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【創業の軌跡】Vol.6 タイミー/小川 嶺

創業の軌跡

創業の軌跡、第6回目となる今回は、タイミー創業者の小川さんにご出演いただきました。本稿は要約版になりますので、フルver.についてはぜひPodcastで聞いてみてください。

出演者
・タイミー/小川嶺
・ジェネシア・ベンチャーズ/一戸将未

自己紹介

一戸:

今回はタイミーの小川さんにお越しいただきましたが、タイミーはジェネシアの支援先でもあり、2018年8月に出資しています。初めての出会いは2018年5月なので、3年半ほどの付き合いになりますね。それでは小川さん、簡単に自己紹介をお願いします。

小川:

タイミーの小川です。1997年生まれの24歳でして、学生で起業したのですが、現在も立教大学経営学部の6年生です。C向けプロダクトが好きで、これまでに5つほどの事業を立ち上げていますが、全てC向けです。ユーザーファーストに、ユーザーの行動をイメージしながらプロダクトを設計していくことが大好きで、恐らく生まれ変わっても起業家になると思います。
最近は守安さんが入ったこともあり、今後の成長戦略について話す機会が多かったと思いますが、本日は創業期にフォーカスしてお話するので、改めて初心に戻るような気持ちでお話できたらと思います。

一戸:

現在の組織規模と事業について教えてください。

小川:

正社員が約200名で、東京の他に支社が6カ所あります。これまで累計で約90億円の資金調達を行っていますが、事業としてはスキマバイトアプリ「タイミー」を展開しており、現在は220万人のワーカーと2万社のマッチングを行っています。

起業に対する思い

一戸:

先ほどC向けプロダクトが好きというお話がありましたが、起業前は起業に対してどのように考えていましたか。

小川:

中高はサッカー部に集中していて、起業に全く興味はありませんでしたが、18歳のときに生徒会長になり、そこでリーダーシップを発揮することや、学校から予算をもらって文化祭を運営したことで、何か企画をするということが楽しいと思うようになりました。
また、18歳のときに祖父が亡くなり、もともと祖父の父である曾祖父が起業家だったのですが、曾祖父の代だけで終わってしまったため自分自身が復活させたいと思い、その際に右も左も分からないまま起業しようと考えました。それから今までに5つの事業をつくってきており、インターンも5社ほど経験しています。

事業アイデアの着想

一戸:

私たちが最初に出会ったのはプロダクトをリリースする前の2018年5月だったと思いますが、タイミーの事業アイデアを着想したのはいつ頃ですか。

小川:

2018年3月頃です。アクセラレータープログラムの「MAKERS UNIVERSITY」に参加していて、そちらに応募するために作ったプランのうちの一つが現在のタイミーの事業でした。そのときは事業もぼんやりとしたものでしたが、いろいろと考えているうちに非常にニーズがありそうだと思い、そこからアイデアを固めていきました。

一戸:

どのようなきっかけで事業アイデアを着想しましたか。

小川:

20歳のときにアパレル領域の事業で起業しましたが、そちらは失敗しました。お金がなかったので親から20万から30万円を借りて経営していましたが、会社を畳んでからはそのお金を返済しなくてはいけないので、そのときにアルバイトや日雇いで働く経験をしました。その中で、説明会へ行き、案件がメールで流れてきて、電話がかかってくるというのが今どきではないと感じ、スマートフォンだけで完結させられるのではないかと考えました。このようなサービスがないかを調べると、あまりなかったので、自分でつくってみようと考えたのがきっかけです。

一戸:

今でこそいくつか競合がいると思いますが、当時はいかがでしたか。

小川:

当社は後発で、3番手くらいで参入しました。ただ、競合のサービスの1日の案件数が10件ほどだったので、まだ追い越せるのではないかと思い、参入を決意しました。

一戸:

小川さんは起業する市場や領域を決める軸はありましたか。

小川:

領域にこだわりはありませんが、一貫しているのはC向けということです。初期は経営者がCPOである必要があると思うので、最も当事者意識が生まれやすいC向けが自分に合っていたと思います。

覚悟を決めたタイミング

一戸:

タイミーを始めるまでにいくつかの失敗があった中で、タイミーの事業アイデアを着想したときや、アイデアを固めていた段階で、これは間違いなく成功するという確信はありましたか。

小川:

それはありませんでした。確信が生まれたのは、藤田ファンドをリード投資家として3億円の資金調達を行ったときです。リリースしてから4ヶ月後になります。どういった確信かというと、PMFもしているわけではないときに、サラリーマンの生涯年収と同じ3億円という額を出資していただいたので、やるぞという意志が固まったということです。今考えるとたわいもないですが、過去に一度失敗していますから、逆に言うとそれほど怖かったのです。会社が簡単に成功するとは思っていないので悲観的に考えていました。

一戸:

3億円の資金調達で覚悟が決まったのですね。

小川:

もともと本気だったので3億円を調達できましたが笑、さすがにもっと本気でやらなければいけないと思いました。採用のアクセルを踏み込むことは、巻き込む人数が増えていくので怖いことでもあります。それまでは仲間うちで行っていたところがありましたが、それ以降はアクセルを踏んで積極的に採用し始めました。

泥臭く顧客を獲得する

一戸:

タイミーはワーカーとB側の顧客をマッチングするプラットフォームですが、プラットフォームの立ち上げ時においては基本的にどちらかの獲得に注力することが重要かと思います。タイミーの立ち上げ時にはB側の顧客の獲得に注力していたかと思いますが、その背景について教えてください。

小川:

立ち上げ時は大学3年生だったので、学生のネットワークは持っており、300人や400人のワーカーは簡単に集めることができました。あとはB側の顧客の獲得が重要だと思い、飛び込み営業も含めいろいろな営業をしました。学生起業で人脈はなかったので、求人媒体に日雇いの求人を出しているお店に自分で働きに行き、店長などに「うちで長く働いてほしい」とオファーをもらって、そこでタイミーを紹介して登録してもらうということを繰り返していました。非常に泥くさかったです。

一戸:

それは小川さん以外のメンバーも行っていましたか。

小川:

そのとき営業部長だった岡田と一緒に、飲食店やコンビニなどいろいろなお店に飛び込み営業を行っていました。

一戸:

タイミーは株主に飲食企業やその社長の方がいますが、それはどのように繋がっていきましたか。

小川:

結果的には、「外食の神様」といわれる、「牛角」などを展開するレインズインターナショナル創業者の西山さんや、「串カツ田中」の貫社長など、飲食業界の重鎮の方に出資していただくことができました。それによって、多くの飲食店にタイミーを導入いただけることになったと思います。ただ、当たり前ですが、最初からネットワークがあったわけではありません。地道に飛び込み営業などを行い、仲良くなった飲食店の社長に別の社長を紹介していただくことでつながることができました。
初めは、単にマッチングするだけのプロダクトでしたが、しっかりとクライアントファースト、ユーザーファーストに向き合ったからこそ、「飲食業界のために頑張ってくれている君たちを応援する」と思ってもらうことができました。その業界を本気で良くしたいと思えているからこそ、支援者が増えたと思います。スタートアップで大事なのは、そのような熱い思いを持ち、自分自身がこの業界の負を何とかしたいということを本気で言えるかどうかだと思います。

一戸:

小川さんの泥くささや手数の多さを生み出した原体験のようなものはありますか。

小川:

きれいなことをして失敗してきているからではないですかね。アパレル領域の事業を行っていたときは、AIやテクノロジーとしか言っておらず、頭でっかちになっていたと思います。事業を立ち上げる上では、ロジカルなことも大事ですが、泥くさいことを地道に積み上げられるかが重要だと思います。自分たちのエゴで売るのではなく、お客さまが本当に求めているものをつくり続けるのです。そういう意味では、泥くささというよりも、自分の中ではヒアリングというか、その人に向き合い何を求めているかを自分の目で確かめるために行っています。

当初のPMF仮説と実際のPMF

一戸:

当初小川さんとPMFについて議論をしていたときは、エリアを渋谷区に絞ってPMFを目指し、それからさらにエリア拡張して事業を展開していこうという話をしていたと思います。ただ、渋谷区でPMFを目指す途中で、渋谷区だけではなく23区全体で事業を展開するという意志決定を小川さんが行ったと思いますが、その意志決定の背景について教えてください。

小川:

それ以前は東京都全域で事業を展開しようとしており、全くマッチングしませんでした。そこで、教科書にあるとおり選択と集中でエリアを絞ることが大事だと気付き、それから渋谷区、さらには飲食店に絞りました。飲食店は個人店もあればチェーン店もありますが、渋谷区は非常にチェーン店が多く、たまたま仲良くなった店長がエリアマネージャーの方で、他のエリアでも展開するために、経営陣にこのようなサービスがあるとお話いただけました。
そして、そのときのお客さまだけでもエリアを23区に広げられるポテンシャルがあったのですが、そうなると23区でユーザーを集める必要があったので、それに向けて他のお客さまも一緒にやっていきましょうというお話をして、大手14社と共にエリアを23区に広げることになりました。

一戸:

小川さんがタイミーのPMFを感じた瞬間はありましたか。

小川:

ある飲食店の経営者の方が、1店舗での成功例を見て、東京都全域に広げようと言ってくれたことです。PMFは自然に広がっていくことが重要だと思います。「小川君のサービスだから使う」というのはPMFしていないということです。そうではなく、お客さまが自分から使いたいと言ってくれて、勝手に広がっていくということがPMFだと思います。

一戸:

数値的な指標もありましたか。

小川:

ありませんでした。それよりも、目の前のお客さまをいかにして幸せにするかというので、定量的なものよりも定性的なものを追っていました。結果的に、自然な伸びで月次130%成長を実現できていたので、PMFと言っても良かったかなと思います。

テレビCMの背景

一戸:

事業によって、PMFしてからスケールするのか、PMFするためにスケールするのかが異なると思います。例えばSaaSであれば前者のパターンが多くなると思われますが、プラットフォームの場合は後者のパターンであることも多いです。タイミーは比較的早いタイミングでテレビCMを打ったと思いますが、その背景について教えてください。

小川:

2019年11月末にテレビCMを打ちましたが、タイミーがうまく立ち上がった大きな要因はテレビCMです。当時はリリースしてから1年4ヶ月で、売上としては単月1,000万円強という状況でした。順調に大手企業が導入し始めており、そのときの飲食比率は8割でした。12月は忘年会シーズンで、大箱の飲食店が非常に忙しくなります。お客さまからも12月は助けてほしいと言われており、案件数としては11月の2倍以上になるというお話でした。
それまではB側の顧客の獲得に注力していましたが、12月にかけてお客さまのニーズが高まり、そのときはワーカーの獲得に注力する必要がありました。そこでテレビCMを打つことを決めましたが、テレビCMでなくとも、ウェブ広告でもいいわけです。ただ、当時は大企業よりも、同じ熱量を持つスタートアップの方が脅威でした。その当時はタイミーが1位でしたが、競合となるスタートアップが何社もありましたし、1位といっても単月で1,000万円程度の売上です。競合が恐らく300万円程度だったので、3倍ほどしか差はありませんでした。そのとき、例えば競合がテレビCMを打つと簡単に追い越される可能性があるわけです。タイミーが先にテレビCMを打つことは、非常に大きな意味があったと思います。
そして、テレビCMによって40万DLから100万DLほどに伸びました。それにより12月のワーカーの獲得が成功し、お客さまに満足していただくことができ、信頼を獲得することができました。

一戸:

当時はテレビCMに対する反対意見はありましたか。

小川:

社内からも株主からもありました。20億円の資金調達を行った直後にテレビCMを打ったのですが、その前からテレビCMについては話を進めていたので、資金調達ができる前提でいました。株主からももっと慎重になった方が良いと言われましたが、20億円のうちの5億円の投資であって、例えば10億円のうちの5億円の投資とは全く意味合いが異なります。失敗しても15億円があれば当社のバーンレートを鑑みてもしばらく生き延びることができるため、社運を賭けているわけではありません。また、これによって競合との差別化などいろいろなメリットが生まれますし、12月はニーズが急拡大すると考えていたので、ここで投資すべきだということを熱量高く伝えられたと思います。

最初の仲間集めと権限移譲

一戸:

タイミーの初めの10名はどのように集めましたか。

小川:

Wantedlyを使ったり、イベントで声を掛けたりしました。また、リファラルで集めたり、Twitterでエンジニアの方にDMしたりしました。最初はエンジニアを3、4人と、営業を4人ほどと、デザイナーを集めました。

一戸:

当時は採用において何を重視していましたか。

小川:

立ち上げ時なので、気持ちで付いてきてくれるというか、信じて付いてきてくれるかというところを重視していました。頭でっかちに考えるよりも、何も分かっていないので、とりあえず働いてこようという気持ちが重要です。キャンセルが起きたときに、お客さまに謝りに行く前に自分が働いてきますと言えるかどうかを重視していました。それぐらいのパッションを持っていることが初期においては非常に重要だと思います。ロジカルに考えることはもちろん大事ですが、クライアントの数も限られている中で、10社なら10社を絶対に幸せにしなくてはいけないのが初期だと思います。それを全員が本気で思ってくれて、しっかり全力投球してくれる仲間を集められたと思います。

一戸:

今でこそ大人な組織に育ってきたと思いますが、初めはかなり若い組織でしたよね。

小川:

平均年齢が22歳ほどで非常に若いメンバーが中心でしたが、熱量だけはあるので、全員泊まり込みで働いていました。

一戸:

若いメンバーが中心の組織から、今は大人な組織に変化してきていると思いますが、どのような背景でこのように変化していったのですか。

小川:

前提として、大人を巻き込もうとして巻き込んでいるわけではありません。そうではなく、ピュアに世の中がこうなってほしいと考える人を集め続けた結果、より人材の幅が広がり、より経験のある人が集まって、結果的にピュアな気持ちを持つ大人が集まってきました。大人が集まったというと固い会社になったと感じると思いますが、そのようなことは全くありません。今もそうですが、若い心を持った大人が多いと思っています。

一戸:

小川さんはいつ頃からプロダクトを見なくなりましたか。

小川:

テレビCMを打つ前後まではCPOとしてプロダクトを見ていました。それ以降は組織づくりを中心に行っていましたが、それからコロナ禍に入って事業の立て直しや資金確保に動き、今はまた組織づくりを中心に行っています。

優秀な人材を口説く

一戸:

組織づくりにおいて、小川さんの採用力は凄まじいものですが、守安さんのような方を口説くときに意識していることはありますか。

小川:

未完成であることを伝えるようにしています。優秀な人は完成されているものに魅力を感じません。未完成でこのような課題があり、あなたならこう解決できるので、オーナーシップを持ってそれを解決してほしいと伝えます。守安さんもそうです。多くを語らず、今は未完成であり、たどり着きたい所はどこなのかをはっきりと伝えることです。定量と定性の両面でそれを伝えることができれば、優秀な人は入ってきてくれるのではないかと思います。当社が掲げるビジョンは大きいので、未完成なことが多いです。ビジョンが小さければ小さいほど、完成しているように見えてしまいます。

一戸:

未完成であることを伝えるのですね。

小川:

基本的にスタートアップは未完成だと思います。格好をつけて成功しているストーリーを見せてしまいがちですが、実は中身は泥くさいことばかりです。

組織の壁と、経営者のメンタルコントロール

一戸:

タイミーはこれまで大きな組織の壁はありましたか。

小川:

今は従業員が200人ほどで、月に10人ほど採用しており、新しいメンバーがますます増えているので、個人の成果も負いながら、オンボーディングや教育も行う必要があります。そのため、組織の課題はもちろんありますが、それは、急成長中のスタートアップにはよくあることです。一方で、組織が一気に崩れたということはあまりなかったと思います。従業員150人前後までは全社員と1on1を行っていましたし、しっかりと組織にマインドシェアを割いていたので、崩れる前に調整できたと思います。

一戸:

タイミーで大きな組織崩壊がなかった要因は他にもありますか。

小川:

50人、100人、200人と経験してきましたが、優秀なメンバーが辞めたり、事業がうまくいかなかったりするときは、精神上ダメージを受けることが多いです。そういった際に、例えば組織をおろそかにすると組織の崩壊が起きると思います。私は幸いなことに、メンタルを一定に保つことを心掛けてきました。サイバーエージェントの藤田さんから教えていただいたのですが、フクロウのように360度の視点を持ち、自分を客観視することで、メンタルを保つことができます。私はタイミーを創業してからほとんどメンタルが崩れておらず、それに伴って組織も崩壊せずに大きくなったと思います。

一戸:

小川さんが組織構築を意識するようになったきっかけはありましたか。

小川:

良いプロダクトが作れたときだと思います。ある程度PMFを実現して、「すぐ働けてすぐお金がもらえる」というコアとなる価値を提供でき始めたときに、プロダクトマネージャーに任せた方がより良いものを作ることができそうだと思い、プロダクトを手放す意志決定をしました。
社長は、会社が最も危機的な状況に全力で飛び込まなくてはいけないと思います。時にはプロダクトで、時には営業で、時には組織構築ですが、その中でも組織構築は社長にしかできない比率が大きいです。最終面接で社長が出てくるかどうかで内定承諾率も変わると思いますし、私が最も価値を発揮できるところではないかと考えています。

資金調達において重視する軸

一戸:

私から見て小川さんは資金調達が得意に見受けられますが、何か意識していることはありますか。

小川:

資金調達で意識していることは逆算です。例えば、リード投資家が意志決定をするためには、このような投資家が既にフォローで決まっていたら意志決定しやすいだろうと思い、まずはフォローの投資家に声を掛けます。誰がどのように意志決定するのかを理解して、その上で意思決定しやすい人から話しに行きます。立ち上げ時の営業と同様に、タイミーを信頼してくれる人を見つけて、その人経由で紹介してもらうということを繰り返すことで、この会社ならいけるのではないかという雰囲気をつくり出していきます。
資金調達は一対一の交渉に見えますが、実は全体を見ないといけないと思います。20億円の資金調達なら20億円をどのように設計するのかということです。リード投資家にどの程度持ってほしいのか、どのような投資家に持ってほしいのか、20億円をどのように使うのかというところまで考えるのがファイナンスだと思います。そういう意味では、俯瞰して見る能力が非常に重要です。

一戸:

投資家選びにおいて、小川さんはどのようなことを意識していますか。

小川:

ファイナンスでは何に軸を置くかが重要だと思います。例えば、2019年10月頃に藤田ファンドをリード投資家として3億円の資金調達を行っていますが、そのときはバリエーションを重視しました。ポストバリュエーションが10億円で、そのときの売上が単月20万円ほどだったので、ロジックとしては崩壊していますが、ここでしっかりと採用を行い、プロダクトをつくっていくことで、これだけ大きな市場で勝負できると考えていました。この成長率だからいけるという確信があったので、それを伝え続けました。
次にJAFCOをリード投資家として行った20億円の資金調達では、どちらかというと20億円をどのように集めるかを重視しました。次の13.4億円の資金調達は、コロナ禍で非常につらい時期だったので、資金確保を重視して、あまり希薄化しないように融資も含めた資金調達を行うことを意識しました。最近の53億円の資金調達では、海外機関投資家の比率を上げることを重視しました。何を軸にファイナンスを行うかは強く意識しています。

一戸:

ジェネシアを選んでいただいたのはどのような理由でしたか。

小川:

2018年4月に1,200万円の資金調達を行っていますが、田島さんと一戸さんとお会いしたのはその直後の5月です。資金調達のニーズは全くなかったので、次回の資金調達をお願いするぐらいの気持ちでしたが、その場で田島さんに出資すると言っていただきました。今でも覚えています。そのときに、このような所が足りないし、もっとこうした方が良いのではないか、もっとアクセルを踏んだ方が良いのではないかと言っていただきました。そこで、資金調達を行うということは、どのように資金を使うかも一緒に考える必要があるということを強く実感しました。
田島さんも一戸さんも、タイミーのポテンシャルを私たち以上に信じてくれたのではないかと思っています。私たちは学生起業だったので、起業のプロフェッショナルではありません。本気で成功できるかどうかまだ不安があったところを、大きく後押ししてくれたと思います。そこで、私からもぜひ出資してほしいと思い、資金調達を行いました。

人に会い続けることの重要性

一戸:

小川さんはどのように経営者としての感覚を磨いたり、視座を高めたりされていますか。

小川:

一貫して変わらないのは人に会うことです。いろいろな上場企業の経営者にお会いしてきましたし、総理はじめ政治家の方々にもお会いしました。業種も業界も問わずに、いろいろな人と会っています。それぞれの人が、どのような考えに基づいてそのようなことをしているのかが分かると、何となくバランスが保ててきます。例えば、スタートアップ業界だけにいると、スタートアップの気持ちしか分かりません。それよりもお客さまに会いに行き、肌感をつかむのが重要だと思います。そのような時間の使い方をすると、結果的に濃い時間を過ごせるので、成長カーブが上がっていくと思います。

次回のゲストとお知らせ

次回のゲストは小川さんにご紹介いただいたLayerX創業者の福島さんです。皆さん、ぜひ楽しみにしていてください。

また、タイミーは現在積極的に採用活動を行っております。ご興味のある方はぜひこちらからチェックしてみてください。

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