事業のネタ帳 #14 事業ネタがない時のネタ帳
「起業したい!」「いつかは経営者になりたい」
「けど、どんな事業にチャレンジするべきかわからない。。」
というのは、将来的にスタートアップ起業を考えている多くの方に共通する悩みの一つかと思います。
そんな時、スタートアップやVCで働いてから起業ネタを考えようという意思決定をする方も多いですが、チャレンジする事業を決めずに起業するケースも一定数存在しています。
前者であれ、後者であれ、どちらもそのチャレンジはリスペクトに値するものですが、個人的な所感として、VCファイナンスのしやすさという観点では、前者のケースの方が多い気がしています。
何をすべきか決まっていない状況で出資の意思決定ができる投資家は多く存在しているわけではなく、また、成長事業を確立するまで、創業から年数が経っていると、その後の企業成長力に対して疑いを持たれやすくなってしまう、ということがその理由と推測しています。
しかし、経営者としての経験を積み、技量を高めていくには、経営者になるのが最速の手段でもあります。いくら経営企画部などの経営者の近い部署にいたり、コンサルや金融の立場で経営者にアドバイザリーをしたところで、経営者として経営の意思決定を重ねていくこととは別物です。
ビジネスの世界において経営者とそれ以外では、戦う世界線が異なるので、エリートサラリーマンが必ずしもすぐに経営者として活躍できるとは限りません。
会社を創業して、事業を興し、組織を作っていくというプロセスは、実際に会社を経営しないと経験できません。その過程で積み重ねていく成功体験や失敗体験は、経営者としての大きな糧となっていきます。
そういったことを踏まえると、スタートアップとしての起業ネタが固まっていない段階でも、独立してスモールビジネスの経営経験を積んでいくことはスタートアップとしてチャレンジしていく上でもポジティブに働くと考えています。
実際に、スタートアップとしてのチャレンジを決めずに独立し、数ヶ月から数年間の単位で、スモールビジネスで売上を立てていたケースで、その後、スタートアップとして成功する企業、またさらに、その時の売上による初期資金を元手に、VCファイナンスをせずにIPOまでいく、所謂、ブートストラップ型のスタートアップも存在しています。
独立して、特定の領域や業務、業界のお客さんを相手にビジネスをしていく過程で、スタートアップとしての事業ネタとなるインサイトを発見するケースも非常に多いです。
ということで、本稿ではスタートアップの事業ネタがない時のネタ帳について、まとめてみたいと思います。
独立してから、何をして収益を上げていくか、という話になりますが、自身の持っているケイパビリティに照らしながら、
①コンサル
②業務委託
③受託開発
④商取引
の主に四つのネタから、合ったものを選択しているケースが多いです。
目次
- ①コンサル
- ②業務委託
- ③受託開発
- ④商取引
- スモールビジネスからスタートアップへの可能性
- おわりに
- 参考文献
①コンサル
まず一つ目は、コンサルです。
ファイナンス、マーケティング、デザイン、法務、税務、会計、人事、営業、広報など、多くの企業にとって必要な職能的なケイパビリティを活かして、クライアント企業の業務改善や経営支援を行うコンサルティング業務を受託するものです。
創業者がその領域において、信頼に足る一定のケイパビリティを有しているときに、その知見を活かしてクライアントの支援を行っていきます。
大手のファームと比較すると安いものの、一定のクオリティを担保する形でデリバリーできるものとして提案ができるのであれば、領域にもよりますが月額数十万円から、場合によっては数百万円規模の案件を受注できるケースもあります。
これを複数社から受注する形で、一定金額の売上を作りにいくケースが多く、受注規模に応じて、チームを組成させていくことになります。
案件獲得の仕方としては、前職での繋がりや知人からの紹介、関連する内容に関するnoteやYouTube、SNS等での執筆発信を通じたリード獲得、という手法で、身を立てているケースが多いです。
②業務委託
2つ目は、業務委託です。
実際に自分自身で手を動かし、クライアント企業のオペレーションまで入り込みながら、案件を受託していくものです。
領域としては、上記①と重なるものも多く、コンサルとセットで、その後のオペレーション、エグゼキューションまでをセットで請け負うケースも多くあるかと思います。
ファイナンスであれば、実際に投資家や金融機関へのドアノックし、資金を引っ張ってくる、マーケティングであれば施策立案だけではなく広告運用まで、というように、自身が手足を動かすところまで業務スコープを広げて、クライアント企業の支援をしていきます。
③受託開発
3つ目が受託開発です。
システム開発やホームページ作成、メディア運営など、クライアントの運営するプロダクトやメディアに関する開発業務を受託するケースです。②業務委託の類型の一つな気がしていますが、ここからスタートアップとして出発するケースも多いので、一つのジャンルとして切り出しています。
エンジニアの一員として開発メンバーに加わるケースもあれば、開発会社を興して、プロダクト・システム開発に加えて、ホームページ作成やメディア運営の受託を通じて会社として成長していくケースも多いです。
その他、動画やデザインの編集・制作といったものから、最近だと、EC運用(Shopify構築)やセールスフォース導入、NFT生成といった業務も出てきています。
受託開発を通じて、顧客に共通する課題を発見しながら、その領域における知見や開発力を高めて、スタートアップ起業につながるケースも多いです。
案件獲得に当たっては、コンサルや業務委託と同様の手段に加え、クラウドワークスやランサーズなどのクラウドソーシングのプラットフォームを活用することで幅広いクライアントにアプローチすることが可能です。
④商取引
それから、4つ目として、意外と見逃せないのが、自ら商品を仕入れ、それを販売して利益を得る、という商取引です。
ヤフオクでのお小遣い稼ぎを通じて商売感覚を養ってきた経験を持つ方も、スタートアップ経営者やキャピタリストなど、スタートアップ界隈では多い印象です。
C向けであれば、ECサイトやSNSで売れ筋商品を見ながら、扱う商品を見定めて、仕入れ・販売を行っていきます。また、B向けであれば、商社として、ロジ(物流・保険)も含めた機能提供をしていくケースも出てきます。
商取引の中でも特に越境EC系は、法人でやるには規模が小さいけれど、個人ではケイパビリティを持たない、という領域で、C向け・B向け問わずにホワイトスペースを見つけて一定の収益を上げる事例を聞くことも多いです。
スモールビジネスからスタートアップへの可能性
以上、コンサル、業務委託、受託開発、商取引の四つを、「事業ネタが無いときのネタ帳」として、まとめてみました。
スタートアップとしてのチャレンジを見つける前に、スモールビジネスから起業を始めるケースは、実情としてとても多いです。
そして、一定の事業経営の経験を積んでから、スタートアップとしてスケールを目指す事業に乗り出し、エクイティによる資金調達を経て、自社プロダクトや組織に投資して成長軌道に入っているジェネシアの投資支援先もいくつかあります。
立ち上げたスモールビジネスを安定化させ、また、いかに拡大させていくかを考えていくときに、スタートアップとしてのチャレンジに値する事業ネタを着想することもあります。
自社の人材プールを広げることができれば、BPO事業や人材紹介事業としての可能性が出てきます。また、ソフトウェアを通じて自社のオペレーションを効率化・自動化していく余地を見出すことができるのであれば、そのソフトウェアを外販していくSaaS事業、ソフトウェアを活用したOMO事業者としての展開可能性も見据えることができます。そして、両者の合わせ技も、もちろん考えられます。
ジェネシア・ベンチャーズで事業立ち上げのモジュールとしてストックしているDXの型のうち、適用できるものを見ていくと、#4 データアグリゲーション、#7 半自動、#9 ノウハウ提供型SaaS が当てはまるように思います。
一方、スモールビジネスから、急成長を目指すスタートアップにチャレンジを切り替えるに当たって、留意が必要なポイントもあります。その一つが、組織です。
スモールビジネスとスタートアップでは、組織に求められるスタンスも異なることから、同じ会社で新事業を始めるのであれば、各メンバーとの間で、事前にしっかりと期待値調整をしていくか、もしくは、別の会社でスタートアップとして事業を開始するということをしないと、組織への離反が生じ、双方にとってハッピーエンドにはなりません。
この期待値調整が満足にできていないままに、スタートアップとしてのチャレンジを始めてしまうと、組織としてのパフォーマンスが上がらなくなってしまうので、留意が必要となります。
おわりに
起業したいけどどんな事業に取り組めば良いのか、というのは、起業家が最初にぶち当たる大きな壁の一つで、これを打破する産みの苦しみは、とても深いものになります。
とはいえ、悩みながらも、まずはスモールビジネスから起業を始めていくことは一つの手段となりますし、そこから見えてくる世界や、得られる仲間も多くあります。
ジェネシア・ベンチャーズは、シード期のスタートアップをメインに投資を行うVCですが、スモールビジネスから大きな事業にチャレンジしたいという起業家からの相談もウェルカムですし、投資実績もあります。
これまでは自己資本で経営してきたけれども、そろそろ外部資本を入れて、スタートアップとしての企業成長を目指したいという経営者がいらっしゃいましたら、当方のtwitterやFacebookのDMに、いつでもご相談いただけますと幸いです。
参考文献
【DXの型】
【事業のネタ帳】