。

松尾:

私は父のことを経営者としても尊敬していて、仮に能力チャートみたいなものがあったとしたら、ほとんどの値で絶対に勝てないと思っていたんです。となったら、私は父が不得意なことで貢献していけばいいだろうと考えました。アパレル系の家業と言いましたが、繊維産業は完全にプロダクトアウトの世界なので、マーケティングという概念がほとんど存在しない。今繊維が苦戦しているのは、その根幹であるプロダクトで海外勢に負けてしまっているから。なので、そこに不足しているマーケティング×デジタルという値を押さえておけば、父を補完できると考えました。とはいえ、大企業に入ってしまうと昇進までに何年もかかってチームが持てないみたいなこともあるので、短期間でもある程度の成長が見込めるベンチャーのような会社に— と考えた結果、前職のヴァリューズに新卒で入社しました。失礼な話ですけど、「5年で辞めようと思ってるんですけどいいですか?」って言って就活して、本当に5年で辞めたという。

黒崎:

家業を継ぐということをピン留めした状態でキャリアを選ばれたんですね。

松尾:

それとは別に意識していたこともありました。僕は国立大のアメフト部出身だったので、言ってしまえば就職活動にやや有利なカードを持っていたんです。大学の同期は、大手のコンサル、商社、銀行など人気の企業にみんな決まっていくわけなんですけど、でも、それってあんまりおもしろくないなと。自分の人生だし、失敗しても自分の責任なので、だったらちょっとでもおもしろい方に飛び込んでみようと思ったんです。結果的に、電話営業から提案書の作成、案件の運用まで一気通貫で経験できましたし、チームも持たせてもらいました。そして、5年を過ぎたころには大体の仕事をやり切った感があって、そこまでの成長スピードと6年目以降の成長スピードを考えると、やっぱり5年が経ったその時が辞めどきかなと思い、父の会社に戻るつもりだったんですけど……

松尾》コロナ禍を経験したことで“業界そのものの課題”に気付き、経産省へ

黒崎:

新卒で入社したベンチャーでマーケティングを一通り経験して、家業に戻るつもりだったタイミングで想像もしなかったことが起きたんですね。

松尾:

はい。前職を辞める2-3年前— つまり新卒2-3年目で直面したのが、コロナ禍でした。それで、繊維業界はものすごい打撃を受けたんです。当時、飲食店が営業できずに仕入れた在庫(食品)を全部廃棄せざるを得ないといった話が取り沙汰されてコロナ支援金みたいなものが出ましたけど、あの場合、在庫っていっても数日か数週間分くらいの話なんです。一方で、繊維業界は1シーズンのものを一気に作るので、それだけの在庫を抱えることになるんです。ユニクロとかであれば同じ服を5-6年続けて、しかも価格を変えずに売れるのでほとんど影響がないんですけど、百貨店とかに売っているようなアパレルは一年も経てばもう流行遅れになってしまう。売るとしても、かなり価格を下げないといけない。ということで、繊維産業はかなり厳しい状態だったんです。

黒崎:

あまり大きく取り沙汰されていなかった印象ですけれど、ダメージは相当のものだったでしょうね。

松尾:

そうなると、私が学んできたマーケティングなどを活かした攻めの経営というよりは守りの経営に入らないといけないし、私の給料自体も会社の負担になるということで、父と相談してもう少し遠回りすることにしたんです。

黒崎:

外部環境がぐっと変わって、経営の前提も大きく方針転換することを余儀なくされたんですね。それで、家業を継ぐことを先延ばしにしたと。

松尾:

コロナ禍を通じて、“そもそもの課題”というところにも目が向いて、経産省というキャリアを考えるきっかけにもなりました。父の会社がどうというだけじゃなくて、業界全体の苦しさや厳しさを解決しようとしたら、もっと上流に行ってマーケットメイキングするしかないじゃないかと。また、デジタルマーケティングのキャリアを積んでいると、転職市場ではデジマ担当のオファーしか来ない。私としては、あくまでも一つの武器として選んだ専門性に閉じ込められるのは本意ではありませんでした。それなら経産省に入ることで、デジマの経験もベンチャーでの働き方も活かしつつキャリアを一段新しくリセットできる感覚もあり、また、民間の実態を知っている人間が官側に少ないという点もあったので、おもしろいチャレンジになると考えました。

若手中心のデジタル経済プロジェクト『PIVOT』で実現していきたいこと

黒崎:

お二人とも異色のキャリアだなとは感じていたのですが、その意思決定の軸として、「唯一無二であること」や「異端であること」を求められている志向にも共通項を感じました。さて、そんなお二人が関わられている経産省の若手プロジェクト『PIVOT』について、内容や立ち上げのきっかけを改めて教えていただけますか?

津田:

大臣官房が、いわゆるGoogleの20%ルールのような発想で、若手職員が業務時間の一部を使って自由にプロジェクトを立ち上げられる公募制度を設けているんです。5年に一度くらいの頻度でこういった若手プロジェクトが動いています。で、今回の公募のタイミングで、ちょうど私と松尾さんが手を挙げました。

黒崎:

テーマも予めある程度決まったものが下りてきているんですか?

津田:

大枠で、デジタル・コンテンツ・政策立案などの領域があるんですけど、中身はフリーハンドです。そこで、私がデジタル経済プロジェクトをやりたいと提案しました。日本の産業をどう勝たせていくかという問題意識がずっとあったので、このビークルを使って取り組もうと思ったんです。

黒崎:

プロジェクトチームには何人のメンバーがいて、どういった役割分担をしているんですか?

津田:

メンバーは6人です。私がプロジェクトリーダーで、松尾さんがマクロ担当。残りの4人は、例えば国際市場だとかをそれぞれ担当しています。最初に私が全ての論点と論点ごとのサブプロジェクトみたいなものを作って、その中で調査や数字作りを分担して、また最後に私がそれらの成果物をまとめるっていう分担です。

黒崎:

実際にはどんな動きをしているんですか?

津田:

メンバーが決まった後にキックオフをして、中間報告と最終報告の時点が決められたので、そのなかの約半年を走りきったのが今です。その成果として、今回『デジタル経済レポート』を出しました。

黒崎:

「デジタル赤字」というキーワードを手掛かりに、日本の経済と産業の課題や危機感を読み解いたレポートですね。

津田:

デジタル赤字については、たしか三年ほど前に財務省の神田財務官(当時)が懇談会の中で、「デジタル赤字とエネルギー赤字が日本の構造的な問題の一つだ」というレポートを出したところから、みずほ銀行の唐鎌チーフエコノミストによる用語の普及なども後押しして、民間側でも市民権を得てきた言葉です。でも、それって国際収支っていうマクロの話なので、企業会計のP/LやC/Fとは違って、もちろん赤字だからダメってことはないんです。内需が外需を上回っているから輸入が多くなっているという見方もできるので、それ自体は問題じゃない。ただ、デジタル赤字が特殊なのは、その背景にある構造の問題です。やっぱりというか、計上されている数字の多くが外資のソフトウェアサービスなんです。そこをミクロ的に見た時の示唆がこれまではほとんどなかったので、改めて、根源にある課題を突き止めて、その構造問題に対する産業政策についての示唆を出していくために立ち上がったのがこのプロジェクトです。

黒崎:

お二方は実際に工数の20%ほどを使って関わっているんですか?

津田:

そうです。あくまで本務がメインで、PIVOTは部活みたいなもの。でも、私自身は自分の書きたいレポートを書いているわけですし、みんなも経産省にとっていいものを作りたいっていうモチベーションがすごく高かったです。

黒崎:

次のマイルストーンはどこにあるんでしょうか?

津田:

次は第二期の報告になりますが、現時点でアウトプット方法は何も決まっていないので、自分たちで提案して、それを形にすることを目指しています。まずはやっぱりデジタル赤字の構造と課題をしっかりと啓蒙していく。あくまでPIVOTプロジェクトとしての方向性を経済産業省に対して提言する— 省内提言みたいな方向性で走り切ろうと思っています。

「2040年の強い日本経済」のために捨て置けない、目の前の問題解決に挑む

黒崎:

松尾さんがPIVOTに参画した理由はどんなものだったんですか?

松尾:

私は本務で「産業構造課」という本当にマクロなところを見ていて、その中でちょうど、2040年に日本がどうなっているかを推計しようというプロジェクトをやっていたので、PIVOTでもそのテーマに関わる示唆が出せないかと考えていました。マクロを前提として、今何が問題で、どこを解決して、どうその先に向かっていくのかってことをすごく真剣に考えていたので。 そこに、さっき津田くんからの話にあったエネルギー赤字の話— 鉱物性燃料のエネルギーの強い赤字が固定化しているという話があるにも関わらず、すでに顕在化しているデジタル赤字も放っておくとどんどん深まっていってしまうことがわかっている。一方で、マクロ的に見ると第一次所得収支はすごく増えているように見えるんですけど、海外で再投資されている金額も大きいので、つまり、日本円の価値はどんどん弱くなっていく。こんなに大きな課題が目の前に見えているのに、2040年の強い経済を考えていく上で、その実態も解決策も誰にもわからない状態はすごく気持ち悪いなと思いました。それで、そもそもの問題の構造や解決のための打ち手を明らかにするために、こちらのプロジェクトに参画したという経緯です。

黒崎:

取り組んでいるテーマに対して、一方向からだけではなく複数の視点から構造を解き明かして、問題を正確に把握したいというモチベーションが始まりだったんですね。

津田:

松尾さんはマクロ担当なんです。 私はどちらかというと周辺のエコシステムを見てるんですけど、最終的にはマクロの数字と繋げて話す必要があるので、とても重要な視点です。

松尾:

津田くんが言ったように、書きたいものを好きなように書いていいっていうプロジェクトなので、みんなのモチベーションも高いです。本務の方は、言ってしまえば、ある程度既に決まっている大方針に沿ったアウトプットを調整していくという類のものなので、目指すものが違います。思想としてはベンチャーに近いんじゃないかなと。進め方についても、経産省の中に確立されたプロジェクトマネジメントの方法があるわけじゃないので、津田くんのプロジェクトの設計とマネジメントのやり方自体がそもそも参加メンバーにとっては新しい体験だったと思います。

黒崎:

ある意味、皆さんの自己表現の場でもあるんですね。

津田:

まず「論点マネジメント」って何ぞや?ってところから始まったよね。

松尾:

そういうのは走り方も含めて、このプロジェクトはおもしろかったかなと思います。

Agentic AI時代における日本のコンセプトメイクを担った『デジタル経済レポート』

黒崎:

お二人が参画するPIVOTチームがアウトプットした『デジタル経済レポート』。私もそれを読み込んだことをきっかけに、この機会を設けさせていただきました。外部への公開にあたっては、内部で上席の方々に向けたプレゼンなども経ていると思うのですが、そのときの感触や反応ってどうだったんですか?

津田:

やっぱり、今までみんながもやもやしていたイシューに対して我々が仮説を提供した形になっているので、基本的には「言語化してくれてありがとう」という反応でした。経産省内には、マクロが得意な人、ミクロが得意な人、デジタルや業界に詳しい人などはそれぞれいるんですが、それらを一気通貫でしゃべれる人はそう多くないんです。その点、今回のレポートはそこを初めてナラティブに書き起こしたものと言えると思います。

もう一つ大きかったのは、「データに飲み込まれる世界(Data is Eating the World)」、「聖域なきデジタル市場」というコンセプトを打ち出せたこと自体だと思います。このコンセプトが捉えているのは、長期スパンで見たときに起こる構造変化で、具体的には次の三つです。

● Agentic AI(自律的に動くAI)の時代には、これまでのDXの延長線上の取り組みでは通用しなくなること
● 市場は漸進的(インクリメンタル)ではなく指数関数的(エクスポネンシャル)に伸び、既存の構造が根本から塗り替えられること
● コンピューティングの領域にも量子が入り、従来型コンピュータとのハイブリッドなアーキテクチャになる。その結果、上に載るミドルウェアやアプリケーションも、連続的ではなく断絶的に変化すること

こうした変化を一つの構造として見たとき、「経済・産業政策としてのナラティブ」と「技術政策としてのナラティブ」がきちんと揃っていること自体に、大きな意義があります。そしてこの整合は、二つの方向に波及します。一つは、マクロで見たデジタル分野の赤字構造を打破するという経済面のインパクト。もう一つは、ソフトウェア単体にとどまらず、SDX(ソフトウェア・ディファインド=ハードウェアや産業のしくみをソフトウェアで定義・制御していく流れ)が実現していく中での、データを中心に据えたインパクトへの貢献です。業界・産業・官・民の頭が揃ってきた感覚があるので、そういう意味で良かったと思っています。

黒崎:

マクロな視点を含めて一気通貫に課題を提示されたことで、私たちを含めた関係者に共通言語ができたことには非常に大きな効果があると思います。ある意味で、この『デジタル経済レポート』が、日本を一つのプロジェクトとして束ねるMVVのような役割を果たすのではないかと。

津田:

これは私の持論ですが、役所の仕事の本流っていうのはやっぱり文章を書くこと— 例えば法律にしても、国民の皆さんの権利義務の規範となる解釈を一字一句間違えないように書いていくことですから、そこでインパクトを出す文章を書けたことは、役人として、この上ない機会をいただけたなと思っています。

OSとアプリケーションの間のミドルウェア領域に、日本の勝ち筋を見出す

黒崎:

『デジタル経済レポート』の中に、「Model Locally / Fit Globally」というキーワードが出てきました。それらとの関連を見ながら、PIVOTチームがミドルウェアに注目する理由をお伺いできますか?

津田:

いろいろな側面から語れるんですけど、二つくらいに絞ってお話しします。まず前提として、今よく言われている「SaaS is dead」ですが、何がどうdeadなのかというところにこれといった定義はありません。Chat型のAIアプリケーションとAIエージェント、そしてAgentic AIが出てきたそれぞれのタイミングでdeadするものが違うので、そこを整理していく必要があります。ただ、結論から言うと、ClaudeのSkillsなんかを見てもわかるとおり、特にホリゾンタルなアプリケーションは相当に厳しい戦いになっていく。今生き残っているSaaSも、あくまでSoR(System of Record)としてデータを持っていることがMoatになっているだけで、今まで必要とされていたUIやUXにはもうほとんど意味がない。結局はAIエージェントが勝手に歩き回ってAPIを踏むだけなので、課金の対象も変わるでしょう。ソフトウェア自体の機能をSLAとして売っていたところから、成果をSLAで売るという世界観へ。Result as a Serviceや(Palantirの)Service as a Softwareみたいに、アプリケーション領域はもうどんどん溶けてきている。ただ、バーティカルな業務ドメインのナレッジにがちっとくっついたオペレーション領域はまだ学習データとして世の中に出ていないし、AIがいきなり代替できるわけでもないので、少なくともレポートの中では、まず短期的には特にBtoBのバーティカルなアプリケーションと、その下にあるミドルウェアに注力していきましょうという提言をしています。アプリケーション領域が融解して、プロトコルやAPIの領域に侵食してきている中で、やっぱりミドルウェアは大事だよねと。

黒崎:

コーディング自体が限りなくゼロコスト化していく時代に、アプリケーションレイヤーの在り方がこれまでと全く異なってくるという点は本当にその通りだと感じます。

津田:

アプリケーション・ミドルウェア・OSというソフトウェアの三層構造の中で、開発コストとドミナントデザイン強度のコスパがいいのは、やっぱりミドルウェアです。アプリケーションはもうかなりのレッドオーシャンで、ドミナントデザインを築けない。本気でSoRを握らないとMoatにすらならない。一方で、今からLinuxやWindowsみたいな汎用OSが作れるかというと、そっちはもう莫大な資本ゲームかつコモディティ化している領域。これはIaaSも同じで、計算資源インフラもめちゃくちゃコモディティ化しているので、今AWSを使ってもAzureやGCPを使っても基本的にほとんど差異がない。そうなると、オルタナティブ(選択肢)を育てることがすごく重要です。というのも、『デジタル経済レポート』にも書いてあるように、データ取引やデータ広告の領域も外資率が高いんですけど、日本の場合は、例えばデジタル取引においては楽天というオルタナがいるから、Amazonがなかなか価格を上げられないという側面もあります。そういう意味では、IaaSの領域で例えばさくらインターネットに頑張ってもらうことは、国家としてすごく重要なことなんですよね。

黒崎:

国産のサービスとして初めて、デジタル庁が提供する「ガバメントクラウド」の提供事業者として正式に認定されましたね。

津田:

でも、じゃあ今からIaaS領域だけでデジタル赤字を全部打破できるような構造改革ができるかっていうと、それは全く違う話です。 そうなった時に、コモディティ化して資本ゲームになっている汎用OSよりも、その上にあるミドルウェアの方がいいわけです。ミドルウェアって、席の数が多い割に一度座るとずっと座り続けられるマーケットなんです。例えば、私が一番の典型例として話しているのがUnityとEpic Gamesです。両社とも元々ゲームエンジンを作っていた会社ですけど、エンジンの物理シミュレーションを磨き続けた結果、サードパーティにアプリケーションがいっぱい出てきてライブラリが充実し、NVIDIAのCUDAと同じようなエコシステムになっていった。その結果、最近はどちらかというと“産業デジタルツインのエンジン”っていう認知になってきている。APIマネジメント、認証認可、オントロジー管理といった領域でも同様の構造があります。さらにAIが来たことで、ミドルウェアのレイヤー自体がAIネイティブに再定義されている。そこに入るとおそらくはかなり長い間席に座っていられるし、AIが発展すればするほど儲かる領域なんです。ディスラプトされにくい領域を日本が取っておくことが、将来的なグローバルプレイヤーを育てる上でも非常に重要です。

今起きている変化に対応しないと、次の変化のスタートラインにすら立てない

黒崎:

津田さんもおっしゃったように、ミドルウェア領域は新しいマーケットであるが故に、スタートアップのようなプレイヤーも大いに関わっていけますね。

津田:

すごく期待しています。ローカライゼーションする人月ビジネスでもなく、コンサルティングやシステムインテグレーション(SI)の延長線ではないんです。 そこはスタートアップにこそむしろ勝ち筋があると思いますし、やるならやっぱりBorn Global一択かと。 結局ソフトウェアのマーケットはほぼアメリカなんですけど、日本の製造業— 例えばトヨタやホンダ、ファナック、安川電機などとのリファレンスディールを取れれば、それがそのまま全世界のベンチマークになります。ソフトウェアで日本のローカルプレイヤーとディールを取っても、それは“ただの日本ローカルの話”で終わっちゃいますが、製造業の場合は違う。日本企業と契約を取ることでグローバル営業が一気にしやすくなる。そういう意味でも「Model Locally」「Fit Globally」という発想には一定の有効性があると考えています。あとは、アメリカで勝てる競争優位性のあるミドルウェアを起業家が作れるか、そしてそこに必要なお金をしっかりと資本市場からもたらせるかの勝負で、国もしっかりバックアップするっていう話だと思います。

黒崎:

そこをやっていかないと、デジタル赤字の根本的な解消には繋がっていかない。

津田:

なかなか厳しいと思います。そこで一定の成果を出せないと、次のタイミングで来るべきPost-Quantumのアーキテクチャ転換のところに投資する余力もなくなってしまう。 足元で稼いだプールを量子に注ぎ込めるようにしておかないと、次のそのゲームチェンジのタイミングでそもそもスタートラインに立てないっていう状況になります。

黒崎:

変化の続くある意味でおもしろいタイミングですよね。AIによって既に顕在化してる変化がある上で、次の、例えば量子コンピュータといった変化も見えている。この二段構想みたいなものが非常におもしろいなと思います。

松尾:

日本の今のデジタル化の構造については我々のレポートにも書いてありますけど、今のところはまだミドルウェアやアプリケーションよりもSIの領域が大きい。SIやコンサルは、日本が勝ちをキープしていた領域でもあった。でも、AIによってそのバリューチェーンの中位領域は厳しくなっていくことがわかっている。そうなると、価値を創造する領域がミドルウェアやOSに移っていくということはもう自明です。これは我々の将来予測とかではなく、一般的に目の前に起こっていることです。

政府にいながら手を動かして作る、エコシステム志向のミドルウェア『Open Data Spaces』

黒崎:

ミドルウェアというお話でいうと、津田さんが推進している『Open Data Spaces』に関してはPIVOTの枠組みではないと思うんですけど、そちらの概念についても語っていただくことはできますか?

津田:

Open Data Spacesもミドルウェアです。アルゴリズムの価値がどんどん落ちてきてデータがMoatになってくる中で、そのドメイン特有のデータ自体を経営資産としてどうマネジメントしていくかが今後一番大きな論点になってきます。実際にAIの学習には「事前学習 / Pre Training」と「事後学習 / Post Training」があって、事前学習のためのデータは基本的にインターネットテキスト上のデータに依存していますが、2032年までの間にそのデータはほとんど使い尽くされると予測されています。私は「データ枯渇元年」って言ってます。インターネット上にある175ZBのデータのうち、活用できる状態にあるのは40%だけなので、残りの60%をどう扱っていくかがアメリカでも大きな問題になっているんです。基本的にそれらは企業の中にあるわけですけど、全てがそのまま使えるかというと全くそんなことはなくて、しっかりとAI Readyな状態にする必要があります。モデルを作ることもそうですし、モデル作成後に歩き回るAIエージェントに対して自分たちのデータをどうコンテキストとして与えていくかもマネジメントしないとMoatがなくなってしまう。だから、前者については経産省も動いていますが、私のプロジェクトはどちらかというと後者です。AIエージェントに対して、提供者が自分たちのドメインデータをどうマネジメントしていくべきなのかっていう根本の問題意識のところに働きかけます。

黒崎:

公開情報は比較的今後数年のスパンで使い尽くされるので、企業が持つプライベートデータの扱いが肝になってくると。

津田:

今までのデータマネジメントのアーキテクチャって基本的には中央集権型で、データウェアハウスにせよデータレイクハウスにせよ、どこかに集めることが前提だったわけです。 でも、今AIが必要としているのは、データそのものよりも業務ドメインのコンテキストなんです。でも、データを中央のIT部門に集めた瞬間に現場のコンテキストは失われてしまう。2019年ごろにアメリカで出てきた「データメッシュ」っていうパラダイムは、現場のドメインが自分のデータを自分でプロダクトとして提供するという考え方ですが、それだけでは足りません。データの意味や業務ルール、アクション、ポリシーを論理的に表現する情報モデルであるオントロジー自体もプロダクトとして出せるようにしなければならない、というのが私の作っているアーキテクチャの新しい部分です。また、Agentic AIに対して、「あなたは誰か」「どのようにデータを使ってよいか」「どう利用制御するか」といったガバナンスの仕組みも必要になります。このオントロジー管理とアクセス制御をセットで実現することで、ようやくデータの提供者が自分のデータに主権を持てる世界が来ます。

黒崎:

津田さんご自身がプロダクトを作っているようなイメージですね。

津田:

“政府内起業”に近いイメージで、分散データマネジメントっていう新しい技術領域で私自身が最高設計責任者としてアーキテクチャやプロトコルを作っています。いわゆるガイドラインを作るのではなく、オープンソースとして技術仕様やソースコードを公開して、民間が商用レベルで使えるところまで仕上げることを目指しました。それを4月1日にすべて公開しています。要は、「ミドルウェアが大事」って言いっぱなしにするんじゃなくて、自分で具体的に手を動かしていく方針です。政府にとっての成功体験にもなるはずですし、これも一つのミドルウェア戦略かなと思ってます。

黒崎:

民間が『Open Data Spaces』を活用するユースケースについてもう少しイメージを持ちたいのですが。

津田:

そもそもお客さんがいない状態でやっているわけじゃなくて、国の方で、企業・組織を横断した分散データマネジメントのバーティカルなユースケースを何個かPoVとして捕まえています。例えば、自動車・蓄電池領域、航空業界の運航管理、化学物質の有害情報の連携など。私は彼らの業務要件を抽象化しながら踏まえて、最初からグローバル市場でのGo to Marketを目指したアーキテクチャを作っています。そして、実際に『Open Data Spaces』のアーキテクチャを参照した商用サービスももう何個かは立ち上がっているんです。どちらかというと、ここから大事なのは、エコシステムを作っていくこと。このオープンソースのミドルウェアを中核として、そこに対する開発者のコミッターをどうグローバルから呼んでくるかだったり、それをどうユーザー企業の中に入れていくかだったりを考える必要があります。大企業なら自分でデプロイできるところ、それができない中小企業などに向けたマネージドサービスをどう作るのかなども。それ自体が産業政策であり、エコシステムメイキングの本丸です。技術的にはある程度仕込み終わったので、これからはしっかりマーケットを作っていくフェーズです。

黒崎:

企業側— もちろんスタートアップにも多くのチャンスがありそうですね。オープンソースの土壌や土台が整った上に生まれるビジネスがいろいろありそうだと、個人的にもいくつかアイデアが浮かびました。

SDX(ソフトウェア・デファインド)に見出す、日本経済が自立していく未来

黒崎:

最後に、5-10年後の日本のデジタル・IT産業についての展望、そして日本のスタートアップエコシステムへのメッセージを聞かせてください。

松尾:

ずっと言われていますが、地政学リスクはもはやリスクと言えないレベルにまで現実化してきていますし、少子高齢化は日本だけでなく世界的に広がってきている状況です。中国もインドも少子高齢化が進んで自国の供給力の確保に回ると、これまで日本やアメリカやヨーロッパの経済成長の需要を支えてきた供給構造が完全に崩れ去ります。人の健康寿命が延びて需要は伸び続ける一方で、供給は足りなくなるという構造的なインフレ圧力が生まれてくる。その上に地政学的な分断があって、みんなで助け合っていこうという方向性になりにくいのが今の状況です。

そういったリスクが圧倒的に顕在化してきたのがここ数年の話だと思うので、これから5-10年って言っても正直全く先が読めないんですけど、構造的に直せる部分は今のうちに直しておかなければならないと思っています。エネルギーを含めた資源を持っていないのは仕方ないことです。でも、その上にデジタル赤字という構造問題まで放置したままでは余裕がなさすぎる。今回のレポートでその構造を明らかにしたと思っているので、対応策の方向性は見えてきています。

黒崎:

民間も協力して対応していくべき構造問題だと捉えています。

松尾:

SDXの観点で言えば、 日本のものづくりとデジタルの掛け算には可能性があります。ただし、そのSDの部分を軽んじてしまうと製造業の強みごと奪われてしまうリスクもある。Xの部分を持っている日本だからこそできるSDXをしっかりと強みに育てていくことで、日本経済が自立していく未来を描けるはずです。そこをナラティブに言語化できている人はまだ少ないと思いますし、経産省もまだ全体像を描けてはいませんが、今回のレポートを契機に、エンタープライズもスタートアップエコシステムも巻き込んで全体として取り組んでいけたらと思っています。

黒崎:

日本は外資には勝てないといったコメントも目にする中で、「いいや、まだまだやれる」と信じている僕自身も励まされます。その点、やっぱり今回『デジタル経済レポート』で課題の構造が解析された意義は本当に大きいと思います。民間だけでは採れないアプローチですから、この提言を受けて民間ができることを改めて考えていきたいですね。

テック・労働市場・エコシステムから見る、AIのイノベーションが日本のチャンスである理由

黒崎:

津田さんから見えている景色についても教えてください。

津田:

テック・労働市場・エコシステムという三つの観点から言うと、テックについては、松尾さんが言ったとおり、やっぱりSDXです。繰り返しになりますが、フィジカルAIやエンボディードAIといったかたちでソフトウェアデファインドな対象が製造業や製薬などに広がっていく中で、日本の製造業がグローバルリファレンスになり得るので、日本の製造業大手とのディールはそのままグローバルのベンチマークになります。
二つ目は労働市場の話で、日本は先進人口減少国家なので、そもそも人手が足りていません。地方創生においても、一番の論点は、高度経済成長からの労働生産性をどうやって2倍にしますかってところなんです。そんな日本では、AIが人間の仕事を奪うという文脈よりも、AIで人手不足を補うという文脈の方が強い。アメリカではAI導入に対するストライキが起きますが、日本では「なんとかして人をください」という需要があります。これは、AI活用において日本がホームグラウンドとして優位に立てる要素です。

黒崎:

供給力が足りないという人にまつわる課題が、AI時代においては機会に変化していくという理解です。

津田:

最後に、エコシステムについては、今の円安と低金利の環境に海外からの資金が集まっています。地政学的に安定した日本に資本が向かう構造があって、a16zも東京オフィスを開設します。今こそ、このダブついた資金を使って日本の起業家がグローバルに出ていくチャンスです。私がエストニアにいた頃は、ちょうどfreeeが上場したばかりのタイミングでしたけど、日本にはまだスタートアップエコシステムなんて言葉はなかったと思います。岸田政権の頃にようやくスタートアップ政策が強く押し出されて、今はライフサイクル自体も二巡くらいしてきたんじゃないかと。知識のあるシリアルアントレプレナーが増えてきて、VCのデューデリジェンス力も外資の参入によって高まってきつつある。東証にIPOして小さく留まるんじゃなく、最初からグローバルを目指す起業家も着実に増えていると思います。AIという破壊的なイノベーションが起きているこのタイミングは、日本にとって大きなチャンスだと確信しています。

※これは、2026年7月21日時点の情報です

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