
#20 次世代SNSのプロダクト論!Jiffcyが描くコミュニケーション総量1.1倍の未来【ゲスト:株式会社Jiffcy 代表取締役CEO 西村成城さん】
ジェネシア・ベンチャーズが配信する『Ayo! by Genesia.』は、スタートアップの“挑戦の裏側”に光をあてるPodcastです。プレスリリースなどのオフィシャルな情報だけでは伝えきれない、挑戦のプロセスで生まれる想いや葛藤、そしてリアルな学びを、起業家と投資家、それぞれの視点からお届けします。
「Ayo!」はインドネシア語で「Come on!」「Let’s Go!」という意味。スタートアップのチャレンジをリアルにお届けしていきます💁♂️💁
今回のゲストは前回に引き続き、仲のいい人ともっと仲良くなれるSNSを提供している、株式会社Jiffcy 代表取締役CEOの西村成城さん(以下:西村)と、ジェネシア・ベンチャーズの担当キャピタリストである祝さん(以下:祝)です。 モデレーターは、同じくジェネシア・ベンチャーズの水谷が務めます。
前編はこちら💁♂️💁:https://www.genesiaventures.com/19-ayo-by-genesia/
目次
- 声を出さずに電話ができる「テキスト通話」とは?
- 『Jiffcy』で告白すると成功率が高い?親密な関係だからこそ生まれる価値
- 使えば使うほど仲良くなる写真機能『Dots』
- 「共同作品」だから投稿できる。『Dots』の絶妙な設計思想
- なぜ自己表現の場にしなかったのか。COOの原体験から生まれた『Dots』
- コミュニケーションの総量を1.1倍に。人類史の転換点を目指す

声を出さずに電話ができる「テキスト通話」とは?
水谷:改めて、西村さんたちのチームが提供しているSNS『Jiffcy(ジフシー)』がどんなサービスなのか教えていただけますか?
西村:Jiffcyは、仲のいい人ともっと仲良くなれるSNSです。メイン機能は「テキスト通話」と『Dots(ドッツ)』の二つです。
水谷:それぞれどういった機能なのでしょうか?
西村:一つ目の「テキスト通話」機能は、声を出さずに電話をすることができる機能です。
水谷:思わず「それはどういうことなんだ?」と聞き返したくなりますね。
西村:まず電話で相手を呼び出します。それで実際に着信音が鳴ったりスマホがバイブレーションしたりするんですが、応答すると、普通の電話なら「もしもし」と声が聞こえてくるところ、テキスト通話の場合はトーク画面に移動します。そのトーク画面では、相手が絶対にそこにいるという保証がある状態で、リアルタイムにテキストでやりとりをします。送信ボタンがないのが一番の特徴で、入力された文字がリアルタイムに一文字ずつ表示されるようになっています。
水谷:何を打ち込んでいるかが、しゃべり終わる前にわかってしまうということですよね。
西村:はい。実際に対面しての会話や音声通話と同じように、相手がしゃべっている最中に相槌を打つような体験ができます。あるいは、相手が全てを言い終わる前に「そういうことね、だったらさ」という感じで、勢いよく話を展開させることができます。
水谷:食い気味なテキストコミュニケーションがリアルタイムで可能になる、と。
西村:そうです。むしろ、今までのメッセージングアプリでのやりとりこそ、ドラクエのターン制バトルみたいで、人間のコミュニケーションとしてはかなり違和感がありました。Jiffcyは、より自然に、相手がすぐそこにいる感覚のままテキストで通話ができるんです。
水谷:私も実際に体験したとき、すごい発明だなと思いました。このテキスト通話は、どういうときに着想されたんですか?
西村:2016年頃からいろんなサービスを作っていましたが、うまくいかず、落ち込んでいたタイミングでちょうどコロナ禍になったことがきっかけでした。仲のいい人と話したかったけど会えない状況で、かといって目的もなくいきなり電話するのはハードルが高い。特に、相手が家族と家にいる状態だとすごく迷惑だろうなとも思いました。メッセージで「今ヒマ?」と送って、例えば6時間後に「どうしたの?」と返ってきても、別に大した用があるわけじゃなくて返信しづらい。そんな体験から、コミュニケーション領域はもう十分にサービスが行き届いていると思っていたけど、まだまだそうじゃないんだなと思いました。そのときに私自身が「欲しい」と思ったのが、テキストでリアルタイムにコミュニケーションする「テキスト通話」だったんです。
『Jiffcy』で告白すると成功率が高い?親密な関係だからこそ生まれる価値
水谷:Jiffcyはどんな相手と、どんなシーンで使うのがおすすめですか?
西村:あまり仲良くない会社の同僚とかではなく、家族や親友や恋人がいる人は、その間柄で使ってもらうと価値を実感できると思います。テキストでのやりとりでも、脳内で相手の声が自然と再生されるような間柄です。例えば、あるユーザーさんは、テキスト通話を使う理由を「ケンカにならないから」と言っていました。既存のメッセージのやりとりで起こり得るコミュニケーションの行き違いや齟齬が減るんだと思います。あとは、純粋に声を出さずにやりとりできるツールとして、電車の中だったり家族が家にいて電話しにくいときだったりに使われていますね。
水谷:最近、Jiffcy経由での告白の成功率がめちゃくちゃ高いというアンケート結果を見たのですが、実際そうなんですか?
西村:私も調査してみて、めちゃくちゃびっくりしました。まず、Jiffcyで告白している人がたくさんいることに驚いて、次にその成功率があまりにも高いことに驚きました。テキスト通話でのやりとりは、音声通話よりも信頼性が高いと感じられている傾向があります。テキスト通話を使っている同士の人間関係がそもそもすごく親密だということを考えると、そこで告白が行われるのもその成功率が高いのも、納得できる結果でした。
水谷:Jiffcyの世界観に共感して使っているユーザーの関係値そのものが親密だったことが、アンケート結果に反映されたんですね。
使えば使うほど仲良くなる写真機能『Dots』
水谷:これまではテキスト通話機能を中心に開発を進めてこられたと思うんですが、2026年4月に新しく『Dots』という機能をリリースされました。これはどういった機能でしょうか?
西村:Dotsは、使えば使うほど仲良くなる写真機能です。具体的には、一日に一枚自撮りを撮って、仲のいい友達や恋人、家族に送ります。それに対して相手も自撮りを送り返すと、二人の自撮りが一枚の画像にコラージュされて、それがカレンダーのようにどんどん溜まっていくというものです。
水谷:アルバムのように蓄積されていくイメージですかね。
西村:はい。Jiffcyは元々テキスト通話という機能の特徴から、すごく仲のいい人と使う専用のアプリになってきました。まだ世界に浸透していないテキスト通話という機能を使い合う相手ということは、やはりすごく親密な間柄だと思います。音声通話と同じで、初めて会った人と使うと気まずい感じになってしまうので、ヘビーユーザーは自然と、仲のいい友達同士や家族や恋人になります。そうした人間関係に最もマッチした、かつ写真を使ったコミュニケーションとは何か?と二年以上考えた結果、辿り着いたのが『Dots』という機能です。
「共同作品」だから投稿できる。『Dots』の絶妙な設計思想
水谷:エモい機能ですよね。親密な人との写真が溜まった画面を見返すシーンを想像すると、すごくエモさを感じます。
西村:そうなんですよ。少し前にXでバズった投稿で、「子どもの写真を撮るときは親も一緒に写りましょう」というものがありました。子ども自身が大きくなったときに見たいのは、自分が赤ちゃんだったときの姿だけじゃなく、若いときの親の姿でもあるから、と。一緒に撮って、子どもが大きくなった後に見返して笑い合いましょう、という投稿でした。Dotsは自撮りすることが必須なので、子どもがまだ小さければ親が撮影する必要があります。そうすると、親と子どもが自然と一緒に写ることになるんです。それが溜まっていったら、10年経ったときに、みなさんDotsにめちゃくちゃ感謝すると思います。
水谷:絶対にアンインストールできないアプリになりますね。
祝:Dotsは自撮りするときに本当に顔が写っていないとボタンを押せなかったり、前日以前に撮影したアルバムの画像をアップロードできなくしていたり、リアルタイム性を重視して「歴史を刻んでいく」という設計をしています。僕も使いながら、おもしろいなと思っています。毎朝起きたときに「今日はDotsで何を撮ろうかな」と自然と考えるようになりました。
西村:「今日は出かける予定があるからそこで撮ろう」みたいに計画したりしますよね。
祝:ただ、自分が写っているコラージュしか溜まっていかない設計になっているので、撮り忘れても安心。
水谷:仲間はずれ感が出ないんですね。
祝:強制ではなくて、「いい自撮りが撮れるタイミングで撮ってシェアすればいいじゃない」という発想ですね。
水谷:ただ、みんなが撮った自撮りを見るためには自分も撮って送らないといけないから、「グループの仲間の自撮りを見るために自分も撮らないと」という使命感を煽られる設計だなと感じます。
西村:既存のSNSだと、自分単体の投稿として見られてしまうので、自撮りをアップするハードルがすごく高い。でも、Dotsの場合は、自分単体の投稿は誰にも表示されなくて、初めて表示されるのは誰かとコラージュされた画像なんです。つまり「共同作品」なんですよね。その前提があるので、煽るというよりは、最初の投稿ハードルをいかに下げるかということを最優先にして、かつ、仲のいい人たちの中での「投稿したい」という気持ちと「恥ずかしい」という気持ち、そして「義務感」のバランスを考えたときに、その設計が最適でした。
なぜ自己表現の場にしなかったのか。COOの原体験から生まれた『Dots』
水谷:Dotsの構想はいつ頃からあったのですか?先ほど二年ほど検討していたというお話がありましたが。
西村:はい、二年くらい考えていました。テキスト通話と同じで、「仲のいい関係性だからこそ活発に行われる、仲のいい人たちにだけ許されるコミュニケーション」の“写真版”みたいなものが、概念としては存在すると思っていました。ただ、それを具体的にどういう形にするのかをずっと考えていたんです。というのも、Jiffcyを単に「テキスト通話アプリ」と言っていたときは、ビジュアルが分かりにくいという課題がありました。吹き出しが二つあって文字が浮いているだけのUIなので、「それ何なの?」が伝わりづらかった。実際に使ってもらえればわかるのですが、そこまでのハードルが高い問題があった。そこで、パッと見ておもしろいと思ってもらえる、説明コストをスキップできるものが必要だと感じ、仲のいい人とのコミュニケーションに最適化された写真機能を考えていました。その結果、三ヶ月ほど前に、「これだ!」というのをCOOの小嶋さんが思いつきました。
水谷:へえ!
西村:COOの小嶋さんには、「昔はInstagramなどにたくさん投稿していたけれど、今はしなくなった」という原体験がありました。昔は仲のいい人との内輪ノリで投稿していたのが、フォロワーが増えるにつれて新しい人間関係もできてきて、関係性が混在した結果、お互いの自己表現やマウントの取り合いのようになってしまったと。また、逆に「自分が楽しんでいる姿を見たら、嫌な気持ちになる人がいるかもしれない」という懸念が生じ、投稿のハードルが上がってしまったとも。その中で、小嶋さんの投稿の本来の動機だった「仲のいい人と関係構築」という目的が果たせなくなってしまったということでした。
じゃあ仲のいい人同士に最適化された機能はどんなものか?と考えたときに、私たちが知りたいのは「その人がどれだけすごいか」じゃなくて、「今何やってんの?」というその人のありのままの姿だよねという話になり、だったら自撮りに限定するのがいいねということが決まりました。そして、自己主張が激しい人だけがたくさん投稿するようになると受け取る側も疲れてしまうので、枚数を制限したほうがいいねということも決めました。自己表現がしたいなら、単体で自撮りをアップすればいい。でも、Dotsの目的はそうじゃなくて「共同作品」なので、偶然性を持たせたいというような思想があります。一人がめちゃくちゃイケてる投稿をしても、もう一人が寝癖でぐしゃぐしゃ頭の投稿をしてきたら、そのコラージュが作成される。投稿の出来を「誰かの自己主張」だったり「誰かのせい」だったりにしないようにしたんです。なので、「こういう機能がほしい」というより、「仲いい人たちの中での写真コミュニケーションって、こういうのがいいよね」というところから機能に落とし込んでいったのがDotsなんです。
コミュニケーションの総量を1.1倍に。人類史の転換点を目指す
水谷:改めてDotsの設計の裏話を聞いて、言語化しきれない人間心理を突き詰めていることや、スマートフォンの登場から15年以上経つ中でのデジタル上の人間関係をどう解きほぐしていくかというテーマに対して、高度にロジカルな分析の上で機能を作られているんだなと感じました。
西村:エンタメ的な側面でいうと、SNSよりもゲームの方がよっぽど科学されているし歴史もあると思っています。一方で、SNSはまだまだ本当に原始的なものだと思っています。
水谷:たしかに、ゲーム産業には50-100年単位の歴史がありますが、SNSはこの10-15年とまだまだ発達段階の産業ですよね。
西村:はい。なので、ゲームから学びを取り入れているところもあります。
水谷:最後に、Jiffcyを通じて西村さんが成し遂げたい目標を伺えますか?
西村:Jiffcyが目指しているのは「コミュニケーションの可能性を開放する」ことです。人間が日々いろいろな発見をしたり議論したりする中で、コミュニケーションの総量や質はすごく重要だと思っています。もし、Jiffcyがあったことで人類のコミュニケーション総量が1.1倍になったら、発見のスピードも1.1倍速まる気がしていて、それってつまり人類史の転換点になると思うんです。今まで認識されていなかったけど当然あるべきコミュニケーションの形を発見することを通じて、人類の発見— ひいては知識の総量を効率的に増やす転換点にしたいと思っています。
水谷:ありがとうございます。私たちの日々のコミュニケーションから人類のイノベーションまで、非常に印象的なお話でした。家庭でも会社でも、トラブルの原因の一つにコミュニケーション不足があったりしますし、強い関係性から生まれる熱量や発見が人類史を前に進めてきた側面も大きいと思います。「1.1倍でも」と謙虚におっしゃっていましたが、非常に大きな話に改めてわくわくしました。
さて、前後編にわたってお付き合いいただきました西村さん、祝さん、ありがとうございました!
西村・祝:ありがとうございました!Ayo!
全編はPodcastでお楽しみください💁♂️💁:
西村さんと祝さんの1on1もあわせてご確認ください💁♂️💁:


