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たくさんの“偏愛”との出会いとコラボレーションを求めて|水谷 圭吾

PHILOSOPHY

ジェネシア・ベンチャーズは2016年の設立以来、「新たな産業の“種”から”最初の芽”を出すこと」を自分たちの役割だと考え、一貫して創業初期のスタートアップの1stラウンドにおいて投資をしてきました。まだ事業アイデアしかない、起業家一人だけのチームで組織もオフィスもない、そんなフェーズのスタートアップに投資し、未来をより豊かにするサービス/プロダクトを広く世の中に届けるために私たちも“チームの一員”という意識で伴走しています。

2022年に、国が主導する「スタートアップ育成5か年計画」が策定され、日本のスタートアップに各方面からの注目と投資マネーが集まり、また、スタートアップを生み出し育てるためのエコシステムも各地・各所で大きく育ちつつあります。

その中で、新しい技術、新しいサービス/プロダクト、そして新しいリーダーたちとともに、「社会に対して大きなインパクトをもたらすスタートアップを生み出すこと」を担うのはやはり、創業初期=シード期から投資をするベンチャーキャピタル「シードVC」であると、そして、私たちがまさにその当事者であると考えています。

本シリーズ『シード投資のシゴト観』では、ジェネシア・ベンチャーズで実際にスタートアップへのシード投資と経営支援に従事するベンチャーキャピタリストそれぞれが改めて考える「シード投資」と「シードVC」についてご紹介します。

・なぜ「シードVC」に懸けるのか?
・「シードVC」としての役割やこだわりは何か?
・そして、ジェネシア・ベンチャーズで実現したいことは?

本稿の主役は、Associateの水谷(圭吾)さん(以下:圭吾)です。

  • 聞き手・まとめ:Relationship Manager 吉田 愛/Intern 夏堀 栄
  • 2024/5/16時点の情報です

オタク気質な自分とも親和性があるシゴト

interviewer:

2021年11月にインターンとして参画。大学卒業後、イギリスへの留学を経て、2022年9月に新卒としてジェネシア・ベンチャーズにジョインした圭吾さん(※「水谷」が二人いるため、圭吾さんと呼びます)。そもそもVCという存在を知ったきっかけやVCを目指そうと考えた経緯などを教えてください。

圭吾:

僕は大学時代に上場企業のファイナンス分析など会計系の勉強していたのですが、新型コロナウイルスの影響もあり暇を極めていた四年生の頃、たまたま受講した寄付講座でJAFCOさんの話を聞いて、上場企業のファイナンスとは全く異なるロジックで動くベンチャーファイナンスというものに興味が向いた、というのがVCを知ったきっかけです。それ以前だと、高校生の頃から『ガイアの夜明け』をはじめとした経済番組を見るのが好きでした。特に、ユニバーサルスタジオジャパン(USJ)をV字回復させた株式会社刀の森岡さんの回はとても印象的で、関西出身の僕は小さい頃から通っていたUSJが変わっていくさまを直接目にしていたので、森岡さんという立役者の存在やストーリーを知ったときに経営というものをぐっと近くに感じました。それで、森岡さんのような人がどういうロジックで意思決定をしているのか?という問いに少しでも関係しそうな学部として、経済学部を選んだ経緯があります。今思うと自然なかたちで、高校生の頃から経営への関心は強かったのかなと思います。

interviewer:

今の圭吾さんを見ていると、ベンチャーファイナンス・・つまり金融への興味からVCへ~というのはちょっと意外です。もちろん良い意味でです。

圭吾:

言いたいこと、わかります(笑) 僕が最近は特にエンタメ領域にフォーカスして活動や発信をしているから、あんまり金融やファイナンスの匂いがしないよねってことですよね。そういう意味では、VCに興味を持った背景に別の視点として、僕が小学生の頃からいわゆる『ニコニコ動画』のカルチャーの中で生きてきたということがあるかもしれません。ニコニコ動画というプラットフォーム上では、さまざまな人がまさに“個性”というような作品を投稿していて、それらをディグって熱狂的に好きになる人がいて、と、みんなが人気者になるチャンスがあるし、みんなが自分の興味関心を好きなだけ深堀りしている。そんな空気感を楽しんでいたように思います。僕も熱狂的に推していたクリエイターさんがたくさんいて、その人の新しいMVの投稿を待って夜更かししていた記憶があります。
VCの業務は、言ってしまえば“推し活”っぽくもあると思うんです。絶対に実現したいテーマや事業領域に、起業家と一緒にのめりこむ。他の人はまだ気づいていないけれど、僕はめちゃくちゃ伸びると信じている。そんなところに投資して成長を支援する。オタク気質な自分とも親和性があるシゴトなのかもしれないなと思います。

interviewer:

VCになる前からそういうことを考えていたんですか?

圭吾:

いや。VCとして多くの人とお会いする中で一気に自分を客観視できるようになってきた感覚があって、自分の立場や役割についての言語化が進みました。他の人との違いを考えたときに、自分のオタク気質にも気付いてきた感じです。

interviewer:

経営に興味があったとのことでしたが、起業という選択肢はなかったんですか?

圭吾:

本当にタイミングと運と縁の力で、僕は今この仕事をしているんだと思います。元々コンサルティングファームから内定をもらっていて、そちらに就職しようとしてたんですが、それからVCという存在を知って、ありがたいことにジェネシアでインターンをさせてもらって、そうなったら仕事を通じて会える人たちがそれまでとは比べ物にならないくらい魅力的で、こういう人たちともっと働いていたいと思って方向転換したんです。もしもう一つ体があったらやっぱりコンサルにも行ってみたいし、働いてみたい事業会社もたくさんあるし、起業という選択肢もあるかもしれません。ただ、今はやっぱりVCという立場で出会える人たちの幅広さやおもしろさが何より魅力的で続けてこれています。

「自分で自分の時間を操れている感覚があるかどうか」

interviewer:

ジェネシア・ベンチャーズを知ったきっかけや、入社しようと思った理由を教えてください。

圭吾:

たぶん河野さんか水谷さんのTwitter(現:X)をフォローしていて、インターンの募集を見たんだと思います。その頃はいろんなVCの方々にDMを送りまくっていて、特にこだわりはありませんでした。まずは飛び込んでみようと。そして、インターンとして入社してから、もっとここで働いていたいと思うようになりました。当時一番接点があったのは河野さんだったんですが、河野さんはベトナム、僕は関西というスーパーリモートな状況。でも、河野さんは僕がこれまでに出会った人の中で一番賢い人だと感じてましたし、社内全体の雰囲気も好きでした。

interviewer:

それでも、すでに出ていた内定を辞退してファーストキャリアにVCを選ぶという意思決定はけっこう大胆な気がします。ジェネシアでのインターンにそれだけのインパクトがあったんですね。

圭吾:

大学生の頃、「人はどのような時に幸福を感じるのか」「幸福な状態とは何か」というテーマの書籍を読み漁ってたんですが、その中で多くの書籍に共通して書いてあって僕が一番しっくりきている論が「自分で自分の時間を操れている感覚があるかどうかが、幸福にとって重要な要素である」ということです。僕にとっても、何かにのめり込んで時間が溶ける感覚とか、自分で選んで自分にしかできないことをやっている感覚とか、そういうものがすごく大事で。シゴトという面においては、VCとして働くことが、そしてジェネシアという環境が、自分の頭で考えて動く時間が多そうだしおもしろそうだと考えました。

interviewer:

「自分で自分の時間を操れている感覚がある」=幸福。納得感がありますね!
最近の圭吾さんは「エンタメ」という領域に自分の時間を全力で投下している印象です。

圭吾:

これまで自分の“好き”が共感されることってあんまりなかったんですが、最近はVCというシゴトやSNSでの発信を通じて、熱狂的に好きなものが共通している人だったり、まさにそれを生み出している人だったりと関わることができてきたのがめちゃくちゃ楽しいです。小学生の頃、年上のいとこの影響でニコニコ動画と深夜アニメばかり見ていた僕の好みは同年代の友達とはあんまり合わなくて、なかなか深く話せる友だちがいませんでした。大学生になっても、その状況はあんまり変わらなかった。でも、就職して上京してきてからは、共通したものに熱狂できたり、共通点がなくても僕のオタク気質をおもしろがってくれたりする人たちがこんなにいるんだってことを知りました。一見ニッチなことにめちゃくちゃ熱狂している人たちが山ほどいる。僕、東京がほんとに大好きなんです。

interviewer:

タイトル決まりましたね(笑) 「東京大好き!」

起業家のツボを刺激するために、新しいものに挑戦し続ける

interviewer:

「シードVC」「シード投資」についてはどう考えていますか?

圭吾:

レイターのVCを経験していないので、正直なところ、まだその特別さみたいなものはわからないです。元々金融への興味が強かったので、もしかしたら金融色が強いレイターVCの方がハマる可能性もあると思います。
でも、事業をゼロから立ち上げようとしている起業家の方々とたくさんお話しして、そのフェーズに伴走して、中には実際に投資をして株主として応援させていただけるケースもあって・・というシードVCならではの経験が、事業会社の新規事業担当の方や個人のクリエイター、すでに立ち上げフェーズを越えたスタートアップの皆さんなどとお話しするときにも活きている感覚があるので、シード投資に関わっているということが、一番広くいろいろな人たちとコラボレーションできる可能性が高い立場なのかもしれないと思っています。

interviewer:

そうした立場として、何か意識していることはありますか?

圭吾:

ちょっとおこがましいかもしれませんが、起業家のツボを刺激しようということは意識しているかもしれません。例えば、中長期的な事業成長よりも足元の事業進捗を重めに考えてしまいがちなタイプの起業家であれば、思考の射程を伸ばすような未来の話を積極的にしてみたり、悲観的なタイプの起業家であればポジティブな話をしてみたり。何か気づきがある、ということに僕と話す価値を見出してもらえたらいいなと。原則はやっぱり“いい聞き手”であることだと思っています。自分の思想を押しつけすぎないように、いい問いを投げられるかということを意識しています。タカさん(ジェネシア・ベンチャーズGP)がよく話していることですね。

interviewer:

圭吾さんが起業家の新しいツボを刺激し続けるためにしていることとかは何かありますか?

圭吾:

僕自身が新しいものに挑戦し続けるということでしょうか。

interviewer:

圭吾さんて幅広にいろんなことを知ってますよね。新しいトレンドとかも。雑学というより、一定の興味に基づいて深掘りしてるイメージがあります。

圭吾:

元々が幅広めなオタクなので、かなりの熱量でしゃべれること、けっこうありますよ。

interviewer:

試しに10個くらい挙げてみてください。

圭吾:

某アニメプロジェクト、New Jeans、ボカロ、サンリオ、スパイスカレー、麻婆豆腐とハンバーガー・エスニック料理屋さん、オーディオ機器、台湾アイドル、金管バンド・・

interviewer:

いろいろ気になる・・!
圭吾さんにとって「新しい」ものってどんな基準ですか?どうやって見つけていますか?

圭吾:

まずはそれを誰かのおすすめとして見たり聞いたりして出会って、実際に経験することから始まる気がします。一つの例としては、僕が好きなニッチなもの、を僕と同じく好きだという人、が好きだと言っているものを試しにいく、という探索プロセスです。共通の愛や好みがある人とは物事の楽しみ方そのものに通じるところが多い気がしているので、音楽の趣味が共通している人が絶賛していたお笑い芸人を見てみたらめちゃくちゃおもしろかった、みたいなことがけっこう高い確率で起こります。元々自分が全然興味を持っていなかったものでも、「あの人がそんなにハマっているなら何か凄いところがあるのだろう」と思って触れてみるとやっぱりすごかった、みたいな。それがニッチであればあるほどいい気もしてます。やっぱりいろんな場でいろんな人と出会うことで、世界が広がりますね。

本当に価値のあるものが届くべきところに届く未来に投資したい

intervewer:

既に「エンタメ」というキーワードも出ていますが、圭吾さんが投資していきたい領域について教えてください。

圭吾:

少し抽象化すると、僕が一番わくわくするビジネスやテクノロジーは、本来もっと広がるべきコンテンツや価値が今まで届いてなかったところに届くようになるというものです。エンタメに限らず、『ラクスル』みたいなマッチングビジネスも、『スナックミー』みたいなディストリビューションサービスも好きです。使われずに眠っていた資産や、なかなか広く知られる機会がなかった本当にいいもの、そういったものが活用されたり知られたり、報われるべき人が報われたり、評価されるべきものが評価されたり。そういうビジネスが好きです。

interviewer:

そういった領域に注目したのはVCとして働き始めてからですか?

圭吾:

徐々にです。そのサービスがなかったら届かなかったものが、そのサービスがあることによって届いた。繋がった。そんな瞬間に立ち会ったときにすごくわくわくするんだって、何かのタイミングで気付きました。

interviewer:

新しいものや本当にいいと思えるものを見つけて広げる。圭吾さんの好きなこと / 実現したいことって一貫していますね。実際、どうですか?ジェネシアでの二年を振り返ってみて。実現したいことに近づいていますか?

圭吾:

憂鬱になる瞬間もあるし、難しいなーと思うこともたくさんあります。でも、やっぱり出会いが充実しているから、トータルでめちゃくちゃ楽しいです。この前高校の同窓会があったんですが、その中で僕が一番おもしろいシゴトをしてるなって思いました。自分がそう思えてるのはすごくいいなと。

偏愛でつながる出会いや信頼関係が、理想の世界観の実現に続いている

interviewer:

「出会い」というキーワードがたくさん出てきました。素晴らしい起業家にもたくさん会えているってことだと思うんですが、圭吾さんが考える“いい起業家”とは?

圭吾:

狂気的な執着があることでしょうか。好きなことをしゃべらせたら永遠にしゃべれる、みたいな。起業家の場合は、それが単なる趣味ではなく、その上段に実現したいビジョンを描いて、実現のためにとにかくめちゃくちゃ動いている人でしょうか。加えると、思考が若干偏っていること。偏愛みたいなものです。投資が難しい理由や事業がうまくいかない理由は無限に考えられるけど、「これはイケる!」と思える感覚は、偏りや楽観性から生まれると思うんです。その点、フラットすぎたり完璧主義だったりすると難しい部分も多い気がするんです。あとは、相手へのリスペクトがあること。どれも、起業家に限らず、僕たちVCや何かの実現を目指す人にとっても大切な資質だと思っています。

interviewer:

均等な★型じゃなくて、どこかが突き抜けて尖っているということに近いでしょうか。

圭吾:

この間、エンタメ業界でかなりビッグな方とお話しする機会があったんです。僕はちょっと興奮していて、その人の得意領域とはやや離れたテーマについて熱弁しちゃったんですが、その方がすごく喜んで聞いてくれたんです。そんな風に対等に話せると思っていなかったから、すごく嬉しくて、さらに興奮しました。偏愛がつくる信頼関係を実感した瞬間でした。
それぞれに偏愛があるからこそ対等にお互いの話をおもしろがれる。八方美人になっても、お互いに刺さるものがないと浅い会話で終わってしまう。偏愛がある同士だからこそわかり合えたり認め合えたりすることもあると思います。シードVCとしても個人としても、興味関心を広げながら、何かについて熱く語り合える出会いを今後も積み重ねていきたいです。

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